ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』1986

2019-01-23 00:00:09 | 刑事ドラマ HISTORY









 
#706 ボス!任せてください

ボス=石原裕次郎の代役が務まるのは、名実共にこの方しかいないでしょう。大門団長改め、橘警部こと渡 哲也さんです。

『西部警察』シリーズ終了から2年経って、少し髪も伸びてマイルドに変化しつつも、前触れなく登場していきなりボスの椅子に座って、全く違和感を感じさせないのが凄い!

裕次郎さんと渡さんの関係を視聴者みんなが分かってるせいもあるけど、この時あらためて渡哲也という存在の凄さを思い知りました。山さん(露口 茂)同様、いわゆる1つの渡哲也(というジャンル)ですよ。

しかし、こうなると世間が『太陽』=石原プロ作品って思い込むのも、まぁ当たり前ですよねw だいたい、情報を扱うプロである筈のマスコミが、そう思い込んで記事を書いてたりしますからね。

なお、橘警部は捜査第一係長のあくまで「代理」って事で、メンバー達からは「ボス」じゃなく「警部」と呼ばれ、自らも部下の事を「西條(ドック)」「令子さん(マミー)」等、基本的にはニックネームを使わず名前で呼んでました。

そしてこの回は『太陽』最後の新人刑事=DJこと太宰 準(西山浩司)も同時加入します。ボスがいてもいなくても、この時期に登場する事は前から決まってたみたいですね。

DJは画期的な新人刑事でした。まず、背がとても小さい!w 松田優作さん以降『太陽』の新人刑事は身長180センチ以上が暗黙のルールになってましたから。おそらく160センチも無いであろう西山さんは、他の刑事達と並ぶとホント子供に見えちゃいます。

それと、お笑い畑からの抜擢も『太陽』では初めての事でした。西山さんは欽ちゃんファミリー、イモ欽トリオのワルオでしたからw

このキャスティングは’80年代のお笑いブームに沿って、TVドラマの内容もどんどん明るく軽いものになりつつある、時代の流れを受けたものと思われます。同じ年に『あぶない刑事』もスタートしてますからね。

つまり『太陽にほえろ!』はこれからも柔軟に変化しつつ、まだまだ続いて行く予定だったワケです。実際、DJ刑事はそれまでの『太陽』には無かった新風を巻き起こしてくれました。

生意気な態度や人なつっこさはマカロニ(萩原健一)やラガー(渡辺 徹)を彷彿させつつ、超すばしっこいアクロバティックな立ち回りは、14年間『太陽』が保ってきたリアリティを根底から破壊しかねないw、コントすれすれのアクションでした。

いつも新しい刺激を求めてた私にとって、そんなDJ刑事の登場は嬉しい出来事でした。新しい刺激と言えば、この回からオープニング曲もオール打ち込みによる「太陽にほえろ!メインテーマ’86」に変更されました。イントロを聴いても『太陽』のテーマだとは誰も気づかない位、大胆にアレンジされた曲です。

DJの登場もテーマ曲の変更も、保守的なファンには不評だったみたいだけど、私は逆にワクワクしたものです。これで「日没が近づいてる」なんて予感も吹っ飛びましたからね。


#707 いつか見た、青い空

打ち込みによる新しいテーマ曲が目白押しで、まるで新番組を観てるような感覚だった前回のぶり返しなのか、この回は長らく使われてなかった『太陽』初期のBGMがたくさん聴ける、やたら渋いエピソードでした。

内容的にも異色の渋さで、戦時中の貧困による「トウモロコシ泥棒」が現代の殺人事件へと繋がる、40年間の重みが描かれてます。主役がトシさん(地井武男)で、ゲストが山本耕一さんに井上昭文さん。何から何まで渋すぎますw


#708 撃て! 愛を

不倫相手に騙され、絶望したOL(斉藤慶子)が、偶然見つけた拳銃で復讐しようとします。

どんな事情があろうとも復讐は阻止するのが『太陽にほえろ!』の伝統なんだけど、現代っ子のDJは「そんな奴、撃っちゃえ!」って、逆に彼女をそそのかしますw

そう言われると、かえって撃てなくなるもんかも知れません。そんなDJのキャラといい、復讐の動機が不倫の恋だったりと、時代の変化を実感させられるエピソードです。


#709 タイムリミット・午前6時

逮捕された銀行強盗犯の兄が子供を誘拐し、弟の釈放を要求して来ます。ところが、その取引現場で弟が事故死してしまう。

激怒した兄は子供の殺害を宣言。単身で行方を突き止めたドック(神田正輝)が、銃で武装した犯人一味に無謀な戦いを挑みます。

これが『西部警察』なら、グラサン姿の渡さんがスーパーマシンで駆けつけ、ショットガンで敵を皆殺しにして一件落着なんだけどw、『太陽』の場合はそう簡単には行きません。

拳銃だけに頼らず頭脳も駆使する、ドックのハードアクション・シリーズ。その集大成とも言える作品です。


#710 殺意との対決・橘警部

過去の事件の因縁により、橘警部が生命を狙われます。ストーリー自体は凡庸だった印象ですが、渡さんの『太陽』における唯一の主演作として貴重なエピソード。

『大都会』や『西部警察』で見せた寡黙でハードなイメージと、その他の番組で見せた温厚でソフトなイメージ。俳優・渡哲也のバリエーションはこの2種類しか無い感じだけどw、橘警部はその中間というか、両方のイメージが味わえるレアなキャラクターかも知れません。


#711 ジョーズ刑事の華麗な復活

山さんが殉職し、藤堂ボスが不在となった今、番組スタート時からのメンバーが遂に1人もいなくなっちゃった!

……いや、待てよ。マカロニ時代からずっと活躍してる、この人がいるじゃないか!(今はもう刑事じゃないけど)って事で、鮫やんこと鮫島勘五郎(藤岡琢也)が約5年ぶりに復活!

かつて藤堂ボスの部下だった橘警部にとっても、鮫やん(ボスと同期)は同僚の先輩刑事だったワケですね。とんでもない警察署があったもんですw

破天荒さでは引けを取らない七曲署のホープ=DJ刑事とコンビを組んで、鮫やんの大暴れが久々に炸裂する痛快作。コメディセンス抜群なお二人による丁々発止の掛け合いも大きな見所です。

鮫やんは『太陽』セミレギュラー陣の中でも私が一番好きなキャラクターで、演じる藤岡琢也さんもまた、この番組に呼ばれるのが待ち遠しいほどお気に入りだったそうです。


#713 エスパー少女・愛

本作が『太陽』最後の2時間スペシャルとなりました。実力派のアイドル女優として注目されてた工藤夕貴さんをゲストに、初めて超常現象ネタを扱った意欲作です。

とは言え、そこは『太陽』らしく荒唐無稽なSFもどきに陥る事なく、ささやかな超能力(テレパシー受信)が、思春期の女子にありがちな不安定さのメタファーとして描かれてるんですよね。あくまで人間ドラマであり、青春ドラマなんです。

工藤夕貴さんの思い切りの良い演技が素晴らしかったです。当時のアイドル女優さんの中でもずば抜けてると思います。

お陰で2時間があっと言う間の傑作エピソードになりました。主役のドック&ブルース(又野誠治)コンビ=自称ブルドックコンビのノリも快調で、素晴らしい!


#715 山さんからの伝言

死んだ山さんがかつて担当した事件に残された謎。スコッチ(沖 雅也)路線から山さん路線にシフトする兆候が見られてたデューク刑事(金田賢一)によって、その謎が解明されます。

ところが本件を最後に、デュークは海外研修に旅立っちゃう。最終回まで残り3話だと言うのに!w クール系の刑事は任期が短い伝統があるとは言え、なんとも中途半端なタイミングの降板でした。

実は賢一さんの舞台出演との兼ね合いがあったそうで、かくも七曲署への思い入れが浅い感じがまた、孤高のキャラを最後まで貫いたデュークらしいと言えば、らしいです。


#716 マイコン、疾走また疾走

このサブタイトルだけで笑いが取れるマイコン刑事(石原良純)は、やっぱり笑いの王様ですw まさにタイトル通り、元陸上選手の奥様に「お願いだからカメラの前で走らないで」と言わしめた、良純さんの華麗なる疾走がたっぷり堪能出来るエピソードです。

『太陽にほえろ! PART2』ではマイコンの主演作が創られなかった為、事実上これが最後のマイコン活躍編となりました。名残惜しいですw

いやホント、放映当時はガッカリさせられてばかりだったマイコンですが、今になって観直せば、他の番組も含めて似たようなキャラが見当たらない、唯一無二の貴重な存在かも知れません。ホント、こんな面白い刑事はどこにもいませんからw

これほどマイコン刑事を愛してる私も、たぶん貴重な存在だと思いますw


#718 そして又、ボスと共に (終)

体調に回復の見込みが無いって事で、石原裕次郎さんがついに『太陽にほえろ!』降板を発表しちゃいました。

日テレとしては新しいボスを迎えて番組を継続する意向で、加山雄三さん等が候補に挙がってたほか、15周年にはなんとアフリカ・ロケまで予定されてたんだとか。

だけど、石原プロ側が番組の終了を強く要望したんだそうです。私は、それで正解だったと思ってます。加山雄三さんも悪くはないけど、やっぱり石原裕次郎の存在が無くなっちゃうと『太陽にほえろ!』は完全にカラーが変わっちゃう。

たとえ時々欠場する事があったにせよ、裕次郎ボスのオーラがいつも七曲署には存在してましたからね。だから渡哲也さんの代理ボスには違和感が無かった。渡さんの背中に裕次郎さんの魂が感じられますから。

かくして1986年11月14日(私の誕生日イブですw)、『太陽にほえろ!』は最終回を迎える事になりました。ブルースが、かつてやむなく射殺した凶悪犯の兄(遠藤憲一)に撃たれ、瀕死の重傷を負ったまま監禁されてしまいます。

もうこれ以上、部下を死なせたくない! その想いを胸に、ボスが帰って来ます。

犯人の妹を自ら取り調べたボスは監禁場所を聞き出し、橘警部らがブルースを救出。すんでのところで仲間を失わずに済んだ藤堂チームは、再びボスの指揮の下、一丸となって捜査に向かうのでした。

新人刑事があわや命を落とさんという危機を、ボス達が必死に救出する話は『太陽』じゃ定番とも言えるもので、私としては「14年以上続いた番組の最終回にしては淡白やなぁ」ってのが正直な感想でした。

ところが面白い事に、つい最近、何かの雑誌で「心に残る最終回ベスト10」みたいなアンケートを実施したところ、なんと第1位にこの『太陽』最終回が選ばれたんだそうです。これまで放映されて来た(記憶に新しい『家政婦のミタ』等も含む)全ての連続ドラマの中で1位ですよ?

それは恐らく、この最終回が結果的に裕次郎さんの遺作になっちゃった事実が、大きく影響してるものと思われます。裕次郎さんはこの翌年に亡くなられたんですよね。

それだけじゃなくて、ボスが犯人の妹を説得する7分強にも及ぶシーンが、全て裕次郎さんのアドリブだった!っていう裏話が色んなメディアで紹介された影響もあるんでしょう。

ボスの芝居がアドリブである事は、私も当時放映を観ててすぐに判りました。その場面だけはボス=藤堂俊介から離れて、ほとんど素の石原裕次郎になってましたからね。相手役の女優さんがまた、異常に緊張されてるのが伝わって来たしw

で、その時に裕次郎さんが実感をこめて語った内容が、命の尊さ、生きるという事の素晴らしさだったりするもんだから、今じゃ「裕次郎さんの遺言」みたいに解釈されてるワケです。

でも、裕次郎さんはただ『太陽にほえろ!』がずっと描いて来たテーマを最終回で総括されただけ……もっと言えば、ブルースの命を何としても救いたい!っていう、その場面におけるボスの心情を、普通に演技として表現されたに過ぎないのかも知れません。

それが翌年の死をきっかけに伝説化され、アンケートで1位になるほど世間に浸透しちゃうワケですから、やっぱり超大物、スーパースターたる所以ですよね。至急、国民栄誉賞を検討すべきですw

『太陽にほえろ!』の終焉は、裕次郎さんの病状悪化というアクシデントにより急きょ決まった為、現場は色々と大変だった事と思います。

気の毒なのは、颯爽と登場して僅か1クールで番組が終わっちゃった、DJ刑事=西山浩司さんですよね。スニーカーの山下真司さんが最も不遇な新人刑事って、前に書きましたけど、DJは不遇というより不運でした。

ただ、西山さんはこの後も『太陽にほえろ! PART2』『ジャングル』『NEWジャングル』と、4作品をまたいで刑事を演じる唯一の俳優になりますから、かえって美味しかったと言えるかも?

で、私自身はどんな心境で『太陽』の終焉を迎えたかと言えば、意外と冷静だったような気がします。

この当時の私は本格的に自主映画の製作を始め、私なりの『太陽にほえろ!』と言える刑事物に取り組んでる最中でしたから、ちょうど『太陽』依存から抜け出して自立しようとしてる時期でした。

だから『太陽』が終わって落ち込むという事も無かったし、むしろ自分が大人に脱皮する絶好の機会かも?って、私にしては珍しくw、前向きに捉えてました。

よもや、それから30年以上経ってもこうして熱く語っていようとは、夢にも思わなかったですよw ちっとも卒業出来てない! かなりショックですw

だけど、この連載の初回に書いた通り、生粋の『太陽』ファンにはこういう人が多いんです。それだけ凄い番組だったって事です。私のせいじゃありませんw

実際このブログでも、色んな記事が流れ去って行く中で、この『太陽』シリーズだけは常に閲覧数ベスト10に入ってる位、コンスタントに読まれてます。これは私も予想外でした。

CS放送はもちろん、地上波でも最近、地方ローカル局でマカロニ編、ジーパン編、テキサス編がゴールデンタイムに放映されてたりしますから、新たに興味を抱いて訪れてくれた読者さんも少なくないかも知れません。

だから、これからも『太陽にほえろ!』の記事はちょくちょく書いて行こうと思ってます。七曲署ヒストリーにはまだ続きがあるし、驚くべき事に私自身が、まだまだ語り足りてないw

そんなワケで、これからもよろしくお願いします!
 

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2 コメント

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いい作品 (フルーツブラザース)
2019-01-24 15:58:34
太陽にほえろ!が終わり、その継承を刑事貴族で受け継ぎ、七曲署〜で復活し、97.98.99.〜刑事、太陽にほえろ!2001で幕を閉じましたね。石原裕次郎の代わりは渡哲也ではなく舘ひろしでありました。また、舘さんのオーラは独特でいいものです。石原裕次郎、渡哲也、舘ひろし刑事役が様になる俳優さんが今の時代にいないのは寂しいものです。いい時代のいい作品に巡り会えたのは幸せなことです。昭和〜平成初期の刑事ドラマを愛して止まない私です。
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>フルーツブラザースさん (ハリソン君)
2019-01-25 00:53:53
現在のドラマにも現在ならではの良さがありますが、我々世代が愛した「テレビ映画」の良さとは全く異質ですね。それはもう二度と再現出来ないだろうと思います。だからこそ、こうして振り返ることにも意味があるんですよね。
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