ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『カケラ』

2021-04-23 23:50:03 | 日本映画










 
2010年春に公開された、安藤モモ子さんの監督・脚本による日本映画。桜沢エリカさんの漫画『LOVE VIBES』を実写化した作品です。

この映画に百合の要素があることは知ってましたが、予告編でコメディっぽい印象を受けたもんで、ちょっとしたネタ程度の描かれ方だろうと勝手に思い込んでました。

観たら違ってました。これは本格的な百合映画ですよ! ただし、我らヘンタイ男が妄想する甘美な百合世界とは全然違います。ヘロデ王こと奥田瑛二さんの長女=安藤モモ子さんの第1回監督作品ってことで、確かにこれは女性にしか撮れない映画です。

満島ひかりファンの方は、ちょっと覚悟して観なければなりません。下着姿や、お尻が見えるシャワーシーン、女性どうしのラブシーンは良い(むしろ大歓迎)として、アパートの和式トイレにお尻をつけて放尿したり、公園のトイレでタンポンを入れたり等、男としてはあまり見たくない生々しい描写が多々あります。

特に衝撃的だったのは、腋毛です。アンダーヘアを見せた女優さんはいっぱいいても、腋毛を大スクリーンに晒した売れっ子女優は数少ないでしょう。男が女性に対して抱く幻想を、ことごとく打ち崩してやろうっていうモモ子さんの狙いがハッキリ判ります。

だーがしかし! 世の中、女性の腋毛に顔をしかめる男ばかりだと思ったら、そりゃ大間違いですぜモモ子さんw

私が性に目覚め始めた中学時代、同級生女子の制服(夏服)の隙間から見えた腋毛に衝撃を受けて以来、女性の脇の下がチラッと見えるシチュエーションに、興奮するとまでは言わないけど、ちょっと萌える体質になってしまったのです。

いや、往年のセクシー女優・黒木香さんみたいにボーボーなのは平気なんです。ちょっと処理をサボってうっすら生えて来た位がちょうどいい。要するに、思春期に初めて見た女性の秘部、その時のドキドキが刷り込みになって今だに残ってるワケです。

例えば夏場、電車の座席に座ってて、目の前に女性が立ち、吊り革を持ったとしましょう。私はつい、彼女の脇の下をチラ見しちゃうのです。で、それが綺麗に処理されてた日にゃあガッカリするワケですよ。

だからモモ子さん。皮肉にもあなたは、私を喜ばせただけに過ぎないんですよ?……って、話が横道に逸れまくってますけど、皆さんどいつもこいつもホントど変態ですね!

満島さん扮するヒロインがつき合ってる彼氏ってのがまた、ロクでもない乳首チョメチョメ野郎で、ただ会って泊まってセックスするだけの、惰性かつ空疎な日々。

心の隙間を埋める何かが欲しい……そんな時に彼女が出逢うのが、中村映里子さん扮するメディカル・アーティスト。義手とかシリコンおっぱいを造ったりする、言わば人の欠けたパーツを補う仕事をしてる女性です。

男か女かなんて関係ない。自分は「人」を見て好きになるだけで、世間からどう思われようが知ったことじゃない。そんな中村さんは実にカッコいいです。レズだ変態だとバカにする乳首チョメチョメ野郎にキンテキを食らわし「キンタマ付いてりゃ偉いのか!? グローバルな世の中について来れないだけだろバーカ!」なんて啖呵を切る場面には拍手喝采です。

だから満島さんも彼女に惹かれ、男も女も関係ない心の繋がりに、隙間を埋めてくれる何かを見いだすんだけど……

いざ同棲生活を始めると、自由奔放に見えた中村さんが、満島さんを束縛するようになる。「男だの女だのと考えるから苦しくなるんだよ」って言ってた中村さんなのに、満島さんがちょっとでも男と関わると嫉妬する様になっちゃう。自分の方がよっぽど性別にこだわってるやん!っていう矛盾w カッコいい彼女にもやっぱり「欠けてる」パーツがあるんですよね。

幸せを感じたのは束の間だけで、2人の心はすれ違い、再び孤独で息苦しい毎日が始まる。で、2人はこれからどうなっていくの?っていう観客の気持ちを置き去りにしたまま、突き放すように映画は終わっちゃいます。

「満月は綺麗だけど、それは1日だけで後はずっと欠けてるんだよ。でも、欠けてる月だって綺麗かも」

「好きなものは、いっぱい食べちゃ駄目だよ、気持ち悪くなっちゃうから。少しずつ食べた方が幸せだよ」

↑うろ覚えですが、作者のメッセージはこれらの台詞にこめられてるかと思います。

心が満たされず、息苦しい毎日……それって誰でも同じで、普通のことなんだよと。たまにしか満たされないからこそ、その瞬間が幸せに感じられるんだよと。

人は不完全な生きもので、常に何かのパーツが抜け落ちてる。そのカケラを拾い集め、パズルを埋めていくのが人生ってこと……なのかも知れない。なかなか全部は埋まらないけど、1つ埋めるたびに歓びがあるんだから、また頑張って次のカケラを探そうよって、そういうことを言ってるんだと私は解釈しました。

それにしても満島さん、名作『悪人』や『川の底からこんにちは』でもそうだったけど、心が満たされずに苦しむ「中の下」の女を、実に自然に演じておられます。

特に『川の底から~』の前半と、本作の満島さんはよく似てます。優柔不断で流され易く、ダメ男に振り回されちゃうダメ女。これがまた妙にハマってるw

ところで、ずっと前にタベリスト仲間のgonbeさんが本作をレビューされた時の疑問点=棒アイスを妙にいやらしいしゃぶり方で食べる、中村映里子さんの場面ですが……

私は中村さんが男に全く興味が無いからこそ、ああいうしゃぶり方を(そういうしゃぶり方だとは知らずに)平気でしちゃうんだろう……と、数年前に本作を観た時は思いました。

けど、今回あらためて観直すと、むしろ彼女の隣にいる満島さんが、わざわざウインナー・ソーセージを食べてるのが気になるんですよね!w いわゆるジェンダーレスっぽい満島さんは、それを普通に噛って食べてるワケです。

だから、つまりセックスの問題に関して、満島さんはもう飽きるほど満たされてるのに対して、中村さんは著しく「欠けてる」からこそ、無意識に渇望してるっていう暗喩なのかも知れません。そう考えると、満島さんがいつもパンツルックなのに対して、中村さんはスカートを好んでることにも意味がありそうです。

まあ、アイスは普通しゃぶるもんだし、ウインナーは噛って食うもんだろと言われりゃその通りなんだけどw 

いずれにせよ、男なんて所詮ただの「肉棒」に過ぎないってことですよ! それが結論w


 


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3 コメント

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Unknown (Unknown)
2021-04-24 07:14:30
おはようございます!
今日も今日とて、太陽がピッカピカです。

懐かしい映画『カケラ』のレビュー、うれしく読ませていただきました。

多くは申しません。ひとつだけ

>著しく「欠けてる」からこそ、無意識に渇望してるっていう暗喩

なるほど!

なるほどなるほど!

納得です。腑に落ちました。そうと考えたらこの映画の「?」な部分の多くに説明がつくような気がします。

見事な洞察、ありがとうございました。
ハリソン君、あなたはすごい!
Unknown (gonbe5515)
2021-04-24 07:16:03
先のコメントの投稿者は私です。
あまりの感動に舞い上がってしまい、入力を忘れてしまった。。。。
Unknown (harrison2018)
2021-04-24 07:40:23
いや、凄いのは安藤モモ子監督ですw さすがヘロデ王の娘!
これ、1回観ただけじゃ、まず気づかないですよね。今回のレビューは旧ブログ記事の再掲載なのですが、画像を撮るためにDVDを借り直してまた観たワケです。

それで気づいたのが、中村映里子さんが人のパーツを補う仕事をしてることの意味。あっ、それがテーマだったのか!って、1回目はまるで気づかなかった私の洞察力なんて大したことありませんw

アイスしゃぶりの意味も、2回目観たあとから記事に加筆しながら、考えに考えてやっと辿り着いた結論です。私自身も「そうか、そういうことだったか!」と感動しました。実は全然違うのかも知れないけどw

だから映画って面白いんですよね! 連ドラがどんどんつまんなくなってる理由の1つに、あまりに正解を簡単に教え過ぎちゃうから、っていうのは確実にあると思います。

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