☆第377話『秋深く』(1979.10.19.OA/脚本=小川 英&渡辺由自/監督=櫻井一孝)
南郷建設の重役=田沼(渥美国泰)から、一人娘の貴子(森田あけみ)が不審な男につきまとわれているとの通報があり、ロッキー(木之元 亮)が顔を毛むくじゃらにしながら捜査することになります。
田沼の話によると、ちょっと前に不祥事を起こしてクビにした、志垣(明石 勤)という元社員がそのストーカーに間違いないらしく、ロッキーは行方を追います。
ところが、外出を控えるよう釘を刺したはずの貴子が誘拐され、志垣から5千万円の身代金要求があったと田沼が連絡して来て、いよいよ藤堂チームが本格始動。
なのに田沼は、歯医者に行くフリをして勝手に志垣(?)と取引を済ませちゃう。警察が毛むくじゃらで信用出来なかったからと釈明する田沼だけど、自分で通報しておきながら矛盾も甚だしい。
それで戻って来た貴子は拉致監禁されてた割りにケロッとしてるし、何より容疑者・志垣の行方が一向に掴めないばかりか、目撃者すら一人も浮かんで来ない。
どうやらこの誘拐事件は田沼父娘による自作自演で、ロッキーはその証人として利用されただけ。怒ったロッキーは、娘につきまとう志垣を田沼が殺したに違いない!と決めつけ、顔から毛を撒き散らしながら空き地や土手を片っ端から掘り返し、本当に志垣の遺体を見つけてしまいます。
そして娘の口から真相を聞き出すべく、遺体を見つけたことをロッキーが告げた途端、貴子は「違う! お父様は悪くなんかないわ!」と狂ったように叫び、自宅の池に飛び込んで、ポリ袋に包まれたテニスラケットと血に染まった衣服を拾い上げるのでした。
そう、貴子をつけ回し、テニスをする彼女のミニスカート姿に欲情した志垣は、帰宅しようとする彼女の車に押し入った。それでとっさにラケットで反撃した貴子は、無我夢中で…… そして田沼は、娘の殺人を隠蔽するために必死で偽装誘拐を企てたのでした。
そんな余計な小細工しないで、知らん顔しとけば何も発覚しなかったんじゃないの?って思うんだけど、そこは娘を溺愛する父親のご乱心と思えば納得出来なくもありません。
ストーカー被害だけでまだ事件になってない内から刑事が捜査するなど、リアリティーに欠ける部分も多々あるんだけど、まぁそんなのは些末な問題です。
ただ看過しがたいのは、このエピソードが典型的な「若手刑事が恋した相手が実は……!」のパターンに沿った話なのに、主人公=ロッキーの切なさがまるで伝わって来ないこと。
もしスニーカー(山下真司)が「先輩、やけに張り切ってるなあ」とか「先輩は彼女に個人的な好意を持ってるんですね」なんてベタなツッコミ(解説)を入れてなかったら、我々視聴者(少なくとも私)はロッキーがそんな感情を抱いてることに全く気づかなかったと思います。
相変わらず、木之元亮さんはそういう芝居がほんと苦手……と言うより、ロマンス的な話がまったく似合わない人なんですよね。
ロッキーのそういう感情が伝わって来ないと、このエピソードは単に「意外な人が真犯人だった!」っていうだけの辛気くさいミステリーに過ぎなくなっちゃいます。それじゃ面白くない。
刑事部屋におけるラストシーンも、田沼父娘の仮釈放申請書を書いて捺印を求めてくるロッキーに、ボス(石原裕次郎)がただ苦笑いするだけという、何のオチにもなってなければ悲劇の余韻もまったく残らない、お粗末な締めくくりとしか言いようありません。
相変わらず見せ場を与えてもらえないスニーカーはじめ、藤堂チーム全員になんだか覇気が感じられないし、ゲストの森田あけみさんも演技が硬く、ロマンスの相手役としては魅力に欠けました。良かったと思うのは同じくゲストの渥美国泰さんや頭師孝雄さんの実直な演技ぐらい。
まさに、これがあの時期の『太陽にほえろ!』なんですよね。手堅く創られてはいるんだけど、観ててワクワクさせられるような場面が1つも無い。王座陥落は当然の結果だったと、つくづく思います。
度々、且つ今更すみません。
たまに覗いてる上記のブログに記事が上がってるのに今日気付きまして・・・