ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』1975~1976

2018-09-29 04:04:13 | 刑事ドラマ HISTORY










 
#168 ぼんぼん刑事登場!

「大阪生まれの甘えんぼう刑事」ことボン=田口 良(宮内 淳)が新加入し、若手刑事2人体制となった『太陽にほえろ!』は新たなステージへと進んで行きます。

新人刑事の成長過程を描く青春ドラマ的要素は継承しつつも、ベテラン&中堅刑事達の活躍も同じ比重で描かれ、より「人間ドラマ」「群像ドラマ」としての色合いが濃くなりました。

その為か、ボンは刑事になりたての新米ではなく、お隣の城南署でデビュー済みの刑事として登場します。

で、城南署管内の殺人現場で鉢合わせになったテキサス(勝野 洋)を犯人と思い込み、しつこく追い回す迷惑な若造として藤堂チームの面々のひんしゅくを買います。

だけど根は素直でお人好しな性格ですから、テキサスを追い回す内にすっかり彼や藤堂チームのファンとなり、上司にダダをこねて七曲署への転属を果たすのでした。

そんなボンの初出勤には叔母(ミヤコ蝶々)が付き添うというお坊ちゃんぶりで、ボス(石原裕次郎)が呆れ半分で「大阪生まれのボンボン刑事か……」と呟いたのが、そのままニックネームになった次第です。

ちなみにボスから直々に命名されたのはボンが初めてで、通常はもっぱらゴリさん(竜 雷太)が「おい、そこのジーパン」とか「あのスコッチ野郎ーっ!!」とか言って勢いで決めちゃうパターンが多いですw

ミヤコ蝶々さんは本来ボンの「お祖母ちゃん」役なのに、ダダをこねて「叔母ちゃん」に変更させちゃったんだとか。何人もの付き人を引き連れた大御所ぶりが撮影現場的には面倒くさかったのか、最初の2話だけでお役御免になっちゃいました。

それにしてもボン=宮内淳さんもまた、マカロニ(萩原健一)やジーパン(松田優作)とはかけ離れたキャラクターで、これは質実剛健なテキサス=勝野洋さんとの組み合わせを考えての起用だったそうです。

このテキサス&ボンのコンビは、後にリポビタンDのCMキャラクターに抜擢され、あの「ファイト、一発!」の初代コンビを務める事にもなります。

更に後年、この2人主演で『俺たちの勲章パート2』製作決定!との情報がテレビ誌に掲載され、私は狂喜乱舞したのですが、いつの間にか中村雅俊&根津甚八の『誇りの報酬』って企画に変わってましたw


#169 グローブをはめろ!

着任早々、犯人に同情して逮捕をためらい、とり逃がしちゃったボンはゴリさんに殴られ、刑事を辞めようとします。

若手の教育係=ゴリさんによる鉄拳の洗礼もまた『太陽』名物の1つで、マカロニからスニーカーに至るまで歴代の新人刑事達は必ず、1人残らずゴリパンチを浴びてますw

ボクシングをかじった事のあるボンは、プロボクサーの犯人とリングで殴り合い、スタローンも顔負けの打たれ強さを発揮、根負けした犯人を自首させるのでした。

本物の血を流しながら熱演した宮内さんもボンと同様に、ただの甘えん坊とは違う芯の強さを此処で証明してくれました。


#173 一発で射殺せよ!

射撃の名手・ゴリさんが狙撃の精鋭チームに抜擢されますが、彼が射撃の腕を磨いたのは本来、狙いを外して犯人の生命を奪いたくなかったからなんです。

なのに籠城犯の射殺命令が下り、苦悩するゴリさんに撃たせまいとして、藤堂チームの面々が大奮闘します。特に山さん(露口 茂)必死の犯人説得には鬼気迫るものがあり、かえって怖いぐらいw

なお、浅野ゆう子さん降板から1年、ようやく今回から3代目マスコットガール=矢島明子(木村理恵)が登場します。七曲署のお茶汲み係と言えば、この「アッコ」を思い出す人が多いのではないでしょうか?

演じる木村理恵さんは小柄で清楚で控えめ、いわゆる小動物系のキャラで、浅野ゆう子さんと違って女性視聴者にも快く受け入れられた模様ですw

3年以上もマスコットガールを務めた木村さんは『特捜最前線』にも大滝秀治さんの娘役でセミレギュラー出演する等、刑事物フェチには馴染み深い女優さんとなりました。


#177 海に消えたか3億円

当時はまだ記憶に新しかった3億円事件を『太陽』流に解釈した意欲作にして、テキサスが初めて犯人射殺を経験するエポック作でもあります。


#179 親と子の条件

事情あって赤ちゃんを預かってた山さん夫婦が、その子を養子に迎える決意をします。以降、約10年に渡って山さんの父子愛が描かれて行く事になります。

今思えば、これは番組初期から描かれて来た山さんの愛妻物語が、もうすぐ区切りを迎える事の予兆でもあったんですね……


☆1976年

この年、いよいよ石原プロモーションがTVドラマ製作に着手し、渡 哲也さんをフィーチャーした刑事物『大都会』シリーズをスタートさせます。

ここでもう一度だけ念押ししますと、『太陽にほえろ!』は東宝テレビ部の作品であって、石原プロとは無関係です。いつも誤解されて困ってますw 別に『太陽』が石原プロ作品より面白いだとか優れてるだとか、そんな事が言いたいワケではありません。ただ、とにかく違うんです!と。

だって『大都会』や『西部警察』は、裕次郎さんがご自身で製作して出演されてるワケです。それに対して『太陽』は、映画界のスーパースターだったこの方を大緊張の中でお迎えし、1クールで降板しようとされるのを必死に説得して、最終的には約15年のロングラン。やっぱり、ゴッチャにされたくないんです。どっちが良い悪いじゃない。とにかく、違うんです!w


#187 愛

テキサスとボンが、容疑者の恋人(竹下景子)を張り込みます。歴代刑事の中でもたぶん一番惚れっぽいボンがw、彼女の人柄に惹かれて行きますが、こういう場合は決まって悲しい結末を迎えます。二人で主役を演じることが少なかったテキサス&ボンの貴重なコンビ主演作。

竹下景子さんは後に「お嫁さんにしたい女優ナンバー1」としてブレイク、『太陽』スタッフによる連ドラ『姿三四郎』や映画『ブルークリスマス』で主役・勝野洋さんといずれも恋人役で再共演されます。実にお似合いのカップルでした。


#189 人形の部屋

坂口良子さんが人気モデル役で長さん(下川辰平)と絡むエピソードですが、『ドラえもん』の声で有名な女優・大山のぶ代さんが脚本家として参加された作品でもあります。

大山さんが『太陽』の脚本を何本も書かれてた事実は後年、バラエティーやクイズ番組でよく「トリビア」のネタにされてました。不思議なことに『太陽』以外の番組には1本も書かれてないんですよね。


#192 2・8・5・6・3

後に『太陽にほえろ!PART2』で女ボスを演じられる奈良岡朋子さんが、裕次郎ボスとガッツリ共演された密室サスペンス編。数字が並んだだけの謎めいたサブタイトルも印象的だし、私はこのエピソードでニトロ・グリセリンの恐ろしさを学びました。


#194 兄妹

殿下(小野寺 昭)の妹(中田喜子)を乗せた観光バスが、爆弾を持った男にジャックされます。犯人(堀内正美)は殿下の妹に惚れており、今で言うストーカーみたいなもんでしょうか。

堀内さんは当時から、そういう屈折した犯罪者の役が多かったですね。最近はすっかりナイスミドルだけど、朝ドラ『純と愛』ではやっぱり屈折したお父さんを演じておられましたw


#200 すべてを賭けて

武原英子さん扮する恋人・道代との結婚を間近に控えたゴリさん。ところが、彼女の叔父(小林昭二)が犯罪に関わってしまう。警察官は、犯罪者の肉親とは結婚が許されない。

ゴリさんは苦悩の末、刑事を辞める決意をし、ボスも了承するんだけど、彼女が身を引いちゃうんです。ゴリさんに刑事のままでいて欲しかったから…… 泣けます。


#201 にわか雨

娘の良子(井岡文世)に恋人が出来て、うろたえる長さん。やがて義理の息子となる、おっとりした気象予報士の彼氏を演じたのは、柴俊夫さん。

長さんの家庭は紆余曲折ありながらも順調に、庶民的な幸せを育んでるのですが……


#206 刑事の妻が死んだ日

心臓を患ってた山さんの奥さん(町田祥子)が、発作を起こして亡くなります。『太陽』の刑事達って長さん以外はホント、幸せになれないんですよね。

山さんは妻を心から愛してるんだけど、根っからの刑事だから犯罪者をどうしても放っておけず、とうとう奥さんの死に目にも会わずじまい。

でも奥さんは、そんな山さんを理解してるんです。骨の髄まで刑事である山さんを。だから、微笑みながら死んで行くんですよね。

ゴリさんの婚約者といい山さんの奥さんといい、ちょっと今の時代だと成立しないですよね、たぶん。今こんな男女の在り方をドラマで描いたら、クレームが殺到するか、それ以前に「あり得ない」って一笑に付されるだけかも知れません。

時代です。こんな男女のドラマが、まだ成立して人々を感動させてた時代なんです。


#216 テキサスは死なず!

そして、とうとうテキサスも死んじゃうし! 不幸のオンパレードじゃないですかw

だけどその裏には、「常に人の不幸と向き合う職業である刑事が、果たして幸せであって良いものか?」っていう、創り手の極めてストイックな想いが隠されてるんですよね。

テキサスを若者の模範となり得るキャラクターに造形した件といい、ちょっと生真面目すぎる気もする『太陽』だけど、昨今のTV番組製作者の皆さんに「爪の垢でも煎じて呑んでみては?」と言いたい気持ちもあります。

「あっさり死にたい」という勝野さんのリクエストも虚しく、テキサスには『太陽』史上屈指の派手な殉職シーンが演出されました。これは創り手のテキサスに対する愛あればこそでしょう。

観た人はみんな口を揃えて「何十発も撃たれてた」って言うんだけど、よく見るとテキサスがマトモに食らった弾丸は3発か4発程度なんですよね。だけど、その時の仁王立ちするテキサスがあまりに凄まじい迫力で、記憶が増幅されちゃうみたいです。

挫折の時代に相応しく「犬死に」だったマカロニやジーパンと違って、テキサスの死はヒロイックに、壮絶だけど実に美しく描かれました。その辺りにも時代の流れが感じられます。

私は正直、テキサスの殉職劇は演出過多で「ちょっとクサいなぁ」とw、子供心に思ってました。死んだ後、一係のメンバー1人1人に天国の(?)テキサスが呼び掛けるんですよね。「ゴリさん! ゴリさん! ゴリさぁ~ん!」ってw

『太陽』への愛は深まる一方なんだけど、刑事の殉職が美化されてセレモニー化する傾向には、ちょっと違和感を抱いたりもしてました。

だけど『テキサスは死なず!』は歴代最高視聴率42%をマーク、いよいよ『太陽にほえろ!』は絶頂期を迎える事になるのでした。

(つづく)
 


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2 コメント

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Unknown (ムーミン)
2018-09-29 14:56:13
こうして見るとテキサス&ボン編は名作ばかりでクオリティ高いですね。まさに黄金期で心に残るものばかりです。山さんが危篤の妻を看取らずに刑事の仕事に専念して証人?を守ろうとします。その時ボンに一般市民を守る刑事の責任を説いていましたね。現実には警察は市民を守ってはくれません。当時は刑事は必ず市民を守ってくれると信じていました。七曲署の刑事は当時の私達の身近に感じられるヒーローだったと思います。
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>ムーミンさん (ハリソン君)
2018-09-29 22:46:12
脚本家陣のレベルが高かったというのもあるけど、時代背景が現在と違うのも大きいですよね。今やるとクサかったりリアリティーが無かったりすることが、当時はやれた。

危篤の妻より捜査を優先しちゃう刑事がヒーローとして成立する、ギリギリの時代だったかも知れません。'80年代から日本人の価値観がガラリと変わっちゃいますからね。だから、リメイクなんかしても上手くいくワケがありません。
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