ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#001―1

2018-09-08 00:00:36 | 刑事ドラマ'70年代









 
ディープな『太陽にほえろ!』ファンにとっては『桃太郎』や『浦島太郎』並みにエヴァーグリーンな作品ですがw、そうでない方には意外と知られてないかも知れません。(一般的には殉職エピソードの方が広く観られ、記憶に残ってるんじゃないでしょうか?)

「新番組・太陽にほえろ! 型破りの刑事達が都会の谷間を舞台に、男どうしで渡り合う悪への挑戦!」

「見かけはどうでも刑事は腕だ! 今日に命を燃やす新米刑事がベテラン刑事に囲まれて、激しく燃やす正義への情熱!」

「若さゆえにあらゆる可能性を信じ、強さゆえに恐れを知らない彼ら。裕次郎とショーケンを中心に、魅力の男達が巻き起こす大型アクション! 太陽にほえろ! 来週、この時間にでっかく登場! どうぞご期待下さい!」

↑ ビデオソフトが発売されるまで私自身も観た事が無かった、予告CMのナレーションです。BGMにはメインテーマではなく、マカロニのテーマ(アコースティック・バージョン)が使われてました。

ちなみにテロップのコピーは『正義への情熱を叩きつける魅力の男たち!』『NOWな刑事たちの物語!』でしたw 時代ですねぇ~。でも実際『太陽にほえろ!』のビジュアルとサウンドは、当時としては飛び抜けてポップであり、本当に新しくて格好良かったんですよね。


☆第1話『マカロニ刑事登場!』

(1972.7.21.OA/脚本=小川英、長野洋/監督=竹林進)

このエピソード、私自身もリアルタイムでは観てません。私が『太陽』と出逢ったのは翌々年、ジーパン(松田優作)時代の後期なんです。

だから、初めて第1話を観たのは夕方の再放送。すでに本放送はボン(宮内 淳)&ロッキー(木之元 亮)の時代に入ってたかと思います。ストーリーはノベライズ本を読んで知ってたけど、それでもマカロニ刑事の初陣はサプライズに溢れてました。

まず驚いたのは、この回のみアヴァンタイトルが存在すること。新番組としては別に珍しい事じゃ無いんだけど、まずOPタイトルから始まり、曲のイントロ部分でその回のダイジェスト(NGフィルム使用)を見せる『太陽』の定番スタイルに、私はすっかり慣らされてましたから……

「マカロニ刑事のテーマ」をバックに、愛車のSUZUKIジムニーを走らせる早見 淳(萩原健一)を、正面から捉えたショットで『太陽にほえろ!』は幕を開けます。

信号待ちの間、淳は煙草を吸おうとするんだけどライターが無い。で、そこに通りかかったバイク乗りにライターを借りて火を点ける。信号が青になると、淳はそのままジムニーを走らせちゃうw

慌てて追いかけて来たバイク乗りに「ライター返せよ、ライター!」って言われ、やっと自分が借りパチしてる事に気づいた淳が、照れ笑いしながら「どーもすいません」って頭を下げ、ライターを返した所で、あのイントロが流れ出すw そしてメインタイトルへ。

えーっ、これが『太陽にほえろ!』のファーストシーンなの!?ってw、私は二重に驚いたもんです。全然カッコ良くもなければ刑事物っぽくもない。かと言って奇をてらったワケでもなく、ショーケンらしさを前面に押し出した感じですよね。

そして始まるオープニングタイトルも、七曲署のレギュラー刑事達に混じって小料理屋のオヤジ役=ハナ肇さんまで単独ショットで紹介されてたり、後半のボス歩きに挿まれるフラッシュショットで殿下と長さんがセット扱いされてる等、黎明期ならではの光景が観られて逆に新鮮でした。

とは言え、メンバー紹介のパターンや、中盤における新人刑事の全力疾走、そして後半のボス歩きへと流れて行く『太陽』タイトルバックの黄金パターンは、既に出来上がってました。

オープニングのみならず、この第1話は『太陽』がこれから15年に渡って描いて行くテーマが、ほとんど全て網羅されてるんですよね。正味45分で番組のスピリットを語り切った、本当に見事なファーストエピソードです。

タイトル明けは七曲署の玄関口。早見淳がジムニーを乗り付け、颯爽と階段を上がって行くものの、全開になった「社会の窓」を警官に注意されるというw、恐らく日本の刑事ドラマとしては前代未聞だったであろう、コミカルな初出勤シーン。

なお、我々の記憶に残るお馴染みの七曲署(外観のみ海上自衛隊の官舎を使用)の玄関口には、階段がありません。最初期は違う建物が使われてたみたいです。

建物内部は『俺たちの勲章』や『華麗なる刑事』等でも使われた、国際放映のスタジオセット。廊下を進む淳が最初に遭遇したのは、少年係の婦警「シンコ」こと内田伸子(関根恵子=高橋惠子)でした。

「ちょっとキミ。交通課ならね、あっちよ。何やったの? 違うの? ごめんなさい、あなた、洋服の月賦屋さんだっけ?」

いくらお巡りさんとは言え、見ず知らずの相手に向かって何と失礼な言い草でしょうかw 淳でなくてもそりゃカチンと来ますw

「可愛いコだけどねぇ、あんまり人をからかっちゃいけないよ」

「あんた誰よ」

「俺は、刑事なんだよ」

「ええっ!?」

そんなに驚かんでもって思うけどw、この当時なら無理もありません。長髪の警察官なんて前代未聞な上、三つ揃いのスーツにノーネクタイっていう淳の服装も、刑事としては有り得ない時代だった事でしょう。

そしていよいよ、カメラは一係室の中へ。まだ机や椅子は木製で、電話機はダイヤル式(いわゆる黒電話)、空調は無くて常に扇風機が回ってるという、実に懐かしい昭和の風景です。

「いや~逃げた逃げた(笑)」

「ゴリさんらしいなぁ(笑)」

↑ と、刑事達が意味不明な世間話をしてる所にw、勢いよくドアを開けて入って来た淳が、おもむろに「おはよぉーございます」と挨拶します。

「なんだお前?」

最初に口を開いたのは石塚刑事(竜 雷太)でした。髪型がお馴染みのヘルメットスタイルではなく、少し長めの髪を七三に分けた、まだ若々しい「ゴリさん」です。

いきなり「お前」呼ばわりされてムッとした顔の淳は、ふてぶてしく「早見淳です」って答えます。初日からこれほど態度がデカい新人刑事は、『太陽』の長い歴史においても彼が最初で最後でしたw

「ああ、あんたかね。今日からウチに配属になったというのは」

やや緊張した空気を、温かい笑顔で一瞬にして和らげたのが「長さん」こと野崎刑事(下川辰平)、階級は巡査部長。長さんもまた、後にお馴染みとなる坊主頭ではなく、少し長めのヘアスタイルでした。そして……

「初日から滑り込みとはいい度胸だな」

ドスの効いた声が響き、いよいよ「ボス」=藤堂係長(石原裕次郎)が登場します。机に足を乗せて新聞を読んでるという、最初期にしか見られないお行儀の悪さは、まだ日活時代のイメージを引きずってる感じです。

そんなボスを見て、淳がハッと緊張するような描写がシナリオにはあったみたいだけど、映像の中の淳はちっとも物怖じしてませんw

普通なら、天下の大スター=石原裕次郎を目の前にしたら、若手俳優でなくとも最初はガチガチに緊張しちゃうもんなのに、ショーケンさんと優作さんだけは全くそんな様子が無かったそうです。最初から器が違ってるんですよね。

それでもシナリオに「緊張する」って書いてあるなら、緊張する芝居をしなくちゃいけないワケだけど、ショーケンさんにはその理屈が通用しない。

自分は歌手であって役者じゃないから、自分自身とかけ離れた芝居は出来ない。そう主張するショーケンさんは、自分の役がやたら半人前に描かれたシナリオを見て「俺はこんな子供じみた人間じゃない。出来ない。やだ。降りる」とか言って、クランクイン前日まで製作側と揉めてたんだそうですw

なのでチーフプロデューサーの岡田晋吉さんは、撮影日にショーケンさんがちゃんと現場に現れてくれるのか、気が気でなかったと自著で回想されてます。

そしてもう1人、岡田さんをヤキモキさせたのは誰あろう、ボス=石原裕次郎さん。本来、テレビ出演には乗り気じゃなかった上に、病後すぐだった事もあって、事前の打ち合わせは全てマネージャー経由だったとか。

つまりチーフプロデューサーでさえ、クランクイン当日が裕次郎さんとの初対面だった。本当に裕次郎さんはスタジオに来てくれるのか? テレビの現場にうまく馴染んでくれるだろうか? 前夜は緊張と不安で一睡も出来なかったと、これも岡田さんは自著に書かれてます。全く、すごい世界ですよね。

で、スタジオに現れた裕次郎さんは撮影用のカメラを見るなり「こんなオモチャみたいなので撮れるのかよ?」なんて言うもんだから、現場の空気は一瞬、凍りついちゃった。

映画撮影で使われるのは35ミリフィルムなのに対して、TVドラマは16ミリフィルムですから、カメラも小さくなります。嫌味でも何でもなく、裕次郎さんは純粋に「大丈夫なの?」って思われたんでしょう。

そんな感じで、当初はテレビの現場に対して懐疑的だった裕次郎さん。自らのプロダクションが抱える借金返済の為にやむなく引き受けた仕事ゆえ、契約は1クールのみ。

約束の3ヵ月を消化した時には、裕次郎さん宅に乗り込んだ竜雷太さんが徹夜で説得し、まき子夫人の後押しもあって、なんとか降板を思いとどまってもらったそうです。

そんな風に、主役が2人とも乗り気じゃないままスタートした番組が、やがて爆発的な大ヒットを飛ばし、約15年ものロングランを果たすワケですから、世の中ホントに何がどう転ぶか分かりません。

でも、ショーケンさんが文句タラタラ言いながらも1年間全力で走り続けたのも、裕次郎さんが降板を思いとどまったのも、結局は『太陽にほえろ!』っていう作品そのものに魅力があったからだろうと私は思います。でなきゃ、お2人共あんなに素晴らしい演技は残さないでしょう。

……さて、ボスに促されて配備係から拳銃とホルスターを受け取って来た淳は、なんだか嬉しそう。その様子を見て、初期はクールなプレイボーイ的キャラだった「殿下」=島刑事(小野寺昭)がからかいます。

「よぉ、マカロニウェスタンにこんな格好したヤツいなかったか?」

この時から、早見淳は「マカロニ」と呼ばれるようになりました。横文字のニックネームを持つ新人刑事、その第1号が生まれた瞬間です。恐らく日本初でありましょう。

で、事件は一体いつ起こるんだ?って、皆さん思われてるかも知れませんが、番組開始からまだ10分ぐらいしか経ってませんw ドラマ自体はテンポ良く進んでるんだけど、私の文章が無駄に長いワケですねw

だって、さすがに記念すべき第1話ですから、語りたい事が沢山あり過ぎるワケでして…m(_ _)m 次回は、サクサク行く予定ですw

セクシー画像は言うまでもなく、シンコ役の関根恵子さん。なんと当時17歳!

大映の映画『高校生ブルース』('70)に15歳でいきなり主演デビュー、いきなり大胆ヌード&濡れ場を披露し、一躍注目されて人気女優になられました。

さらに『おさな妻』('70)など「レモンセックス」路線の映画数本に立て続けに主演するも大映が倒産。専属女優だった関根さんが東宝に移籍してすぐのお仕事が、この『太陽にほえろ!』でした。

2年間で『太陽』を卒業されてから何かとスキャンダルが続き、一時は引退状態になったものの、復帰後に高橋伴明監督と結婚されて芸名も「高橋惠子」となり、その後は安定感バツグンのベテラン女優として、現在まで第一線で活躍されてます。

シンコが活躍してた頃、私はまだ小学生のガキンチョでしたから、関根恵子さんの魅力がイマイチ解らなかったんだけど、オッサンになった今見るとメチャクチャ可愛いし、とても17歳とは思えない迸るフェロモンに、萌えますw
 

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3 コメント

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Unknown (ムーミン)
2018-09-08 00:15:53
関根恵子さんは本当に可愛かったですね。当時17歳だったと後で知りました。普通に二十歳越えていたと思ってました。こんな大人っぽい17歳はいません。二の腕も太もももムチムチですね。さてまだ山さんが登場していない(笑)
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>ムーミンさん (ハリソン君)
2018-09-08 11:38:59
ショーケンさんも優作さんも年齢より大人びてるのに、彼らとカップルになっても違和感がない17歳って、本当に凄いと思います。

決して老けて見えるワケじゃないから、やっぱりフェロモンのなせる業なんでしょうね。
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Unknown (適当谷損気)
2021-06-30 12:12:19
一話のアヴァンとOPだけ、動画サイトで見たんですけど、私も「最初こんなんだったんだ」と驚かされましたね。
ちなみに、マカロニにライターを貸してくれた人は、車輌調達(後にカースタントも)を担当していた「マエダオートクラブ」の前田満夫氏だそうです。
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