シリーズ後半、田中麗奈さん扮する“美鳥さん”の登場により、まったく偶然のように見えた4人(多部未華子、今田美桜、松下洸平、神尾楓珠)の出逢いと、4人の持つ価値観(というより抱えてる息苦しさ)の異様な一致ぶりが実は必然だったことが明かされました。
けど、ながら見と倍速視聴が標準化しちゃってる昨今の若い視聴者たちは「(奇跡的な偶然がいっぱい起こりすぎて)こんなのあり得んでしょ!」なんて絶対言ってそう。
丁寧に描けば描くほど、昨今の視聴者には伝わりにくい。具体的な数字は知らないけど「苦戦した」と云われてる視聴率が、そのジレンマを象徴してるように思います。
きっと創り手たちはそれを承知の上で、生方美久さんに賭けたんでしょう。山田太一さんの後を継ぐような脚本家に、この人ならきっとなってくれると信じて。
その通りになるかどうか私には読めないけど、テレビ業界じゃとっくに絶滅したかと思ってた「人を育てる」というスピリットを感じたのが一番の収穫でした。
最初(#01~#04)のレビュー記事で「男女の間に友情は成立するのか」っていうテーマについて、そんなもん「人によりけり」だろうし「どっちでもええわ」って書きましたけど、実質の主人公とも言える“美鳥さん”が最終回でまったく同じことを言ってくれて、笑いましたw
人間関係の悩みなんか全てが「人それぞれ」でほとんどが「実はどうでもいいこと」で、それを象徴するのが男女の友情問題ってことなんでしょう、きっと。
一番大事なのは「自分がどうしたいか」であり、相手が友達であろうが家族であろうが、自分(の価値観や信念)を曲げてまで周りに合わせる必要はまったく無い。
それが人間社会で息苦しさを感じてる我々への(生方さんからの)メッセージなんだと私は解釈しました。ナレーションでもそう言ってたから間違いありませんw
仲野太賀くん扮する多部ちゃんの元親友は、結婚相手(田辺桃子)とお互いけっこう違ってる価値観を合わせることで(今のところは)ラブラブ関係を保ってるように見えました。いやはや何とも、大変ですなあw
私にはそれが出来ない。そんなに我慢してまで家庭を持ちたいとは全く思わない。なのにうっかり結婚して即離婚する羽目になったのは、浮かれて自分の価値観を見失ったから。相手もたぶん同じで、責任はハーフ&ハーフ。
そんな私だから、このドラマにはハマりそうでハマりませんでした。
自分の繊細さや過敏さを持て余してる人、っていう意味じゃ私もあの4人に近いと思うし、実際大いに共感もしたけど、私は彼ら彼女らほど立派な人間じゃない。
あの4人は、これまで相当ムリをして周りに合わせて来たからこそ疲弊してるワケだけど、私はそういう努力をほとんどして来なかった。
唯一、仲間を募って映画を創った時期だけは頑張ったから、なんとか今もギリギリ社会に順応してるけど、あれが無かったらとっくにドロップアウトしてたはず。
あの4人は何だかんだ言ってもコミュニケーション能力が抜群だし、根っから優しいしオシャレだし、私自身を投影するには立派すぎました。私は、私自身をストーリーの中に見つけないと、没頭してドラマや映画を観られない。
ただ、“美鳥さん”のキャラクターが時期によって違ってたのは救いというか、自分にも(たとえば映画を創ってた時期みたいに)また輝ける可能性が無くもない、と思わせてくれました。真っ当に生きてさえいれば。
セクシーショットは多部ちゃんの妹役でレギュラー出演された、乃木坂46の元エース=齋藤飛鳥さん。実写版『映像研には手を出すな!』で主役を務められた方ですね。
とはいえ、『いちばんすきな花』もそうですが、どんどん返しだとか裏切り者だとか(つまり筋運びで遊ぶだけのゲーム)とは無縁の、あくまで人間を描いたドラマですから、ネタバレを気にする必要は無いのですぐ読んで下さいw
今期のドラマはまだ最終回を見れてないですが、途中から見てハマった「セクシー田中さん」がイチオシになりました。
私も決して楽しめなかったワケじゃないんですよ。ずっとムズ痒さは感じたし、特に男どうしのイチャイチャはキツかったけれど、現在ならではのメッセージには心を揺さぶられましたし、まさに山田太一さんを彷彿させるようなセリフの応酬は見応えありました。
それを支えたのが仰るとおり多部ちゃんだったと思います。あて書きだったのはyamarine師匠のブログで知りましたが、さもありなんです。
ドラマは楽しめました。
ボクは好みですw
くどいようなセリフ回しもイヤじゃないし、淡々とした中にキラッと光るものがありました。
連ドラではなかなかできないチャレンジを成し遂げたと思います。
そのために多部ちゃんは必然だったと思うし、年齢関係なくどんな作品でも輝くのはさすがです。