『デカワンコ』#05

　
今回、ワンコ（多部未華子）の相棒となるのは、和田刑事ことチャンコ（石塚英彦）。というよりチャンコが主役で、サポート役をワンコが務める異色作でした。

なぜ、チャンコはいつも仏頂面で笑わないのか？　なぜ、笑わないクセに寄席通いを続け、落語を鑑賞するのか？

その謎が解き明かされるワケですが、満面の笑顔がトレードマークの石塚英彦さんが全く笑わないっていう設定（ギャグ）に、後から理由をこじつけたようなストーリーではありますw

だけど、例えこじつけでも実に良く出来た話で、私が『デカワンコ』で唯一泣かされたエピソードだったりします。


☆FILE.５『前世は犬だった!?』

（2011.2.12.OA／脚本＝伴 一彦／演出＝久保田 充）

チャンコが寄席に通うのは、５年前に横浜のスーパーで起きた強盗殺人事件の犯人（瀬川 亮）が、落語家（柳家花緑）の弟だから。つまり、未だ逃走中の犯人が、兄に会いに来るのをひたすら待ってるワケです。

それにしても、管轄外で起きた事件の犯人を、何故そこまで執念深くチャンコが追ってるのか？　その為に13係の捜査に支障をきたし、辞表まで提出したチャンコを放っておけないワンコは、その真相を探ります。

やがて、５年前の事件発生時に、非番のチャンコが現場に居合わせた事が判明します。しかも犯人は、チャンコの車を奪って逃走した。

チャンコは、自分の不注意が犯人を逃がす結果を招いたことに責任を感じているのか？　それとも、実はチャンコも強盗の仲間で、奪った金の分け前を狙っていたりするのか？

何も語ろうとしないチャンコの口を開かせたのは、今回もやはりワンコの鼻でした。チャンコが「苦手だから」と言っていつも避けてた筈の、犬の匂いを彼の車から嗅ぎ取ったのです。

５年前に強盗犯が奪った末に乗り捨てた、その車の後部座席には、ワンコの愛犬＝パトラッシュと同じトイプードルの匂いが染み着いてる。

「犬、飼ってましたよね？」

隠し続けた事実を見抜かれ、動揺したチャンコは、ついに真相を告白します。そんなに隠す必要も無かった気はしますがw、まぁコワモテの刑事としては気恥ずかしかったんでしょう。

５年前のあの時、チャンコの車には愛犬「シロ」が乗っていた。そう、チャンコはただ、シロを返して欲しかっただけなんですねw

これでワンコの鋭い嗅覚を認めざるを得なくなったチャンコは、人間に生まれ変わる犬を主人公にした落語『元イヌ』を思い出します。

「ワンコ、お前も元イヌなんじゃないか？」

「そうかも知れません」

「シロも、人間に生まれ変わってくれたらいいのにな。そしたら、また会えるからさ……」

「シロちゃんは、人間に生まれ変わったりなんかしません。絶対に生きてます！」

執念の捜査が身を結び、ついに犯人が逮捕されますが、ふてぶてしい犯人はシロを「走ってる車から放り出した」と供述し、その場所については「知るかよ」の一点張り。

その時、ボス（升 毅）がブラインドを指でこじ開けながらw、痺れる台詞を言うんですよね。

「辞表は受理した。お前はもう刑事じゃないから、こいつを殴っても警察不祥事にはならない」

だけどチャンコは、犯人を殴ることはせず、代わりに土下座して頭を下げるのでした。

「教えてくれ。シロを、どこで車から……」

そんなチャンコの背中を見つめる、13係メンバーたちの表情にグッと来ます。

その甲斐あって犯人がシロを棄てた場所は判明しますが、さすがに５年前の匂いを嗅ぎ取ることはワンコでも不可能でした。

ところが！　ワンコから捜査協力を依頼されてた警察犬＝ミハイルが、ひょんな事からシロの匂いを発見します。シロは近所の主婦に拾われ、現在はタロという名で飼われてたのでした。

その主婦を演じるのは、多部ちゃんの次回作『ジウ／警視庁特殊犯捜査係』で先輩刑事に扮する、阿南敦子さん。そしてその幼い息子役が『コドモ警察』のボス＝鈴木 福くんだったりします。

チャンコとシロ、束の間の再会と、二度目の別れ。５年間も愛情を注いでくれた現在の飼い主から、シロを引き離すことは出来ないチャンコなのでした。

下手なドラマだと、ここで大袈裟なBGMを流して無理やり泣かせようとするもんだけど、あくまでコメディである姿勢を崩さない『デカワンコ』はアッサリ演出。多部ちゃんに貰い泣きさせたりもしません。だからこそ、我々視聴者は素直に泣けるんですよね。

この第５話で、完全に私は『デカワンコ』にハマりました。非の打ち所がありません。エクセレント！