☆第69話『初恋への殺意』
(1973.11.9.OA/脚本=鎌田敏夫/監督=児玉 進)
残酷大将=鎌田敏夫さんの恐怖劇場が冒頭から炸裂するエピソードです。
真っ暗な部屋で、男が女をナイフで刺し殺す光景(の写真)がスライド上映され、それを上品な和服姿の女が、泥酔して朦朧となってる少女に無理やり見せている!
しかも、画像では判りにくいですが、少女は両眼を粘着テープで(瞬き出来ないように)固定されている!
「さぁ、見るのよ。あんたのお父さんが、お母さんを刺し殺す姿を!」
女は、総理大臣候補とも言われる有名政治家=森岡(家弓家正)の妻=悦子(稲垣光穂子)で、少女は森岡の浮気相手の娘=京子(沢まき子)。
悦子は書生の福富(松宮五郎)と共謀して京子の母を殺し、それを父親の犯行だと思い込ませる為に、京子を洗脳してるワケです。
現在では(恐らくオウム事件以降)地上波じゃNGなネタかと思われます。それ以前に、ビジュアルがいくら何でも怖すぎますw
悦子の計画通り、京子は「お母さんはお父さんに殺された」と証言し、父親の溺死体が遠く離れた故郷の海で発見され、地元警察は罪悪感による自殺として処理しちゃう。
それを我らが鬼刑事=山さん(露口 茂)が、驚異的な洞察力と執念の捜査で覆し、真相を暴いて行きます。
第49話『そのとき時計は止まった』では、事件の鍵を握る若い家政婦(川口 晶)の孤独な生い立ちに、自分自身の影を見た山さん。そして今回の山さんは、実際に母親を父親に殺された中学時代のクラスメート女子の面影を、京子に見たのでした。
それは山さんの初恋だったワケですが、何もしてあげられないまま、彼女は自殺してしまった。その悔やんでも悔やみきれない想いが、山さんを執念の捜査へと駆り立てたワケです。
一方、真犯人である悦子は、あくまでも夫=森岡をスキャンダルから守る為に浮気相手(京子の母親)を殺したと言うんだけど、本当の動機は別の所にあるんですね。
京子の母親は、実は森岡の初恋の相手だった。野心と打算しか無い政治の世界で、森岡はかつてのピュアな想いに癒しを求めたワケです。
妻の悦子は、それが許せなかった。自分では絶対に与えられないものを持ってる、京子の母親が憎くてたまらなかったんでしょう。
だから、これは「初恋への殺意」なんですよね。
京子を好演した沢まき子さんは、当時18歳。歌手としてスポ根ドラマ『決めろ!フィニッシュ』の主題歌などをリリースされてますが、芸能活動が短かったのか、詳しいプロフィールが見当たりません。
清楚な容貌の裏に潜む残忍さを見事に表現された、悦子役の稲垣光穂子さんは’50年代から息長く活躍された女優さんで、後に自ら劇団を主宰、現在は会社社長を務めておられます。
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