ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#384

2020-08-17 19:19:36 | 刑事ドラマ'70年代










 
☆第384話『命』(1979.12.7.OA/脚本=小川 英&古内一成/監督=櫻井一孝)

ある夜、商事会社で総務課長を務める佐久間という中年男(梅野泰靖)が、建築中のビルの屋上から転落死します。佐久間はその翌朝に友人と釣りに行く約束をしており、自殺とは考えにくく、藤堂チームは事故か他殺の線で捜査を始めます。

ところが、佐久間はノイローゼ気味で3週間も会社を休んでいた事実も判明。その原因はどうやら、学生時代の親友だった不動産会社の社長=黒崎(梅津 栄)に使い物にならない土地を売りつけられ、積み上げて来た財産をほとんど失った事にあるらしい。

調べてみると黒崎のアリバイは曖昧で、現場近くに当夜、黒崎のものらしき車が停まっていたこと、そして屋上で発見されたタバコの吸い殻も彼のものと判明。

佐久間が会社を3週間も休んでいたのは、黒崎の悪徳商法の実態を調べる為だったことも判り、それで弱味を握られた黒崎が佐久間を屋上から突き落とした疑いが濃厚となります。

佐久間と残された家族に同情するスニーカー(山下真司)は、すぐさま黒崎を逮捕せんと息巻くんだけど、先輩刑事たちはあまりに状況証拠が揃い過ぎてることに違和感を抱きます。海千山千の黒崎がそんなヘマをするだろうか?

しかも死んだ佐久間は3週間前に五千万円の生命保険に加入しており、だけど1年以内の自殺は保険金が下りないことから、これは殺人に見せかけた自殺である可能性も浮上。

取り調べに対して黒崎は、電話であの夜、女性に呼び出されて現場に行ったんだと供述します。愛人の友達を名乗ったその女は結局現れず、黒崎は何もしないで現場を去った。すべての謎の鍵は、その女性が握っているに違いない!

それでスニーカーは、佐久間が死んだ場所に献花していた女子高生のことを思い出し、その行方を探します。

するとゴリラみたいな顔をした後輩の吉野巡査(横谷雄二)が、10日ほど前に自殺しそうな女の子がビルの屋上にいるとの通報を受け、自分が駆けつけた時に出会った少女と、その女子高生が「よく似ているであります!」とゴリラみたいな声で叫びます。しかもその時、女子高生は佐久間らしき中年男と一緒にいたという!

「佐久間さんが助けてくれなかったら、私、死んでました」

やっとスニーカーが探し当てた女子高生=良子(柿崎澄子)は、ビルの屋上から飛び降りて死のうとしたところを、佐久間に止められた事実を打ち明けます。

病気で半年間、学校を休んだせいでクラスで浮いてしまったのが原因なんだけど、偶然居合わせた佐久間に本気で叱られ、あんみつをご馳走になった上、文具店で「キミの未来をここに貼るんだよ」とアルバムを買ってもらい、お陰ですっかり立ち直ったと良子は言います。

「あんないい人を殺すなんて、ひどい!」

スニーカーは、ふと疑問に思います。素朴で優しそうで、見るからに正直そうな良子だけど、この事件で死んだのが名前も写真も公開されてない佐久間であることを、彼女はどうして知ったのか?

「刑事さん、犯人はまだ捕まらないんですか?」

「……まだ、ハッキリした証拠が無いんだよ」

「本当に何も無いんですか?」

「そうなんだよ……せめて、現場の屋上に、犯人の遺留品でも落ちてたらバッチリなんだけど……」

「…………」

後ろめたさを背負いながら刑事部屋に戻って来たスニーカーに、ボスが問います。

「電話の女の正体は判ったのか?」

「……その女というのは、高校2年の女の子なんですよ。自殺しようとしたところを佐久間さんに助けられて、今では明るく生きてるんです。俺はそんな女の子を騙して、汚い手を打ちました」

「…………」

「ボス、俺は知りたくないんですよ! その子が何をしたか、そんなこと知りたくないです!」

「真相を知りたくない奴にデカは務まらんぞ」

「!!」

「お前がデカを辞めたいなら無理に引き留めはせん。だがな、今は事件解明のために全力を尽くせ。今のお前は、デカなんだぞ?」

「…………」

そしてその夜、先輩刑事たちと一緒に事件現場を張り込みながら、スニーカーは祈ります。

「来ないでくれ……頼む、来ないでくれ!」

だけど、良子は来てしまいます。屋上に置いといた黒崎のタバコの吸い殻を、もっと見つかり易い場所に置き直すために……

「それをそこに置いたのはキミなんだね?」

スニーカーは心を鬼にして、良子を問い詰めます。

「黒崎に電話をしたのもキミなんだね?」

観念した良子は、生前の佐久間に「からかってやりたいヤツがいるから」恋人の友達を装ってこのビルに呼び出すよう頼まれたことを打ち明けます。

薄々、その相手が佐久間を酷い目に遭わせた人間であることを察した良子は、現場まで様子を見に行った。すると黒崎が待ちくたびれて立ち去った直後、佐久間が屋上から飛び降りてしまった。

「分かったんです、おじさんの計画が……私には生きろって言いながら、自分は死ぬ気だったおじさんの気持ちが……そうするほか、どうしょうもなかったおじさんの気持ちが……」

騙されて財産を失った佐久間は、せめて保険金を家族に残すため、そして黒崎に復讐するために、言わば良子を利用したワケです。

「本当は、今度は私が助けてあげたかった……でも、私に出来ることは、もうそれしか無かったの」

かくして、佐久間の死は自殺であることが確定しました。それはすなわち、家族に保険金が下りないことを意味します。

「すみません、俺が余計なことしたばっかりに」

佐久間の墓前で、スニーカーは残された妻(高田敏江)に謝罪します。

「いいえ、刑事さん。これで良かったんです。息子はこう言ってました。とにかく親父は、一人の娘さんの命を救ったんだって……お金のことより、そういう親父を持った誇りの方がずっと大きいって」

「誇り……そうですか……そうですか!」

いい話だし、スニーカーの切なさも伝わって来るし、誰も逮捕されない異色作で私はけっこう好きなんだけど、こうして文章にしてみると内容が複雑で、やっぱり暗いし、映像で観るほどハートに響いて来ないのが残念です。

映像で観ると感動できるのは多分、良子役の柿崎澄子さんと佐久間役の梅野泰靖さんがとてもハマリ役で素晴らしかったから。お二人とも実に「儚い」んですよね!

柿崎澄子さんは第272話『秘密』でもチョイ役ながら強い印象を残されてるし、私の大好きな大林宣彦監督の映画『転校生』や『さびしんぼう』にも出演され、'78年の特撮ファンタジードラマ『透明ドリちゃん』では主演も務められた実力派。

特撮や時代劇への出演が多く、『太陽~』以外の刑事ドラマは『私鉄沿線97分署』第16話ぐらいしかWikipediaに記されてないけど、子役時代にまだまだ出演されてたかも知れません。

梅野泰靖さんは『太陽~』に限らず刑事ドラマでお馴染みの名優で、後にドック刑事(神田正輝)の父親役としてセミレギュラーにもなられます。

さらに梅津栄さんの悪役ぶりもさすがだし、暗いストーリーの中で吉野巡査=横谷雄二さんの無邪気すぎる演技は良い息抜きになったしw、今回は俳優陣の力量でかなり救われたかも知れません。
 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする