ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

『夜が明ける』

2022-03-06 14:06:42 | 
『夜が明ける』 西加奈子 新潮社
 15歳の時、 高校で「俺」は身長191センチのアキと出会った。普通の家 庭で育った「俺」と、 母親にネグレクトされていた吃音のアキは、 共有できる ことなんて何一つないのに、 互いにかけがえのない存在になっていった。 大学卒業後、 「俺」はテレビ制作会社に就職し、 アキは劇団に所属する。 しかし、 焦がれて飛び込んだ世界は理不尽に満ちていて、 俺たちは少しずつ、 心も身体 も、 壊していった......。
 出版社は、いう。「『 夜が明ける』の主なテーマは現代日本に存在する若者の貧困、 虐待、 過重労働です。 」そう、辛い話。ヘビーだった。
 遠峰は、いう。「私は、誰も恨まない。ずっと笑ってる。負けたくないから」 丸ちゃんの舞台・ヘドウィグアンドアングリーインチのヘドウィグの科白「笑うのは泣かないため」を思い出した。
 「どうして、いつも優しさをもらう側でいないといけないの?」らしさを求める残酷さを感じた。らしさを見て安心して、らしさに裏切られたときに激怒する矛盾。ほどこされる側は、いつも感謝しなくてはいけないのか?
 田沢さんの母子寮の寮長のおばちゃんは、いう。「自己責任や自業自得は、最近、大切な現実を見ないようにするための縦になっている気がする。そんな盾はいらない。みんな、もっと堂々と救いを求めて。そんな言葉は、その人が安心して暮らせるようになってから初めて考えられるんだから。大切な現実って、今、ここに困っている人がいるってことなんですよ」自己責任や自業自得がはびこる世界は、ギスギスしている。その言葉を声高に言うほうは、圧倒的に余裕があるほうなのだ。
 森は、いう。「苦しいときは、がんばる必要はない。苦しかったら助けを求める」真面目な人ほど、できないのだよ。
 「夜が明ける」という題、歯をくいしばる男の表紙絵が決して明るい未来ではないことを示している。でも、声を上げようと。
 
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