日経平均株価が3万円を超えたそうだ。いろんな原因・理由があるそうだが、大きな要因として各国政府の金融緩和があるという。単純化すれば「お金をたくさん刷って世に出している」ということらしい。一方、社会状況としてはコロナ禍での経済低迷・所得減少、国民総生産も数割というレベルで減っているということを考えれば、国(日銀)が増刷したお金の多くは世間に出回って人々が手にすることなく、株価の上昇に使われていることになる。
「株への投資は将来の企業活動と生産を支え、社会全体に恩恵を与える」というのは、「株投資の資金が事業拡大に当てられ、株主は投資額に応じた配当金を得る」という元々の株投資の考え方。しかし、短期間に株を売り買いして利ザヤを稼ぐという「投資」は、元来の企業投資の有り方とは異なる。優良視される株の人気を過熱させ、あるいは少し落ち目の株の価値を急落させることで売り買いの差額を利益に換えるやり方は、人気歌手や人気イベントのチケットを買って高値で売りさばくのと、基本的に変わらない。
その人気株の奪い合いと駆け引きの過熱が、コロナ禍以降の正常化した社会への何かの貢献になるとは思えない。仮に、日銀が刷り増したお金が低所得層からの収奪で回収されるなら、この国の社会構造・社会機能に根本的な打撃になるのではと懸念すら生じる。「刷り増したお金」が所得減少に直面する中・低所得者層に渡り、それによる消費全体の増加がこの株価上昇を招いているなら良いが、まず十中八九そうではない。「アベノミクス」の中でも指摘され続けた「株価上昇と経済実感との乖離」に、新たな矛盾を積み上げた政府は、今後それをどのように解決していくのだろうか。