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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

標高とネズミ

2008-08-06 | フィールドから
・早いもので富良野最終日である。相変わらずの晴天。午前中に3区(930m)に行き,初日の残り分を調査。こちらの反復は生存数が多く,グイマツF1でも120本を越えている。しかし,ネズミの食害は相変わらず多い。本日は5人体制で調査することになったのだが,胸高位置を木材チョークでつける役目がどんどん進み,しばらく一人余ることになった。当方はいったん調査から離れて,写真撮影などをやらせてもらう。



・せっかくなので,この試験地の外観を撮影しようと思い立つ。しかし,いくつかの樹種が植栽されている様子を撮影するには,試験地から離れるために無立木地帯をしばらくさまようしかない。4区に比べればたいしたことはないが,3区周辺のネマガリもなかなかのものである。少々離れてもネマガリの中に隠れてしまって,一向に全体像が把握できない。ということで周りのネマガリを踏みつけて視界を確保。なんとなくではあるが,いくつかの樹種が植栽されている様子が撮影できた。学会などでタイトルバックとして使える絵になるか・・・。




・3区には,標高別のトドマツ相互移植試験地も併設されている。よく考えてみると,この区はじっくりと観察していなかったので,しげしげと眺めてみる。高標高産の針葉をみると,たしかに自己被陰の度合いが高いような・・・。標高に対する適応のプロセスを調べるには,やはり,葉密度やSLAなどのパラメータを取る必要がある。しかし,この区では球果がなるにはかなりの時間がかかりそうである。



・この標高になると,トドマツの生存率も成長も全体的に悪いわけだが,ふと見てみるとネズミにかじられた痕がある。今まで、3区と4区のトドマツの生存率の低さに目を奪われてきたわけだが、これは寒さの耐性の問題だけではなく、実はネズミによる食害が大きく関与しているような気がしてきた。つまり、いくらなんでも死亡率が高すぎるのではないかと思う。実は、高標高のネマガリの中でネズミの生息密度が極端に高く,ネズミの食害によってトドマツが大部分枯れた,というのが真相ではないかと思えてきた。一方,エゾマツやアカエゾマツはネズミにかじられる確率が低いらしく,それでこれほどまでに生存しているのかも。



・もしかすると自然状態で,トドマツが標高の比較的低いところに多く,エゾマツが高いところに多いのは,ネズミが標高の高いところに多く,トドマツの方がネズミにかじられやすいということだけで説明できちゃったり・・・はしないだろうが,カラマツの交雑育種で行われたような摂食実験などをやってみるのも面白いような気もする。



・最後に再び5名体制で数本が残存しているグイマツ調査を行い,3区は完了。3区全体では1000本に少し満たない本数だったが,全個体にNoテープが打たれているのを見ると,ついにやったかという実感がある。まだまだゴールは先だが,やっぱりフィールドは充実感が違う。