MATTのひとりごと

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Lahaina Lunaの謎 (2021年2月5日)

2021年02月05日 | ハワイアン音楽

この記事はハワイアン・ファン誌147号(2021年2月発行)に掲載された記事を補足修正したものです。本文の左ページ右ページの拡大もあります。



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1966年12月3日にわずか34年の生涯を閉じたシンガー・ソング・ライターのクイ・リー

はその短いミュージシャン生活の中で「アイル・リメンバー・ユー」「ラハイナルナ」「ワン・パドル、トゥー・パドル」ほか数多くの曲をつくり、自分で歌う傍らドン・ホーをはじめ数多くの歌手たちに提供してきました。

彼の作品には自身の解説を加える時間の余裕がなかったこともありますが、いろいろと気になる点も見受けられます。

Lahaina Luna、Lahainalunaのどちらが正しいのでしょう

彼の作曲した「ラハイナルナ」は一曲だけの楽譜(Sheet Musicと言います)


はもちろんのこと「ワン・パドル、トゥー・パドル」などの作品13曲とともに彼の作品集「ミュージック・オブ・ニュー・ハワイ」(ロサンゼルスのサンビーム・ミュージック社刊)


にも収録されています。

そしてこれらの出版物での曲名はいずれも「Lahaina Luna」と表記されています。

一方、ハワイアン音楽の歌詞を集めたインターネットのサイト「Huapala (別名Hawaiian Music and Hula Archives)」でも「Lahaina Luna」


となっていますので、この曲を歌ったり演奏したりされるミュージシャンもこの曲のタイトルは当然ながら「Lahaina Luna」と表示しています。

 でも、彼自身の手書きの楽譜のタイトルはすべて大文字で書かれていても、最初の「L」だけが大きく「LAHAINALUNA」と切れ目なく書かれていることがわかります。


この「Lahainaluna」と「Lahaina Luna」のどちらが正しいのかを調べてみました。順当に考えると「出版されたもの」のほうが正しいと思えます。出版されたときにクイ・リー本人がまだ生存していたのですから、訂正しようと思えば十分に修正できた筈です。

 ところで「Lahaina Luna」の「Luna」とは「高い」「上のほう」「上側」「~の上」などをあらわす単語であって、それ自体が地名のような固有名詞をあらわしてはいないので、もしLunaが地名ではないのであればLahaina Lunaと右側のLを大文字で表すのは適当ではないと思います。

 日本の地名と比較してみた場合、例えば「上目黒」の「上」がこの「luna」に相当すると考えてもよいのではないでしょうか。

目黒の地図を例に取れば「目黒」と上目黒」は別の場所を指していますが、LahainaとLahainalunaもやはり別の場所を指しているのです。



海岸の町ラハイナに対し、山のほうにある「ラハイナルナ」すなわち「上ラハイナ」は別の地域をあらわし、クイ・リーはその両方の地域をマウイ島の代表としてとりあげて「Maui nō ka `oi」すなわち「マウイは最高!」と歌っているのです。

作者の存命中に著作権登録され、出版された楽譜に「Lahaina Luna」とあるので作者が「Lahaina Luna」という表記を容認したのか、その年に亡くなりましたので修正の余力がなかったのかまでは分かりません。

クイ・リーの歌声に惚れ込み、彼の最後の歌声を録音するなど彼の才能を高く評価したレコード会社「ミュージック・オブ・ポリネジア」の経営者ジャック・デ・メロは二つのアルバム「The World of Kui Lee」


および「Jack de Mello Remembers Kui Lee」


をクイ・リーの死後にリリースいたしました。そしてこのふたつのアルバムに収録されているこの曲のタイトルも「Lahainaluna」と表記されています。

 さらにクイ・リーがまだ元気だったころの1963年にドン・ホーが中心となってリリースされた「Waikiki Swings」



にはクイ・リーと奥さんのナニ・リーも歌手として参加していて、そのアルバムでアルヴァンがこの曲を歌っていてやはりタイトルは「Lahainaluna」となっています。

 余談ですが、この歌手アルヴァン


はその後コアロハ・ウクレレを創業したアルヴィン・オカミのステージ・ネームでした。

 上記のHuapalaから引用した歌詞に「© 1966 Sunbeam Music Corp」とあるので彼がこの曲を亡くなった年である1966年に作ったと思われ勝ちですが、この1966というのは著作権登録した年を指すのであって作曲した年ではないのです。その証拠に上記Waikiki Swingsという1963年にリリースされたアルバムで歌われていますので少なくとも1963年には作られていたことがわかります。

「I’ll Remember You」と「One Paddle, Two Paddle」の深いつながり
 
(これも余談ですが、「One Paddle, Two Paddle」を書いていたところ、コンピューターがご親切にも「Two Paddleは複数なのでTwo Paddlesが正しい」と忠告してくださいました、ありがたいことです。)

 クイ・リーはニューヨークのレキシントン・ホテルをはじめ各地でミュージシャンとして10年近く活躍していましたが、故郷のハワイへ戻りたいという想いはつのるばかりで、その気持ちを込めて作った曲が「I’ll Remember You」だったのです。

私の「ハワイアン音楽快読本」


でも触れましたが、この曲はアンディー・ウィリアムスを始めトニー・ベネット、エルビス・プレスリーなど数多くのポピュラー歌手たちが「ラブ・ソング」として歌っています。そしてこの曲は歌詞のなかに「ハワイ」につながる単語は一切登場していないのです。しかしクイ・リー本人が親友のオータサンに語ったところによると、「You」はハワイそのものを指しているとのことで、いかに彼がハワイに思いを寄せていたかを曲で表したとのことでした。

 そして約10年にわたる米本土での演奏活動を終えてハワイに戻れることが決まったときに作ったのが「One Paddle, Two Paddle」


であり、歌詞にあるようにカヌーの一漕ぎ、二漕ぎが長いことハワイを離れていた自分をハワイに連れて行ってくれる喜びを表しています。

クイ・リーが亡くなったとき、彼の遺言で彼の遺体はハワイの海に葬られましたが、このときには遺体と90名の参列者を乗せたカタマランを9艘のカヌーが囲み「One Paddle, Two Paddle」を演奏して彼を送ったそうです。

 最後に疑問がひとつあります、この曲の歌詞に「Fourteen on the right, fourteen on the left・・・」とありますが、片側だけ十四漕ぎを連続したらカヌーは直進しないのではないでしょうか。

カヌーの漕ぎかたをご存じのかたが居られたらぜひ教えていただきたいのですが。

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3 コメント

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Unknown (マハロパパ)
2021-06-16 09:36:40
カヌーはハワイで良く見かける6人乗りのアウトリガーカヌーですね。私の経験では、大体10回くらいかいて、リーダーの掛け声で右/左を交換してました。上手だと14回くらいかくのでしょうかね?私も早くハワイに行きたいものです♪
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Unknown (マハロパパ)
2021-06-16 12:39:07
追伸
6人乗りだと、先頭が右漕ぎ、2人目は左漕ぎ・・・となるので、そのままでも直進するのですが、漕き手が疲れてしまうので、時々左右を入れ替えるのです。それが、14回ごとに入れ替えるのでしょうね。
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マハロパパさん (MATT)
2021-06-16 19:23:19
貴重な情報ありがとうございます。

なるほど、アウトリガーカヌーでしたらもともと直進性に優れているので片側だけを連続して漕いでも簡単に進行方向が曲がることはないのでしょうね。

その上ひと漕ぎごとにパドルを右・左と切り替える漕ぎ方をするとすぐに疲れてしまうでしょうし・・・

ありがとうございます、すっきりしました!

これからも情報をよろしくお願いいたしますね。
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