一平のペンとギター

僕らしい小説を書き、僕らしい歌をうたう、ぞ♪、ペンとギターの一平です。ギター弾き語りと小説書きの二刀流。

「雪」

2013-01-14 23:01:12 | Weblog

 

 

 

       「あ! ゆき、だ」

     の声で、目が覚めた。

     ベッドから抜け出して、書斎の窓を開けた。

 

        

 

        窓を開け放ち、降りしきる雪を眺めた。

 

   

      ボタンの花のような雪が舞う。 

   みるみるうちに、積もる。風景のなかの白さが厚みを帯びて来る。

   窓から、ひらり、ひらり、牡丹雪が飛び込んでくる。

   机の上で、着地した牡丹雪が、ぽたっ、ぽたっ、ゆっくり溶ける。

   やがて、机の上が、濡れた。

   それでも、黙って、降りしきる雪を眺めた。

 

   隣の家の屋根越しに、桜林がある。

   枯れ枝に雪が積もる。

   初春、桜が咲き始めた姿、に似ている。

     雪桜。                              

 

      

 

      少年の頃―8才から13才まで― 

   雪の深い北海道の鉱山で育った僕は、馴染み深い景色だ。

     青年のころから、今日まで、横浜育ち。

   

    20代・30代・40代の僕は、大雪が降ると、

   犬っころみたいに、ワクワクドキドキ、したものだ。

   体のなかの、血が騒ぐのだ。 

   降れば降るほど、積もれば積もるほど、

   雪の中に飛び込んで行きたくなる衝動に駆られた。

   降りしきる雪の中に、身を置きたくなった。

   少年の僕になって。

    

    ある冬、3,4日、雪が降り続いた。

   錆び付いたスキーを取り出して、

   家から、スキーを履いて、行けるところまで行った。

    坂を上り、坂をくだりして、気づいたら、横浜駅近くまで来ていたっけ。

   

     しかし、50代・60代になると、 血が騒がなくなった。

   雪の中に飛び込みたい衝動は、かすかに思い出されるのだが、・・・・・。

     なぜだか、わからん。

   あの、ワクワクドキドキ、が起きない。

   なつかしい、遠い、思い出になった。

     

     「雪」は僕にとって、恋人、にちかい。

   雪と、どれだけ、戯れたか。美しさに、魅了されたか。

        しかし、また、

    「雪」は僕にとって、恐ろしい殺人者 でもある。 

   12才の時、友の命を奪った雪崩。

 

    今朝、積もった雪を、書斎から眺めて、

   ふと、雪の中に、身を置きたくなった。

    で、 出かけた。

   歩いて、20分ほどのところにある、銭湯ー露天風呂ーヘ。「満天の湯」。

 

      雪道を歩いて出かけた。

    

             

 

           

 

 

           

 

 

           

 

 

              

  

        

             牡丹雪が舞う、露天風呂の湯に浸かった。

        67才にもなると、こういうことになるのか。

        3,4日、雪が降り続いて、雪が積もったら、

        僕は、スキーを取り出して、また、出かけるだろうか?

             露天風呂、だろうか。

        でも、その状況に置かれてみないと、わからない、な。

 

             今朝、雪を眺めながら、筆で書いた「書」ふたつ。

         

       「 が降る音、って、

         なんて、

      静か、なんだ・・

 

        「は、ザーっ

     は、ピューっ。 

      雪は、しんしん。」

 

 

           

                            おわり

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