場末の雑文置き場

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実写版「アラジン」は世襲制肯定の物語

2021年05月30日 | 映画・ドラマ

評判を聞いてなんとなく嫌な予感はしていたんだけど、この間テレビで放送されていたので実写版「アラジン」を観てみた。
映像は豪華だし曲もいいので、頭を空っぽにすれば楽しめる。でもやはりいろいろとモヤモヤする点があった。

残念ながら細かく指摘できるほどの知識は私にはないけど、アラブとインドごちゃまぜの世界観で、モデルにした文化に対する敬意が足りないという指摘はよくされている。架空の町設定とは言え一応アラブが舞台っぽいのにお城がタージ・マハル風だったりとかな。
エキストラに肌を濃く塗った白人を使っていたらしいという話も聞いた。これはわかりやすくダメなやつ。

ジャスミンのキャスティングもちょっとな。アラブ系ではなくインド系で、しかも半分白人。映画版「クレイジー・リッチ・アジアンズ」のときもそうだったけど、ハリウッドって基本的に白人を出せない映画で半分白人の俳優をメインの役どころでキャスティングするという悪あがきをするな。

でも一番気になったのは雑なフェミニズム。フェミニズムは悪くないんだよ。でも、「こうしときゃフェミニストは喜ぶんだろ」的に入れた雑なフェミニズムは好きじゃない。

同じジャスミンが王になる改変をするにしても、親父から「女だから駄目」と言われるような余計な描写は入れずにすんなり後を継げる展開ならモヤモヤしなかった。
女だから抑圧されていて王になれないという現状にはもの申す。でもその一方で、自分に都合のいい世襲問題に関しては疑問を持っていないどころか当然だと思っている。しかもパンの買い方すら知らないくせに自分は勉強していて能力があると言い張る。こんな人を「強い女性、自立した女性」と肯定的に評価している人と自分は相容れないなと思う。

民のためを思っている、っていうのも口先だけで説得力がないような。庶民が食べる物にも困るほどの貧困に喘いでいるのに自分は一時間ごとに豪華なお召し物に着替えられることに思いを馳せている様子もないし(尺の問題もあるだろうが)。

だからこの映画で描かれている「フェミニズム」って人権思想、平等思想としてのフェミニズムじゃないんだよな。一見フェミニズムっぽい別のなにかって感じがする。ジャスミンの改変でいいと思ったのは肌の露出を減らしたことくらいかな。

ジャファーの改変は割と好みだった。王になりたいと願っているところと、自分の属性のせいで抑圧されていると感じているところがジャスミンと全く同じで。ジャスミンはそれが性別によるもので、ジャファーは生まれつきの身分によるものという違いがあるだけ。
ジャファーは多分有能で、低い身分からものすごく努力して這い上がってきた。でもジャファーの願いはジャスミンと違って聞き届けられることなく敗北していく。このジャファーの存在があったから世襲制肯定という‌印象がより強くなったのかもしれない。
やたらと戦争したがったりとか、ジャファーの持つ国のビジョンにはだいぶ問題はあったけど、ジャファーがあんな風に歪んでしまったのはジャスミンの父親の責任が大きかったのではないかと思って少し同情してしまう。


→女性天皇というまやかし


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