口蹄疫、感染拡大防止のために殺処分と埋却の間にすべきこと?

2010-06-12 08:28:41 | Weblog

 口蹄疫の感染拡大が止まらない。《宮崎 県東部で新たな感染疑い》NHK/10年6月11日 19時36分)

 これまで感染確認がなかった宮崎県都城市や宮崎市、日向市で9日から10日にかけて感染の疑いのある家畜が見つかった上、10日、県東部の川南町と西都市のあわせて2か所の農場の牛に涎などの口蹄疫に特徴的な症状が発生、宮崎県などは写真を見て、11日、口蹄疫に感染している疑いがあると判断し、同じ農場などで飼育されている牛すべてを直ちに処分することになったという。

 6月11日付の「毎日jp」記事――《クローズアップ2010:宮崎口蹄疫 封じ込め失敗か 消毒徹底「物流を制限」》が〈農水省は9日、都道府県に対し、口蹄疫の症状がある家畜を確認した場合、遺伝子検査を待たずに写真で感染疑いと判断できれば、24時間以内に殺処分することを求める通知を出した。殺処分までの時間を1日程度短縮できるからだ。〉と書いているから、正式の検体検査を待たない写真判定による殺処分を決めたのだろう。

 2カ所の農場の牛は感染拡大を防ぐためのワクチンを接種していたという。記事は宮崎県内で感染の疑いのある家畜が見つかった農場は合計で287ヶ所にのぼると書いている。

 感染拡大の原因を山田農林水産副大臣(現農林水産大臣)自身が5月25日の時点で埋却処分の遅れだと述べている。《口蹄疫の感染爆発は「埋却地の確保の遅れが一番の原因」―山田農林水産副大臣》全酪新報/2010年6月1日)

 5月25日の衆議院農林水産委員会での答弁の中で述べた発言だそうだ。

 山田「埋却処分できず豚が何万頭も放置されてしまった。この事実が拡大を爆発させたことになるのではないか。豚1頭、半日で1万頭の豚を感染させるウイルスを発散していると言われている。なぜ埋却できなかったのか大きな問題だが、埋却地がなかった」

 記事は、〈殺処分の頭数に見合う埋却地の確保の遅れが感染爆発の最大の理由と指摘した。〉発言だと解説している。

 但し、山田副大臣の指摘よりも約2週間前の5月12日に生産者が既に指摘していた事実だと記事は書いている。

 〈埋却の遅れが感染拡大を招いているとの指摘は早い段階から生産者が指摘していた。5月12日の民主党の会合でも「埋却できず発症した豚がそのままおり、1日も早く埋却地を探して処理してほしい。自分たちの豚が周りに感染させていると言われるのが非常につらい」(志澤勝日本養豚協会長)と要請していた。〉

 現地での感染経路の調査の状況についての山田副大臣の発言を記事は最後に伝えている。

 山田「空気感染の可能性も言われているが、(人、物の)接触による感染だと思っている。各発生農家で10日前まで、どういう人と接触したのか、外国から来たものかどうかも含めて詳しい調査を専門家にやっていただく」――

 6月6日放送の「NHK総合テレビ」《クローズアップ現代『検証・口蹄疫』》も、感染拡大を防ぐには3日以内に処分すべきだと言われているが、感染が広がるにつれて処分にかかる日数が増えていったことが拡大原因の一つだと指摘している。

 《止まらぬ感染拡大、未処理3万頭「火薬庫だ」》YOMIURI ONLINE/2010年6月11日)にしても、〈蔓延の背景には、埋却地や人手不足による処理の遅れもある。〉とした上で、特に豚の処理の遅れが大きな原因だとしている。

 川南町周辺などで感染したとされて殺処分対象になった約19万頭のうち、6月9日時点で殺処分も埋却もされずに3万1820頭が残っていて、〈そのうち約1万7000頭が豚。豚はウイルスを体内で増殖させやすく、牛の100~1000倍も拡散させやすいとされており、「いわばウイルスの火薬庫を放置している状態」(農水省幹部)だ。〉と豚未処理の極めて高い危険性を伝えている。

 「ウイルスの火薬庫を放置している状態」とは山田農水副大臣が言っていた、「豚1頭、半日で1万頭の豚を感染させるウイルスを発散していると言われている」に当たる指摘であろう。

 埋却が進まないから、殺処分にまわすことができない。自ら息絶えた家畜を片付けることもできない。結果、〈畜舎の床一面に剥()がれた豚の爪が無数に散らばっていた。蹄(ひづめ)を傷めた親豚が何度も立とうとしては崩れ、横には息絶えた子豚たちが折り重なっている。〉と記事が描写している悲惨な状況を放置せざるを得ない。 

 そしてこの放置がウイルスを拡散し、新たな感染を拡大させる悪循環に陥っている。

 飼主の宮崎県川南町で30年以上養豚業を営む男性(52)「こんな状態で生かしておいてもつらいだけ。いっそ早く殺してやりたいが、埋める場所もなく身動きがとれない」――

 記事は他にも、宮崎県が10年前の2000年3月に国内では92年ぶりとなる口蹄疫に見舞われたときの対策と今回の対策を比較して、その不徹底を指摘している。

 10年前の発生初日に設置した通行車両の消毒ポイントは13か所。今回は4か所。前回は家畜の移動制限区域を20キロ圏内、搬出制限区域を50キロ圏に設定、今回はそれぞれ10キロ圏内、20キロ圏と大幅に縮小したことなど、前回の殺処分を3農家35頭にとどめた封じ込め成功の経験が今回の危機管理の手ぬるさ、対策規模の縮小につながったニュアンスで記事は伝えている。

 さらに、感染が分かった4月下旬に感染の飛び火を恐れて県内外では様々なイベントの自粛が始まったこと。こうした動きに県の渡辺亮一商工観光労働部長が4月28日の対策本部会議の席上、「ちょっと過剰な反応なのかな、とも思います」と逆に自粛にブレーキをかける動きに出たこと。県が非常事態宣言で県民に活動の自粛を求めたのはそれから3週間後のことだったこと。

 農水省や県が、「今回のウイルスの感染力が10年前に比べて格段に強かった」としていることに対して、前回の封じ込め成功の経験が感染拡大を招いたとする、口蹄疫問題の対策などを決めてきた同省の牛豚等疾病小委員会委員の発言、「甘かった。10年前はうまくいったという自信が、失敗の始まりだった」を伝えて記事を締めくくっている。

 テレビや新聞が伝える、重機でちょっとしたビル建設の基礎程度の広さと深さの穴を十何万頭も埋却可能とするために何箇所も掘っていく、その時間の長さと手間のかかり、さらに埋却地不足が感染拡大に追いつかない状況をつくっている埋却終了までの気の遠さに、埋却が最終処理方法だとしても、そこに至るまでの過程でウイルスを飛散させない方法はないものだろうかと悪い頭で考えた。

 悪い頭で考えたことだから、効果の程はいたって不明だが、住宅建設で壁の中に埋め込む冷暖房材に以前は綿状のマット状態にした幅50センチ程度、長さ1.8メートル程度のガラスウールを埋め込んでいたが、現在はドロドロの発泡剤を吹き付けて、それを凝固させて冷暖房材とする方法を取る場合があるが、庭や空き地に例え野積みにしておいてもウイルスが外に洩れないよう、早い段階で固まる何らかの樹脂を家畜の全身を隈なくくるむように吹き付ける方法はどうだろうか。

 もし有効なら、重機で穴を掘削して埋めるまで殺処分した家畜はウイルスを拡散させない方法で放置しておくことができる。

 インターネットで調べたところ、「超速硬化ポリウレタン樹脂吹付塗膜防水材」を宣伝するHPに出会った。

 〈工法の特長

・コンピューター管理の専用吹付け機械での施工による、配合ブレ等の問題をなくし季節を問わず安定した
 物性を発現。
・無溶剤の吹付けウレタンを使用することで安全な作業環境を提供。
・吹付け塗布後、瞬時に硬化するためダレる事が無く平面・立面共に均一な塗膜厚管理が可能。
・養生期間が短時間で済むため、工期短縮が可能。
・耐磨耗性に優れコンクリートの5倍以上。
・接着力が非常に強くシームレスな防水層を形成するため、高い防水性を実現。

 吹きつけ自体はコンピューター制御ではなくても、圧力の強いコンプレッサーを1台か2台、車の荷台に乗せて移動可能とし、そこに消火ホースと同程度の口径のホースをつけるだけで、あとは吹き付け用の樹脂を積み込んだタンクローリーと行動を共にすれば済む。

 消防車を代用しても可能かもしれない。

 問題はあくまでも樹脂を塗布したあと、早い時間に乾くこと、その膜がウイルスを飛散しないだけの気密性を持って一定期間破れることない強度を確保できるかどうかにかかっている。

 まあ、悪い頭で考えたことだから、当てにはならないし、誰にも届かない提案で終わるだろうが、一応は専門家の意見を聞いてみるだけの価値はあるのではないだろうか。
 
 最後にNHKのHPに載っていた6月6日放送の《クローズアップ現代『検証・口蹄疫』》の7分程度の動画を文字化してみた。参考までに――
 

 最初に番組の案内。

 クローズアップ現代『検証・口蹄疫』(NHK/2010年6月7日)

 〈宮崎県で大規模な感染が広がっている家畜伝染病「口てい疫」。近隣の台湾や韓国をはじめ、イギリス、アフリカなど世界各地で以前から被害が起きている。対応が遅れた台湾では、主要産業の畜産業に壊滅的な打撃を与えた。2001年に「世界最大の被害」を出したイギリスでは、その教訓から、口てい疫の疑いが生じると、即、「国家の危機」として対応することにした。2007年に被害が出たときは、感染発覚から2日で処分をはじめ、あわせて補償ををおこなうなど、様々な対策が立てられた。こうした各国の教訓を、未だ感染拡大が収まらない日本で、どういかしていけばいいのか。世界に広がる口てい疫の衝撃、日本の現場での被害の広がりを最新報告する。〉

 感染拡大の原因の一つは初動の遅れ。感染力の強い口蹄疫の検査は安全確保のため、日本では動物衛生研究所(東京都・小平市)のみで行っている。宮崎からここに検体が送られるまで10日かかった。

 対応の手順を示した国の指針――

 『口蹄疫に関する動物家畜伝染病防疫指針』

 農家か獣医師が先ず口蹄疫を疑った場合は、都道府県の家畜保健衛生所に通報するとしている。家畜保健衛生所は農家に出向いて、家畜を検査、口蹄疫でないと判断した場合は検体を持ち帰り、別の病気の検査を行う。

 少しでも口蹄疫の疑いがある場合は、検体を動物衛生研究所に送る。動物衛生研究所に検体を送らなければ、口蹄疫は発見できない仕組みとなっている。

 最初の異変は4月9日。宮崎県都農町。農家から獣医師に一本の電話が入った。

 「熱があり、涎をたらしている牛がいる」

 獣医師は農家に出向き、牛の舌と唇に3ミリ程の皮が剥がれた部分を発見、口蹄疫が頭をよぎり、すぐに家畜保健衛生所に連絡。

 獣医師の証言「その牛を見た瞬間にちょっとドキッとして、家畜保健衛生所に連絡をして、まあ、これこれ、こういう牛がいるんですけれども、まさか口蹄疫じゃないとは思うんですけれども、私の行動は今後どうすればいいでしょうか・・・・」

 一時間半後、宮崎家畜保健衛生所の職員がかけつける。

 そのときの写真を映す。

 涎などの口蹄疫に似た症状はあるが、特徴的な水泡が見当たらないとして、口蹄疫の可能性を否定。

 家畜衛生保健所検査課溝部純三課長「口の中とか蹄(ひづめ)とか、できるんですよ。全部確認したんですけども、水疱は確認できなかったですね。口蹄疫の疑いは薄いだろうと、いうことで――」

 ところがその1週間後の4月16日に今度は別の2頭に同じ症状が現れる。しかし家畜保健衛生所はここでも口蹄疫ではないと判断。

 宮崎では10年前(2000年)口蹄疫を経験。このときは同じ牛舎で10頭中9頭に症状が出ていた。今回は2週間で2頭だけ。前回とは違うと考えた。

 翌4月17日、口や舌に症状が出る。他の病気を疑い、検査を行う。3日かけて行った検査はすべて陰性。原因が分からなかったため、19日夜になって検体を動物衛生研究所に送る。異変から10日経過。翌日の20日午前4時半、口蹄疫と判明。

 (口蹄疫の可能性を疑って、夜を徹して検査したに違いない。これが危機管理)

 家畜の伝染業病対策の専門家は現在の通報の仕組みでは口蹄疫かどうか素早く判断するのは難しいと指摘。

 (だろうか。危機管理とは最悪のケースを疑うことから出発する。万が一を疑って、検体を動物衛生研究所に送るべきだった。口蹄疫でなかったら、それに越したことはないのだから。家畜保健衛生所の職員が疑わなかったのは、親の虐待の通報や兆候を把握していながら、積極的な関与をせず、子どもを死なせてしまう児童相談所の対応と同列。)

 東京農工大教授・白井淳資「判断とか間違うと、早期発見につながらない。そこでよりよい判断をしてほしいが、やはり家畜保健衛生所だけに責任を押し付けてしまうと、それは物凄く負担も大きいし、大変なことだと思うし、国の方が積極的に関わりを持って家畜保健衛生所を応援するような方策を講じて欲しい」

 (システムだけの問題ではない。意識の問題。)

 処分の段階でも想定を上回る時間がかかる。家畜の処分は原則として農家自身が行う。それを県が積極的に協力することが国の指針で決められている。宮崎県は家畜の処分を行うために職員を派遣、職員は普段家畜の扱いになれていないために処分に手間取る。感染拡大を防ぐためには3日以内に処分すべきだといわれている。感染が広がるにつれ、性分にかかる日数が増えていく。

      殺処分対象  処分日数
 1例目 ―― 16頭 ―― 1日間
 2例目 ―― 68頭 ―― 3日間
 3例目 ―― 118頭 ―― 4日間
 4例目 ―― 64頭 ―― 5日間
 5例目 ―― 75頭 ―― 6日間
  ・
  ・
  ・
 8例目 ―― 1019頭 ――8日間 

 岩崎充祐家畜防疫対策監「例えば防護服の着る、着脱とかですね、そういうことはもう十分訓練してきたとは思うんですね。ただ、家畜に慣れていないみなさん方ですので、どうしても作業上(作業場?)では手間取った、ということはしています」

 解説「感染が徐々に拡大する中、事態を収める有効な方策を打ち出せずにいた」

 感染の判明から8日後の4月28日、牛豚等疾病小委員会。農林水産課で専門家の会議が開かれた。出された結論は「迅速且つ適切な防疫対策が行われている」

 これまでの対策を評価するものだった。

 ところが口蹄疫の感染は急速に拡大。直ちに処分が必要な家畜は18万頭を超え、国内では最悪の事態となった。

 赤松農水相(当時)「残念ながら、あのー、数そのものは、なかなか、あのー、抑え込む、というところまでいっていないと、いうことになって、本当にその点については申し訳ないと思っております」

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亀井静香のご都合主義に発した郵政改革法案成立への拘りと連立離脱意志

2010-06-11 07:22:57 | Weblog

 6月4日の菅直人の首相指名後、民主党、国民新党共、ほぼ会期延長を共同歩調で打ち出していたが、各メディアの世論調査が内閣支持率・民主党支持率共に急回復を打ち出してくると、参院民主党側からの圧力もあって、民主党は参院選挙が先だの姿勢に転じ、対して国民新党は郵政改革法案の成立が先だと譲らず、今国会の成立が見送られた場合、連立離脱もあり得ると強硬姿勢へと転換。

 国民新党が連立離脱を人質に取るなら、離脱した場合は、元々閣僚の中には郵便貯金預入限度額現行1000万円から2000万円、簡保生命保険の契約限度額現行1300万円から2500万円に反対していたのだから、法案は大幅修正を人質に取ればいいと思っていたら、政府・民主党が会期延長せず、参院選を予定通り6月24日公示の7月11日投開票で行う方針を決めると、11日未明に亀井静香郵政改革・金融相が今国会での郵政改革法案の成立が見送られたことに抗議、閣僚の辞任を表明した。

 但し連立は離脱せず。連立離脱もありの威しを不発に終わらせざるを得なかったから、体裁を整える必要上、閣僚辞任を身代わりの生贄に差し出さざるを得なかったのだろう。

 連立を離脱しないまま終わらせたなら、あの威しは何だったのかと格好がつかなくなる。言い出し損で終わったわけである。

 最初、亀井静香は連立離脱の姿勢を隠していた。6月9日、郵政改革法案の今国会成立が見送られた場合の国民新党の連立離脱の可能性を問われてどう答えたか、《亀井氏、郵政法案先送り論牽制 「公党間の約束から逃げるなら立候補の資格なし」》MSN産経/2010.6.9 10:18)が伝えている。

 亀井静香「私の頭の中には0.1%もない。そういう(成立しない)事態は起きない。菅(直人首相)さんとじっくり話をしてある」

 「0.1%も」連立離脱は考えていないとした。

 但し、〈参院選の早期実施のために国会会期を延長せず、郵政改革法案の成立も先送りすべきだとの声が民主党内で強まっていることについて〉は次のように一刀両断している。

 「公党間で約束している法案をやった上で信を問うのは当たり前だ。そこから逃げ出して、『支持率が高いうちに選挙をやっちゃえ』なんて考える人は立候補する資格はない」
 
 亀井静香には似合わない、なかなか立派な一刀両断となっている。だが、政治は数であることを無視した、郵政改革法案早期成立の自身の都合だけを考えたご都合主義の発言に過ぎない。例えそれが連立という形であっても、数を確保しないことには自分たちの政治を実現させることはできない。

 衆参併せて9人かそこらの弱小政党である国民新党が自分色に染めた郵政改革法案を国会に通すことができるもできないも民主党の衆参併せて400を越える数があるからこそで、数の関係に目をつぶった一刀両断でしかない。

 全体的な数の確保は支持率が保証する変数に過ぎない。当然、「支持率が高いうちに選挙をやっちゃえ」となる。議員個人にしても、数の一人となるためには当選を絶対前提としなければならない。政治家として日々活動するためのそもそもの関門となっている。

 いわば当選を出発点として数を成り立たせることができ、政治は成り立たせた数の勢力に応じる。

 小沢一郎はそのことを百も承知していた。選挙の鬼と化したのはそのためであろう。

 亀井静香が「菅(直人首相)さんとじっくり話をしてある」とは、両代表間で話し合って合意文書に纏め上げたことなのは新聞・テレビが伝えているが、《どうなる郵政法案 国会会期・参院選日程に翻弄》MSN産経/2010.6.10 01:00)も、そのことを伝えている。

 〈国民新党が「1丁目1番地」とこだわる郵政改革法案。昨秋の連立合意に盛り込まれ、菅直人首相も4日、国民新党の亀井静香代表と「今国会で速やかな成立を期す」とする連立合意を改めて交わした。〉――

 6月9日に連立離脱は「私の頭の中には0.1%もない」と言っていた亀井静香だが、この記事では〈亀井氏も9日朝からこう吠(ほ)えた。〉として、連立離脱意志も露(あらわ)な発言を伝えている。

 亀井「土日も夜中も審議すればいい。会期延長という手だってある。『支持率が高くなったから選挙をやっちゃえ』なんて政治家は立候補しなさんな。日本をまともにする一点が抜けたら一緒にやってる意味がない!」――

 最初の「MSN産経」と発言内容が重なるが、最初の記事は「6月9日」の日付で、ここは「9日朝」となっている。後先の発言なのか、同じ場面で発した発言だが、言葉を少し違えながら新たに付け加えて伝えたのか分からないが、「日本をまともにする一点が抜けたら一緒にやってる意味がない!」と連立離脱意志を示唆する発言が加わっている。

 いずれにしても政治は数であり、数の確保は支持率が保証する変数であるという原則に目をつぶると同時に連立を離脱すれば、その原則を自分から捨て、政権担当という活動の場を自ら閉ざすことになることを考えない発言であることに変わりはない。

 記事は同じ9日午後に国会内の参院民主党役員室で国民新党の自見庄三郎幹事長と民主党の高嶋良充参院幹事長が会談したことも伝えている。

 高嶋参院幹事長「首相は法案の強行採決をしたくないんだ。2週間延長しても予算委員会に日程をとられるから郵政法案はどのみち強行採決しかない」

 自見国民新党幹事長「公党と公党の約束じゃないか。守れないならば、こっちも腹をくくるしかない!」

 〈「腹をくくる」とは「連立離脱」を意味する。〉と解説している。連立離脱は国民新党全体の存立に関わることだから、幹事長の一存で「腹をくくる」云々は言えない。明らかに「一緒にやってる意味がない!」に表れている亀井静香の意向を踏んだ連立離脱意志であろう。

 国民新党の下地幹郎国会対策委員長の場合は10日朝、民主党の樽床伸二国会対策委員長国会内で会談、今国会で郵政改革法案を成立させない場合の連立離脱を亀井代表の意向として伝えている。

 《亀井氏「連立離脱の覚悟」…郵政と会期延長で》YOMIURI ONLINE/2010年6月10日11時49分)

 樽床「会期延長しても同法案を成立させるのは困難だ」

 下地「亀井代表は連立離脱の覚悟だ」――

 亀井静香は成立をなぜ急ぐのだろうか。菅直人も仙谷由人も郵便貯金預入限度額現行1000万円から2000万円、簡保生命保険の契約限度額現行1300万円から2500万円に激しく反対を示してきた。にも関わらず、このことが閣議決定できたのは鳩山前首相と小沢前幹事長のバックアップがあったからだろう。その二人が抜けて、反対姿勢だった菅直人が首相となり、仙谷由人が内閣の要たる官房長官に居座ることとなった。成立が延びて、法案の修正の可能性が生じることを恐れたからだろうか。

 菅直人内閣となって支持率が急回復した。参院選挙での民主党の一人勝ちも不可能ではない状況となった。参議院民主党単独過半数となった場合、国民新党自体の数はその力を相対的にどころか絶対的に低下させ、例え連立を維持できても、連立離脱のカードをもはや持たない、連立を組んでいるに過ぎない単なる形式的存在と化す。

 このような可能性も連立離脱意志を見せながら、不発に終わらせざるを得なかった理由になるに違いない。

 会期は延長せず、郵政民営化法案を先送りする決定で押し切った民主党は交換条件としてだろう、国民新党に対して、参院選後、速やかに臨時国会を召集し、〈両党は、今国会に提出した郵政改革法案と同一の法案を臨時国会に提出し、成立させることを確認した〉(《亀井大臣、辞任へ…郵政法案先送りで》YOMIURI ONLINE/2010年6月11日01時51分)ということだが、「同一の法案」が臨時国会で成立するなら、何ら障害はないはずだが、一般的に内閣発足後の内閣支持率も党支持率も時間の経過と共に下降していく傾向にあることを踏まえて、会期延長を図ることで参院選を先延ばしして、少しでも内閣支持率と民主党の支持率が下がるのを期待し、少しでも民主党の一人勝ちを抑えて国民新党自体の数の力を相対的に高めようという意図から、今国会での成立に拘ったのかもしれない。

 だとしたら亀井静香自身、政治は数を弁えていたことになる。弁えていたということなら、「『支持率が高いうちに選挙をやっちゃえ』なんて考える人は立候補する資格はない」は郵政改革法案早期成立の自身の都合だけを考えたご都合主義の発言ではなく、民主党の一人勝ちを少しでも抑えたいご都合主義からの発言であり、そのためのご都合主義な今国会での早期成立への拘りだったということになるが、どうだろうか。

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民主党子ども手当満額支給断念、現物給付を掲げることの矛盾

2010-06-10 06:29:35 | Weblog

 長妻厚労相が8日夜の記者会見で子ども手当の満額支給の断念を示唆したという。

 《“子ども手当 満額支給困難”》NHK/10年6月9日 4時56分)

 長妻「今年度の1万3000円の支給額に増額する分を『現金給付』にするのか、それとも『現物給付』にするのか、党とも連携を取りながら決めていきたい」

 「財政も非常に大きな問題になっているので、満額を支給するというのは、非常に難しいのではないか」――

 記事は、民主党は昨年の衆議院選挙の政権公約で月額2万6000円を支給するとしていたが、国の苦しい財政状況を考慮、参議院選挙の政権公約作りに当たる政府・民主党の委員会が「現金給付」ではなく、保育所整備などの「現物給付」を求める意見もあることを受けて、公約では金額を明記しない方向で調整を進めていると解説している。

 記事によって発言の趣旨は同じだが、伝える言葉自体が違う場合がある。《子ども手当、月2万6千円の満額支給を断念 長妻厚労相》asahi.com/2010年6月9日1時5分)

 長妻「満額支給は財政上の制約もあり難しい」

 「現物、現金問わず、2万6千円という水準について確保するのが難しい」

 「一定の結論が出れば、国民にきちっと説明することが必要だ」

 記事は満額支給に必要な5.4兆円に上る財源確保の目途が立っていないこと、そのため子ども手当全体を圧縮する必要性を指摘したとしている。

 要するに「現金給付」分を「現物給付」にまわすとしても、トータルで当初約束した1人当たり2万6千円にまで持っていくことはできないの宣言である。

 満額支給に必要な5.4兆円を如何に事業仕分けして、全体額をどれ程圧縮するかに今後向かうということなのだろう。

 多分、連携プレーに違いない、蓮舫行政刷新担当相が長妻大臣と同じ趣旨の発言を行っている。《子ども手当「満額」見送りを=蓮舫行政刷新相》時事ドットコム/2010/06/09-19:01)

 9日夕のフジテレビの番組の中での発言だそうだ。

 蓮舫「政府の財布の現状を考えたときに、より現実的なサイズにしていく作業は否定しない」
 
 まったく以って「否定しない」とは、さも自分が差配しているかのような偉そうな言い方となっているが、以前は「政府の財布の現状」を考えなかった、結果的に「現実的なサイズ」を弁えなかったといった暴露としかならない発言となっている。

 満額支給断念は100%予想できたことであった。野田佳彦新財務相が副大臣だった当時の今年1月31日日曜日のNHK「日曜討論」で、司会者が「子ども手当の2年目以降の満額支給については、慎重なお考えを示されたと窺っておりますが?」と聞いたのに対して、「難しいという話はしました。ハードルは高いと。できないとは言ってません。これからの作業です」と発言していたことと、この発言に歩調を合わせるかのように長妻厚労相を除いた他の閣僚も同じ趣旨の発言をしていたことからの予想だが、競輪・競馬・宝くじ・BIG・toto等々、これ程までに確実に予想できたなら、誰もが大金を手に入れるというよりも、公営ギャンブル自体が成り立たなかったに違いない。

 所管大臣の長妻のみが今回断念宣言するまでは満額支給を言い続けてきた。その一つを4月13日午前の閣議後の記者会見から拾ってみる。政府内から現物給付に転換すべきとの発言が相次いでいることに対する反論として展開したものである。

 《厚労相 子ども手当は現金支給》NHK/10年4月13日 14時35分)

 原口総務相「すべて、子ども手当として支給するのがいいのか、サービス給付をしたほうがいいのかなど、検討している」

 記事は、〈古川内閣府副大臣も、一部を保育料などに充てることも検討したいという考えを示してい〉るとしている。

 長妻「日本は、ほかの先進諸国と比べて現金支給のレベルは低く、満額の支給でようやく一定のレベルが確保される」――

 どれ程「現金支給のレベルは低い」か、長妻厚労相自身が記者会見のみならず、テレビ出演の折に触れて発言してきているが、「Wikipedia」で見てみる。
 
 子ども手当(Wikipedia)

 目的・背景

日本では少子高齢化が進行し、2010年現在は、3人の現役世代で1人の高齢者を支える形になっているが、2055年には1人の現役世代で1人の高齢者を支える状況となることが見込まれている。

一方、日本における子どもの貧困率は14.2%と、OECD諸国平均の12.4%より悪くなっており、片親の子どもの貧困率は54.3%とOECD諸国(平均30.8%)中最低となっている。

日本政府が子育ての支援にかけている予算は、GDP比でスウェーデン3.21%、フランス3.00%、ドイツ2.22%に対し、日本は0.81%と先進国中最も少ない国の一つとなっている。

特に6歳以下の子どもへの支援額がOECD諸国平均と比べ非常に低いとOECDに指摘されている。また子育て世代は等価可処分所得中央値が1998年から2007年の10年で10%以上落ちる]など収入に余裕がなく、子どもが学校に通うようになると教育費も大きく増加して経済的負担が大きくなる面もあるため、民主党はこどもの幼少から就学までのトータルでの支援が必要だとしている。

こうした状況を踏まえ、子ども手当法は、「次代の社会を担う子ども1人ひとりの育ちを社会全体で応援する」こと及び「子育ての経済的負担を軽減し、安心して出産し、子どもが育てられる社会をつくる」ことを政策目的としている。

なお、子ども手当法第2条にて、「子ども手当の支給を受けた者は、前条の支給の趣旨にかんがみ、これをその趣旨に従って用いなければならない。」と記述されており、給付金を子どもの成長及び発達のために使用する責務がある。

 車体は豪華絢爛に創り上げたが、車体の豪華絢爛さに追いつかない出力の弱いエンジンしか用意できなかったために満足に走れない車となってしまったといったところらしい。

 長妻厚労相は5月日にも満額支給発言を行っている。《子ども手当、揺れる民主 満額支給断念→両論併記に修正》asahi.com/2010年5月8日2時0分)

 長妻「マニフェストを変えることになると、相当の理由がなければならない」

 〈マニフェストの原案を検討する民主党の国民生活研究会(中野寛成会長)の7日の総会〉の〈出席者の多数は「現金給付を考えるべきだ」という意見。〉だったため、当初原案の〈来年度からの子ども手当の満額現金支給を断念し、増額される月額1万3千円分は「保育・教育にかかわる子育て支援の実施に充てる」とする〉から、〈最終原案では、増額分について「現金支給の積み増し」と「保育・教育への子育て支援」を併記した。現金2万6千円を配ってもよし、現金は1万3千円だけで残りは自治体の保育所整備予算に充ててもよし、というものだ。 〉という形で収まったとしている。

 原口一博総務相(5月12日)「2万6千円を丸々、子ども手当で給付するか、地方の自由を許容してサービス給付でやった方がいいのか、あるいは組みあわせるか検討している」

 仙谷由人国家戦略相「給食費をそこ(子ども手当)から充当することもありうる」

 各閣僚が分担して世論を断念の方向に誘導するために支給方法の“検討”と“可能性”を色々と打ち上げる役割を演じつつ、長妻“断念包囲網”を着々と進めていたのか、最初から全員が満額断念に向けた大合唱ではまずいから、各閣僚の役割分担に長妻も所管大臣として抵抗する役回りを最初から引き受ける形で加わっていて、満額支給かそうでないかの綱引きを演じつつ、ダメージの少ない軟着陸を目指そうとしていたのか、先ずは断念は決定した。

 どちらであっても、財源不足を理由とする以上、2万6千円を減額のみで済ますなら納得のいく話となるが、財源不足を理由に「現金給付」から、その一部でも保育所整備・充実等の「現物給付」にまわすとするのは矛盾行為ではないだろうか。

 「現物給付」に当たる待機児童解消のための保育施設の整備・充実、少子化解消等は前政権から長い間課題となっていながら解決できないまま推移していた政策であって、子ども手当政策を掲げたからといって置き去りにしても構わない政策ではなく、「現金給付」「現物給付」のバランスを取りながら、それぞれを独自に振り分けていく、双方とも独立した政策として成り立たせなければならないはずである。

 それを「現金給付」から、その財源のいくらかを「現物給付」にまわすとする。

 まわすとすることで、減額を招く政策能力の杜撰さ、財源に対する甘い見通しを韜晦し、国民を納得させようとする騙しの手口ではないのか。「現金給付」から「現物給付」にまわるのだから、仕方がないかと。

 子ども手当の結末がどうなろうと、満額支給以外の結末の場合、当初の約束と違う高速道路無料化や暫定税率の廃止等と合わせて、民主党の「マニフェスト」とは当てにならないことの譬えとなる。

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菅新内閣、「政治の役割は最小不幸の社会を作ること」とは重い課題を背負った

2010-06-09 08:08:50 | Weblog

 

       ――さあ、民主党政権の仕切り直しだ――――

 菅新首相が昨6月8日夕、就任記者会見を首相官邸で行った。その冒頭発言で政治の役割は最小不幸社会をつくることにあると主張した。「毎日jp」記事から参考引用。
 
 《菅首相会見:その1「政治の役割は最小不幸の社会を作ること」》毎日jp/2010年6月8日)

 「今夕、天皇陛下の親任をいただいたのち、正式に内閣総理大臣に就任にすることになりました菅直人でございます。国民のみなさんに就任にあたって私の基本的な考え方を申し上げたいと思います。

 私は政治の役割というのは国民が不幸になる要素、あるいは世界の人々が不幸になる要素をいかに少なくしていくのか、最小不幸の社会を作ることにあると考えております。もちろん大きな幸福を求めることは重要でありますが、それは例えば恋愛とか、あるいは自分の好きな絵を描くとか、そういうところにはあんまり政治が関与すべきではなくて、逆に貧困、あるいは戦争、そういったことをなくすることにこそ、政治が深く力を尽くすべきだとこのように考えているからであります。

 そして、今、この日本という国の置かれた状況はどうでしょうか。私が育った昭和20年代、30年代は、ものはなかったけれども、新しいいろいろなものが生まれてきて、まさに希望に燃えた時代であります。しかし、バブルが崩壊してからのこの20年間というのは経済的にも低迷し、3万人を超える自殺者が毎年続くという社会の閉そく感も強まって、そのことがいま日本の置かれた大きな何かこう全体に押しつぶされるような、そういう時代を迎えているのではないでしょうか

 私はこのような日本を根本から立て直して、もっと元気のいい国にしていきたい。世界に対しても、もっと多くの若者が羽ばたいていくような、そういう国にしていきたいと考えております。その一つは、まさに日本の経済の立て直し、財政の立て直し、社会保障の立て直し、つまりは強い経済と強い財政と強い社会保障を一体として実現することであります。今、成長戦略の最終的なとりまとめを行っておりますけど、日本という国は大きなチャンスを目の前にして、それにきちっとした対応ができなかった。このように、思っております。

 例えば鳩山前総理が提議された地球温暖化防止のための25パーセントという目標は、まさに日本がこうした省エネ技術によって世界の中に新しい技術や商品を提供して、大きな成長のチャンスであるにもかかわらず、立ち遅れてきております。また、アジアの中で、歴史の中で最も大きな成長の時期を迎えているにもかかわらず、先日も中国に行きましたら、いろんな仕事があるけれども、日本の企業はヨーロッパの企業の下請けしかなかなか仕事が取れない。いったいどんなことになる。つまりは、この20年間の政治のリーダーシップのなさがこういったことを生み出したとこのように思っております。成長戦略の中で、グリーンイノベーション、そしてライフイノベーション、そしてアジアの成長というものを、私たちそれに技術やあるいは資本やいろいろな形で関与することで我が国の成長にも伝えていく、こういったことを柱にした新成長戦略、これに基づいて財政配分を行いたいと考えております」

 「例えば恋愛とか、あるいは自分の好きな絵を描くとか、そういうところにはあんまり政治が関与すべきではなくて」と言っているが、「あんまり」どころか、完璧に関与すべきではなく、関与されたのでは、特に不倫は日本の文化だと言ったとか言わなかったと噂されているタレントの石田純一やその同類、あるいは自由恋愛主義者なのか、山本モナやその同類の生存権を奪うことになる。

 勿論、一般的な男女の生存権をも奪うことは言うまでもない。

 経済的観点から言うと、ラブホテルやその他の性産業、アダルト出版関係の経営が圧迫を受けて、日本経済全体から見ても大きな損失を与えるに違いない。

 だが、菅直人はなぜ政治の役割の比較にごくごくプライベートな営みである「例えば恋愛とか、あるいは自分の好きな絵を描くとか」と貧困の撲滅や戦争の廃止を対比させたのだろうか。そこは政界切っての論客と言われているから、関係もないことを関係づける力量に長けていたということなのだろうか。

 「私は政治の役割というのは国民が不幸になる要素、あるいは世界の人々が不幸になる要素をいかに少なくしていくのか、最小不幸の社会を作ることにあると考えております」と殊更らしく言っているが、これも政治の役割としてごくごく当たり前なことで、既に日本国憲法第25条「生存権、国の社会的使命」として、(1)すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。(2)国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公共衛生の向上及び増進に努めなければならない、と規定していて、「最小不幸社会」はその言い替えに過ぎない。

 「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」を政治の役割として国民が納得のいく状況で社会全般に実現し得ていないから、「政治の役割というのは国民が不幸になる要素、あるいは世界の人々が不幸になる要素をいかに少なくしていくのか、最小不幸の社会を作ることにある」などと言い換えなければならないのではないのか。前者を実現し得ていたなら、後者を言い出す必要は生じない。

 問題の一つはどこに線を引くかである。「健康で文化的な最低限度の生活」の「最低」、「最小不幸社会」の「最小」の線をどこに引くかによって政治の役割度が違ってくる。

 極端な例を言うと、菅首相自身も「3万人を超える自殺者が毎年続くという社会の閉そく感」を取り上げているが、自殺者に関しては「年間3万人」を「不幸社会」の最小の線引きだとすると、「年間3万人」は許容範囲内となる。

 逆に政治の力で1人の自殺者も出さないことは不可能事であろう。政治の力でなくても、如何なる力によっても不可能に違いない。

 少なくとも日本社会はこの約10年間、「年間3万人の自殺者」を許容範囲としてきた。結果的に政治は「年間3万人」に線を置くことを役割としてきた。

 問題の二つ目は、菅直人が人間社会をどのように認識した上で、「最小不幸社会」を政治の役割としたのかである。人間の存在性をどう考えた上で、「最小不幸社会」の形成を菅内閣の使命としたのかである。

 多くの国に於いて最低賃金制度が制定されているが、最高賃金制度は制定されていない。金融庁が上場企業を対象に2010年3月期決算から年に1億円以上の報酬獲得役員の名前や報酬額などの開示義務制度を導入、これを受けて資生堂が1億円以上の報酬受取り予定の役員の名前と報酬額を記載し、ホームページで公開した。《資生堂 高額報酬を総会前開示》NHK/10年6月3日 16時58分)

 前田新造社長――1億2000万円。
 外資系企業から移籍したカーステン・フィッシャー専務――1億4000万円。

 1億円に満たない副社長の報酬も自主的に開示したという。

 〈役員報酬の開示で、金融庁は、通常、株主総会を経て発行される有価証券報告書に必要事項を記載するよう義務づけていますが、総会の前に開示するのは異例のこと〉だと記事は書いている。

 資生堂「役員報酬を決めていただく株主総会の開催の前に一般の株主に知らせることがよりていねいな情報開示につながると判断した」――

 地域によっても格差のある時間給7~800円内外の最低賃金で守られている労働者と、年収1億円以上の役員たち。給与に関わる「最小不幸」の「最小」の線を時間給7~800円内外に置くとしたら、その「最小不幸」は社会的許容範囲と認められることになる。

 勿論、年収1億円以上も賃金の上限を決めていないのだから、社会的許容範囲に入る。ここに矛盾はなく、社会の一つの姿として存在する。

 一方で日本社会は格差社会を嫌悪・忌避し、その是正に努めている。労働者派遣法改正案もその一つの試みであろう。

 2008年9月のリーマンショック以前の02年2月から07年10月まで続いた「戦後最長景気」では、その恩恵を一般労働者の賃金に還元せず、その結果個人消費に回らなかったが、大手企業は軒並み戦後最高益を得た。外需を手段とした利益獲得だが、外国企業との販売競争に於いて製品の品質で太刀打ちし、価格競争に於いては人件費を安価に押さえることができる派遣形式の雇用形態に守られて優位に立つことができた。

 だが、リーマンショックに端を発した金融不安に陥ると、企業は雇用調整弁の役目を負わせて派遣を、彼らの不幸を何とも思わずに情け容赦なく切捨て、企業の利益を守った。

 このような利益配分は、少数者の利益は多数者の不利益を基盤として成り立つという構造にあることを示している。こうも言い換えることができる。少数者の幸福は多数者の不幸の上に成り立つ構造にある。

 その基本的構造が少数者の高収入は多数者の低収入の上に成り立つというメカニズムであろう。

 また少数者が特段の高収入を得るといったこの手の経済構造を成り立たせるためには多数者の低収入を必要とする。少数者の利益保全には多数者の不利益を必要とする。あるいは少数者の幸福のために多数者の不幸を必要とする。
 
 こういった構造は日本国内に於ける個人対個人の関係のみならず、外国との関係に於いても言える。

 中国の安価な人件費によって生み出された安価な中国製品、あるいは中国に進出した日本だけではない先進国企業の安価な製品が日本の消費者をしてその購入を容易にし、安い分だけの利益をもたらしているが、このことを可能としている構図は中国の安価な人件費とそれ以上に高価な日本の人件費との格差であろう。

 いわば中国人の安価な人件費の上に日本の消費者の利益が成り立っていて、成り立たせるためには自分たちの賃金、収入よりも低賃金、低収入の存在を必要とすると言うことである。

 しかし中国と日本の賃金格差、人件費格差の構図に是正のメスが入りつつある。中国の外資系企業では中国人従業員によって低賃金に逆らった賃上げ闘争のストライキが頻発、操業を停止する工場も出てきて、順次賃上げに応じている。企業の中にはより人件費が安く、より従順におとなしく言うことを聞く内陸部に工場の移転を行い、人件費格差とその上に成り立たせた利益格差、幸福格差の構造の維持を図る動きも出ているという。

 このように各種格差の存在とその循環によって人間社会が成り立ち、人間の存在性、あるいはその生活を規定しているなら、やはり「最小不幸社会」の「最小」をどこで線引きをするかは、政治の責任にも関わる重要な事柄となる。

 完璧な社会的平等、欠点一つない社会的公平性など存在しないと言うことである。そういった社会的平等、社会的公平性を確立するだけの知恵を人類は保持していない。

 問題は菅新首相がこういったことをどこまで認識しているかである。認識しないまま言っているとしたら、鳩山首相が色々と唱えてきた現実を踏まえない理想論のような口先だけの奇麗事で結末を迎える危険性を抱えることになる。

 口で言うは易し。菅新首相は簡単には実現させることはできない重い課題を自ら唱え、自ら背負った。

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辻元清美は6月6日のテレビで鳩山前首相の指導力欠如を盛んに暴露していた

2010-06-08 10:17:57 | Weblog

   ――民主党に衆・参両院過半数のチャンスを与えよう――

 6月6日日曜日朝10時からの朝日テレビ「サンデー・フロントライン」に社民党辻元清美が、民主党の小宮山洋子、松井孝治前内閣官房副長官、自民党の世耕弘成参院議員共々出演し、新内閣に於ける「政策調査会」の復活問題や普天間問題、その他について議論していた。

 この議論に先立って、小沢前幹事長が自治体、業界団体等からの陳情の窓口を幹事長室に一元化したことについて辻元社民党議員は次のように話していた。(大まかに再現)

 辻元「(幹事長室に)通らなかった陳情を国土交通副大臣の私のところに持ってきて、私のところから言ってくれないかと言っていた。ここのところの不満のマグマが溜まっていたのではないのか。そこのところで人事でバクハツしたのではないのか」

 人事面での小沢排除をこのように話していた。

 半ば得意げな裏話の披露となっていたが、陳情の中身の良し悪しと陳情処理方法の良し悪しは別にして、民主党に於いては陳情ルートの幹事長室一元化はルール化させた制度であって、そこでハネられたからと、国土交通副大臣のところへ持っていく。これはルール違反ということだけではなく、裏ルートの開拓、口利きの成立を図る動きであり、これらの有効性が証明されたなら、正規ルートである一元化制度のルールは有名無実となり、逆に裏ルートや口利きが半ば制度化することになる。

 辻元が持ち込まれた陳情をどう処理したかは話さなかったが、もし小沢幹事長か、あるいは幹事長室の知り合いの誰かに話を通したとしたら、そのことによって何ら金銭的利益を受け取らなかったとしても、裏ルートや口利きの制度化に手を貸すことになったろう。

 むしろ、「制度は制度ですから、私のところへは持ってこないで欲しいと私は断りましたが」といった話を披露すべきだったのではないだろうか。

 大体が正規ルートに則らずに国土交通副大臣を迂回させる遣り方は自民党が族議員や有力議員、あるいは有力閣僚、有力官僚といった個人的ルートを介して陳情を実現させる方法と何ら変わらず、いつ、どこでそこに利得行為が生じない保証はない。例えば口利きが効果があったからと、その政治信条に賛成したからではなく、パーティ券を購入する合法的な方法で利益還元を可能とすることもできる。

 何となく無邪気に政治家をしている印象を受けた。

 議論は、〈普天間で総理辞任 内部から見た官邸の問題点は?〉をテーマとした議論に移った。

 女子アナ「民主党はマニフェストに官邸強化を掲げていた。しかし鳩山政権は平野官房長官を中心として、官邸の主導で解決に乗り出した。普天間問題で迷走し、鳩山総理辞任の引き金となった。菅新政権は鳩山政権の迷走から果して何を学ぶのか」――

 小宮山悦子「辻元さん、社民党としては普天間問題では政権の中にいながら、日米合意を最優先させることになってしまったわけなんですけど、官邸とは話をしていないんですか?」

 辻元「あのー、しておりました。ですが、あの、まあ、私たちも政権の中にいて、止め切れなかったというのはですね、非常に責任も感じているし、沖縄の皆さんにも申し訳ないと思うですね。

 で、私、個人もですね、総理とも大分二人きりでも、話をしました」

 小宮悦子「二人きりで」

 「二人きりで」を強調した合いの手。果たしてたいしたことなのか。

 辻元「ハイ。で、平野官房長官は大阪同士、いうこともあって、昔から同期ですし、ちょっと存じ上げてますので、かなり議論をしました。それから、同時に官邸にはですね、この普天間の、作業チームもつくりました。

 ええ、しかしですね、ま、最終的に辺野古に戻ってしまったと。で、あのー、総理は、最後までですね、えー、直前まで私、話しておりましたけれども、やはり県外、国外を目指したいというお気持は強かった、ですね。

 1ヶ月前ぐらいにも、『総理は本当は、どこにしたいの、ホントーはどこにしたいの』って、お聞きすると、『グアム』とか、ちっちゃい声でおっしゃったりするわけですよ」(笑う)

 小宮悦子「ええ」

 辻元「ただですねえ、まあ、その総理の思いを、実現していくプロセスがうまくいかなかったと、思うんです。それには官僚との付き合い方というのが、あると思います。最初ですね、私もこの問題取り扱うとき、外務・防衛で、今までアメリカと、交渉してきた人は、外した方がいいんじゃないかと、いうような意見も申し上げたんです。

 でも、むしろですね、今まで交渉してきた人の方が、相手の出方もよく分かってますのでですね、今まで交渉してきた人たちに、じゃあ、総理の思いを実現するような案を、日本として出してみろと、いうようにですね、エー、うまくコントロールというかですね、しながらですね、やっていくと、また違った結果になったんではないかとか、今で思えば、そういうことは感じております」

 小宮「脱官僚依存じゃなくて、官僚排除になっちゃった?」

 辻元「まあ、そういうところありますねえ」

 (次の松井官房副長官の発言は中略)

 辻元「総理にね、実際に、あのー、情報がきちっと、きちっと情報が上がっていたかどうかっていうのが、最後の方ですね、あの、クエスチョンマークがつくわけですね。例えば沖縄の皆さん、まあ、で、県民大会などがありました。で、あの翌日からは沖縄は80名の人たちが来られた。で、総理に声明を渡したいというお話があって、少なくとも、そういう話というのは非常に大事な、ことなので、総理はご存知だと思ったんですけど、全くご存じなかった、とか。

 で、エー、総理が最後までですね、私が、決めます、エー、そして5月、には、何とか県外も含めてやりますと、おっしゃったのは、何とかしようって官房長官も走り回っていたと思うんですよ。何とかなりなりますからと、いうようなメッセージを、こう言い続けて、総理はあっちに(辺野古に)行っちゃって。しかし実際にはですね、何とかならならなかったという。

 ですから、そこは直接、色んな情報をお伝えにいったらですね。それは聞いていない、それは知らない、沖縄でそんな動きがあるってことは全く分からない、っていうようなことが多かったんですね」

 世耕「そもそもからですね、松井さんも辻元さんも、そのおー中盤の運びとか、終盤情報が入っていないってことになると、そもそも、それは初動で間違っているんですよ」

 小宮「初動――」

 世耕「歴史的判断ミスをしてしまったんです。これはやはり移転をさせるということを言ってしまったということですね。それはやはり言う前にそれは選挙の公約に入っていたかもしれませんけれども、やっぱり政権を取って、総理大臣になった段階で、外務省、防衛省から、時間をかけて、時間をかけて、じっくり情報を聞いて、吟味をして、地元の話も水面下で聞いた上で、聞いていればですね、辺野古から動かせないということは、その時点ではっきり分かっていたんです」

 小宮「政権交代を気負うあまり」
 
 世耕「気負うあまり、新しいことをやったということです。あまり地元の意見を聞かなかった」

 松井「ある意味ではね、ある意味ではね、あのー、世耕さんのおっしゃる通りかもしれないと僕は思いますよ。それは逆に言えば、鳩山さんはですね、この政権交代の意味は何だと、ずっと、何十年間アメリカに依存して、あの、アメリカの軍隊がですね、あの、この日本国内にですね、これだけ存在して、そこに依存しているという体制を何とか一歩、でも、二歩でも前へ進めたいという気持ィーが強かったんで。

 あの、私、担当じゃないけれども、総理の執務室の中で、いや、僕が総理だったら、もうちょっと年内、あるいはオバマ大統領、来日されるときに、もう思い切って判断してしまうという、オプション、取っていたと思うんですけど、そういうのなぜ取られなかったんですか、っていう話をしたら・・・」

 辻元「それは松井さんとも話したじゃないですか?」

 松井「だから、それは、やっぱりそれじゃダメなんだと、」

 辻元「連立政権もあって、沖縄もあって、あの年内の場面でー、え、判断するとですね、そのあとの予算の審議も立ち行かなくなるし――」

 松井「あの、勿論、それもあると思いますが、やっぱり、総理はですね、この政権交代の機会に大きくこの、アジア、太平洋のですね、安全保障関係を少しでも変えたい、という気持があったという部分はあると思います」

 以下、このコーナーに関して省略――

 世耕が、鳩山内閣は歴史的判断ミスをしてしまった、外務省、防衛省、さらに地元からも情報を聞いていれば辺野古から動かせないことは分かっていたことだと言っているが、自民党政権で決めた辺野古なのだから、自身にとって自明な結論への誘導に過ぎない。

 辻元は鳩山首相と直前まで話しをしていた感触から、県外、国外を目指したいという気持は強かったと言っているが、鳩山前首相が辞任表明したのは6月2日。それを約1ヶ月遡る5月6日の時点で既に「国外、最低でも県外」と言ったのは党の公約ではなく、自分自身の発言だと、国外・県外を修正している。

 同じ時期の発言として、「1ヶ月前ぐらいにも、『総理は本当は、どこにしたいの、ホントーはどこにしたいの』って、お聞きすると、『グアム』とか、ちっちゃい声でおっしゃったりするわけですよ」と紹介しているが、現行案に回帰したのちも県外、国外を目指したいという気持を依然として持ち続けていたとしても、魂を失った亡骸に過ぎない。特に政治の世界では気持は世の中に広く役立つ形にして初めて意義を持つ。そして気持を現実的な形とするには偏に様々な状況に対応した指導力に関係してくる。状況を読み取り、実現させていく能力である。

 辻元は形という結果が厳しく求められる政治の世界に呼吸する政治家でありながら、それを情の世界に変えて、結果という果実の形を取る前の気持のみを問題にして、何ら疑うことすらせず、鳩山首相を情の面から把えた擁護に走っている。

 松井官房副長官にしても、「鳩山さんはですね、この政権交代の意味は何だと、ずっと、何十年間アメリカに依存して、あの、アメリカの軍隊がですね、あの、この日本国内にですね、これだけ存在して、そこに依存しているという体制を何とか一歩、でも、二歩でも前へ進めたいという気持ィーが強かったんで」と、結果という果実の形を取る前の「気持」のみで鳩山由紀夫という政治家を成り立たせようとしている。あるいは「気持」のみで鳩山由紀夫という政治家の存在証明を図ろうとしている。

 「総理の思いを実現していくプロセスがうまくいかなかった」ということも偏に鳩山首相自身の指導力に関わる制度設計の不味さであろう。例え脱官僚を掲げていたとしても、政策の発想・創造の段階、及びそれを形に変えていく段階で政治家側がリード(主導)するという意味で、官僚を不要な存在と看做して政治家のみで行うという制度では決してなく、彼らを政策実現のスタッフとして必要とし、彼らが持つスタッフとしての情報を必要とする制度のはずである。
 
 いわば、「総理の思いを実現していくプロセス」の構築自体が総理の指導力にかかっていたということであるが、構築するだけの指導力を欠いていた。

 指導力を欠いていたと見抜くことをせずに擁護一辺倒の姿勢となっているから、「今まで交渉してきた人たちに、じゃあ、総理の思いを実現するような案を、日本として出してみろと、いうようにですね、エー、うまくコントロールというかですね、しながらですね、やっていくと、また違った結果になったんではないかととか、今で思えば、そういうことは感じております」といったことを無邪気に言うことができる。

 自身の「思いを実現するような案を日本として出してみろ」と指示し、それを成功させるもさせないもやはり自らの創造性と指導力にかかっている事柄であろう。ここで必要とする創造性とは、自身の「思いを実現するような案」の実現可能性を自ら予測する能力のことである。自分自身が実現可能性を予測できずに「思いを実現するような案を日本として出してみろ」と指示したとしても、検討もせずに、検討した結果できませんと言われた場合、引き込まざるを得なくなるからだ。

 また、辻元は沖縄の情報が鳩山首相にまできちっと上がっていなかったと言っているが、必要な情報を的確に上げさせる体制を構築するもしないも、やはり鳩山首相自身の指導力にかかっている問題点であって、官僚ばかりか、政権運営のスタッフである各閣僚を如何に使いこなせていないかの証明でしかない。

 要するに辻元は、「そこは直接、色んな情報をお伝えにいったらですね。それは聞いていない、それは知らない、沖縄でそんな動きがあるってことは全く分からない、っていうようなことが多かったんですね」と鳩山前首相を擁護する形で官邸の楽屋話を話しつつ、実体的には一生懸命鳩山首相は指導力がない、指導力に欠けていると暴露していたに過ぎない。

 ただ単にそのことに辻元清美は無邪気にも気づいていなかった。出発点も到達点も鳩山首相の指導力の欠如で成り立っていたのだから、鳩山首相と二人きりで話したこと自体が何ら役に立たなかった。

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菅新首相が普天間移設「日米合意」破棄のカギを握っていないことはない

2010-06-07 08:04:13 | Weblog

 6月6日日曜日の朝7時半からのフジテレビ「新報道2001」で菅新内閣の元での「政治とカネ」の問題、普天間移設問題、郵政改革法案成立の是非等を取り上げて議論していた。出席者は与党側から民主党の玄葉光一郎、国民新党の下地幹郎、野党側から自民党の石原伸晃、社民党の辻元清美、公明党から高木陽介等々。そして局側からコメンテーターとしてなのか、崔洋一映画監督。

 普天間移設に関して、次のような遣り取りがあった。

 辻元清美「小沢さんは選挙を仕切ってこられたじゃないですか。石井一さん、選対委員ですけれども。例えばですね、3党合意を私たち、組んでおりました。選挙協力をしておりました。

 1人区はですね、これぇー、民主党と自民党の、接戦になる可能性があるわけです。そうすと、社民党は、まあ、今、野党の立場ですけれども、あの――」

 女性アナ「選対委員長は安住さんということ・・・」

 辻元「ああ、安住さん――。そうすと、今まで小沢さんが選挙を仕切ってこられたわけですね。で、1人区で接戦になったとき、例えば、内の社民党、これ関係してくるわけです。これどうするか。数万の票持ってるわけですよ、各県で。

 そうすると、この数万の票が、接戦、どちらにつくかが、非常に影響力が、まあ、出てくる可能性があります。そのときに、小沢さんとは色々と取り決めを、してきたわけですね。こちらは協力するから、こちらを協力してくれ。

 そうすると、小沢さんも、その、まあ、エー、選挙を仕切ってこられたこと。これ、完全に民主党がですよ、エー、排除って言うかですね、まあ、してしまったら、選挙協力の面で、どうなるのかなあ、と。

 これから、まあ、安住さんになられるんだったら、安住さんと、その分は話していくわけですけれども、排除しきれないじゃないかと、いうふうに私は思いますけども」

 下地幹郎「あのーいま、辻元さんは、まだちょっと、あの、内閣にいたんで、分からなかったと。3党で、私たちは協力関係をやっていこうというサインをね、国民新党と社民党はやりました。そして、あの、もう民主党に出してありますから、新しい幹事長が出たら、明日にもですね、その3党の協力関係のサインをですね、していただけるかどうか、判断を仰ぎたいと思っております。それには政策も書いてありますし、選挙協力も書いてあります」

 男性アナ「3党には社民党さんも入っていますか?」
 
 何を聞いていたのか。

 辻元「入っております」

 下地「そういうふうなことを、これからやっていきたいと思っていますから、だから、あんまり向うに(野党側席に)座り過ぎるとダメじゃないかと思って――」

 石原伸晃「選挙協力、選挙協力って言うけれども、鳩山内閣が行き詰まったのは普天間の問題、外交、安全保障、その、横にほっぽってですよ、社民党と、国民新党と、民主党がうまくいくわけないですよ。そこをやらないで、選挙、選挙って言ったら、選挙目当てだっていう批判には突き破れないじゃですか」

 下地「そこはね、こうしかないですよ。はっきりしていることは、その、日米合意をして反対してやめたわけですね、普天間に関しては。

 その日米合意の、社民党は辺野古と変えたことでやめたことは、国民新党に於いてもですね、私たちが提案したものと違うです。ただ、私たち、この日米合意はそのままですね、これが進められるかどうかは、仲井真知事がですね、埋め立て認可のサインをするかどうかの、決断を、来週にでもやると思うです。

 もしやらないという決断をしたら、日米合意はもういっぺんやらなければいけなくなってくるわけですから、そういうときにも向けて、社民党とは色々協議していくというのは、これ当たり前のことですから」

 高木公明党「菅さんは、菅さんは、日米合意は見直さないと言ってるんですよ」

 下地「違う、違う。あのね、菅さんが見直しをするんじゃなくて、沖縄県知事がやらないとか決断をした場合には、<日米合意は遂行できないんで、そのときはどうするかという協議をしなきゃいけないんですよ」

 崔洋一「下地さんは元々ー、辺野古の移設に関して、そう反対なすってなかったよね?」

 下地「僕はできないから、嘉手納統合へ行ったんですよ。それで自民党を私は除名されたわけですから、埋立ては無理だから、嘉手納統合――」

 崔洋一「伸晃さんや野党の方々がおっしゃったようにね、日米合意を堅持するんだって、これ程にまではっきり言ったら、これは結論見えているし、それはね、辻元さんね、やっぱりね、ここはね、一度離脱したら、筋通さないと、あなたのとこ、潰れてしまうよ」

 辻元「いや、いや、ちょっと、それはね、あのー、それはね、えーと、今おっしゃるようにですね、日米合意、の問題で、社民党は離脱したわけですから、そこは見直しされると、いうことでない限りですね、なかなか難しいわけですよ。ただね、ただね、あのー、あとで議論なると思いますけども、それ以外の政策、3党で合意したところがあるわけですよ。労働者派遣法とかぁー、色んなところ、それはですね、いいものはいいで、それはきちんと、エー、実行っていくっていうふうに。

 それと、選挙協力は悩ましいところでね。じゃあね、やめてしまえ言うたら、元の、まあ、伸晃さんには悪いけどね、自民党政治に戻したくないわけですよね。結局、そしたら、自民党に戻すことに手を貸そうかなーっていう、その戸惑いがあるわけですね。今ね。

 だから、そういう意味で、それからどういうように対応していくかっていうことを党内でも、議論して、やらなきゃいけないということなんですね」

 玄葉光一郎「あの、社民党さんとはですね、政策ごとに協力できるんだろうと・・・・」――

 番組は菅新首相になって支持率が上がった、自民党は脅威と感じるかどうか、実体は小沢隠しか、隠しではないかといった話の展開となっていく。

 社民党辻元清美は普天間の問題よりも民主党との選挙協力の方が大事なようだ。自民党政治に戻したくない、だが、民主党と選挙協力ができなけれが、自民党に戻すことに手を貸すことになるかもしれない、その戸惑いがあると言っている。この考えは主義主張よりも選挙協力という実益を優先重視する考え方であろう。

 民主党に一種の威しをかけて選挙協力に持込み、その見返りに政策遂行面で何らかの利益を当て込む。

 大体が各選挙区に満足に候補者を立てて当選に持ち込むことができない社民党自身の非力について何とも思っていない。8ヶ月限りで国土交通副大臣を退任しなければならなかったことが心残りとなっていることが原因してか、選挙協力を通して政策遂行場面に立ち入り、さらに運政権運営にまで足を踏み入れたい願望が透けて見えて、精神上、半分まで与党化しているようだ。

 下地幹郎は、日米合意の履行は仲井真知事が埋め立て認可のサインをするかどうかにかかっている。認可のサインをしなければ、合意を前に進めることはできなくなって、別の方策を見い出さなければならないと言っている。

 高木陽介が、「菅さんは、日米合意は見直さないと言ってるんですよ」とか、崔洋一映画監督が、「「日米合意を堅持するんだって、これ程にまではっきり言ったら、これは結論見えている」と言っているように日米合意が絶対決定事項の状況に至っているわけではない、覆る可能性もある状況下にあることを言っている。

 この状況に対抗して絶対決定事項に持っていく方策があることは平野前官房長官が既に1月26日の時点で記者会見で述べている。

 《普天間移設、法的決着も=地元拒否時の対応に言及-平野官房長官》時事ドットコム/2010/01/26-21:22)

 平野「(地元が)合意しなかったら物事が進まないということか。そこは十分検証したい。法律的にやれる場合もあるだろう」

 地元反対を無視、法的措置による決着を示唆した。どのような法的措置かというと、記事は、〈平野長官は、具体的な対応については言及を避けたが、公有水面埋め立て権限を都道府県から国に移す特別措置法制定などが念頭にあるとみられる〉と解説している。

 下地議員が言っていた仲井真知事の埋立て許認可の権限を国に移して、国のサインで施行できるようにする。地元の反対、ノープロブレムに持っていくというわけである。

 だが、もし菅直人新首相が地元の意向を最重視する姿勢でいるなら、仲井真知事の埋立て認可サイン拒否を以って、日米合意の不履行を米側に伝えることもできる。

 もし米側が「公有水面埋め立て権限を都道府県から国に移す特別措置法制定」等による法的措置を迫ったなら、そこまで強硬措置に出たら、内閣は持たない、鳩山内閣の二の舞となると拒絶することもできる。

 いわば菅新首相の姿勢一つ、サジ加減一つで不可能を可能とすることができる。普天間の代替施設は唯一移設を歓迎し、社民党が推薦しているテニアンを除いて他に考えられるだろうか。それがダメなら、九州の自衛隊基地にでも地上部隊とヘリ部隊を一体で基地機能ごと何が何でも受入れさせて、最低限「県外」の約束を守るしかない。

 〈北マリアナ連邦の上院と下院の議会は、先月、普天間基地の移設先としてテニアン島が最適地であるとして、日米両政府に対し移設の検討を求める決議を行ってい〉ると、「NHK」記事――、《福島氏“受け入れなら努力”》NHK/10年 5月26日 18時3分)が伝えている。

 その上、テニアン島の市長が直々に日本を訪問、社民党本部で福島瑞穂と会談――

 市長「今、沖縄の普天間基地の移設が問題になっているが、アメリカ軍基地が来れば、雇用の場が生まれ、島の経済が活性化する。テニアン島は基地の受け入れを歓迎したい」

 福島「受け入れを歓迎してくれるのであれば、努力したい」

 受入れてくれるなら、私のすべてを与えてもいいとは言わなかったようだ。言われたとしても、相手は断ったかもしれない。

 テニアン移設ということなら、日本政府はお得意芸である最大限のカネの力を以ってして協力するしかない。移転後のテニアン基地維持費もある程度負担する必要が生じるかもしれない。

 「新報道2001」が上記遣り取りの後で、菅直人新首相の沖縄駐留米軍に関係した発言を紹介、その考えを伝えている。

 2003年11月、民主党代表時代の発言――

 菅直人「海兵隊の基地と人員についてですね、必ずしも沖縄に、いー、いてもらわー、なくても、極東の安全、エー、安定は、エー、維持できるという・・・・」

 なかなかの頭のキレる雄弁である。

 10年5月7日、民主党政権下、副総理時の発言――

 菅直人「内閣の中でも、関わりを、持って、おりません」

 米軍海兵隊が沖縄に駐留せずとも極東の安全・安定は維持できるとする考えに立っていたなら、副総理となった以上、普天間移設問題に積極的に関わって、「国外、最低でも県外」を鳩山前首相共々努力してよさそうなものだが、鳩山前首相が、「『国外、最低でも県外』と言ったのは党の公約ではなく、党代表としての私自身の発言」だと訂正したのは5月6日午前の記者会見でのことだから、その翌日の菅直人発言であることからすると、辺野古回帰が不可避な状況となって、それが自身の政治生命に傷がつくことを恐れて口を噤むことにしたことからの、「関係ない」だったのだろうか。

 だとしたら、かなりのご都合主義となる。

 次期総理が確定した6月4日、金曜日の発言――

 菅直人「普天間、移設問題は、基本的には、日米の合意を、踏まえ、同時に、沖縄の負担の権限と言うことを、重視して・・・・」

 紋切り型、月並みな踏襲発言。

 その時々で発言を変える。このご都合主義を以ってすれば、仲井真知事の埋め立て認可サイン拒否を利用して、日米合意の破棄、仕切り直しも不可能ではない。

 ご都合主義が幸いすると言うわけである。

 このような手順を踏むことができたなら、民主党の支持率ばかりか、内閣支持率も上がり、参院選勝利は間違いないに違いない。
 
 日米合意遵守が頭にこびりついて、それを絶対決定事項とし、その忠順な僕(しもべ)であり続けたなら、沖縄の反対、拒絶に逆らって、公有水面埋め立て権限を都道府県から国に移す特別措置法制定に走る最終的な可能性は否定できなくなる。

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菅新首相が首相公邸入居の場合、カネかけるべきではない

2010-06-06 06:23:23 | Weblog

 菅直人首相就任で朝日新聞が6月4・5日に全国緊急電話世論調査を行っている。(参考引用)
 
《菅新首相「期待」59%、民主は回復 朝日新聞世論調査》asahi.com/2010年6月5日22時57分)

 新首相に「期待する」 ――59%
     「期待しない」――33%

 参院選比例区投票先
  民主党――33%(鳩山辞任表明に伴う前回調査28%から+5ポイント)
  自民党――17%(    同        20%から-3ポイント)                
 民主党幹事長の小沢一郎氏と距離を置く菅氏の姿勢
     「評価する」 ――82%
     「評価しない」――10%

 菅氏が首相になることで民主党が「変わると思う」 ――42%
                「そうは思わない」――49%

 「変わると思う」人の中で菅新首相に「期待する」 ――87%

 政党支持率
  民主党――32%(前回29・30日調査27%)
  自民党――14%(同16%)

 民主党中心の政権への継続性
    「続いた方がよい」――38%
    「そうは思わない」――38%
 
 (無党派層に関しては)
    「続いた方がよい」――25%
    「そうは思わない」――45%
 
 政治への変化期待度
  「大きく変わってほしい」――78%
  「それほどでもない」  ――15%
 
 衆院の解散・総選挙
  「早く実施すべきだ」――33%
  「急ぐ必要はない」 ――57%

 昨年衆院選直後調査で首相就任が確実だった鳩山代表に「期待する」は63%だったということだが、それと比較した菅直人「新首相に期待する」が59%。民主党の政党支持率が上がったことと比較すると低い数字に見えるが、結果を見ないことには判断できないことを学んだ分、差引かれているのだろうか。 

 政権の形態に対する期待に関してだが、政界再編は政権担当により有利な状況を保持する勢力への付和雷同・加担のメカニズムが働いて巨大政党の形成に向かう危険があり、健全な競争原理を失う恐れが生じる。常に競争原理が働いて政権交代のある二大政党主体の国の形が望ましいのではないだろうか。

 民主党幹事長の小沢一郎と距離を置く新首相の姿勢を「評価しない」10%に対して「評価する」82%と、評価が大勢を占めているが、これは「政治とカネの問題で国民の不信招いた」と反省、「全議員に関わることだから、襟を正していく」と「政治とカネ」の問題への決別を訴えていたことと、小沢一郎と距離を置く菅直人の姿勢が82%も評価を受けていることからも分かるように、いわゆる“非小沢系”の人事優先が評価されてのことだと思うが、昨5日深夜の首相官邸でのぶら下がり記者会見の発言から見ると、大分怪しくなってくる。「asahi.com」記事から一部参考引用。

 《人事「全員が参加できる態勢に」5日の菅新首相》asahi.com/2010年6月6日0時38分)
 
 ――政治とカネ問題で、小沢氏と鳩山氏が退いた後、なお説明責任を求める声も。菅さんはどう説明責任を果たすべきだと考えるか。

 「まあちょっと、質問のまあ趣旨が、必ずしも、明確には読み取れないんですが、いずれにしてもですね、いろんなところで議論が出てくるでしょう。たとえば国会なら国会という場でですね、ですからそれはそれで、これまでの経緯もふまえて、新しい体制の中で、しっかりと検討すべきものは検討するし、進めるべきものは進めるし、できないものはできないし、それはそういう中で判断したいと思います」

 大分歯切れが悪くなっている。もう触れずにそっとしておきたいという気持から出た歯切れの悪さに思える。

 前置きが長くなったが、本題に入る。

 菅直人新首相は財政再建策を打ち出している。

 〈3日夜の記者会見で、政策の財源は行政の無駄削減で確保できるとした衆院選政権公約(マニフェスト)の見通しが甘かったことを認めた。〉と《財政再建、調整難航も…公約「消費税」明記焦点》YOMIURI ONLINE/2010年6月4日17時24分)が伝えている。

 「リーマン・ショックで税収が大きく下がり、無駄の削減は思ったほどのスピードで実現できなかった」

 財源確保策の無駄削減から消費税増税への方向転換である。

 この方向転換が順調にいくかどうかは記事が、〈小沢氏は「第一に取り組むのは、無駄をやめる決断」との立場で、財政再建をめぐる考えの違いは「親小沢」対「反小沢」の党内対立につながるという見方もある。〉と書いていることからすると、小回りの聞く車のようにはすんなりと方向転換できると限らない。

 だとしても、ムダ削減は政権担当の永遠の課題としなければならないはずである。

 以前「asahi.com」記事を利用してブログにも触れたが、鳩山夫妻が首相公邸入居にかかった経費は――

 内装補修で約218万円
 就寝用の和室の床改修などで約195万円
 洗濯乾燥機2台の購入などで約61万円――計474万円だとする答弁書を2月23日に閣議決定している。


 だが、前の首相たちと比較して少なく見せる陰謀からか、鳩山氏以前の自民党の3首相は「清掃費」なども合算して公表していたにも関わらず、「点検・清掃・クリーニング」代金281万円を抜いた474万円だったと平野長官は3月11日の記者会見で訂正した。

 平野「(鳩山氏の費用については)工事費についていくらかという質問主意書だったから、その部分の数字を(答弁書で)答えた」(asahi.comから)

 前例を参照しないはずはないのだから、平野らしい陰険・狡猾なゴマカシである。

 安倍晋三元首相――222万円
 福田康夫元首相――282万円
 麻生太郎元首相――382万円
 鳩山前首相(既に前となった)――694万円

 474万円に「点検・清掃・クリーニング」代金281万円をプラスすると、755万円になるが、今度は洗濯乾燥機2台購入等の約61万円を抜いたのか、694万円としているが、「asahi.com」記事はこのいきさつに触れていなかった。

 694万円が正しい金額だったとしても、前3首相から比較すると、3倍から約2倍近くと突出している。無駄遣い削減を叫んでいた政党の代表にふさわしい突出振りと言えるのかもしれない。

 鳩山首相は在任約8ヶ月。694万円を8ヶ月で割ると、約87万円近くなる。

 鳩山首相の1ヶ月87万円は小銭程度だろうが、一般庶民から見たら、高額に相当する。在任期限が長い程、入居に要した経費は減価償却が進む。長ければ長い程、一般庶民が納得できる金額にまで下げることができる。

 マニフェストに財源確保策として行政の無駄削減を掲げた以上、またムダ削減は政権担当の永遠の課題としなければならないことからすると、もし菅直人が首相公邸に入居する場合、鳩山前首相の減価償却が不十分であった分を埋め合わせる意味から、入居に新たにカネをかけるべきではなく、前首相当時の設備・家具・調度品をそのまま使用する居抜き状態で入居し、率先してムダ削減の姿勢を示すべきではないだろうか。

 もしもそういった姿勢を見せないまま自身の生活の快適さのみを追求してカネをかけ、尚且つ消費税を上げた場合、消費税増税が社会的弱者を直撃する生活の痛みを口では言っても、心の底では何ら理解しない政策決定だと判断できないことはない。

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菅直人代表立候補演説/過去の実績はどうでもいい

2010-06-05 04:51:42 | Weblog

 昨6月4日、菅直人が第94代の総理大臣に選出された。菅直人は同じ昨4日の民主党代表選投票に先立つ立候補演説で、自身の政治家としての生い立ちを語っていた。婦人運動家の故市川房枝氏の選挙事務長を務めたことが政治に関わる第一歩であり、衆院選、参院選、再び衆院選と立候補して落選、4度目の衆院選で初当選、自社さ連立政権の第一次橋下内閣で厚生大臣を務め、薬害エイズ問題に取り組んだ、等々。

 確かに薬害エイズ事件の処理で見せた実績は素晴らしい。その関与に関して、「Wikipedia」は次のように書いている。

 〈薬害エイズ事件

 薬害エイズ事件の処理に当たり、当時官僚が無いと主張していた行政の明白な過ちを証明する“郡司ファイル”(当時の厚生省生物製剤課長・郡司篤晃がまとめていたのでこの別名がある)を菅直人指揮の下にプロジェクトを組んで発見させ、官僚の抵抗を押し切って提出。血液製剤によるエイズに感染した多くの被害者たちに対して、初めて行政の責任を認めた。薬害エイズ事件の被害者たちに菅が土下座をして謝罪した事で被害者の感動を呼び、この厚生大臣在職中に得た功績が、菅が現実に官僚と戦った稀有な政治家としての大きな人気・政治的資産獲得の基盤となり、後の民主党結党に繋がる事になる。さらにこの事件の菅の処理は、彼が対談を行っていたカレル・ヴァン・ウォルフレンらから、日本に初めて官僚の説明責任という概念を持ち込み、「アカウンタビリティ」(責任)という言葉を定着させた、と高く評価された。 〉――

 だが、これは一国務大臣としての個別問題処理に関わる実績であって、厚生行政政策の創造に関わる実績とは言えず、また、日本に初めて官僚の説明責任という概念を持ち込んだ最初の政治家だったとしても、官僚のみならず、国会議員、閣僚の説明責任は今以て永遠の課題となっていて、殆んどが説明責任から逃れる不完全な制度のまま推移しているし、総理大臣として日本の政治全般に関与し、国と社会を健全な内容を備えた形で構築する作業の成果を保証する実績につながるというわけでもない。

 譬えるなら、民主党が現在行っている事業仕分けと同様であって、それが個々の省庁や法人のムダを省き、職務及び予算執行の効率化を図ることができたとしても、直ちに国家や社会の質の向上、国民生活の向上に資する創造的な政策を生み出し、実践する場面に転換できるとは限らないことと重なる。

 個々の家庭でムダを省いて節約することと、生活の質を向上させることとは別個の問題であることと同じであろう。

 要するに過去の実績をどう誇ろうと、それが総理大臣としての実績につながる保証はどこにもないということである。

 大体が菅直人代表選立候補を表明してから、前原国交相のグループが支持を表明、野田佳彦財務副大臣グループが支持表明、仙谷由人国家戦略相グループも支持表明、元社会党系グループが、元民社党系グループが支持と、いわば小沢一郎グループを除いて雪崩を打つように菅支持に動き、投票する前から、「菅直人代表選出へ」と報道するマスコミもあった程、当選が計算できていた。時間を割くべきは総理大臣に選出された場合の心構えであるべきを、過去に時計の針を戻した。

 いくら対立候補の樽床議員が世代交代を訴えたことに対する自己存在証明のための過去の実績の訴え、年代を経るに応じた経験の積み重ね、経歴の重要性の訴えだったとしても、逆に、年代と経験、経歴を経ているなら、過去の実績が将来の実績に必ずしもイコールとならないことを冷静に客観視すべきを、客観視するだけの考えを働かせることができなかったということではないのか。

 重要なことは総理大臣としてのこれから先の未知数の実績を知数たらしめることであり(知らしめるという意味の造語だが、既知数とするではない)、過去の実績が将来的未知数を知数とする保証とはなり得ないとする心構えこそが、バラ色の夢を安易に振りまいたり、ふわふわした言葉を弄したり、空約束を連発したりを自制させ、厳しい気持で臨む心構えを導き出すはずである。

 菅直人は立候補演説の最後で次のように訴えていた。

 「政治とカネの問題、全議員に関わることだから、襟を正していくこと。第二に日本の経済、社会はこの20年間でどんどん行き詰まっている。なぜなのか。自然現象ではない。まさに政治の間違いです。私は強い経済、強い財政、強い社会保障というのは一体として実現できる。この実現のためにみなさんと共に頑張りたい。みんなが参加できる民主党にする。そのためには政調を是非ご相談の上、復活したい。このことをやっていきたい」――

 今後大きな経済成長が望めない中で財政再建を強力に推し進めると、その財政緊縮政策が小泉構造改革のように社会的弱者の経済を直撃する。景気回復のためだと財政出動政策を推し進めるなら、住宅エコポイント制度やエコカー減税等が証明しているように収入の高額方向に比例して、そういった層がより多くの利益を受け、社会的弱者の経済は取り残されるか後回しにされる。

 社会保障費財源確保に消費税増税は止む得ないとすると、同じく社会的弱者の経済に打撃を与えないでは済まない。

 社会保障にカネをかけすぎると、労働世代の経済に負担の皺寄せを及ぼす。このような矛盾をすべて解消して、「強い経済、強い財政、強い社会保障」を「一体として実現」するとバラ色の社会を約束した。

 民主党は政策調査会の休止によって、「みんなが参加」できない政党となっていた。そのことに気づいていた。気づいた時点で休止を決定した小沢幹事長に再会を進言するのではなく、その重石が取れてから、党に諮って復活を求める。

 この経緯は何事も自分の思うとおりには進めることができない障害の存在を物語っている。いくら指導力を有していても、それを阻害し、発揮できない場面があることを教えている。

 とするなら、なおさらに過去の実績は当てにならず、未知数を知数とすることに関しても、容易ではないことを客観視すべきであったろう。

 投票の結果、当選を知らされると、菅直人は歯を見せて嬉しそうに笑った。いくら当選が計算できていた投票結果だとしても、責任の重さ、前途多難さを微塵も見せない顔となっていた。総理大臣になることが目的なら許されるが、日本国家の運営を担う使命を前にしたこの楽観的表情と今後菅内閣を取り巻くに違いない数々の難題、厳しい困難に見せるに違いない、予想される表情との落差にテレビを見ていて、何とはなしの違和感を感じた。

 総理大臣として実績を上げることができなかったら、過去の実績など吹き飛んでしまう。精々厚生だ人どまりだった、総理大臣の器ではなかったと。

 そうならないことを願うが。


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誰が新首相になろうと、結果を見てみないと政権担当能力は把握できない

2010-06-04 05:16:30 | Weblog

 このことは自民党政権時代の安倍晋三、福田康夫、麻生太郎、民主党政権の鳩山由紀夫の歴代首相が教えてくれる。安倍晋三の前の長期に亘って政権を担当した小泉純一郎にしても、競争原理を原理主義的に展開した新自由主義は各種格差を拡大して首相退陣後批判を浴びることとなった。

 尤も国民的人気は現在も維持しているが、格差をつくり出して社会を歪めた罪と国民的人気の矛盾はなかなか説明できない。多分、格差拡大の被害を受けなかった層が人気演出の源泉となってるのかもしれない。

 自民党は参院選挙のために表紙を変えるだけで民意を問わないのは許されないと、自分たちがそっくり同じことをしてきたことをご都合主義よろしく忘却の淵に沈めて騒いでいる。だが、二つ前のブログに、首相が〈「コロコロ代る」こと自体が問題ではなく、そういった状況をかつて民主党と国民が問題としたのは、民意を問うことが必ずしも首相交代の要件とはならないはずだが、首相のリーダーシップの化けの皮が剥がれただけではなく、自民党政治そのもの、その政治の体質そのものに疑問符がついたにも関わらず、当然、トップが誰になろうと、自民党政治の体質そのものが変わるはずはなく、リーダーシップのない首相の首のすげ替えのみで政権維持を図り、自民党政治そのもの、その政治の体質に審判を求める民意を問うという責任の取り方をしなかったこと、その無責任だったはずであ〉り、〈現在、国民が問題としていることは鳩山首相自身のリーダーシップの欠如であって民主党政治そのもの、その政治の体質に疑問符をつけているわけではないはずである。もしこの見方が正しいなら、トップのリーダーシップを取り戻すべく、新しい首相に代えることが急務となっていることになる。〉と書いたが、このことが間違いではないことを朝日新聞の緊急世論調査が証明している。(参考引用)

 《朝日新聞緊急世論調査―質問と回答〈6月2、3日実施〉》asahi.com/2010年6月3日22時24分)

 (数字は%。小数点以下は四捨五入。質問文と回答は一部省略。丸カッコ内の数字は、5月29、30日の前回調査の結果)

◆鳩山首相が辞任を表明しました。辞任するのはよかったと思いますか。よくなかったと思いますか。

 よかった  62

 よくなかった27

◆いま、どの政党を支持していますか。

 民主党27(21)

 自民党16(15)

 公明党 3( 4)

 共産党 2( 1)

 社民党 1( 1)

 みんなの党3(5)

 国民新党0 (0)

 たちあがれ日本0(0)

 新党日本0 (0)

 新党改革0 (0)

 幸福実現党0

 その他の政党0(0)

 支持政党なし40(45)

 答えない・分からない8(8)

◆今年の夏に参院選があります。いま投票するとしたら、比例区ではどの政党、どの政党の候補者に投票したいと思いますか。

 民主党28(20)

 自民党20(20)

 公明党 5( 5)

 共産党 3( 3)

 社民党 2( 1)

 みんなの党6(9)

 国民新党0 (1)

 たちあがれ日本0(0)

 新党日本0(0)

 新党改革0(0)

 幸福実現党0

 その他の政党1(0)

 答えない・分からない35(41)

◆鳩山首相が参院選の直前のこの時期に辞任することは、適切だと思いますか。適切ではないと思いますか。

 適切だ   38

 適切ではない50

◆鳩山さんは、約8カ月首相を務めました。鳩山内閣の実績をどの程度評価しますか。(択一)

 大いに評価する   3

 ある程度評価する 37

 あまり評価しない 43

 まったく評価しない16 

◆鳩山首相は辞任の理由として、普天間飛行場の移設問題で社民党が連立政権から離脱したことと、政治とカネの問題を挙げました。この説明に納得できますか。納得できませんか。

 納得できる 40

 納得できない53

◆鳩山首相とともに、民主党の小沢幹事長も辞任することになりました。小沢さんが幹事長を辞任するのはよかったと思いますか。よくなかったと思いますか。

 よかった 85

 よくなかった9

◆次の首相にはだれがよいと思いますか。民主党の国会議員の中から1人だけ挙げてください。

 菅直人29▽前原誠司15▽岡田克也7▽原口一博1▽小沢一郎1▽蓮舫1▽答えない・分からない44

◆鳩山首相と小沢幹事長が辞めることで民主党に対する印象はよくなりましたか。悪くなりましたか。変わりませんか。

 よくなった17

 悪くなった12

 変わらない68

     ◇

 調査方法 2日夕から3日夜にかけて、コンピューターで無作為に作成した番号に電話をかける「朝日RDD」方式で、全国の有権者を対象に調査した。世帯用と判明した番号は1725件、有効回答は1108人。回答率64%。

 鳩山首相が参院選の直前のこの時期に辞任することは「適切だ」38ポイントに対して「適切ではない」50ポイントと、不適切が12ポイント上回っているが、「適切ではない」が首相が職にとどまる限り支持率の一層の低下が期待できて、参院選対策上有利と見ていた自民党やその他の野党支持者の意思表示が多く含まれていると見ると、政党支持率と参院選比例区投票先ではそれぞれポイントを上げていることと矛盾しなくなる。
 
 この世論調査の全体から判断して、民主党政治そのもの、その政治の体質に疑問符をつけているわけではないことが理解できる。

 だとしても、鳩山首相の指導力の欠如を決定づけた普天間基地移設問題を新首相は当然引き継いでいかなければならない。首相就任と同時に待ち構えて、沖縄と徳之島の強固な反対状況と対峙し、何らかの解決策を見い出していく必要に迫られる。いわば普天間問題は指導力が最大限問われる場面であることに変わりはない。

 菅直人は代表選立候補の記者会見で普天間問題について次のように発言している。

 「沖縄の普天間基地移設問題でも多くの皆さんに失望を与えてしまいました。沖縄の米軍基地問題は沖縄の人々の負担の軽減や安全保障をめぐる日米の信頼関係の維持など極めて難しい問題です。日米合意を踏まえつつこれからも沖縄の負担軽減という目標に向かって大きな息の長い努力が必要です」(《【民主党代表選】菅出馬会見詳報4完「もう一度予算、国民は理解」》 MSN産経/2010.6.3 23:56)

 一方の対立候補者樽床伸二衆議院議員は、〈主要政策として(1)衆院定数の80削減(2)社会保障の抜本改革と消費税率引き上げ(3)米軍普天間飛行場移設に関する日米合意順守-などを挙げた。〉と「時事ドットコム」記事――《閣僚人事は小幅と菅氏示唆=樽床氏「衆院定数を80削減」-民主代表選》 2010/06/03-22:09)は書いている。

 両者とも鳩山首相がオバマ大統領に感謝されたと言っていた民意の頭越し決定の「日米合意」を前提とした解決策を提示している。この民意の頭越し決定の「日米合意」という反民主的矛盾にどのような整合的決着を与えるのだろうか。

 徳之島へは訓練の一部移転と言っておきながら、平野博文官房長官は1日午前の参院外交防衛委員会で、「訓練移転のみというふうには理解していない」と発言したそうで、その心は、〈施設整備が進めば基地機能の移転もあり得るとの認識を示した。〉ものだと、《訓練移転のみとは理解せず 徳之島で平野、岡田両氏》47NEWS/2010/06/01 13:06 【共同通信】)が解説している。

 〈岡田克也外相も、移転対象は日米共同訓練、米軍の単独訓練だけでなく「米軍の活動」が含まれると説明した。〉という。

 記事は最後に、〈共同声明は日米両政府が「2国間及び単独の訓練を含め、米軍の活動の沖縄県外への移転を拡充することを決意した」とした上で「徳之島の活用が検討される」と記述。しかしこの部分は「訓練移転」の項目に含まれており、論議を呼びそうだ。〉と書いている。

 訓練の一部移転と言っていたのが、基地機能そのものの移設、部隊の移動をも想定していた。頭越しも頭越し、後出しジャンケン以外の何ものでもない。

 どう解決していくのか。既に民主党政権のトゲとして突き刺さった状況にある。トゲが身体の奥深くまで突き刺さっていくのか、それともうまく引き抜くことができるのか、取り扱い次第で再び指導力の欠如をさらけ出し、誰が新首相になろうと、結果を見てみないと政権担当能力は把握できないということの繰返しが発生、再び1年かそこらで首のすげ替えが演じられるといった事態が起こることになるのかもしれない。

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鳩山辞任/死者に鞭打つ

2010-06-03 04:53:42 | Weblog

   ――民主党に衆・参両院過半数のチャンスを与えよう――

 鳩山首相が辞任した。ある意味、死者となった。死者に鞭打つこととした。鳩山首相が辞任表明した5月2日午前開催の民主党両院議員総会での発言の中での言葉。

 《国民が聞く耳持たなくなった…鳩山発言全文2》YOMIURI ONLINE/2010年6月2日13時11分)(参考引用)

 様々な変化が国民の暮らしの中に起きている。水俣病もそうだ。さらには医療崩壊が始まっている地域の医療を何とかしなきゃいけない。厳しい予算の中で医療費をわずかですが増やすことができたのも、国民の意思だと、私はそのように思っている。これから、もっともっと人の命を大切にする政治、進めていかなければならない。

 ただ、残念なことにそのような私たち政権与党のしっかりとした仕事が必ずしも国民の心に映っていない。国民が徐々に徐々に聞く耳を持たなくなってきてしまった。そのことは残念でなりませんし、まさにそれは私の不徳の致すところと、そのように思っている。

 その原因、二つだけ申し上げる。やはりその一つは、普天間の問題でありましょう。沖縄の皆さんにも(鹿児島県の)徳之島の皆さんにもご迷惑をおかけしています。ただ、私は本当に沖縄の外に米軍の基地をできる限り移すために努力をしなきゃいけない、今までのように沖縄の中に基地を求めることが当たり前じゃないだろう、その思いで努力をして参りましたが、結果として県外にはなかなか届きませんでした。これからも県外にできる限り、彼ら(米軍)の仕事を外に移すよう努力をして参ることは言うまでもありませんが、一方で北朝鮮が韓国の哨戒艇を魚雷で沈没させるという事案も起きている。北東アジアは決して安全安心が確保されている状況ではない。その中で日米の信頼関係を保つと言うことが、日本だけではなく、東アジアの平和と安定のために不可欠なんだという、その思いのもとで残念ながら、沖縄にご負担をお願いせざるを得なくなった。そのことで、沖縄の皆様方にもご迷惑をおかけしています。

 「国民の心に映っていない」とは、理解されない状況を言うはずである。また、“聞く耳を持たない”とは、『大辞林』(三省堂)によると、「これ以上聞く気がしない」という意味で、ここでは耳に入ってくる政策・言葉に対しての不同意行為を示す。不同意とは理解に関わる反応を言うのだから、「国民の心に映っていない」と同様、「国民が徐々に徐々に聞く耳を持たなくなってきてしまった」も理解されない状況を言っているはずである。

 鳩山首相はその原因を普天間移設等に関わる「私の不徳」としているが、実際には国民の不同意行為の対象を「私たち政権与党のしっかりとした仕事」に置いている。自身の指導力欠如、発言の不信用性に置いているわけではない。

 「国外、最低でも県外」と言っておきながら、「できる限り、県外」と言ったと言い直したり、あるいは自身が先頭に立って発言した言葉でありながら、「民主党自身も野党時代に県外、国外移設を主張してきたという経緯がある」と民主党発の発言であるかのようにすり替えたり、相変わらずゴマカシがある。

 何よりも問題なのは、責任主体をどこに置いているかである。「私たち政権与党のしっかりとした仕事」という正当事項と対比させた「国民が徐々に徐々に聞く耳を持たなくなってきてしまった」ということだから、不当事項と看做していることになる。

 「私たち政権与党のしっかりとした仕事」の素晴らしさを国民に理解させるもさせないも偏に首相を筆頭とした閣僚、その他の指導力、実行能力にかかっているはずだが、「国民が徐々に徐々に聞く耳を持たなくなってきてしまった」と、理解しなくなったのは国民だと、国民に非を置いている。

 決して、「国民に聞く耳を持たせなくさせてしまったのは(=国民に聞く耳を失わせてしまったのは)私自身の指導力、その他の資質だ」と、このような状況に至らしめた主体を自身には置いてはいない。

 ここに首相自身の狡さを見る。

 首相は5月2日夕方の首相官邸ぶら下がり記者会見でも「聞く耳を持たぬ」発言をしている。

 《「身を引くことが国益につながると判断」2日の鳩山首相》
asahi.com/2010年6月2日20時57分)(一部抜粋参考引用)

 【議員の進退】

 ――去年7月、首相を終えた後は、政界に残ってはいけないと発言した。議員辞職する考えは。

 「私は国会議員としてのバッジを与えて頂いた、有権者が選挙で選んで頂いた。それを途中で投げ出すべきではないと。しかし総理たる者、その影響力をその後、行使しては、行使しすぎてはいけない、そのように思っています。従って私は、次の総選挙に出馬はいたしません」

 ――すぐに辞職するわけではないと。

 「次の総選挙には、出馬をいたしません」

 ――菅副首相から代表選出馬の意向が示された。菅氏を支持するか。

 「影響力をあまり行使してはいけないと、今申し上げた通りでありまして、私から誰かを指名するとかいう意図はありません。菅副総理には、当然今まで一番近くで、行動をしてくださっておった方でありますから、まず、がんばってくださいということは申し上げました」

 【同時辞職】

 ――首相から幹事長に一緒に辞めようと言ったそうだが、それは月曜の会談の際に段階で言ったのか。小沢氏の反応は。

 「月曜(5月31日のこと)、火曜(6月1日のこと)とお会いしました。月曜(5月31日)の時には私の方から身を引きたいと、辞したいと申し上げました。その翌日(6月1日)、3人でお会いした時に、私も辞めますが、先ほど両院総会で申しあげましたように、一番求められているのは、政治とカネにおけるクリーンさだと、やはりクリーンな民主党に戻さなきゃいかんと、そのために幹事長にも身を引いて頂きたいということは申し上げた。『分かった』ということでありました。そして改めて、小林千代美さんにも引いてもらいたいということを私から申し上げた。幹事長が、『それは私がやろう』と申されました」

 【「親指」の意味】

 ――昨日(6月1日のこと)3人でお話しになった後に、我々の「続投か」の問いに、首相は親指をあげた。その意味は。

 「自分が心に決めていても、それを表したときに、どのようになるか、それはおわかりでしょう。ですからそれは、自分の心というものを、外には一切出さないように努めました」

 【首相の言葉】

 ――聞く耳を持たなくなったというが、なぜか。言葉をどう大切にしてきたか。

 「私は自分なりに大切にしてきたつもりです。ただやはり、聞く耳を持たなくなったのは、一番は政治とカネ。そして2番目はやはり、普天間における、県外といったじゃないかと、連日のようにそのことが喧伝(けんでん)をされて、県外に最終的に十分にならなかったと、これは約束が違うではないかと、いうことです。その二つを私は例示いたしましたが、基本的にはこういったことが、国民の皆さんが私に対して、あるいは政権に対して、聞く耳を持たなくなった原因だと思ってます」

 意図してのことかどうか分からないが、ここでは両院議員総会で発言した正当事項と対比させた「聞く耳を持たなくなった」の不当事項としてではなく、直接的に普天間問題や「政治とカネ」の問題を不当事項とした「聞く耳を持たなくなった」の正当事項に変えて、両院議員総会での発言の解説で終わらせる、一種の使い分けを働かせている。

 ここにも首相の狡猾な巧妙さを見てしまう。

 【同時辞職】に関して、首相は5月31日の月曜日に首相の方から辞任を申し出たとしている。自発的申し出ということなら、十分に考えた末での決意のはずだが、ではなぜそのとき一緒に幹事長の同時辞任を申し出なかったのだろうか。申し出たのは次の日の6月1日としている。1日置かなければ、思いつかなかった同時辞任だったということなのだろか。

 その日の会合を終えた部屋から出てきたとき、記者の「続投か」の問いに首相は左手の親指をそれとなく突き上げるポーズを取ったが、そのことに関して首相は尤もらしげに小難しいことを言っているが、自身が意図した同時辞職が成功したそれとないサインだったことになる。

 だが、指導力がないと言われ、支持率を危険水域にまで下げての辞任なのだから、口許に笑みを漂わせたり親指を突き立てるポーズは不謹慎を超えて、神経が緩んでいるのではないのかとテレビを見ていて、そう思った。

 その上、辞任の経緯については鳩山首相が言っていることと違って、《「解任動議通る」早朝電話で引導=自信の親指立てで情勢一変-小沢氏》時事ドットコム/2010/06/03-00:34)によると、6月2日の朝、小沢幹事長が首相に電話を入れて、「両院議員総会で代表解任動議を出せば通ってしまうよ」と辞任を迫ったところ、首相は「分かりました」と同意したことになっている。

 と言うことは、記事には書いてないが、首相が言っていることと違って、そのとき小沢幹事長との同時辞任を申し出たことになる。

 親指を立てたことについて、記事は、〈◇「ちゃめっ気」が命取りに

 首相の姿をとらえた映像は1日夜、幾度となくテレビで流れ、首相秘書官の1人は「辞める気がないということだ。ちゃめっ気だ」と解説した。しかし党内の受け止めは冷ややかだった。「自分の進退問題なのだから神妙にするものだ。首相のやることじゃない」。首相続投もやむを得ないと、比較的冷静だった衆院側にも怒りと反発の声が広がり、首相の運命は暗転した。〉と、不用意・不謹慎な親指のポーズが首相の辞任という運命を決定づけたとしている。

 〈党規約によると、両院議員総会は全議員の半数の出席で成立し、その過半数の賛成で党の意思決定がなされる。〉そうだ。

 最後に記事は首相の発言の信用のなさを解説している。

 〈首相は2日夜、記者団に、小沢氏らに辞意を伝えたのは5月31日の3者会談と主張、「自分が身を引くのが国益につながる」と辞任はあくまで自身の判断と強調した。しかし、首相はこの会談の直後、「厳しい局面だが、3人で頑張ろうということになった」と説明。続投は「当然だ」とまで語っていた。首相の発言は最後の最後まで、猫の目のようにくるくると変わった。〉

 事実はまだ闇の中だが、鳩山首相という人間の発言が信用されていないという“事実”は広く事実とされていることだけは間違いない。

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