「首相がコロコロ代るのは如何なものか」、or「出処進退は本人が決める」のマヤカシ

2010-06-02 05:03:08 | Weblog

 民主党は参院選勝利に向けて鳩山首相を“罷免”しよう!!

 鳩山首相が昨6月1日、夕方6時過ぎから民主党の小沢一郎幹事長、輿石東参院議員会長と国会内で会談、支持率が政権維持の危険水域を記録し、夏の参院選で苦戦を予想される状況を受けて、首相自身の進退も含めて当面の政権運営について協議したと言う。

 結果、結論を得ず、日を改めて協議するという結論に至ったということだが、鳩山首相の首の皮一枚つながったということなのか、あるいはそこまでいっていないということなのか。

 それとも続投は予定行動で、退陣論をかわす儀式として執り行ったものの、一度で結論を出したのでは世論も退陣論もかわし難い、ガス抜きとはならないと見て、協議続行の演出を演じたのか。

 鳩山内閣の閣僚の多くは退陣反対、続投支持を掲げている。各閣僚の支持発言を、《閣僚 首相支持の意見相次ぐ》NHK/10年6月1日 12時17分)の記事とその動画から見てみる。NHK記事には日付は書いてないが、1日午前の閣議後の閣僚記者会見での発言。

 菅副総理「鳩山政権の元でェ、鳩山、総理を支える、という立場には変わりはありません。もともとォ、オー、任期一杯の、オー、4年間、アー、総理を、しっかりと、オー、務めていただきたいということを、申し上げてきましたし、その気持は変わっておりません――」(動画)――

 これだけのことを発言するのに、オー、だ、エー、だと苦労する。子どもの言語力貧困が言われているが、大人の言語力貧困を受けたその反映だということがよく理解できる。相互性としてある元々の言語力の程度だから、言語力低下ではない。敢えて言うなら、貧困言語力というべきであろう。

 原口総務相鳩山総理で戦えるかどうか、っていうような問題設定、そのものを、この閣僚の立場でですね、言う、ことはできません。いや、むしろ、そのような問題設定をし、リーダーを1年おきに変えていく、この構造そのものを変えなければ私たちの国は、やはりまた、同じところを堂々まわり、めぐり、してしまうじゃないかと。総理を支えて、そしてしっかりと勝ち抜いていく、ことが大事だと、いうふうに考えています」(動画)

 前原国交相「普天間の問題で象徴されるような、エー、総理のリーダーシップの問題、あるいはツートップの政治とカネの問題、マ、こういった問題がきわめて大きくて、支持率が下がっているのは事実でございます。・・・・総理がころころ代るってことは、私は、如何なものかと思いますし、鳩山総理は反省すべきところはしっかり反省して貰って、そして政権交代に課された民主党というものの重みを、最も大きく感じていただいて、頑張っていただきたい――」(動画)

 仙谷国家戦略担当相「代ることは全く想定していません。私の守備範囲を粛々と、オー、予定通りやろうと、いうふうにやろうと思って、いる、ところで、ございます」

 亀井静香「エー、粛々と、オー、この、今の日本、大変な状況ですから、これに取り組んでいかれると、いう、ことだと思いますね。私も、全力でそれを、オー、支えていくと、自信を持って、鳩山総理を支えて、頑張ってもらいたいと――」
」(動画)

 中井国家公安委員長「次の選挙で改選される参議院議員は、厳しい環境で選挙を戦うのに、沖縄の問題などもあり、敏感に反応しているのではないか。わたし自身は閣僚の一員として当然、総理大臣を支え、職務を全うしていきたい」(記事)

 小沢環境大臣「総理大臣として、普天間基地の移設問題の5月末決着や、連立与党内の合意などを果たせなかったことでは、やはり一定の結果責任はある。ただ、できるかぎり沖縄の負担を軽減したいとチャレンジをした総理大臣は初めてなので、そうした思いと行動は支持したい」(記事)

 首相退陣となって、新首相就任となれば、当然、閣僚の入れ替えが行われる。留任する閣僚もいれば、首を挿げ替えられる閣僚も出てくる。首の挿げ替えが誰に当たるか分からない以上、続投支持して保身を図りたいのは利害上の人情であろう。社民党辻元清美国交省副大臣は最初は連立離脱に反対していたのだが、社民党連立離脱の煽りを食って辞任の貧乏クジを引くことになった。前原国交相と職員の見送りを受けて国交省を去るとき、堪え切れずに泣き出した姿がたった8ヶ月の在職であるにも関わらず、職に就いていることのその居心地のよさを窺わせたことからしても、各閣僚が自己保身の意識が先に立ったとしても不思議はない。

 原口総務相が、「鳩山総理で戦えるかどうか、っていうような」「問題設定をし、リーダーを1年おきに変えていく、この構造そのものを変えなければ」ならないと、このことを憂えるが如くに尤もらしく言っているが、就任から1年前後、あるいは選挙を控えた時期になると交代論が出てくること自体を問題としなければならないはずだ。

 要するに「リーダーを1年おきに変えていく、この構造そのものを変えなければ」ならないのではなく、1年前後でいともあっさりとリーダーシップの化けの皮が剥がれるトップの存在と、リーダーシップの化けの皮が剥がれたにも関わらず、そのようなお粗末な政治家を擁護してリーダーシップ欠如の責任を取らない構造自体が問題ではないのか。

 それともリーダシップの欠如がはっきりとしたリーダーであるにも関わらず、「リーダーを1年おきに変えていく、この構造」は問題だからと、リーダーシップのないリーダーをそのままトップの座に据えておくべきだとでも言うのだろうか。

 もしそうだとしたら、これは国民に対する背信行為そのものではないのか。

 リーダーが確固たるリーダーシップを備え、周囲からも支えられてそのリーダーシップを強固に発揮できさえすれば、「リーダーを1年おきに変えていく、この構造」は自然と消滅するはずである。

 原口総務相は自己保身も手伝ってか、問題を逆に把えているだけではなく、リーダーのリーダーシップに一切言及しないのはマヤカシそのものであろう。国民にとってはリーダーの問題解決能力=リーダーシップこそが重要であるはずだからである。

 リーダーシップこそが重要である以上、例え最初にそのリーダーシップに期待して支持を与えたとしても、その化けの皮が剥がれた場合、国民は世論調査を通してその存在にノーを突きつけ、選挙を待ってその進退に審判を下す。

 国民がそうであるなら、閣僚も党も、例え「リーダーを1年おきに変えていく、この構造」を取ることになったとしても、国民に準じた審判を選択すべきであろう。

 鳩山首相は普天間移設問題で、さもリーダーシップがあるかのように問題解決を09年12月末、10年3月末、10年5月末と区切って、区切りつつ先延ばしするリーダーシップを演じ、追い詰められて「5月末決着」をクリアするために地元・連立政権の合意抜きに自民党政権が決めた現行案にほぼ妥協する日米合意のみの最後のリーダーシップを見せることになった。

 オバマ大統領に請合ったと言う、「トラスト・ミー」も、自らのリーダーシップへの意思表示だったはずだ。だが、即座には「トラスト・ミー」とはならなかった。

 「政治とカネの」問題もあるが、最近の状況としては基地移設のこのような経緯を受けた支持率の低下であり、その影響を受けた退陣論の噴出であるはずだ。それがたまたま、「リーダーを1年おきに変えていく、この構造」になろうとしているに過ぎない。

 前原国交相にしても、「普天間の問題で象徴されるような、エー、総理のリーダーシップの問題、あるいはツートップの政治とカネの問題、マ、こういった問題がきわめて大きくて、支持率が下がっているのは事実でございます」と的確にリーダーシップの問題と「政治とカネ」の問題を取り上げているが、鳩山首相のリーダーシップに言及しながら、「総理がコロコロ代るってことは、私は、如何なものか」と相矛盾したことを言っている。

 「リーダーを1年おきに変えていく」と同様に、 「コロコロ代る」こと自体が問題ではなく、そういった状況をかつて民主党と国民が問題としたのは、民意を問うことが必ずしも首相交代の要件とはならないはずだが、首相のリーダーシップの化けの皮が剥がれただけではなく、自民党政治そのもの、その政治の体質そのものに疑問符がついたにも関わらず、当然、トップが誰になろうと、自民党政治の体質そのものが変わるはずはなく、リーダーシップのない首相の首のすげ替えのみで政権維持を図り、自民党政治そのもの、その政治の体質に審判を求める民意を問うという責任の取り方をしなかったこと、その無責任だったはずである。

 現在、国民が問題としていることは鳩山首相自身のリーダーシップの欠如であって民主党政治そのもの、その政治の体質に疑問符をつけているわけではないはずである。もしこの見方が正しいなら、トップのリーダーシップを取り戻すべく、新しい首相に代えることが急務となっていることになる。

 にも関わらず、リーダーシップのない首相を擁護するという国民に対する背信行為に当たるマヤカシを演じている。

 野田財務副大臣も鳩山首相の進退について発言している。31日に行った千葉市内の講演後、記者団に語った発言だそうだ。記事によって発言の内容が異なるから、二つの記事を取り上げることにする。

 《首相進退「自分で考えること」=野田財務副大臣》時事ドットコム/2010/05/31-13:39)

 野田財務副大臣自民党時代の『麻生降ろし』みたいなことをやったら、恥の上塗りになる。(首相が)自分で考えることだ」

 「なぜ、あれだけ明確に『県外(移設)』を言ったのか、なぜ、『5月末までに結論』と言ってしまったのか。・・・・(サッカーの)日本対イングランド戦での二つのオウンゴールみたいなものだ」

 《野田財務副大臣「進退は本人が決める」 普天間巡る首相責任論に》日本経済新聞WEB版/2010/5/31 16:44)

 野田財務副大臣出処進退は本人が決めるものだし、私は内閣の一員だからとやかく言う立場でない。一生懸命支えていくのが役割だ」

 (支持率の低下について)「重たく厳しい現実だと思う。(参院選に向け)みんなで歯を食いしばって流れを変えていくように努力するしかない」――

 「自民党時代の『麻生降ろし』みたいなことをやったら、恥の上塗りになる」はやはり閣僚としての立場・利害からの発言であり、首相自身のリーダーシップの欠如を問題とした場合、それは国民に対する背信行為の積み重ねに当たるはずだから、「恥の上塗り」として“鳩山降し”を避け、延命を図ること自体がマヤカシとなる。

 また、「出処進退は本人が決める」場合もあるが、多くの場合、初期的には有権者、国民の評価判断の影響を受けた決定事項であるはずである。評価は世論調査に現れるが、強制力はなくても、それが本人の「出処進退」に影響するのを見てきているし、世論調査の支持率が影響する選挙を通した有権者の評価判断、審判は強制力を持って、「出処進退」に影響してきたことも見てきている。

 功なり名を遂げて引退といった場合を除いて、リーダーシップの欠如や失政を問われて「出処進退」を決める多くの場合、本人が自発的に決めるよりも、世論や選挙の審判を受けた受動的な決定となることが殆んどであろう。

 野田は「出処進退」のこのような経緯を一切隠して、本人のみの決定事項だとするマヤカシを演じている。いかがわしいばかりではないか。

 国会議員を選択するのも国民であり、拒絶するのも国民の権利としてあるはずである。その選択の可否を世論調査や選挙で以て表現する。

 鳩山首相は続投意思を見せ、その理由に国民の暮らしを守ること、国民の生命・財産を守ることを掲げている。《「鳩山首相VS記者団」 「これからも行動していきたい」6月1日午前7時20分過ぎ》毎日jp/2010年6月1日)(全文参考引用)

Q:おはようございます。
A:おはようございます。

Q:フジテレビです。よろしくお願いします。民主党内では選挙を控えた参院を中心に、総理に退陣を求める声が高まっている。総理はこうした声にどのように答えるか。また、昨日続投を宣言しているが、この問題を巡っては小沢(一郎)幹事長らと再び協議をされることと思う。どのような点で意見を一致させていきたいとお考えか。

A:はい。やはり代表・幹事長ですから、しっかりと協議をして、協力をして、この国難に立ち向かってこうと。大事なことは、国民のくらしですから。国民の皆さんのお暮らしのために、何がベストかということを考えながら、政策をおっきく変えるために出発をしてきた、この新政権、その新政権にふさわしい形で、これからも行動していきたいと、そのように思っています。

(※「ありがとうございました」)――

 「国民の暮らし」を守ることは首相一人ではなく、既に国会議員を目指した時点で、その責任を担う使命を自らに課したはずで、当然、国民の選択を受けて国会議員となった以上、誰であっても、常にその責任を担う立場に自分を置いているはずである。

 現実には、そうでない政治家が多くて困るのだが、国民は各政治家が担った責任を果たすだけの能力があるかどうかを問題とする。意気込みではない。政治家がいくら意気込みを語っても、「国民の皆さんのお暮らし」と丁寧語の「お」をつけて如何に丁寧に言おうと、指導力のないところから責任能力は期待できないことを知っている。

 「国民の暮らし」を守る政治がリーダーシップがカギとなる以上、何もリーダシップのない鳩山首相に頼る必要はないとうことである。それが鳩山内閣の支持率に現れている。

 改めていうが、「リーダーを1年おきに変えていく、この構造」とか、「総理がころころ代る」「自民党時代の『麻生降ろし』みたいなこと」といった問題では決してないということである。

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「信念」を持っていない男が「信念を持って乗り切っていく」と言うことの矛盾

2010-06-01 06:21:08 | Weblog

 民主党は参院選勝利に向けて鳩山首相を“罷免”しよう!!

 昨31日朝、首相が起き出して首相公邸から出てくるのを待ち構えていたのだろう、早々にマイクを向けて、何人かいた記者の中から女性記者が質問した。《首相“信念をもって頑張る”》NHK/10年5月31日 9時52分)(動画から)

 女性記者「社民党が連立離脱を決定しましたが、支持率が低迷する中、総理は進退を含めて、今後どのように対応していくおつもりでしょうか?」

鳩山首相「社民党さん、残念ながら、政権離脱ということになりました。まあ、安全保障に関する基本的な、考えが、残念ながら合わない、ということで、大変、残念に思っています。

 やはり、ここは信念を持って、乗り切っていくしかありません。やはり国民のみなさんのために、しっかりした政治を取り戻していくと、いうことで、頑張ると。この一点であります」

 一礼して、車に乗り込んだ。

 「国外、最低でも県外」の“信念”を早々に放棄し、それを見せかけの“信念”に変えた男が、「やはり、ここは信念を持って、乗り切っていくしかありません」と力強く宣言する。

 「辺野古の海を埋め立てることは自然への冒涜だ」と、辺野古拒絶の“信念”を一夜にしてと言っていい程の早さで投げ捨て、それを風に吹かれた一枚の鳥の羽のように風に舞う“信念”に変えた男が、「やはり、ここは信念を持って、乗り切っていくしかありません」と、“信念”を振り回す。

 「5月末決着」の最後の“信念”を体裁づけるべく、地元・連立内閣・日米の三者合意を投げ捨て、日米合意のみを掲げて「5月末決着」だと取り繕う“信念”もへったくれもない男が「やはり、ここは信念を持って、乗り切っていくしかありません」と、“信念”を拠り所とする。

 これまで「しっかりした政治」を行ってこなかった、その能力がなかった。だから、「しっかりした政治を取り戻していく」という経過を踏むことになるのだが、「しっかりした政治」を行う能力のなかった男が、どう「取り戻していく」というのだろうか。

 引き続いての政権運営の口実に「国民のみなさんのために」を根拠とすること自体が恩着せがましいばかりである。国民は「国民のみなさんのため」の政治となっていないと見て、世論調査を通して最低評価しているのである。「国民のみなさんのため」の政治となっていないにも関わらず、「国民のみなさんのために」を政権運営の根拠とする。疎ましいばかりの奇麗事の矛盾となっている。

 政府は“沖縄負担パッケージ軽減論”を振りかざして、「国外、最低でも県外」から辺野古県内移設を正当化しようとしている。これまでブログに何度も書いてきたが、普天間基地移設分に関しては「国外、最低でも県外」なら負担ゼロとなるが、パッケージ軽減なら、負担はゼロからプラスに向かう。沖縄全体として見ても、辺野古に残った分とパッケージ軽減との差引きで政府はマイナスを保証できるというのだろうか。

 平野官房長官が31日午前の記者会見で、やはり“パッケージ軽減論”を振りかざして、辺野古移設の日米合意を正当化している。《官房長官 鳩山政権で参院選を》NHK/10年5月31日 14時7分)

 平野「日米の信頼関係を構築するとともに、沖縄県民の負担はパッケージとして軽減されると思っており、今回の政府方針の決断はやむをえなかった。ただ、社民党の連立政権離脱に至ったことはきわめて残念だ。離脱に伴う影響は当然あると思う」

 「政策について社民党と合意している項目もあり、これは政府としてもしっかりやらなければならない。選挙協力についても、党と社民党との間で詰めているが、今までの流れも含めて理解を頂き、なんとしても協力関係を維持してもらいたい」

 「当然、責任者だから、鳩山総理大臣の結果責任はあると思う。評価が厳しいのは事実だが、鳩山総理大臣としても、そのことは謙虚に受け止め、全力で国民の理解を得て参議院選挙を戦うべきだというのが、現実の認識だと思う」

 辺野古移設、日米合意、政府方針の閣議署名、社民党党首の署名拒否、罷免、連立離脱の経緯と、そして来る支持率低下状況下の参院選を見据えた当面の方策を述べている。

 だが、「asahi.com」記事――《嘉手納の騒音被害、過去5年で最多 移転で負担減に疑問》(2010年5月25日3時1分)は“沖縄負担パッケージ軽減論”を怪しいとする情報となっている。

 〈騒音を減らすために米軍機の訓練の一部を本土の基地に振り分けている沖縄県の米軍嘉手納基地周辺で、昨年度の騒音発生回数が過去5年で最多〉であり、〈基地周辺に設置された測定装置で、不快に感じる70デシベル以上の騒音発生回数〉のうち、〈09年度中、月別で多かったのは今年3月(4627回)と昨年6月(4217回)〉であった理由を地元の嘉手納町の担当者の発言で伝えている。

 「両月に騒音が多く発生したのは、本来の所属機以外の航空機が多く来ていたことが原因。特にF22がいた間は、F22と一緒に訓練するために国内外から来る航空機が多かった」

 日米両政府は2006年に嘉手納基地での米軍機の訓練の一部を本土の空自基地に移すことに合意したものの、〈「嘉手納には戦闘機や空中給油機など所属機が100機もあ>り、〈5機程度が移転したぐらいでは騒音を減らす効果はない」(嘉手納町議)〉延べ10回という小規模移転にとどまったことと、〈訓練移転で出て行く飛行機より、国内外の他基地から訪れる「外来機」が多いこと〉が原因した騒音の増加だと書いている。

 このことを踏まえて、鳩山政権は、〈外来機の訓練の場も本土の基地に移すことで、地元の負担軽減を図る方針〉を掲げているそうだが、米軍の運用に詳しい防衛省幹部の、このことに疑問を投げかける発言を記事は伝えている。

 「訓練の場所や内容は運用上の観点から専権的に決めるというのが米軍の立場。日本の要望が受け入れられる保証は全くない。効果の限定的な訓練移転を『負担軽減策』と称して普天間の県内移設を進める材料にしようとするのは、まやかしと言われても仕方がない」――

 例え外来機の訓練の場を本土に移したとしても、沖縄の基地に抑止力としての機能を一部でも残していたなら、沖縄でも外の基地と併せた訓練が必要となって、外来機の訓練の場をすべて本土に移すことは不可能となる。

 宮城篤実・嘉手納町長「米軍は外来機がいつ飛んで来るか伝えてこないのに、どうしてそれを移転できるのか。政権はできもしないことをできるように装い、沖縄県民をだまし続けている」

 「訓練移転はこれまで何度もやったが、騒音軽減の効果は全くなかった」――

 記事は政府の“沖縄負担パッケージ軽減論”を冷笑するかのように最後に次のように書いている。

 〈政権の思惑をよそに米空軍は21日、米ニューメキシコ州の空軍基地から12機のF22を5月末から約4カ月間、嘉手納基地に暫定配備することを発表した。(土居貴輝)〉――

 訓練移転によって沖縄の負担が軽減されないということなら、〈沖縄本島周辺は広い訓練空域や、実弾を使った訓練のできる射爆撃場があって、訓練環境が恵まれている。〉ことが外来機の飛来を招いているといった事情があったとしても、それを無視して、訓練の場と共に訓練母体となるすべての基地を県外に移転するしか「負担軽減」の本質的な問題解決とはならない。

 鳩山首相は5月27日に全国知事会議を開催、“沖縄負担パッケージ軽減論”に則って訓練等の基地機能全国分散移転の受入れを出席知事に求めたが、大阪府の橋下知事以外は手を挙げなかった。

 この要請に関して全国知事会長の麻生渡福岡県知事が31日の記者会見で異の唱えたと「NHK」記事――《“訓練の内容など明確化を”》(10年5月31日 12時59分)が伝えている。

 麻生知事「鳩山総理大臣は、受け入れに協力する人は手をあげてほしいと言っていたが、冗談ではない。政府がまずアメリカ側と話し合って、どのような訓練が移転可能なのかをよく確認したうえで、実際に考えられる移転先はどういう条件の場所なのか明確にするべきだ」――

 要するに「どのような訓練が移転可能なのか」、その規模・内容とそのような訓練の受入れ可能な条件を備えた「移転先」の日米検討を最初に行った上で、条件的に受入れ可能な「移転先」自治体と、移転訓練の規模・内容が実際に受入れ可能かどうかの話し合いに持っていくのが手順ではないのかと言っている。

 その手順も踏まずに、“沖縄負担パッケージ軽減論”を振りかざして、「沖縄県民の負担はパッケージとして軽減されると思って」いると、さも確約できるかのように言っている。

 人間の生命が脳や胃や肝臓や腸、その他のすべての器官が、いわばチームとなって相互に連携・機能して有機的に統一的な活動を可能としているように、訓練も他の基地の部隊と相互にチームを組んで連携・機能して初めて一国の軍隊として有機的な統一体を成し得る。

 単一の基地に於ける単一の訓練のみでは、部隊としての独立的な機能は果たせても、軍隊としての連携的な有機的統一体は確保できない。だからこそ、〈米ニューメキシコ州の空軍基地から12機のF22を5月末から約4カ月間、嘉手納基地に暫定配備〉といった戦術的措置を必要とするのだろう。

 少なくとも、抑止力・攻撃力を含めた全体的な安全保障を損なわない範囲内の訓練の移転可能性について日米で交わした具体的な議論に基づいて、実際に議論したのかどうか分からないが、各自治体にも国民にも移転の具体像を説明していない。説明しないまま、「沖縄県民の負担はパッケージとして軽減されると思っており」とさも確実なことのように言っている。

 この説明の不在は普天間基地移設先を地元にも国民にも説明しないまま決めていった経緯と重なる。

 このように見てくると、「沖縄県民の負担はパッケージとして軽減される」は確約に見えて、正体は鳩山首相の言葉や信念が口先だけ・見せ掛けだけであることと同様に単に沖縄の反対を宥める口先だけ・見せ掛けだけの方便・口実に見えてくる。

 麻生知事は希望移転先についても言及している。

 麻生知事「まずは大阪府に示すのが筋だ。大阪府は積極的に受け入れたいと言っていたし、鳩山総理大臣も非常にありがたいと言っていた」――

 だが、この発言は一見妥当に見えるが、矛盾している。移転可能な訓練とそれを受入れ可能とする条件を備えた基地を抱える自治体の選定に向けた日米の話し合いが先だと言っている以上、大阪府内の関空、その他の空港のいずれかがその条件に当てはまる場合に於いて、大阪府がその自治体の一つということとなり、そのとき初めて「大阪府に示すのが筋」としなければならないはずだ。

 今後とも沖縄基地問題は迷走を続ける予感がする。何しろ、「信念」を持っていない男が「信念を持って乗り切っていく」と言っているだから。

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