西日本豪雨:安倍晋三被災者支援「先手先手」・「時間との戦い」を言うなら、ヘリでの物資輸送を日常化してから

2018-07-20 11:26:25 | 政治

 安倍晋三は2018年7月8日午前8時に設置した「非常災害対策本部」で、「救命救助、避難は時間との戦いです」と言い、「先手先手の被災者支援」を指示した。

 被災者支援も「時間との戦い」でなければ困る。

 2018年7月9日、安倍晋三は首相官邸で「平成30年7月豪雨非常災害対策本部会議(第2回)」を開催、「各省横断の被災者生活支援チームの設置を指示」した上で、「このチームを通じ、生活支援物資の供給、そのための物流の確保、被災自治体への職員派遣や、クーラー設置等による避難所生活の環境整備、仮設住宅の確保など、必要が生じる事柄を先取りして、プッシュ型での支援によって確実に被災者の皆様の元に届くよう、国・自治体が緊密に連携して一丸となって迅速に進めてまいります」と約束した。

 西日本豪雨の後、一転して命に関わる危険な暑さ続いている。テレビのユースを見ると、被災者の避難場所となっている小・中学校の体育館に砕いた氷と水が入った大きな四角の箱にペットボトル入りのジュース類が沢山届いていて、被災者は選り取り見取りで何本も手に取っていった。被災者も、「冷たい飲み物は助かる」と言っていた。

 だが、裏を返すと、体育館がクーラーがなくて、暑いからだろう。

 但し2018年7月19日付「電気新聞ウェブサイト」記事を見ると、経済産業省の要請・電力会社や電気工事会社の協力で移動可能な床置式のスッポットクラーの設置が進んでいるようだ。被害の大きかった倉敷市真備町地区の3カ所の小学校体育館を始め、水島地区の2カ所小学校体育館、計5カ所で計15台のスポットクーラーを7月10日に設置したと書いている。

 安倍晋三が「クーラー設置等による避難所生活の環境整備」を指示したのが7月9日、クーラー設置が7月10日だから、素早い対応ということになる。

 尤も2018年7月11日付「時事ドットコム」記事を見ると、違った景色が見えてくる。

 真備町岡田の岡田小学校の体育館にエアコンが設置されたものの、体育館に入りきれずに10人程が寝泊まりに利用している教室には設置されず、依然として暑い生活を強いられているという。

 この記事翌日の7月12日付「経済産業省」のページには「支援物資の準備状況」が次のように記載されている。

物資供給の可能量(発災後1週間分の供給可能量)について(12日5時00分現在)

•大型クーラー
約1,400台(調達要請後即日(24時間以内に)出荷可能。出荷後の被災地への到着は道路事情による)

•スポットクーラー
約1,800台(調達要請後即日(24時間以内に)出荷可能。出荷後の被災地への到着は道路事情による)

•ルームエアコン
約150台(出荷可能日は未定)(以上)

 ここに書いてある「発災後1週間分の供給可能量」とは7月5日を起算日として7月12日5時までの1週間という意味なのだろう。と言うことは、大型の自然災害が発生した場合に備えて、クーラー設置について前以って電力会社や電気工事会社と契約していたと考えることができる。

 これこそが安倍晋三の言う「先手先手」の対応であり、「時間との戦い」を可能とする要素だが、倉敷市の2地区5箇所の体育館にクーラーを設置したのが7月10日となった理由は避難所の体育館までの道路が冠水していて、水が引くのを待つ、あるいは土砂崩れで通行止めになった道路の開通を待たなければならなかったといった事情があったからに違いない。

 但し真備町の住民が避難を開始したのは倉敷市が真備町地区に避難勧告を出し7月6日午後10時頃からだというから、7月6日の夜から7月10日まで暑い時間を過ごさなければならなかった。

 道路が冠水していたり、通行止め箇所があったなら、なぜヘリコプターを物資輸送とクーラー設置に必要な人員輸送に使わなかったのだろうか。使ってこそ、「時間との戦い」を制する「先手先手」となる被災者の要望に応えることができる「早急な避難所生活の環境整備」が可能となる。

 2011年3月11日の東日本大震災後の2011年3月30日付《ブログ》に物資輸送や物資支援にヘリコプターを使わないことの批判記事を書いたが、このヘリの物資輸送について河野太郎が傾けているウンチクをブログに併記した。一部抜粋。

 《自衛隊のヘリから物資を投下する?》(河野太郎公式サイト/2011年3月22日 00:21))

 〈「日本の航空法89条は空中からの物件の投下を禁止しているけれど、自衛隊は適用除外。今回の支援でヘリから物資を投下しているかといえば、していな い。なぜならヘリを降ろして積み卸しをしているから。

 自衛隊のヘリが物資を投下する方法は二つあって、ひとつは低速前進しながら後部ハッチを開け、機首を上げると物がハッチ から連続して滑り落ちていく。これは滑走路のような場所でやるが、今回はなかなかそんな場所がない。

 二つめは、大きな網の中に物資を入れて機体の下に吊す。低空でホバリングしながら降ろすことはできるが、これも今回、着陸して積み卸しができるの で、あまり意味がない。〉

 相変わらずバカな男。「着陸して積み卸しができ」ない場所にこそ降ろして、ヘリの存在意義が大きく出てくる。

 「AHS アカギヘリコプター株式会社」

KAMOV 国内最大の上昇性能と吊下げ能力(最大5.0t)を誇るヘリコプター。これまでのヘリコプターでは対応できなかった重量物質輸送を可能としました。建設工期(時間)の短縮やコストの削減を実現します。

LOGGING ロギング 山全体の木材を切り出す皆伐作業をはじめ、間伐切り出しおよび苗木運搬まで、林業に関するすべての輸送を、安全・確実かつ迅速に行います。とくにロングラインオペレーション(長吊り)技術は、これまで培った実績と経験によるもので、数多くの信頼と高い評価をいただいています。

建設協力 
山岳地での建設協力や食糧物資輸送には、ヘリコプターの利用は欠かせません。当社は、低騒音と高いコストパフォーマンスに優れたK-MAX機をはじめ多数を保有。

豊富な実績
送電線建設
山間部の治水や治山工事
山小屋食料運搬
災害からの復旧工事
無線関係施設の資材輸送
国立国定公園の遊歩道の補修資材や
トイレ等の環境設備輸送など

ニーズに応じた機種を採用し、安全第一でお応えします。

 このサイトにはいくつか画像が載っているが、山で伐採した丸太はワイヤーを降下させたヘリコプターがホバーリング状態で空中で待機、ワイヤーの先端を何本かに束ねた丸太か、太い丸太なら1本のままで括り付けた後、そのまま引き上げて、宙ぶらりんの状態で麓まで運搬する。


 もし物資輸送で着陸箇所がない場合は上記の逆のことを行って荷を降ろすことになる。風を受けて荷が少し揺れるが、余程の風がない限り、狙った位置に降ろすことができるはずだ。もし荷が地面に着地したときの衝撃を和らげる必要があるなら、底面に直径20センチ程度の一定の弾性を持たせたバネを取り付けたパレット(荷台)を開発して、その上に物資を乗せればいい。


 道路が冠水し、水が引いていない、あるいは土砂崩れで通行止めとなって支援物資のトラックが前へ進めないといったニュースを災害のたびに聞く。

 あるいは道路が復旧しても、全部の道路の復旧といかないから、勢い当座は渋滞することになって、物資輸送のトラックが立ち往生したりするといったことが災害時の見慣れた光景となっている。

 安倍晋三が「必要が生じる事柄を先取りして、プッシュ型での支援によって確実に被災者の皆様の元に届くよう、国・自治体が緊密に連携して一丸となって迅速に進めてまいります」と、政府が被災した自治体からの要請を待たずに必要不可欠な定番物資を調達し、被災地に緊急輸送する支援方法のプッシュ型をいくら実践したとしても、道路事情次第では、「先手先手」にしても、「時間との戦い」にしても、狙い通りの進行が阻害されて、直ちに被災者の要望に応えることができないばかりか、口先だけの言葉になりかねない。

 尤も安倍晋三は口先だけのところがあるから、本人は痛くも痒くもないかも知れないが、少なくとも一国の首相が「先手先手」、「時間との戦い」を口にする以上、ただでさえ様々な不安を抱えることになっている被災者の身になって災害支援でクリアしなければならないヘリの活用だと思う。

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