《陸自ヘリ、水投下4回で終了 今後は陸上から放水》(asahi.com/2011年3月17日13時0分)
陸上自衛隊ヘリコプターCH47が1機指揮の元、2機が東京電力福島第一原発3号機の使用済み燃料貯蔵プールを冷却するために3月17日(2011年)午前9時48分から計4回、上空から水を投下した。
時間は午前9時48分から午前10時まで。バケツ容量は7.5トン。
上空の放射能濃度との関係から、上空に停止する形のホバーリング状態での放水は危険ということで、飛行しながらの放水となり、水が飛散して、予想したとおりの投下はできなかったようだ。
2008年6月の岩手・宮城内陸地震では自衛隊大型ヘリが5トン近い重機を吊り下げているから、最低限見積もっても5トン近い水をワイヤーでだろう、吊り下げて飛行できた。福島原発以外の上空に放射能が飛散していない被災地ではホバーリングが可能となる。なぜ食糧、灯油、ガソリン、医薬品、暖房具等々の支援物資を吊り下げて着地不可能な被災地にホバーリング状態でワイヤーを伸ばしていくか、機体を下げるかして物資をソフトランディングさせ、早い段階から被災者たちの生活上の不足を充足させると言ったことをしなかったのだろうか。
だが、テレビやWEB記事を見る限り、ヘリが物資を届けるのは着地可能な被災地のみに限られているように見えた。そこに大量に物資を降ろして物資集積の拠点とし、そこから各避難所へ配送する形式を取っているようだったが、地震発生から2週間後の25日前後になっても物資不足を訴える避難所生活の被災者の声はなくならなかった。
次ぎの記事がそのことを証明している。《依然として厳しい生活続》(NHK/2011年3月26日 5時5分)
東北関東大震災の発生から25日で2週間になるのにあわせ、NHKが被災者に聞き取りでアンケートを行った。
被災後の生活で困っていること――
▽「車を失ったり、ガソリンがなかったりして移動できない」――40%
▽「風呂に入れないなど衛生面の問題」 ――35%
▽「正しい情報が得られない」 ――18%
▽「プライバシーが保てない」 ――11%
アンケートの自由記述
▽「白米を食べたい」
▽「小さい子どもが食べられるものがない」
▽「毛布を4枚かけても寒い」
記事は、〈食料や水も十分でない状況〉、〈冬の寒さのなかで依然として厳しい避難生活が続いていることが浮き彫りにな〉ったと書いている。
また次ぎの記事は医薬品不足を伝えている。《東日本大震災:バイク隊出発 機動性生かして物資を輸送》(毎日jp/2011年3月27日 18時38分)
〈東日本大震災の被災地でバイクの機動性を生かして物資輸送を支援しようと、全国オートバイ協同組合連合会のバイクレスキュー隊が27日、大阪を出発した。がれきなどで車が入りにくい地域へ医薬品や生活物資を運ぶ。〉
これは全国のバイク販売会社約1400社で組織した全国オートバイ協同組合連合会が宮城県の要請を受けて津波被害が深刻な同県石巻市で活動することになっというもの。28日から活動開始、隊員を入れ替えながら4月末まで活動の予定だという。
現地石巻市まではバイクをトラックに積んで輸送。
吉田純一会長「医薬品などが不足していると聞くので、バイク輸送で少しでも被災者の皆さんのお役に立ちたい」――
3月27日時点で石巻市は医薬品不足を訴えていたということなのだろう。
なぜ菅内閣は警察官は派遣して入るが、早い段階で白バイ隊を送り込むといったことをしなかったのだろうか。また、着地不可能な地域であっても、自衛隊ヘリで物資を吊り下げて送り込むことをしなかったのだろうか。
そうしていたなら、もっと早い段階で家を失ったために避難所の苦しい生活を余儀なくされた被災者の困窮をもっと早くに解消できたはずだ。
インターネットを調べるうちになぜの疑問を解いてくれる次ぎの記事に出会った。全文を引用させて貰う。
《自衛隊のヘリから物資を投下する?》(河野太郎公式サイト/2011年3月22日 00:21)
自民党の対策本部によく来る問い合わせの一つが「日本には空中から物を投下してはいけないという法律があるので、自衛隊のヘリから物資の投下ができない。なんとかしてくれ」というもの。
対策本部にいたヒゲの隊長こと佐藤正久参議院議員(元一等陸佐)に、なんとかなりませんかと尋ねると、隊長、首をひねる。
「河野さん、なんで自衛隊のヘリから物を落とすの。ヘリが降りればいいじゃない。」
「でもよくニュースなんかで、ヘリから物を落としているシーンありますよね。」
「それは固定翼、飛行機からでしょ。ミサイルで狙われるようなところは飛行機で行って上空からパラシュートで投下するけど、今回は違うでしょ。」
ことら大尉こと、宇都隆史参議院議員(元一等空尉)が詳しく説明してくれる。
「日本の航空法89条は空中からの物件の投下を禁止しているけれど、自衛隊は適用除外。今回の支援でヘリから物資を投下しているかといえば、していない。なぜならヘリを降ろして積み卸しをしているから。
自衛隊のヘリが物資を投下する方法は二つあって、ひとつは低速前進しながら後部ハッチを開け、機首を上げると物がハッチから連続して滑り落ちていく。これは滑走路のような場所でやるが、今回はなかなかそんな場所がない。
二つめは、大きな網の中に物資を入れて機体の下に吊す。低空でホバリングしながら降ろすことはできるが、これも今回、着陸して積み卸しができるので、あまり意味がない。
物資の投下は固定翼(飛行機)でよく行うが、気象の安定と落下ポイントにかなり大きなエリアが必要になり、その場の安全の確保も必要になる。投下した物をどうやって回収するのかも問題。物が壊れないように特殊な梱包なので普通の人では開封できない。もちろん地上の誘導員も必要になる。」
航空法があるから自衛隊が物資の投下ができず、被災地に物が届かないというのは、どうやら都市伝説のようです。
ちなみに、3月18日までに、国交省は、警察や消防などによる救援活動に従事する航空機を対象に航空法89条の適用除外にしています。民間の小型ヘリならば、物資を投下する場面が出るでしょうか。 |
ヘリは「着陸して積み卸し」するものという固定観念があるようだ。
だから広いグランドを持った小学校といった特定の一箇所を支援物資集積の拠点として、そこにヘリを着地させて物資をドサッと降ろし、そこから車で孤立状態となった各避難所に届けたということなのだろうが、道路が決壊していたり土石が覆っていて通行できない場合、復旧を待たなければ配達できないことになる。
孤立集落で買い物にいけない、そろそろ食糧が底をつくといった声を聞いたのはそのためではないだろうか。
孤立集落でなくてもガソリンがないから車を動かすことができない、街まで買い物にいけないというケースは直接的な被災地ではないから、支援から除外されたということなのだろうか。ガソリン不足も災害を原因とすることができると思うが、そうではないのだろうか。
いずれにしろ、ヘリを降下させる方法ですべての被災地に物資を運ぶことができていたなら、着陸可能とするために残骸を片付ける手間まで省いて医薬品にしろ、食糧にしろ、暖房具にしろ、灯油やガソリンにしろ早いうちに充足させることができて、上記記事が書いているような不足状況は長く続くことはなかったはずだが、実際には逆の不足状況を強いていた。
灯油にしても道路や鉄道の復旧を待たずにヘリで吊り下げて運んだなら、早い段階で被災者を寒さから救えたはずだ。ガソリンにしても、ドラム缶で運べたろう。
道路が復旧して病院等に医薬品が豊富に届く状況になったものの、電話等がつながらず、どの避難所がどのような医薬品をどの程度必要としているか情報を把握できなくて、避難所では医薬品不足が続いているといったことをテレビが流していたが、救命ヘリは人間を吊り降ろし、吊り上げるのだから、自衛隊員がホバーリング状態のヘリからロープで降り、各種情報収集してヘリに無線で連絡、ヘリは基地に同じく無線で連絡する手順を踏めば、道路が決壊していても、電話が通じなくても、早い情報収集と早い支援ができたはずだ。
だが、そういった手段を取らなかった。何しろヘリは「着陸して積み卸し」するものという固定観念に忠実・真っ正直に従っていた。
トップに位置する菅内閣の危機対応無能が被災地を覆うことになった。 |