文科省大学設置審の新設認可判断保留が図らずも露呈した内閣府国家戦略特区加計学園獣医学部新設認可の欠陥

2017-08-26 11:00:08 | 政治

 文部科学省の大学設置審議会が来年4月開学予定の加計学園獣医学部新設に関わる認可判断を保留、10月末に改めて結論を出すことを明らかにしたと8月25日(2017年)付マスコミが一斉に報じた。何が不足だったのか、「NHK NEWS WEB」記事から見てみる。       

 大学設置審議会は教員の数や学生の定員、教育内容などが適切か審査するが、教育内容のうち、特に実習時間が問題とされたという。

 獣医学部では講義形式でなく、実地や実物で知識や技術を身につける「実習」の時間が極めて重要とされているにも関わらず、既存の獣医学部が約4カ月間実施の実習時間に対して加計学園の約1カ月の実施設定は主として加計学園が生命科学等の分野専門の獣医師養成を目指している点に於いて満足な教育環境の提供は成し得ないとされたとの趣旨のことを記事は書いている。

 具体的には加計学園獣医学部の実習計画は140人の学生を2つのグループに分けて、1つの実習科目を約1カ月間で履修する時間割を組んでいたとしている。

 実習時間が既存の獣医学の4分の1と短い上に1グループ70人の学生が一度に実習を受ける。解剖にしても上からカメラで写して、その場面を教室の大型スクリーンに写し出して70人が漏れなく目にすることができるような仕掛けの実習を設けるのだと思うが、自分の席から一定の距離を置いて二次的な仕掛けを通して見るのではなく、間近で実物を自分の目でみて、解剖の進め方を自分の目で確認していくのとでは実感という点では大きな差があるように思える。

 あるいはテレビドラマでやっているように手術室の一段高い場所に手術室を囲むように一面ガラス張りの見学室が設けてあって、そこに70人を閉じ込めて、上から手術やその他の処置を実習させるといったことをするののかもしれない。

 いずれの方法であっても、即席感を免れることはできない。

 1学年約120人の学生が在籍している現在の獣医学部の中では最も多い北里大学獣医学部(青森県十和田市)は実験動物学や解剖学など19の実習科目に加えて、独自に10の実習を必修としていると、記事は加計学園との違いを伝えている。

 北里大学の高井伸二獣医学部長「獣医師となるには基礎から臨床までさまざまな分野を学ぶ必要がある。多くのスキルを身につけた実践的な獣医師を養成するためこれだけの実習を組んでいる」

 実習の実践こそが実戦に通じるということなのだろう。

 大学設置審議会はこの他に〈全国で最も多い140人の学生に対し、教員の指導体制が不十分であることや、学生が研究を進めるうえで十分なスペースが確保されていないのではないか〉といったことを指摘したと記事は書いている。

 学生が研究を進めるうえで十分なスペースが確保されていないということは140人の学生を2グループに分けた70人ずつの実習に対しての指摘も含まれているはずで、窮屈感しか浮かんでこない。

 その上に教員の指導体制が不十分ということなら、ハンパな即席感と窮屈感ではないことになって、質の高い獣医師養成は望めないことになる。

 ということなら、計画を見直すよう求めた大学設置審議会の次の言葉にしても、かなり厳しい指摘が込められていると見なければならないことになる。

 「学園の計画は、短期集中型で、学生が予習や復習も含めて知識や技術が身につけられない」

 加計学園は修正案を提出、余程のことがない限り最終的には認可されることになるだろうが、そうであったとしても、文科省大学設置審議会による加計学園獣医学部新設認可申請に対する認可判断保留は加計学園が獣医学部新設構想を満足に描ききれないうちに獣医学部校舎の建設に取りかかり、教員の募集・採用を行って、国家戦略特区指定の今治市に獣医学部新設が認められてから、内閣府によるその事業主体公募に応募し、内閣府がその応募に対して不満足な獣医学部新設構想に基づいて事業主体を加計学園に決定した経緯を取った事実に変わりはないことになる。

 加計学園側からすると、2015年6月30日に閣議決定された「日本再興戦略改定2015」で獣医師養成系大学・学部の新設に関する、いわゆる石破4条件のうち、「既存獣医師養成でない構想」、「既存の大学・学部では対応困難」等要求されたグレードアップに対応しきれなかった様子が浮かんでくる。

 一般的な大学新設は文科省の大学設置審議会に設置認可申請を行い、その後は申請側と審議会両者の設置適否の問題に帰すが、国家戦略特区を通した新設の場合は大学設置審議会の設置適否の議論以前に内閣府が間に入って大学設置審議会とは異なる石破4条件も含めた基準で設置適否の判断を下した。

 結果として、内閣府は不満足な獣医学部新設構想であるにも関わらず、新設認可の一次的なゴーサインを出したことになる。

 そしてこのゴーサインに対する大学設置審議会側の“一次的なノー”――新設認可に関わる判断保留によって内閣府による国家戦略特区を通した獣医学部新設認可という制度の欠陥を図らずも露呈させたことになる。

 このいわゆる二重基準が日本獣医師会をして「獣医師の需給問題の解決や獣医学教育の改善に特区制度に基づく対応は馴染まない」とさせている要因なのだろう。

 上記記事は文部科学省の話として、大学設置審議会が認可の判断を「保留」したケースは過去10年間で110件、そのうち大学が計画を修正し最終的に認可されたケースが89件、大学が申請自体を取り下げたケースが19件、不認可となったケースが2件あると解説しているが、加計学園の獣医学部新設が大学設置審議会によって最終的に不認可となった場合は、国家戦略特区の手続き全てが最悪、無意味・無駄骨となる。

 行政上の危機管理からすると、最終的に不認可にならなければいいのではないかといった不確かさに頼るのではなく、想定される最悪のケースは避ける確実さが必要になることを考えた場合、日本獣医師会の「国家戦略特区を使った獣医学部新設は馴染まない」の主張は正しいことになる。

 あくまでもモチはモチ屋に頼めということなのだろう。

 モチはモチ屋に頼まずに専門外の部署にモチを頼んで、品質を問わずに、ハイ、モチですと言ってしまったこと自体が土台、無理な設定なのだが、加計学園を持ってくるためには無理を承知でモチ屋ではない内閣府を必要としたということなのだろう。

 こうしたところに安倍晋三の政治的関与を窺うこともできる。

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