安倍晋三8月3日改造内閣記者会見:「経済最優先」は次期総選挙で票を釣り上げ、議席を稼ぐ疑似餌

2017-08-04 10:52:59 | 政治
 

 安倍晋三が第3次安倍第3次改造内閣記者会見を行った。 

 NHKのテレビ番組では初めから最後まで原稿を写し出すプロンプターは見えなかったが、首相官邸の動画では安倍晋三が登場する前から、安倍晋三から見て右側のプロンプターがバッチリと写っていた。

 左右にプロンプターを配置して、正面から左右の記者を見渡すように顔を右、左に動かして、原稿を見ずにさも自身の言葉で流暢に喋っているように見せかける。なかなか堂に入っている。

 初っ端から謝罪から入った。

 安倍晋三「先の国会では、森友学園への国有地売却の件、加計学園による獣医学部の新設、防衛省の日報問題など、様々な問題が指摘され、国民の皆様から大きな不信を招く結果となりました。

 そのことについて、冒頭、まず改めて深く反省し、国民の皆様におわび申し上げたいと思います」

 そして不祥事が発覚した会社の社長以下の重役連中が横に並べた長椅子に座って記者会見を開いて、先ず不祥事の説明をしてから一斉に立ち上がって深々と謝罪の頭を下げるように安倍晋三も8秒程、頭を垂れた。

 但し重役連中程には深々とではなかった。7、8分目程度の頭の下げ方となったは総理大臣のプライドがそうさせたのかもしれない。

 頭を上げてから、「国民の皆様の声に耳を澄まし、国民の皆様とともに、政治を前に進めていく」と続けた。

 これで深く反省しているなと感じ入るかどうかである。

 安倍晋三「今回の組閣では、ベテランから若手まで幅広い人材を登用しながら、結果重視、仕事第一、実力本位の布陣を整えることができたと考えています」

 安倍晋三本人の保証付きである。但しである、いつだって「結果重視、仕事第一、実力本位の布陣」でなければならないはずだ。それを改めて言わなければならないところに今まで「結果重視、仕事第一、実力本位の布陣」でなかったことの証明としかならない。

 いわば「結果重視、仕事第一、実力本位の布陣」であった試しはなかった。何人の閣僚が国民を軽視するような発言や不適切な行動で退場していっただろうか。国民の選択を受けて国会議員となり、閣僚としての任に当たる以上、内閣から一人の途中退場者も出してはならないはずだ。

 安倍晋三「最優先すべき仕事は経済の再生です。安倍内閣は、これからも経済最優先であります」

 「経済最優先」を何度言えば気が済むのだろうか。アベノミクスを掲げ、ずっと「経済最優先」を言い続けてきた。

 「4年間のアベノミクスにより、雇用は200万人近く増え、正社員の有効求人倍率も1倍を超えました。正社員になりたい人がいれば、必ず一つ以上の正社員の仕事がある。政治の大きな責任を果たす。やっとここまで来ることができました」と言っているが、相変わらず都合の良い統計しか言わない。総務省調査「2016年の労働力調査(速報)」は役員を除く2016年平均の雇用者は前年比88万人増の5,372万人で4年連続で増加し、その内訳は非正規雇用は前年比36万人増の2016万人。正規雇用は前年比51万人増の3355万人。

 確かに減少傾向にあった正規雇用は増加に転じている。だが、非正規の増加率は1.75%、正規の増加率は1.54%で、非正規の増加率の方が大きい。また正規雇用の増加、正規の有効求人倍率1倍超は人手不足による正規の囲い込みが主な原因で、受動的な理由となっている。そしてこのことが安倍政権下で賃金上昇率を4年連続で2%と押し上げているということだが、個人消費低迷の原因が買い控えの傾向が広がっていることにあるというのは賃上げがあくまでも大企業中心ということであろう。

 例えば年収300万円の家庭で2%の賃上げは年6万円、月に直して5千円に過ぎない。消費を控えてきた家庭が月5千円のプラスでどれ程に心おきない消費に励むことだできることだろうか。

 この2%はあくまでも平均で、少ない収入程、実際の賃金上昇率は数字が小さくなる。多くの家庭が将来不安からついつい貯蓄に回してしまうように思える。

 また賃上げ→消費→モノの価格への転化による製品価格の上昇→企業利益向上→賃上げ→消費という、いわゆるアベノミクスの好循環には現在の賃金上昇率は弱すぎると言われている。

 こういったことが原因しているのだろう、国際通貨基金(IMF)が2017年7月31日に「アベノミクスは目標に達していない」と指摘したと2017年8月1日付「時事ドットコム」記事が伝えている。  

 アベノミクスというスローガンは既に形骸化しているという指摘すらある。

 さらに人手不足による正規雇用の囲い込みによるその分の人件費負担が老後の貯えを少しでも増やすために働きに出ざるを得ない高齢者を非正規で雇用して大幅に賃金を抑制してバランスを取る現象となっている可能性を指摘する記事もある。「ロイター」

 〈日本は欧州各国と比べて、60歳以降の年収の減り方が顕著で、3割程度の賃金カットを実施している企業が多い。高齢者の賃金の3割カットは、すでに「常識化」されつつある。〉

 このような賃金抑制が正規雇用の人件費アップのバランスを取る有効策となっているだけではなく、正規・非正規構わない長時間労働につながっている可能性も否定できないはずだ。

 弱い立場の人間程より安く、より長時間使って、人件費を平均化させていく。要するにアベノミクスで利益を上げたのは円安と株高を受けた大企業と富裕層のみで、ここに来ての円高が主な原因となって大手企業の今年夏のボーナスが平均で昨年より2万円少ない約87万円となったと「NHK NEWS WEB」記事が伝えているような現象が起きる。 

 経団連は「今回の減少は、ことしの春闘で労働組合がベースアップを優先してボーナスの要求額を下げたことも影響した。マイナスにはなったが、金額自体は80万円台の後半を維持していて、引き続き高水準だ」と言っているが、日本では大企業の割合は0.3%、1%にも満他ない状況にあって、中小企業が99.7%と圧倒的に中小企業が上回っている。

 いわば僅かな数の上だけがボーナスが80万円台の後半を維持と言うことに過ぎない。 

 大体が円高で回復していない景気がたちまちダメージを受けるアベノミクスというのは自らの力で景気を回復させる自律性を与えることができていないゆえに海外の様々な要因に簡単に影響を受ける他律性に支配されることになるといったことを以前ブログで書いたが、人間の生命が様々な臓器が働き合って生きるエネルギーを発していく有機性と同様の力学を吹き込むことができていないことからのアベノミクスのお粗末な現状ということなのだろう。

 何よりも問題なのは安倍晋三が2度も消費税増税を延期していることである。1度目は2014年11月18日に首相官邸で記者会見を開いて、2015年10月予定の消費税8%から10%への引き上げを2017年4月に延期することを伝えた。

 そのとき安倍晋三はこう言った。「来年10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします」

 ところが、通常国会閉幕に合わせて開いた2016年6月1日の記者会見で舌の根を乾かしてしまったのか、「1年半前の総選挙で、私は来年4月からの消費税率引上げに向けて必要な経済状況を創り上げるとお約束しました。そして、アベノミクスを強力に推し進めてまいりました」、あるいは「年半前、衆議院を解散するに当たって、正にこの場所で、私は消費税率の10%への引上げについて、再び延期することはないとはっきりと断言いたしました」と言いつつ、「日本経済にとって新たな下振れリスク」を何だかんだと持ち出して2019年10月まで30カ月に再延期することを堂々と宣言した。

 消費税を再延期までしていながら、アベノミクスを軌道に乗せることができず、目標未達だ、形骸化しているだと言われている。もし消費税を増税していたなら、アベノミクスはたちまち瀕死の状態に陥り、安倍晋三は既に政権の舞台から消えていたかもしれない。

 消費税増税延期によって安倍晋三が得た利益は第2次安倍政権成立後の3度の選挙での大勝であろう。選挙のたびに「経済最優先」を掲げ、大勝によって得た頭数で景気を確かな形で回復させることではなく、特定秘密保護法(2014年12月施行)や自衛隊の海外派兵と集団的自衛権行使を可能とした新安保法制(2016年3月施行)、テロ等準備罪(2017年7月11日施行)といった国民の意見が大きく別れる政策の強行採決での成立であった。

 そして現在も総選挙に打って出て議席を上乗せして自衛隊明記の憲法改正を狙っている。

 次の選挙でもこれまでと同じくと言うか、相も変わらずと言うか、性懲りもなくと言うか、「経済最優先」を掲げるはずだ。今までと同様に票を釣り上げて、議席を稼ぐ疑似餌、生き餌なら少しはマシだが、疑似餌として最大限に利用するに過ぎない。

 消費税の増税延期によって介護保険の自己負担分が増えることになったり、その他の社会保障関係の負担が増えて、弱い立場の中低所得層にダメージを与えることになってる。

 尤も消費税を上げれば、それだけで負担が増えるという意見もあるが、一定以下の年収生活者には軽減税を設けて8%に抑えておけば、格差是正に少しは役立つ。

 「経済最優先」は言葉だけで、景気は確かな形で回復しないアベノミクスは大企業と富裕層だけに役立って、格差拡大に寄与するのみ。これでは踏んだり蹴ったりである。

 一見深く反省しているように見える「国民の皆様の声に耳を澄まし、国民の皆様とともに、政治を前に進めていく」の文言だが、そうはなっていないことがアベノミクスが既に証明している。

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