8月3日(2017年)にエントリーした「ブログ」と内容が重なるが、なぜ国家戦略特区諮問会でもワーキンググループでも今治市への獣医学部新設に限った議論のみで、その獣医学部の事業主体が加計学園であるとした議論が行われなかったのか改めて取り上げてみることにした。
民進党代表の蓮舫が2017年7月25日の家計疑惑閉会中審査の参議員予算委員会で、前日7月24日の同加計疑惑閉会中審査衆院予算委で民進党の大串博志が安倍晋三に対して「総理は加計理事長が特区申請をしていると知ったのはいつですか」と質問したのに対して安倍晋三が今治市の獣医学部新設に応募し、国家戦略特区諮問会議でその応募が認められた「1月の20日」と答弁したことと過去の国会答弁の矛盾を突いた。
「産経ニュース」 蓮舫「総理。これは今年の6月5日、参院決算委員会で我が党の平山佐知子議員の質問、『加計さんがずっと獣医学部を新設したいという思いがあったということは当然ながらご存じでありましたね』ということに対して、総理、あなたは『安倍政権になりましてから国家戦略特区にその申請を今治市とともに出された段階で承知したわけでございます』と答えている。違うじゃないですか」 (「なにウソ言ってるんだよ」などのヤジが飛ぶ》 安倍晋三「さきほども、福島委員あるいは平山委員の場合は急にご質問があったので混同したところがあるが、それ以外にも何回か、何回かご質問をいただいているわけだが、その際には『知りうる立場にあった』というふうに答弁させていただいているのは事実です。 そこで正確に、正確に申し上げれば、私が議長を務める国家戦略特区諮問会議にこの申請がかかるのは申請段階ではなく申請を決定する段階であり、それは10日後の1月20日だった。その意味においては厳密さを欠いていたが、あの答弁で申し上げようとしたことは、申請を今治市とともに決定する段階で私は諮問会議の議長として加計学園の計画について承知したということです」 ・・・・・・・・・・ 蓮舫「ちょっと整理しますね。つまり総理がおっしゃっている国家戦略特区に今治市が申請を出された段階というのは、2年前の2015(平成27)年6月4日と言うことです。そして加計学園が正式に申請を出したのは今年1月10日。どっちも1月20日ではない。ここからしても、きのうの総理の言った『1月20日に知った』というのは過去の答弁と整合性がとれていない」 安倍晋三「私は国家戦略特区諮問会議の議長として、国家戦略特区諮問会議にかかる際に、事務方から説明を受けるわけです。国家戦略特区制度が誕生した2年前の11月の段階で、私が議長を務める国家戦略特区諮問会議において、今治市の特区指定に向けた議論が進む中で、私が今治市が獣医学部新設を提案していることを知った。しかしその時点においても、またその後のプロセスにおいても、事業主体が誰かという点について提案者である今治市から説明はなく、もちろん事務方からも説明がなかったのであり、加計学園の計画は承知していなかった。1月20日の特区諮問会議で認定する際に、事務方から事前に説明を受けた」 |
安倍晋三は要するに過去の国会答弁との矛盾は急な質問だったことによる「混同」であり、実際に答弁してきたのは「知りうる立場にあった」という意味のことで、「今治市が獣医学部新設を提案していることを知った」ものの、その後のプロセスにおいても、事業主体が誰かという点について提案者である今治市から説明はなく、もちろん事務方からも説明がなかったから、事業主体が加計学園であることは知ることができなかった、知ったのは加計学園が国家戦略特区指定の今治市への獣医学部新設の事業主体として応募し、認められた2017年1月20日の「第27回国家戦略特別区域諮問会議」の場であったということになる。
蓮舫は「『事業主体が誰かという点について提案者である今治市から説明はな』かったとしても、自分の方から尋ねることはしなかったのか」となぜ聞き返さなかったのだろうか。
事業主体を想定しない獣医学部新設の議論は先ずあり得ないからだ。
実際に獣医学部新設に関わるどの「国家戦略特区諮問会議」でも、同趣旨のワーキンググループのヒアリングでも、今治市への獣医学部新設という文脈での議論のみで、なぜか事業主体がどこかについては一切触れていない。
いわば諮問会議出席者の特区担当の山本幸三も、関係省庁の大臣も、民間有識者議員も、事業主体がどこかを頭に置かずに今治市への新設のみで議論を進め、安倍晋三は諮問会議議長としてそのような議論を見守ってきたことになる。
このようなプロセスに安倍晋三の政治関与を隠蔽する仕掛けがあったのだろう。なぜなら、内閣府に獣医学部新設の提案書を提出する際、事業主体を先に決めて、その事業主体が主体となってどのような獣医学部を計画しているのか、どのような獣医学部を望んでいるのか、自治体等と共に提案書を作成しなければ、満足な内容を取ることができないからだ。
同じく国家戦略特区に指定された京都府は内閣府に獣医学部新設を提案する際、最初から事業主体を京都産業大学と決めて、上記のような手続きを踏んだ。
だが、国家戦略特区諮問会議が今治市への獣医学部新設を認定する際はこのような手続きを踏まなかった。加計学園が新設する獣医学部の事業内容書(事業規模や陣容、募集定員数、学部敷地面積、建物数・階数等々)を提出したのは内閣府が今治市への獣医学部新設の事業主体を公募したことに対して応募した2017年1月10日である。
そして1月20日に事業主体は加計学園に決定した。
と言うことは、国家戦略特区諮問会議はどのような獣医学部になるのか事業内容を決めないうちに今治市への獣医学部新設を決めたことになる。
果たして今治市は事業主体を決めていなかったのだろうか。
蓮舫が「総理がおっしゃっている国家戦略特区に今治市が申請を出された段階というのは、2年前の2015(平成27)年6月4日と言うことです」と質問していることから、「今治市」のサイトにアクセスして、「2015年6月4日」という日付で紹介しているPDF文書の「国家戦略特別区域提案 国際水準の獣医学教育特区」提案書を開いてみたが、「国際水準の獣医学教育特区」と提案しているものの、加計学園の名前は載っていない。
一応、「具体的な事業の実施内容」を見てみる。
「越境感染症や人獣共通感染症」
「国際的食の安全」
「バイオテロ等への危機管理と国際対応の資質を持った人材育成」
「国際貿易自由化に伴う食品流通等で獣医学的支援の必要な水産、畜産、生物資源利用分野等との連携」
「創薬研究での医獣連携など分野横断型応用ライフサイエンスの研究・教育と人材育成」(以上)
但し事業主体を想定していなければ、これだけの詳しい獣医学部の事業内容を書くことはできないはずだ。
ネットを検索していたら、今治市に関係した次のPDF文書に行き当たった。
「構造改革特区提案申請説明資料」(平成20年6月)今治市 愛媛県 別紙 1 特定事業の名称 獣医師養成系大学設置による教育の機会均等確保及び地域再生事業 2 当該規制の特例措置の適用を受けようとする者の名称 学校法人加計学園 3 当該規制の特例措置の適用の開始の日 平成22 年4月1日 4 特定事業の内容 今治市に獣医師養成系大学を設置する。 別紙「愛媛県今治市における大学獣医学部構想」参照。 5 当該規制の特例措置の内容 平成15 年3月31 日文科省告示第45 号「大学、短期大学、高等専門学校等の設置の際の入学定員の取り扱いに関する基準」を今治市の獣医師養成に限って定員増の規制の解除 6 当該規制の特例措置の適用を受けようとする者が行う事業の概要 別紙「愛媛県今治市における大学獣医学部構想」のとおり |
2008年(平成20年)の6月の構造改革特区への提案の際には既に事業主体を加計学園と決めていた。
と言うことは、国家戦略特区諮問会議でもワーキンググループでも今治市への国家戦略特区を利用した獣医学部新設に関して事業主体を加計学園とする議論は行わなくても、今治市の方は獣医学部の事業主体を加計学園と決めていたことになる。
前者の議論がないことを以って安倍晋三が今治市に新設する獣医学部の事業主体が加計学園であることを知ることができず、知ることができたのは加計学園が事業主体に認定された2017年1月20日だとしていることに正当性を与えることができたとしても、あるいは蓮舫の質問に対して安倍晋三が「業主体が誰かという点について提案者である今治市から説明はなく、もちろん事務方からも説明がなかった」と答弁していることに正当性を与えることができたとしても、国家戦略特区諮問会議やワーキンググループが加計学園を事業主体と想定せずに議論していたとすることに正当性を与えることはできない。
2016年11月8日「加計学園への伝達事項」なる文書を文科省は作成したことを認めている。
この文書のことを既にブログで取り上げているが、内容は文科省が加計学園に対して獣医学部の「構想の現状」について聴取したが、それが不十分だからと、十分とすべき様々な注意点を箇条書きで伝えているものとなっている。
これがいわゆる“加計ありき”ではなかったとしても、文科省は今治市への獣医学部新設の事業主体が加計学園であることを十分に承知していたことになる。
文部科学省が承知していたことを内閣府が承知していないということは決してあり得ない。翌11月9日の「第25回国家戦略特区諮問会議」には文科相の松野博一も出席して、今治市への獣医学部新設で議論をしてきた各諮問会議に続いて、「現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う」とする地域条件の変更を「資料3」の案で示して「異議なし」で全一致で決めている。
「業主体が誰かという点について提案者である今治市から説明はなく、もちろん事務方からも説明がなかった」としても、今治市も諮問会議メンバーも、加計学園が事業主体であることを前提として今治市への獣医学部新設の議論をしていたことは間違いないことになる。
導き出すことのできる答はただ一つ。国家戦略特区やWGがその前提を隠して議論していたことも、安倍晋三が知らなかったとしていることの理由付けも安倍晋三の政治関与を隠蔽するための最初からの計画であって、事業主体が加計学園であることを知らなかったとしている国会答弁その他は全て虚偽としなければならない。