「生活の党と山本太郎となかまたち」
《10月29日都内開催「解放同盟・人権政策確立要求第2次中央集会」主濱副代
表挨拶》
「安倍政権下で格差が拡大、貧困と差別がより深刻化している。この政権下では人権
政策の確立は実現できない」
2015年10月28日、宮崎市中心部の大通りで73歳男性運転の軽乗用車が歩道を約700メートルに亘って暴走、50歳と60歳の2人の女性を死亡させ、17歳女子高生を含む4人に重軽傷を与えた。
73歳男性は車を横転させて頭を打ち、外傷性クモ膜下出血で病院に運ばれたが、意識はあるという。事故当時警察が「車道と歩道を間違えたのか」と質問すると、「ハイ」と答えたという。
警察が「間違えたのか」と問えば、間違いとすることができた場合、より罪を軽くすることができるから、助け舟となる一種の誘導となって、「ハイ」と答えるのが人情である。あくまでも、「どうして歩道を走ったのか」と聞くべきで、歩道を走った理由を本人に喋らせるべきだったろう。
例え本人が「車道と歩道を間違えました」と答えたとしても、そういった間違いはあるにしても、700メートルも走って、その間、歩道と車道の違いに気づかなかったというのは尋常ではない。バックミラーやルームミラー、あるいは目視で周囲の確認を怠っていたことになる。
周囲確認の不注意が700メートルの間だけではなく、それ以前から続いていたから、歩道を車道と間違えて歩道に乗り入れることになったに違いない。
後に73歳男性には癲癇(てんかん)の症状と認知症の症状があることが分かった。後者の場合、数年前から認知症の治療を受けていて、事故当日2日前の10月26日まで認知症の治療で入院していたという。
何日から入院していたのかどの記事も触れていないが、数年前から治療が始まり、現在入院しなければならない治療ということなら、軽度の認知症ではなく、重度と見なければならない。
入院した病院の主治医は男性が普段車を運転していることを把握していたのだろうか。あるいは認知症という診断が出ると同時に運転免許証を所持しているか否かを尋ねて、所持していた場合、日常生活の中で車の運転を習慣としているかどうか確認したのだろうか。
前者・後者いずれであっても、それらのことをカルテに記録していたのだろうか。
癲癇の治療に当たり、その薬を処方する医師にしても、患者が自動車免許証を所持し、車の運転を生活の一部としていることを把握し、その事実をカルテに記録しているのだろうか。
と言うのも、認知症の場合、今年6月成立・2年以内施行の改正道路交通法が75歳以上高齢者が運転免許更新の際の検査で「認知症の疑いがある」と判定された場合、医師の診断を義務づけることを盛り込み、診断次第で免許更新を禁止することができたとしても、認知症が期限を区切って発症したり、軽度から重度に進行するわけではなく、突発性発症や若年性認知症といったことも考慮すると、否応もなしに次の更新までの間に法律の谷間が生じるケースも出てくる。
現在、過去5年間に一度の違反もない70歳未満の免許更新期間は5年、70歳は4年、71歳以上は3年間だそうだが、その間の免許取消しを決定できる監視は本人か医師であって、法律は確実な監視機能足り得ない。
例えば改正道路交通法第101の6は、医師は認知症や癲癇も入るはずの発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気に該当すると認め、その者が免許を受けた者であるときは診断の結果を公安委員会に届け出ることができるとしているが、あくまでも任意であって、義務とはなっていない。
だが、認知症患者や癲癇病患者が万が一事故を起こした場合、特に人の命を預かる医者の立場にある人間は人命に関わることと危機管理しなければならないのだから、法律の谷間を埋める者として、例え法律は義務としていなくても、積極的に届け出る責任を負っているはずだ。
特に癲癇の場合、医者が処方した通りに定期的に薬を服用していれば、体内の薬の量を一定に保つことによって発作を抑えることができるということであるにも関わらず、服用忘れでこれまでも人身事故が何度か起きている。
2009年3月、トラックを運転中に癲癇の発作で意識を失い、中学2年男子をたった14歳で死亡させ、さらに働き盛りであるはずの45歳男性を死亡させた事故も薬の服用を怠ったことが原因であった。
勿論、服用は自己責任だが、患者は定期的に病院を訪れ、薬の処方を受けるのだから、医師はその都度服用を怠ることのないよううるさく注意喚起する責任ぐらいは負うべきだろう。
まだ記憶に新しいと思うが、2011年4月18日に栃木県鹿沼市国道で10トンクレーン車が集団登校中の小学生の20~30人の群れに突っ込み、6人を死亡させた事故も癲癇薬の服用忘れが原因だったし、2015年8月16日東京都豊島区東池袋のJR池袋駅近くで歩道に乗用車が乗り上げて5人を跳ね、意識不明の41歳女性を病院で死なせ、他の4人に重軽傷を追わせた53歳の医師は医師でありながら、癲癇薬の服用を怠って一時的に意識を失ったことが原因であった。
本人は「気づいたらビルにぶつかっていた」と供述している。
これは本人の過去の事故を学習せずに自身に対する監視の不注意から起きたことだが、月に1回通院し、癲癇の症状を抑える薬を処方して貰っていたというから、患者が医師であっても、やはり病院の医師自体が患者を監視し、服用を忘れないように注意喚起する必要はあるはずだが、果たしてそういった責任を果たしていたのだろうか。
高齢者の認知症の場合は最近特に高速道路の逆走が頻繁に起き、人身事故も発生させている。2014年の全国の警察が把握した高速道路での車の逆走は224件で、運転手が認知症だったケースが12.1%に当たる27件に上り、そのうちの人身事故は22件で、その22.7%(5件)は認知症だったと、《日経電子版》が伝えている。
全体では67.9%の152件が65歳以上の高齢者。70代が74件で最も多く、80代が60件、40代が18件。内認知症は70代が14件、80代が9件、60代が4件。
認知症ではなくても、高齢になると判断能力が劣る。
本人はもとより、家族も、そして医師にしても高齢者の以上のような症状の事故の多発を認識すると同時に学習して、運転者本人は事故を起こさないように自己を監視し、家族は運転する者を監視し、医師も患者を監視してそれぞれが常に注意喚起を心掛けなければ、法律の谷間を埋めて事故で人の命を失わないようにすることはいつまで経ってもできないのではないだろうか。
今回の宮崎市の73歳男性の事故にしても、認知症治療のために入院までしていたのだから、家族か医師が事故の学習と日常的な監視を生かして、認知症のその具合に応じて運転免許証の返納を迫っていたなら、応じなかった場合は、警察に伝えるなりの強制力を働かせていたなら、結果論かもしれないが、2人の女性の命を奪うことはなかったかもしれない。