二階俊博と菅官房長官のカネの力を権力に変えて思い通りに動かそうとする独裁志向の品のないユネスコ威嚇

2015-10-13 08:20:52 | Weblog


 中国が国連教育科学文化機関(ユネスコ)に「世界記憶遺産」として申請していた旧日本軍対中国人虐殺の「南京事件資料」と、同じく旧日本軍が関係した「従軍慰安婦資料」の内、後者は却下されたが、「南京事件資料」が2015年10月9日(日本時間10月10日)、 登録された。

 日本政府が南京事件で特に問題としていたのは虐殺犠牲者が30万人とされていることだそうだが、中国による去年の申請の段階から何度も抗議して申請を取り下げるよう求め、ユネスコに対しても中国による政治利用の懸念を伝えて慎重な審議を要請してきたが、中国に対してもユネスコに対しても効果なく、結局のところ申請通りに登録されることになった。

 このことに不快を感じたのだろう、自民党総務会長の二階俊博が10月11日徳島市で講演、日本の取るべき態度を示した。

 二階俊博「日本は国連の会議でも、なんの会議でも、世界でアメリカに次いで2番目のお金を拠出する国だということで、それで(日本国民は)喜んでいるが、日本の主張がどれだけ通っているかということがなければならない。

 お金を出すだけが能ではない。ユネスコが日本が悪いと言うのであれば、日本として『資金はもう協力しない』というくらいのことが言えなければ、どうしようもない。協力の見直しは、当然、考えるべきだ」(NHK NEWS WEB/2015年10月11日 20時18分) 

 ユネスコへの日本の拠出金の在り方を見直すべきだという考えを示したと記事は解説しているが、要するに思い通りにならないなら、拠出金を減らすべきだと主張している。

 こういった品のないことを口にするのは品のない政治家二階俊博だけかと思っていたら、官房長官の菅義偉が10月12日のBSフジの番組に出演、右へ倣えした。

 菅義偉「(ユネスコ拠出分担金について)政府として停止・削減を含めて検討している。(登録は)密室で行われ、法律に基づくものでもない。透明性や公平性をもっと出すべきだ。

 確かに南京で非戦闘員殺害とか略奪行為があったことは否定できないが、(犠牲者の)人数にはいろんな議論がある」(毎日jp/2015年10月12日 23時50分) 

 自分たちの思い通りにならなかった。だったら、出しているカネを出すのをやめるか、減らすかしよう。

 と言うことは、日本が持っているカネの力を権力として使い、少しでも自分たちの思い通りにしようとしていることに他ならない。

 民主的な方法でより良い方向に持っていこうと努めるのではなく、そういった方法をいきなり飛び超えてカネが持つ力を権力として使って自分たちの思い取りにしようとする精神性には否応もなしに独裁志向が根付いている。

 独裁志向を根付かせているからこそ、民主的な方法をそっちのけにして、問答無用の形でカネの力を権力に変えることになる。

 逆説するなら、独裁志向なくしてカネの力を権力に変えはしない。

 日本政府は八幡製鐵所等九州の5つの県と山口県、岩手県、静岡県の合わせて23の明治時代の施設を「明治日本の産業革命遺産」として世界文化遺産に登録すべく、2013年9月27日に暫定版の推薦書をユネスコに提出している。

 暫定版の推薦書の提出によって、ユネスコからのコメント等を求めることができるということである。

 そして2014年1月17日に閣議了解で世界文化遺産への推薦を決定し、2014年1月19日に推薦書正式版をユネスコに提出し、2015年7月5日、世界文化遺産に登録された。

 韓国政府は戦前、朝鮮人の多くが強制徴用された施設が含まれているとして、日本政府のこの「明治日本の産業革命遺産」のユネスコ登録の動きに当初から反対し、登録しないよう、各国に働きかけていた。

 日本政府が2014年1月19日に推薦書正式版をユネスコに提出すると、その4カ月後の2014年5月19日にはユン・ビョンセ(尹炳世)韓国外相がユネスコのボコバ事務局長に対して登録に反対する立場を伝え、翌5月20日にはパク・クネ(朴槿恵)韓国大統領がユネスコ=国連教育科学文化機関のボコバ事務局長との会談で登録に反対する立場を伝えている。

 そして韓国のユン・ビョンセ外相今年に入った2015年6月12日、世界遺産委員会世界遺産登録議長国のドイツ外相と会談、翌6月13日には副議長国のクロアチアを訪問、クロアチアの外相と会談し、「明治日本の産業革命遺産」のユネスコ登録に反対している。

 だが、結局のところ、韓国政府側と日本政府側が話し合い、韓国側の言い分として日本政府が強制徴用を認めたことで、日本側の言い分では認めていないとしているが、妥協が成立して、登録されることになった。

 中国政府の「南京事件資料」ユネスコ世界記憶遺産申請に対して日本政府は抗議をしているが、中国政府と直接話し合った形跡はない。外務省の役人を中国に派遣して抗議を申し入れたかもしれないし、中国駐在日本大使館の大使等が抗議をしたかもしれないが、日本政府内のそれなりに地位のある関係者が中国を訪れて直接抗議したという記事に知る限りではお目にかかっていない。

 韓国のように大統領や外務大臣がユネスコ関係者や世界遺産委員会世界遺産登録議長国の外相と会談したという形跡もない。

 にも関わらず、そういった話し合いもせず、「南京事件資料」の世界記憶遺産登録後に中国は兎も角、ユネスコと、日本にとってだけではなく、世界各国共通とすることができるユネスコのあるべき姿について話し合う意思を持とうともせず、いきなりユネスコ拠出分担金を減らすか停止の検討に入る意思を示した。

 この意思は当然、既に触れたように日本が持っているカネの力を権力として使って自分たちの思い通りに目的を達しようとする強い欲求を含んでいるがゆえに独裁志向を性格とした意思表示に他ならない。

 民主国家の政府でありながら、非常に品のない遣り方である。

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