米軍のアフガン国際医療NGO「国境なき医師団」病院への誤爆が教える訓練は絶対ではないことの教訓

2015-10-05 09:35:09 | 政治

 10月3日(2015年)午前2時頃、アフガニスタン北部の都市にある国際医療NGO「国境なき医師団」の病院が米空軍の誤爆を受けて多数の死者を出した。マスコミは死者を最初16人と伝え、次に19人、現在22人に増えている。

 同医師団の話しとして、〈米軍には病院の正確な位置を事前に知らせてあり、攻撃を受けた直後にも通報したが、その後も30分以上、空爆はやまなかった。〉と「asahi.com」記事は伝えている。  

 病院の位置を前以て把握しているはずだが、なぜ誤爆したのだろうか。病院が爆撃の標的とされていることを通報しながら、なぜ爆撃を30分以上も続けたのだろうか。

 素人の推測となるが、アメリカ映画などでは一定地域への爆撃指示が出ると、上官がその地域の標的とする建物や橋をはっきりと目で捉えることができる壁に掛けた大きな地図か、あるいは現在では大型のモニター画面に写した地図を前にして爆撃する場所や施設を指示、同時に爆撃絶対不可の施設として病院や学校等の場所を示して注意を促すといったことをしているから、当然、パイロットも爆撃手も「国境なき医師団」の病院の場所を把握していたはずだ

 だが、誤って空爆してしまった。

 しかも病院側が空爆を受けていることを通報しながら、30分以上、爆撃は続いた。

 これも素人の推測に過ぎないが、自分たちの爆撃の正確さの能力を過信していたのではないのだろうか。病院の場所を把握していたが、ギリギリのところまで空爆する。

 ときに自身の能力の正確さを過信すると、より高度な正確さに自ら挑戦して、その能力を証明し、誇りたい欲求に駆られる。多分以前にも挑戦して、証明してきたのかもしれない。

 大型バイクやスポーツ車に乗っている人間が自身の運転の技術に自信があると、かなりスピードを落とさなければ回り切ることはできない急なカーブをセンターラインギリギに沿って50キロの速度で回り切ることができた場合、次は55キロ、60キロの速度での挑戦の誘惑に駆られることがあるに違いない。

 だが、ある限度を越えると、センタータインに沿って回り切ることができずに対向車線に飛び出し、対向車と衝突するか、あるいは反対車線を斜めに突っ切って建物に突っ込んだりする。

 警察は単なるスピードの出し過ぎの事故で片付ける。

 「国境なき医師団」の病院誤爆の原因は推測間違いかもしれないが。人間が陥りやすい心理である。

 病院側が誤爆の通報をしてから30分も空爆が続いたのは、自分たちの爆撃の正確さの能力を過信していたために誤爆を信じなかったということもある。自己の能力を絶対とすると、絶対としている能力に対する間違いの指摘には、当然、拒絶反応を働かし、間違いを正当化する口実をつくり出したりする。

 安倍晋三も野党議員の間違いの指摘に強弁を働かせて無理やり正当化することが多い。ただ単に答弁自体に人命がかかっていないだけのことである。

 「いや、誤爆などするはずはない。タリバンが病院関係者だと偽って、空爆自体を中止させるために病院が爆撃を受けている、直ちに中止して欲しいと通報したのではないのか」・・・・

 能力過信者は自身の能力の正しさを守るために、ときとして思ってもみない創造力を働かすことがある。 

 このような正当化によって自身の能力の優れていることを守ることができる。

 誤爆の実際の原因は全然違うところにあるのかもしれない。だが、誤爆したパイロットにしても爆撃手にしても厳しい訓練を受けていたはずである。訓練のうちには爆撃していい場所としてはいけない場所を事前にしっかりと記憶しておくことと、記憶に応じた間違いのない正確な対応の方法も入っているはずである。

 にも関わらず、誤爆し、22人も犠牲者を出した。

 アメリカ軍やその他の軍隊がこれまでも誤爆や陸上での掃討作戦中に友軍兵士や友軍部隊を誤って攻撃し、死者を出したことも確かあったはずだ。

 国連の統計によると、国際部隊による空爆で去年1年間で市民104人が死亡、58人が怪我をしているとマスコミは伝えている。

 今回の誤爆がどのような原因で起こったのかは現在のところ不明であるが、誤爆・誤射の多発は訓練は決して絶対ではないと教える教訓としなければならない。

 このことを逆説するなら、訓練を絶対としてはいけないという教訓となる。

 だが、安倍晋三も防衛相の中谷元も自衛隊の訓練を絶対としている。新安全保障関連法が実施されても、訓練によって自衛隊、もしくは自衛隊員のリクスは高まることはないと、さも「自衛隊絶対安全神話」とも言うべき発言を国会で繰返し答弁していた。

 2015年5月26日の衆院本会議の代表質問から一例を挙げてみる。

 稲田朋美「法整備に伴う自衛隊員のリスクについてもお伺いいたします。

 野党からは、総理が自衛隊員のリスクについて率直に説明すべきとの批判があります。自衛隊の最高指揮官としての総理から、自衛隊員のリスクと、自衛隊員の安全を守るための法制上の仕組みについて御説明ください」

 安倍晋三「我が国有事は言うに及ばず、PKOや災害派遣など、これまでの任務も命がけであり、自衛隊員は限界に近いリスクを負っています。

 法制の整備によって付与される新たな任務も、従来どおり命がけのものです。そのため、法制の中で、隊員のリスクを極小化するための措置をしっかりと規定しています。

 具体的に申し上げれば、部隊の安全が確保できないような場所で後方支援を行うことはなく、また、万が一、自衛隊が活動している場所やその近傍で戦闘行為が発生した場合などには、直ちに活動を一時休止または中断するなどして安全を確保することとしています。

 もちろん、それでもリスクは残ります。しかし、それはあくまでも、国民の命と平和な暮らしを守り抜くために自衛隊員に負ってもらうものであります。

 他方、リスクの存在を認識しているからこそ、自衛隊員は、高度の専門知識を養い、日々厳しい訓練を行っています。自ら志願し、危険を顧みず職務を完遂することを宣誓したプロとして、危険な任務遂行のリスクを可能な限り軽減しています。これは今後も変わりありません」

 自衛隊の活動場所が常に安全であるとは限らない。今回誤爆を受けた「国境なき医師団」の病院は米軍に位置を前以って通報していて、安全な場所であったはずだ。

 しかも高度の専門知識を養い、日々厳しい訓練を受け、積み重ねているはずの米軍兵士によって誤爆を受けて、安全な場所が一挙に危険な場所に変じた。

 安倍晋三は自衛隊の活動場所は常に安全な場所だとする、今後起き得ると想定した全ての事態が想定した予想通りに結果も予想通りとする予定調和の認識に立ち、なお且つ「自衛隊員は高度の専門知識を養い、日々厳しい訓練を行ってい」るからと、それらの訓練が自衛隊員の安全を保証するとばかりに「自衛隊絶対安全神話」を振り回している。

 自衛隊の活動場所が常に安全とは限らないこと、どのような厳しい訓練を受けようとも、訓練が絶対ではないことを教訓として常に肝に銘じて行動しなければならないはずだが、安倍晋三は逆の認識の植えつけに血道を上げている。

 教訓を教訓としないと、ときとして大きな過ちを導くことになる。

 もし自衛隊員は米軍兵士とは違うと考えるとしたら、自衛隊員、もしくは日本人を特別な人種だと絶対視することになって、より大きな過ちを招くことになるだろう。

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