沖縄県民がその安全性に疑問を投げかけていたことに対して政府がその飛行の危険性を否定し、秋にも沖縄普天間飛行場への配備計画があるMV22オスプレイが4月(2012年)モロッコで訓練中に墜落、搭乗兵士2人が死亡した。 《MV-22オスプレイ配備に係る沖縄県及び宜野湾市への三次回答》
アメリカ政府はこの事故を機械的なミスが原因ではなく、人為的ミスだとする調査結果を日本政府に伝えた。
この報告を受けて森本防衛大臣が6月5日(2012年)午前の閣議後の記者会見で発言している。《オスプレイ墜落 米“機械的ミスでない”》(NHK NEWS WEB/2012年6月5日 13時55分)
森本防衛相「アメリカ側から、『少なくとも機械的なミスで起こった事故ではない』と日本側に通報されている。もう少し細部の結論を提供してもらえるよう引き続き要請している。
できれば配備の前に、すべての調査結果が提供されることが望ましい。必ずしもそうならないこともありえるだろうが、最後まで飛行の安全に万全を期すよう努力しなければならない」
この発言について6月8日(2012年)当ブログ記事――《森本防衛相は集団的自衛権行使容認思想の点で文民統制の確実性を担保できるのだろうか - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に次のように批評した。
〈「できれば」でも、「望ましい」でもなく、「配備の前に、すべての調査結果」の「提供」を求めるという強い意志を示し、もし配備前に提供がなければ、配備は許可しないと、提供要求の責任を果たすことでしか誠意ある態度とすることはできないはずだが、その逆の不誠実な態度となっている。
学者だから、自身の思想・考えに目を向けるのみで、配備反対にも関わらず配備が着々と迫ってくる沖縄県民の危機感は理解できないのかもしれない。
だとしたら、いくら文民統制を無難に果たしたとしても、自衛隊に対する役目上のクリアを示すのみで、国民に対する姿勢の点で問題を残すことになるだろう。〉・・・・・
勿論、この発言は沖縄県民の反発を招いた。
アメリカ側が現在普天間配備中のヘリコプターCH46よりも事故発生率が低いとし、日本政府も追従しているオスプレイが現地時間6月13日午後、日本時間6月14日午前7時45分頃、アメリカ南部フロリダ州のハールバート・フィールド空軍基地で通常訓練の最中に墜落した。
《オスプレイ 米で訓練中に墜落》(NHK NEWS WEB/2012年6月14日 14時32分)
機種はCV22オスプレイ。
5人の搭乗兵士は病院で手当中で、怪我の程度は不明。空軍が事故原因の調査中だという。
仲井真沖縄県知事「まだ墜落の原因や詳細な中身が分からないのでコメントできないが、よく落ちるという印象が強くなる。配備に影響が出るのではないかとも思うが、こういうことはなくして欲しい」
日本時間6月14日午前7時45分頃オスプレイ墜落の2日前の日の6月12日に防衛省は沖縄県と宜野湾市が防衛省に提出していたMV-22オスプレイ配備に関わる質問書に回答している。
〈問19 市街地の中心にある普天間飛行場へのMV-22配備において、特に考慮した安全管理の具体策があれば、ご説明いただきたい。
○米海兵隊としては、普天間飛行場に限らず、どこの飛行場においても、またMV-22に限らず、どの航空機においても徹底した安全管理を行っている旨米側から説明を受けている。
○また、環境レビューでは、普天間飛行場における安全性の評価に関し、換装されるCH-46とは異なり、MV-22を操縦するパイロットは広範囲でシミュレータを使用することとなり、このシミュレータは飛行運用の全ての面における訓練を提供し、徹底したシミュレータ訓練により、パイロットのミスによる事故に関連したリスクは最小限になること
バードストライクは、人口密度の高い区域で航空機が墜落した場合に地元の住民へ損害を与える可能性があることから安全上の懸念であり、米海兵隊は、普天間飛行場におけるバードストライク事故計画を作成し、警報システムを運用するなど、積極的及び継続的な取組を引き続き維持することなどが記載されており、引き続き徹底した安全管理が行われると認識している。〉
〈徹底したシミュレータ訓練により、パイロットのミスによる事故に関連したリスクは最小限になること〉と人為的ミスの危険性は最小限だと太鼓判を押している。
だが、今年4月のモロッコの墜落は最小限に抑えられていいはずの人為的ミスが原因だとしている。
まさかMV-22だけが徹底したシミュレーター訓練を行うわけではあるまい。沖縄配備がMV-22だから、MV-22を対象に説明したということであろう。
それとも原子力安全委員会の班目委員長が原子炉格納容器内への海水注入の場合、「再臨界の危険性はゼロではない」と言ったように、最小限とはゼロではないということなのだろうか。
しかし沖縄の普天間上空を飛行ルートと想定した場合、人口密集地帯はいくらでも存在する。ゼロではないとする最小限の確率に賭けるわけにはいかないはずだ。
もし今回のフロリダのCV22オスプレイ墜落が人為的ミスであったなら、モロッコの墜落に引き続いた人為ミスということで、〈徹底したシミュレータ訓練により、パイロットのミスによる事故に関連したリスクは最小限になること〉はウソになる。
人為的ミスを誘う何らかの欠陥を抱えているとみなければならない。
オスプレイ普天間配備計画に於ける沖縄に対する不誠実は森本防衛相だけではない。政府自体が不誠実な態度を取り続けてきた。
その不誠実さが、2011年8月3日当ブログ記事――《菅仮免の原発問題とオスプレイ配備問題に見る「国民の安心と安全」の二重基準 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》で取り上げた照屋寛徳社民党議員の質問書に対する政府の答弁書に如実に現れているゆえに、再度取り上げて、その不誠実さを証明してみる。
漢数字の一部を洋数字に改め、質問に対する政府答弁を対照表記にして、青文字で表し、それぞれ批評を加えた。
垂直離着陸機MV22オスプレイの耐空性基準に関する質問主意書
2011年7月9日提出 質問第304号 提出者 照屋寛徳
いかなる理由があれ、私は、垂直離着陸機MV22オスプレイ(以下、オスプレイという)の沖縄配備に断固反対である。その立場はこれまでも、そして、これからも絶対に変わることはない。
さて、レックス・リボロ氏は、1922年6月から2009年3月まで、米国防総省運用試験評価局に関係する国防分析研究所(IDA)で、オスプレイの主席分析官を務めた航空専門家である。IDAでは、オスプレイの飛行テストや技術データの分析・評価を行っていた。
そのリボロ氏が2009年6月23日、米連邦議会下院の監視・政府改革委員会におけるオスプレイに関する公聴会(以下、公聴会という)で重大な証言をしている。特に注目すべきは、オスプレイが米軍も根拠にしてきた米連邦航空局(FAA)の耐空性基準(いわゆる安全基準)を満たしていないとの指摘である。その根拠としてリボロ氏は、オスプレイがオートローテーション(自動回転)機能を欠いている点を挙げている。
なお、公聴会議事録は、上記委員会のホームページにアクセスすれば、誰でも簡単に入手できる。
以下、質問する。
質問1
リボロ氏が、公聴会で証言した「積載荷重の限界」「オートローテーション機能の欠如」「戦闘操縦能力の欠如」の三点について、それぞれ概要を説明した上で政府の見解を示されたい。
平成23年7月19日
内閣総理大臣 菅 直人
質問1に対する答弁
御指摘の三点については、米国の民間の研究機関である米国防衛分析研究所の元首席分析官レックス・リボロ氏が、2009年6月23日(現地時間)の米国下院監視・政府改革委員会公聴会において発言したものであると承知しているが政府として、個人の発言内容について説明する立場になく、また、米国議会における議事内容について見解を述べることは差し控えたい。いずれにせよ、垂直離着陸機MV22オスプレイ(以下「MV22」という。)の安全性等については、引き続き、米国政府に対して、更なる情報の提供を求め、詳細な情報把握に努めているところである。
リボロ氏は米連邦議会公聴会で証言をしているのである。その証言に対してアメリカ政府、あるいは米軍当事者が何も評価を加えていないということはあるまい。反論するなら、具体的データーを用いて反論しているはずである。
にも関わらず、「政府として、個人の発言内容について説明する立場になく、また、米国議会における議事内容について見解を述べることは差し控えたい」と傍観者の態度を取っている。
沖縄及び沖縄県民が知りたいことはその安全性の確認、確たる証拠である。その安全性の確認、確たる証拠を政府自らが率先してアメリカ側に働きかけて入手、沖縄に提供しようとする積極的性がどこにもない。
だから、傍観者的態度を取ることができる。
質問2
リボロ氏が公聴会証言で指摘した上記三点について、政府が米側から、問題がクリアされた旨報告を受けているのであれば、それを裏付ける客観的データを示した上で米側の説明内容を明らかにされたい。
質問2に対する答弁
政府として、米側よりお尋ねの『報告』は受けていない。
日本政府自らが「報告」を求めるという積極性はは一切見せず、アメリカ次第・アメリカ追従の傍観者的態度に終始している。この不誠実さも見事である。
質問3
概して、政府は『オートローテーション』をいかなる機能と理解しているか説明されたい。また、ヘリコプターが「オートローテーション機能」を損失した場合、運用上いかなる支障が生じると考えるか、見解を示されたい。
質問3に対する答弁
オートローテーションとは、回転翼航空機が運動中、その揚力を受け持つ回転翼が完全に空力のみによって駆動される飛行状態をいうものであると承知している。また、御指摘の『ヘリコプターが「オートローテーション機能」を損失した場合』の意味するところが必ずしも明らかではないが、回転翼航空機において、飛行中に全エンジンが不作動となった状態で、オートローテーションによる飛行に移行しない場合は、安全な着陸に支障を来す可能性があるものと考えられる。
機械に関する機械的なやり取りに過ぎない。
質問4
2004年8月の沖縄国際大学へのCH53ヘリ墜落炎上事故後、普天間飛行場における飛行再開、安全対策の根拠として防衛施設庁(当時)が挙げたのが、2007年8月10日公表の「普天間飛行場に係る場周経路の再検討及び更なる可能な安全対策についての検討に関する報告書」である。同報告書は、『ヘリは緊急の際にも「オート・ローテーション」によって、飛行場内に帰還を図ることが可能』としている。
オートローテーション機能が欠如しているオスプレイを普天間飛行場に配備することは、政府のいう同飛行場における安全対策の根拠崩壊を意味しないか、見解を示されたい。なお、意味しないとの政府見解であれば、その根拠を明らかにされたい。
質問4に対する答弁
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、MV22の安全性等に関しては、引き続き、米国政府に対して、更なる情報の提供を求め、詳細な情報把握に努めているところである。
「質問2に対する答弁」で既に日本政府自らが「報告」を求めるという積極的姿勢は一切見せていないのだから、「引き続き、米国政府に対して、更なる情報の提供を求め、詳細な情報把握に努めているところである」は単なる口先だけなのは明らかで、アメリカ側の報告次第の待ちの姿勢ということであろう。
質問5
関連して、去る6月24日、沖縄県知事と宜野湾市長が連名で『MV-22オスプレイ配備について』と題する29項目の質問状を防衛大臣宛に送付している。係る質問状に回答するため、米側に対し、いつ、いかなる方法で必要な情報の照会と客観的データの提供を求めたのか。政府が目途とする回答時期と併せて明らかにされたい。
質問5に対する答弁
お尋ねの米国政府とのやりとりの詳細について明らかにすることは、同国との関係もあり、差し控えたいが、沖縄県や宜野湾市に対しては、同国政府から得られたMV22の安全性や騒音等に関する情報について、できるだけ速やかに説明を行ってまいりたい。
「同国政府から得られた」と過去形になっている。過去形が事実だとすると、既にアメリカから報告を受けているが、その内容については「できるだけ速やかに説明を行ってまいりたい」では「できるだけ速やかに」であることから、矛盾することになる。
但し「質問4に対する答弁」で言っている、「MV22の安全性等に関しては、引き続き、米国政府に対して、更なる情報の提供を求め、詳細な情報把握に努めているところである」の未来形と矛盾することになる。
いずれにしても積極的に情報公開に努めようとする意志を見受けることはできない。
この照屋議員の質問主意書は2011年7月9日提出であるが、照屋議員は2010年10月7日にもオスプレイの安全性についての質問主意書を提出している。
但し政府答弁書は誠実にも質問1~4まで纏めて答えている。
米軍普天間飛行場へのオスプレイ配備計画に関する質問主意書
2010年10月7日提出 質問第34号 提出者 照屋寛徳
米海兵隊の次期主力機となるのが垂直離着陸機MV22オスプレイ(以下、オスプレイという)である。
現在普天間飛行場に配備されているCH46E中型ヘリの代替機種として、米海兵隊がかねてより同飛行場へのオスプレイ配備を目論んできたことは明白である。だが、旧自民党政権や現民主党政権も沖縄県民の強い反発を予想して普天間飛行場へのオスプレイ配備をひた隠しにしてきた。
ところで、米海兵隊は去る9月29日(現地時間)、10月1日にオスプレイの運用部隊をミラマー基地(米サンディエゴ)で発足させ、2012年10月に12機、2013年4月に12機、計24機を普天間飛行場に配備するとする「2011会計年度海兵航空計画」(以下、「海兵航空計画」という)を公表した。同計画では、普天間飛行場の駐機場建設や滑走路、路肩等の整備を米軍予算で行うことも明らかになっている。
以下、質問する。
質問1
オスプレイは、米国において『未亡人製造機』と呼ばれ、開発段階から墜落・死亡事故を多発せしめている悪名高い欠陥機である。政府は、米海兵隊が公表した「海兵航空計画」の存在を承知しているか、承知しているのであれば、同計画に対する見解を示されたい。承知していないと弁解するのであれば、なぜ公表された同計画を知り得る手段、方法があるにもかかわらず、政府はその措置を講じないのか理由を示されたい。
質問2
岡田克也外務大臣(当時)は去る8月31日、「普天間飛行場の代替の施設に係る二国間専門家検討会合の報告」(以下、「日米専門家協議」という)発表後の記者会見で「新しい要素、オスプレイをどうするかという議論もある」と述べた。一方で、9月14日の記者会見では「オスプレイ(配備)を前提に議論したとは思っていない」との見解を示している。他方、同日の記者会見で、仙谷由人官房長官はオスプレイ配備を前提に議論されたことを認めた。係る岡田外務大臣(当時)、仙谷官房長官発言を総合すると、少なくとも「日米専門家協議」で普天間飛行場へのオスプレイ配備が協議されたことは間違いないと考える。
普天間飛行場代替施設へのオスプレイ配備について、「日米専門家協議」における米側からの計画伝達に対する政府の統一見解を明らかにされたい。
質問3
「日米専門家協議」において、普天間飛行場あるいは同飛行場代替施設へのオスプレイ配備について日米間でいかなる議論がなされたのか、その内容を明らかにされたい。
質問4
「日米専門家協議」で米側は、2006年5月に日米合意(いわゆるロードマップ)された普天間飛行場代替施設における軍用機の飛行経路(有視界飛行)について日本政府の従来説明が間違っているとし、大幅に拡大するよう要求したようだ。係る米側の要求と同代替施設へのオスプレイ配備との関係性を示したうえで、米側の要求の有無について明らかにされたい。
2010年10月19日
内閣総理大臣 菅 直人
質問1~4に対する答弁
政府としては、米海兵隊が公表している「MARINE AVIATION PLAN」において、現在普天間飛行場に配備されている回転翼機CH46の部隊が、2013米国会計年度第一四半期から垂直離着陸機MV22オスプレイ(海兵隊用。以下「MV22」という。)の部隊に代替されるとの計画が記述されていることは承知しており、将来において沖縄にMV22が配備される可能性があることは認識しているが、「MARINE AVIATION PLAN」は米国国防省として正式に承認した計画ではなく、MV22の沖縄への配備については現時点で確定しているわけではないと承知している。
また、平成22年8月31日の「普天間飛行場の代替の施設に係る二国間専門家検討会合の報告」(以下「専門家会合報告書」という。)の発出に至るまでの日米間の協議においては、普天間飛行場の代替の施設における有視界飛行の経路を検討する中で、米側から、仮にMV22が沖縄に配備された場合も含め、様々なケースを想定して議論しなければならないとの意見が提起された。
なお、専門家会合報告書にあるとおり、有視界飛行の経路については、今後、継続して協議することとなっている。
米側は「普天間飛行場の代替の施設における有視界飛行の経路を検討する中で、米側から、仮にMV22が沖縄に配備された場合も含め、様々なケースを想定して議論しなければならないとの意見が提起された」とオスプレイ配備の可能性を示唆している。
当然、照屋議員が「オスプレイは、米国において『未亡人製造機』と呼ばれ、開発段階から墜落・死亡事故を多発せしめている悪名高い欠陥機」であり、そのような欠陥機の沖縄配備の可能性について質問している以上、また常に問題となっているのはオスプレイの安全性である以上、「米国国防省として正式に承認した計画ではなく、MV22の沖縄への配備については現時点で確定しているわけではない」としても、配備の可能性の観点から、その安全性如何に誠実な態度で応えるべきを、確定していない可能性のみで片付ける不誠実さを見せている。
質問5
政府が飛行経路拡大を認めた場合、普天間飛行場の代替施設建設にともなう環境影響評価(アセスメント)自体が成立せず、方法書作成段階からのやり直しが必要だと考えるが見解を示されたい。
質問5に対する答弁
普天間飛行場代替施設建設事業における飛行場の設置に関する環境影響評価については、これまで、沖縄県環境影響評価条例(平成12年沖縄県条例第77号。以下「条例」という。)に従い手続を進めてきたところである。
普天間飛行場の代替の施設における有視界飛行の経路については、一から四までについてでお答えしたとおり、今後、継続して協議することとなっており、御指摘の「飛行経路拡大」については、現時点で何ら決まっていないが、一般論として申し上げれば、飛行経路の変更に係る事業内容の修正については、条例第20条第1項、第23条第1項及び第25条の規定によれば、改めて、条例第5条から第24条までの規定による環境影響評価その他の手続を経ることは要しないものと考えられる。
いずれにせよ、政府としては、当該環境影響評価については、沖縄県と調整を行い、条例に従い、適切に対応してまいる所存である。
質問6
米国内あるいは派遣国において開発段階から2010年9月末日までの間にオスプレイが惹起した墜落事故件数、乗員の死亡事故件数を年度別に明らかにしたうえで、事故発生率に対する政府の見解を示されたい。政府として墜落・死亡事故の件数を把握していないのであれば、オスプレイの安全性確認のためにも米政府に必要な情報提供を求めるべきだと考えるが見解を示されたい。
右質問する。
質問6に対する答弁
お尋ねの「墜落事故件数」及び「乗員の死亡事故件数」について、確定的かつ網羅的にお答えすることは困難であるが、例えば、2009年12月22日付けの米国議会調査局による報告書によれば、垂直離着陸機V2222オスプレイの開発段階において、1991年に1件、1992年に1件、2000年に2件の墜落事故が発生し、そのうち1991年の1件を除いた3件が死亡事故であったとのことである。また、2010年4月9日付けの報道によれば、同月8日、垂直離着陸機CV22オスプレイ(空軍用)がアフガニスタンにおいて墜落し、米軍人等が死亡したとのことである。
これらの墜落事故が他の航空機と比べて多いか少ないかについて、政府として評価することは困難であるが、いずれにせよ、垂直離着陸機V22オスプレイは、機体の改良、運用評価飛行等を経て、機種の信用性、維持可能性等についての評価が行われ、2005年に、米国国防省により、本格的量産の承認がなされたと承知している。
「お尋ねの『墜落事故件数』及び『乗員の死亡事故件数』について、確定的かつ網羅的にお答えすることは困難である」・・・・
「確定的かつ網羅的に」、且つ特定できた場合の原因について統計を取っていないということは考えられない。
また、「これらの墜落事故が他の航空機と比べて多いか少ないかについて、政府として評価することは困難である」と言っているが、オスプレイが垂直に離陸したあと、一般の輸送機のようにプロペラを用いて水平飛行する新規の特殊機であり、「開発段階から墜落・死亡事故を多発」、「未亡人製造機」の有難い呼称を戴いていた事実が存在する以上、改良段階で他のヘリコプターと比較して事故発生率抑制が至上命令であったはずだ。
そのような経緯を背景とした、機械的欠陥の改善と併行させて行った「徹底したシミュレーター訓練」による人為的ミスの縮小を加えた事故発生の抑制の努力ということであろう。
いわば常に「他の航空機と比べて多いか少ないか」が問題となっていたはずであり、そうである以上、日本政府がオスプレイの他のヘリコプターと比較した事故発生率を把握できたはずだし、日本国内に配備される以上、国民の生命・財産を守る責任上、把握していなければならなかったはずだ。
だが、そういった意志も姿勢を見せないのは沖縄県民に対してだけではなく、日本国民に対する不誠実さの表れと見るしかない。
日本政府はフロリダでのオスプレイ墜落の原因追及を求め、森本外相はルース在日米大使と防衛省内で会談、墜落に関わる情報提供を求めた。
《配備手続き見合わせ=オスプレイ事故、原因究明まで-政府》(時事ドットコム/2012/06/14-19:50)
6月14日記者会見。
藤村官房長官「早急に事実関係を把握すべく米国政府に照会しているところだ。詳細が分からない限り、何ら新たな行動を起こさない。
(配備予定の沖縄や一時駐機要請を受けている岩国等の地元の)安全性の懸念は承知しているので、事故の事実関係も含めて丁寧に誠意を持って説明していく」
6月14日防衛省内。
森本防衛相「事故は大変残念だ。できるだけ詳細な情報を速やかに知らせてほしい」
沖縄や岩国の不安に誠実な態度で応じようという姿勢の提示ではあるが、これまでの日本政府の不誠実な態度、森本防衛相がモロッコでのオスプレイ墜落に関わるアメリカの調査結果を沖縄配備前に求めるとする強い態度を示さなかった不誠実な態度からすると、さらには森本防衛相も含めたアメリカ追従の姿勢からすると、沖縄配備が遅れることの恐れからの、あるいは岩国一時駐機を断られる恐れからの安全性確認の誠実な姿勢を見せる目的のアリバイ作りの疑いが濃い。
日本政府のオスプレイ沖縄配備に見せてきたこれまでの不誠実な態度を読み解くとしたら、誠実に対応していたなら、配備は実現しない、適当に相手をして、配備の既成事実をつくってしまおうという魂胆からの不誠実に見える。
だが、このことの裏を返すと、オスプレイが誠実に対応できない危険性を抱えているということにもなる。