菅仮免も野田財務相も言っていた「雇用のミスマッチ解消」、中間層分厚くをウソにする言葉だけの政治風景

2012-06-04 09:05:20 | Weblog

 野田政権が若者雇用確保の雇用戦略原案を纏めたと2012年5月28日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。《政府が若者雇用戦略の原案》(NHK NEWS WEB/2012年5月28日 19時14分)

 原案の内容として次のことを紹介している。

 ●大企業志向が強い学生と
  採用意欲がありながら人
  材を確保できない中小企業との間のミスマッチ解消の政府版就職情報サイトの作成
 ●大学や高等学校に対する「キャリア教育」実施義務化
 ●学生の職場体験「インターンシップ」を産学官で支援する協議会の設置
 ●企業採用学生の出身校の公表化による学生の就職活動の参考化

 記事は雇用戦略原案作成の背景として、内閣府の推計である一昨年春卒業の大学生、専門学校生のうち52%が就職できなかったり就職しても早期に自分の都合で勤め先を辞めたりしている状況を挙げている。

 また、政府版就職情報サイトは〈知名度は低くても独自の技術やサービスで成長している中小企業などを紹介する〉ことが狙いだと解説。
 
 最後の企業が採用した出身校の公表化は学閥の助長を誘導し、慣れ合いの人間関係を招かないだろうか。

 ただでさえ日本人は日本人同士という意識が強くて、精神的な国際化が遅れているところに持ってきて、社会人というスタート地点で一種の同族化に向かうことになり、行動や考えの類似性(横並び性)を一層加速化することにならないだろうか。

 だとしても、早期中途退職等のない若者の的確な雇用確保を図らなければならないが、何よりも問題なのは記事が、〈政府は、これまで、若者の雇用対策を再三打ち出してきましたが、十分な効果を挙げられていないのが現状です。〉と書いていることである。

 いわば再三打ち出してきた民主党政権の若者雇用政策が実効性を持ち得なかった。その果ての今回の「若者雇用戦略」だということである。

 裏を返して言うと、民主党政権は若者の雇用に関わる政策創造能力不足だということになる。

 当然記事が書いているように、〈今回示した雇用戦略が、厳しい雇用状況の打開につながるのか、その実効性が問われそうです。〉ということになる。

 企業の人件費の抑制、雇用調整弁としての非正規採用の偏重といった問題を抱えているが、それでもなお若者の雇用問題は景気回復が最善の良薬となることに変わりはないはずだが、全体的な景気回復策を大枠とせずに不況による厳しい雇用環境を前提としているからだろう、否応もなしに対処療法的となっている。

 古川経済財政担当相(会議の中で)「次の時代を担っていくのは、いつの時代も若者だ。若い人たちにしっかりした雇用の場があって、それが生活にもつながっていくわけなので、来月、若者雇用戦略として正式に決定したうえで、関係者、政府が一体となって、戦略の着実な実施に努め、若者を取り込んだ成長を目指していきたい」

 具体性のない、極々当たり前の紋切り型の謳い文句を述べ立てたに過ぎない。

 大学や高等学校に対する「キャリア教育」の実施を義務化するということだが、「キャリア教育」を職業教育程度にしか理解していなかったから、インターネットで調べてみた。

 既に皆さん理解済みだと思うが、「はてなキーワード」に次のような記述がある。

 色々と書いているが、主なところを拾ってみる。

 「キャリア」の定義

 「個々人が生涯にわたって遂行する様々な立場や役割の連鎖及びその過程における自己と働くこととの関係付けや価値付けの累積」(キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議報告書「児童生徒一人一人の勤労観、職業観を育てるために」(平成16年1月)

 難し過ぎるタテマエとなっている。責任感のない人間が言うのは滑稽だが、要するに立場立場に於ける責任感(それぞれが与えられることになっている立場上の自分が引き受けて行わなければならない役目に対する間違いのない実行性)の保持を基本とした姿勢の要請というだと思う。

 「キャリア教育」の定義

 「望ましい職業観・勤労観及び職業に関する知識や技能を身に付けさせるとともに、自己の個性を理解し、主体的に進路を選択する能力・態度を育てる教育」 中央教育審議会答申 「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」 (平成11年12月)

 具体的方法論は次のように説明している。

 「職業観・勤労観を育む学習プログラムの枠組み例」(国立教育政策研究所 平成14年)

 1.人間関係能力: 他者の個性を尊重し、自己の個性を発揮しながら、様々な人人とコミュニ
   ケーションを図り、協力・共同してものごとに取り組む。
 2.情報活用能力: 学ぶこと・働くことの意義や役割及びその多様性を理解し、幅広く情報を
   活用して、自己の進路や生き方の選択に生かす。
 3.将来設計能力: 夢や希望を持って将来の生き方や生活を考え、社会の現実を踏まえなが
   ら、前向きに自己の将来を設計する。
 4.意志決定能力: 自らの意志と責任でよりよい選択・決定を行うとともに、その過程での課
   題や葛藤に積極的に取り組み克服する。

 このすべてを実現する基本的資質は自律性(自立性)であろう。

 要するに自律性(自立性)を育みさえすれば、自ずと以上の能力を発揮し得る。

 だが、日本の教育は「総合学習」で謳った、「自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する」という自律性(自立性)教育に失敗したのである。

 この失敗は日本の教育が伝統とし、文化とし、歴史としてきた暗記教育から脱しきれなかったことが原因であって、失敗がなお一層の暗記教育回帰を促すことになった。

 とするなら、民主党政権が「若者雇用戦略」で大学や高等学校に対して「キャリア教育」実施義務化をいくら掲げようと、その実効性に悲観的にならざるを得ないことになる。

 日本の教育が自律心(自立心)を涵養できなければ、単に人材不足の企業に卒業人材を当てはめるといったことしかできないだろう。大企業と中小企業間の雇用のミスマッチを少しぐらいは埋めることができるかもしれない。

 それも景気に左右されることに変わりはない。

 それにしても民主党政権の若者雇用政策に関わる政策創造能力不足は如何ともし難い。

 民主党は2009年総選挙用の《民主党政策集INDEX2009》で、「若者の雇用就労支援」に関して次のように謳っている。

 〈若者の雇用就労支援

雇用失業情勢の悪化に伴い、派遣労働者を含む多くの非正規労働者が職場を追われ、ネットカフェ等で寝泊りしなければならない人が増加しています。この状況を改善するため、「住まいと仕事の確保法」を制定し、住居がなく、安定した就職が難しい若者等に対して、ハローワーク・自治体・企業の連携のもと、カウンセリング職業紹介職業訓練賃貸住宅への入居などを支援します。

自立を希望する若者が安定した職業に就けるよう、

(1)「若年者等職業カウンセラー」による職安での就労支援
(2)「個別就業支援計画」の作成などによる職業指導
(3)民間企業での職業訓練
――等を行います。必要に応じて就労支援手当(1日1000円、月3万円相当)を支給します。

教育機関・企業・国・自治体が連携して、職業体験学習企業見学インターンシップなどを行い、若い世代の就労意欲の向上を図ります。〉――

 2009年の総選挙に掲げながら、2年9カ月後に再三なのか、再三再四なのか、掲げることになった。上記記事が〈政府は、これまで、若者の雇用対策を再三打ち出してきましたが、十分な効果を挙げられていないのが現状です。〉と書くのも無理はない。

 実は菅仮免許前首相が10年9月10日の民主党代表選公開討論会で景気対策及び雇用のミスマッチに関して発言している。

 質問「雇用を生み出すのは大変だ。具体的な手だては何か」

 菅仮免「雇用と成長は、いわば裏表の関係にある。経済が成長すれば雇用が生まれるという側面もある。同時に、雇用が大きくなることで成長につながっていくのもある。雇用については、雇用の創出と、雇用を守ることと、雇用をつなぐ。創出、守る、つなぐという言い方をしている。

 創出はたとえば、グリーンイノベーションとかもあるが、同時に介護や保育のような分野は、需要は潜在的にありながら、仕組みの問題やあまりにも給料が安いということで、せっかくの需要を生かし切れていない。こういうところは、まさに雇用を新たに創造する。今回の場合、20万人の雇用を緊急対策で約10兆円規模の事業費でやることを今日決定した。

 守るというのは、海外に移転するような企業に対して、国内で仕事がしやすい状況を作る。一部低炭素事業への補助金も出すが、法人税のあり方も含めて海外に税が高すぎて出ていくという傾向もあるので、年内にしっかりと法人税のあり方を検討する。

 つなぐとは、先日、京都のジョブパークに行って話を聞き、確かに大企業は求人倍率は0.5ぐらいだが、中小企業は4ぐらいある。中小企業がほしい人材、学生さんが暗い顔してやって来るのをカウンセリングして、いろいろ話をして、場合によってはトライアル雇用をやっていると、だんだん元気になってくる。逆に中小企業の人も、去年1人とってみたら元気だった、今年は2人とろうと。かなりの成果が上がっていた。そういうミスマッチをきちんとマッチングさせることも極めて大きいところだ。創(つく)る、守る、つなぐと。これで雇用を拡大していきたいと考えている」(MSN産経記事から)――

 だが、現在に至っても、若者の雇用を言わなければならないし、ミスマッチの解消を言わなければならない。

 野田首相も財務相だった2011年1月18日午前の閣議後会見で、4月卒業予定大学生の就職内定率が過去最低を記録したことを受けて、若者の雇用支援について発言している

 記者「この春に卒業する大学生の就職内定率が68.8%ということで、非常に氷河期よりもかなり悪い、3人に1人ぐらいが内定を得られていないという状況で、民主党政権も雇用対策というのを非常に重視していると思うんですが、なかなかその効果が上がっていないのではないかという見方も出来ると思うんですが、このデータの受け止め等をお願いします」

野田財務相「厳しい重たい数字だと思います。やっぱり政治の最低限目指す使命というか、役割というのは、この国に生まれてよかったと思える、そういう国を作ることであって、学びたい、働きたいと思っている若者達にチャンスを与えられない国ではいけないというふうに思います。

 その意味では菅政権、雇用に力を入れて、今回の平成23年度の予算も成長と雇用を最大のテーマにしていますが、その中に出てくるのは雇用のミスマッチの解消とか、あるいは求職者支援制度といったセーフティーネットですが、雇用を作ることが大事だと思います。

 その意味では税制改正の中で、法人実効税率の引き下げとか中小の軽減税率の引き下げ、あるいは雇用促進税制、こういうものを内容としていますので、予算とそしてこの関連法案を早期に成立させることによって若者達にチャンスを作るような環境整備を是非していきたいと思います」――

 財務相だった野田氏は首相となった。政策運営責任者としてなおのこと若者の的確な雇用を保証する政策の創造とその実効化の責任を追うことになった。

 確かに大震災の悪影響があった。ヨーロッパの金融危機の影響もあるだろう。

 だが、「やっぱり政治の最低限目指す使命というか、役割というのは、この国に生まれてよかったと思える、そういう国を作ることであって、学びたい、働きたいと思っている若者達にチャンスを与えられない国ではいけないというふうに思います」と言い、首相になってからも常々言っている以上、不況下にあっても国民に何らかの希望を与えるサイン(「『今日よりも明日が、より豊かで幸せになる』という確かな《希望》」(2012年1月1日年頭所感))のサインを政治が発信し、失望を与えない配慮が必要なはずだ。

 果たしてそのような配慮を示し得ているのだろうか。2011年自殺者は2010年から減ってはいるものの、2010年自殺者31690人から20011年30651人へと僅かに1039人減ったのみで、14年間自殺者3万人超えは政治が国民に対して決定的に希望を与えることができていない状況が原因の一端となっていることを示している。

 また、「働きたいと思っている若者達にチャンス」を約束できる政治の確立にしても、野田首相が掲げている「中間層を分厚くする」政策の主要部をなすはずだ。

 だが、いずれにしても実行能力を発揮できず、言葉だけの政治風景となっている。

 そのような政治風景を受けた今回の雇用戦略原案の取り纏めということであろう。

 野田政権の内閣支持率の低下、民主党の政党支持率の低下を単に数字だけのことと見ずに、自らの政策創造能力の欠如と見るべである。

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