小沢一郎強制起訴、議員辞職、離党、国会承認喚問は必要か

2010-10-05 07:25:19 | Weblog

 民主党の小沢一郎が資金管理団体「陸山会」の土地取引事件に絡んで検察審査会により昨10月4日、強制的に起訴すべきとする「起訴議決」を受け、強制的に起訴されることになった。

 周囲がどう受け止めたか、当たり前のことだが、“立場利害”によって異なる。マスコミが取り上げたそれぞれの立場からのコメントを拾ってみた。記事の題名は省略するが、NHKは一人ひとりの声を別々の記事で取り上げているから、同じ「NHK」と書いても異なる記事となる。

 以下「NHK」記事から――

 松木政務官「プロの検事が不起訴処分を出したのに、こういう形になったのは、非常に残念だ。わたしは納得がいかないが、国民が出した結論でもあるので、裁判でしっかりと無罪を勝ち取ってほしい。今回は、かなり無罪が強く推定される起訴なので、小沢氏は離党しなくてもいいのではないかと思う」(親小沢)

 生方衆議員「小沢氏が代表選挙で勝っていなくてよかった。総理大臣になっていたら、また大問題だった。政治とカネの問題について、きれいにしなければいけないということが、政権交代の一つの目的でもあったので、代表選挙に立候補した人が強制起訴される事態になったことは、非常に重く受け止めなければいけない。結果は裁判で白黒はっきりするだろうが、起訴されたことの政治的な責任はきわめて大きく、小沢氏は政治活動を自粛するのが筋だ」(反小沢)

 輿石参議院議員会長「今初めて聞いたので、コメントのしようがない」(親小沢)

 記者「政治とカネの問題で厳しく問われることになり、今後の国会運営にも影響が出ないか」

 輿石参議院議員会長「議決について初めて聞いたし、今、コメントする必要はない」

 平沼赳夫(どっこいしょ たちあがれ日本代表)「小沢氏の政治資金をめぐる事件は、国民の目から見て不明な点が多く、今回の議決は当然の判断だ。国民が納得できるよう、小沢氏は国会に出てきて事実関係を明らかにすべきだ。小沢氏は議員辞職も選択肢の一つとして、一定のけじめをつけるべきだ」(反小沢)

 舛添(新党改革代表)「国民の代表である検察審査会の決定であり、小沢氏は決定を厳粛に受け止めて、裁判の中で真実を明らかにしてほしい。民主党の議員の政治とカネの問題に対しては、依然として国民が疑問に思っている点が多く、臨時国会では引き続き、説明を求めたい」(反小沢)

 反小沢だが、批判色を抑えているのはご民主党と連携したいご都合主義の欲求が小沢一郎がいなくても民主党内には親小沢が多数存在する手前、露骨に反小沢を見せるわけにはいかない“立場利害”がそう仕向けている反小沢抑制なのは明らかである。

 まだ自民党にいて谷垣執行部を盛んに批判していた頃は、「参院選に敗れたら自民党はなくなるという危機感を持って戦っており、自民党支持者も支援してくれていると思う。敵は小沢民主党独裁政権で、敵を間違ってはいけない」と小沢代表の民主党は露骨に批判、小沢一郎が「政治とカネ」の問題で代表を辞職して鳩山代表下の幹事長に就任してからは、「我々の敵は小沢一郎幹事長のいる民主党だ。敵を間違ってはいけない。民主党政権を倒すことに成功すれば、自民党支持者にもきちんと評価して頂けると思っている」と批判していた頃から比べると遥かにトーンダウンしている。

 元々ご都合主義者であった上に衆議員ゼロ、参議院2議員のみの泡沫政党の代表という肩身狭い“立場利害”からしたら、党の存在意義を獲得するためには与党との連携に向けてなり振り構ってはいられないのだろう。

 下地幹事長(国民新党)「司法制度の中で決められたことなので、結果を重く受け止めなければならない。小沢氏は政治家として大きな役割を担う立場にいたし、今もそうなので、政界にとっては非常に衝撃的だ。今でも、小沢氏としては、みずからの主張が正しいという思いが強く、じくじたる思いではないか。責任を取るかどうかは、政治家本人が決めることなので、他党のわたしが申し上げることではない」(親小沢)

 福島瑞穂(社民党党首)「事実に基づいて厳正かつ公正に公判が進むよう、しっかり見守っていく。きょうの段階で、議員辞職などについて、まだコメントするときではないが、小沢氏は刑事手続きとは別に国会の場で、きちんと説明責任を果たすべきだ」(中間派)

 渡辺喜美(みんなの党代表)「国民の目線で見た場合、けじめがついていなかったということだ。私たちは『国会に出てきて説明すべきだ』と主張し、証人喚問を要求してきたが、これに応じなかったことが検察審査会の判断につながり、ツケが回ったのだと思う。小沢元代表は、証人喚問に応じるべきだ」(反小沢)

 佐々木(共産党国対副委員長)「強制起訴が決まったことはきわめて重大だ。政治資金収支報告書の虚偽記載の問題ばかりか、4億円の不動産購入の原資がゼネコンからの裏献金だった疑いがますます濃厚になった。国会として真相の究明と政治的道義的責任を明らかにする必要があり、各党と協力して小沢氏の証人喚問を実現したい」(反小沢)

 山口那津男(公明党代表)「新しい制度が政治家に適用される初めてのケースで、きわめて重要な意義を持っており、政界全体として重く受け止める必要がある。説明責任を果たす、再発防止策を作り上げるというのが政治の責任だ。これまで公明党は、刑事訴追など明白で重大な違法性があった場合には辞職勧告などを行ってきたが、検察の側が起訴したケースと、今回の新しい制度を受けて、このような結論に至ったケースへの対応は、もう少し議論をしていく必要がある」(中間派)

 山口公明党も民主党との連携欲求を抱えていて露骨な小沢批判ができない“立場利害”の制約を受けている。

 岡田幹事長「タイミング的にも早く、驚いているし、たいへん残念なことだと感じている。まだ結果が出たばかりで、党内でよく相談しておらず、小沢氏本人の考えが示されるのが第一だ。その前に、わたしがこうあるべきだと言うべきでない」(反小沢)

 野党が国会承認喚問を求めた場合について――

 岡田幹事長「小沢氏の判断だが、今後、司法の場で争われるので、国会で取り上げるのは一定の慎重さが求められると思う」

 9月の民主党代表選前の8月に当時は外相だった岡田の「起訴される可能性がある方が代表、首相になることには違和感を感じている」と小沢一郎立候補に反対した発言と比べて批判に激しさはない。「国会で取り上げる」ことに反対する「親小沢」議員が党内に大勢いることに対する対応の制約が言わせている“立場利害”からの発言であろう。

 この“立場利害”は菅内閣を構成する仙谷官房長についても同じことが言える。

 仙谷官房長官「議決は刑事訴訟手続きのひとつのプロセスであり、中身について、わたしの立場でコメントをすることは差し控えたい」(反小沢)

 今後の対応について――

 仙谷官房長官「国会等の問題なので、官房長官という立場なので、今の段階でコメントするのは適切ではない」

 検察審査会の議決によって初めて政治家が強制起訴されることについて――

 仙谷官房長官「新たな事態だ。専門家がエラーを起こさないということはなく、そこに市民の目線を入れてフィードバックしていくのが、司法改革の趣旨だ。ただ、起訴されても、有罪判決が確定するまでは推定無罪が原則であり、そこは、けじめをつけたものの考え方をしないといけない」

 「反小沢」の急先鋒でありながら、“小沢擁護論”となっているのは既に触れたように岡田幹事長と立場を同じくする“立場利害”からなのは明らかである。

 菅首相にしても、小沢一郎が議員辞職して民主党に存在しなくなればこれ程好都合なことはない“立場利害”にありながら、党内に「親小沢」議員を多く抱える“立場利害”上、簡単には排斥するような言動は取れない。訪問国のベルギーで。

 菅首相「手続きというか、そういうことが発表されたということは聞いた。それ以上のことは、まだ十分把握していないので、今の段階で、これ以上のことをコメントするのは控えたい」(反小沢)

 ――以上「NHK」記事――

  次は「47NEWS」記事――

 蓮舫行政刷新担当相「倫理的にどうなのかという声は野党、国民、民主党内からも出てくると思う」

 小沢氏の進退に関して――

 蓮舫行政刷新担当相「一義的には本人が判断することなので、もう少し様子を見なければならない」(反小沢)

 「倫理的にどうなのか」の前にNHKニュースでは、別室で聞いていてはっきりと耳にしたわけではないが、「今のところ推定無罪ではあるが――」と言っていたと思う。

 「反小沢」の急先鋒の一人でありながら、同じ「反小沢」立場の岡田外相や仙谷官房長官、菅首相と“立場利害”を同じくしていることからの穏当な発言であろう。

 「asahi.com」記事――

  牧野聖修民主党国会対策委員長代理「起訴相当との処分になり、小沢氏は自ら身を引くべきだと思っている。それができなければ党として離党勧告なり、除名処分になると思う」(反小沢)

 「反小沢」急先鋒の“立場利害”からしたら、当然の批判であり、当然の要求であろう。

 再び「NHK」記事――

 谷垣自民党総裁「『説明責任は尽くされた』と言ってきた菅政権の責任はきわめて重い。証人喚問などを行って、国会でこの問題を明らかにしなければ、政治に対する信頼は戻ってこない。民主党が態度を明確にしなければ、政治とカネの問題にルーズな党だということがはっきりする。小沢氏は議員辞職すべきだ」(反民主党)

 「反小沢」と言うよりも「反民主党」“立場利害”に立っているから、「菅政権の責任」まで追及して民主党を追いつめる意志を覗かせることとなっている。

 小沢一郎の「起訴議決」を受けたことに対するコメント発表(asahi.com

 「この度の私の政治資金団体にかかわる問題で、お騒がせしておりますことに心からおわび申し上げます。

 私は、これまで検察庁に対して、私の知る限りのことはすべてお話をし、二度にわたり不起訴処分となっており、本日の検察審査会の議決は誠に残念であります。

 今後は、裁判の場で私が無実であることが必ず明らかになるものと確信しております。

  衆議院議員 小沢一郎」 ――

 私自身はと言うと、これまでのブログ記事から明らかなように「親小沢」であり、断るまでもなく、「親小沢」派と“立場利害”を同じくする判断に立っている。

 厳密に言うと、要は「政治とカネ」に対する倫理観からの強制起訴に対する判断なり、批判なりではなく、“立場利害”をより優先させた判断・批判となっていると言うことである。

 生方や牧野聖修のように強制起訴を受けたことを以って重大視、あるいは倫理上問題があると把える向きがあるが、強制起訴を受けた裁判が現在のところ有罪と判決を下す場面にまで進んでいるわけではない。無罪となる可能性は否定できない。いわば“推定無罪”が“立場利害”を超えた何人も否定できない厳然たる事実として存在するはずだ。

 以前のブログで次のように書いた。

 〈岡田外相が8月20日に「起訴される可能性がある方が代表、首相になることには違和感を感じている」と発言して、小沢一郎立候補に異を唱えたのに対して、原口総務相が2日後のは22日に、「民主主義の原点を踏み外した発言をすべきではない。推定無罪の原則が民主主義の鉄則だ」と反撃のパンチ。

 このパンチに対して岡田外相がさらにパンチの応酬。

 岡田外相「推定無罪は法律の問題だ。政治倫理の問題でどうなのか、次元の違う話だ」

 法律(裁判)はすべての分野に関わる、あるいはすべての問題に関わる人間営為の善悪・是非に対する最終判断の役目を担っている。最終判断が冤罪という形で間違うこともあるが、他の判断、例えば政治上の判断や国民の認識や判断に優先する。

 このことは政府の政策を不服として裁判に訴え、最終判断を裁判の決定に委ねる場合があることが証明している。政治倫理上疑わしいからと言って、そのことを以って疑惑を事実とすることはできない。疑惑は疑惑にとどまる。

 国会各議院の国政調査権に基づいて証人喚問する場合でも、偽証の疑いがあったとしても、それを以て事実と看做して罰する権限は国会にはなく、勿論国民にもなく、出席委員の三分の二以上の賛成を以って議院証言法違反で告発、検察が取調べを行った上で偽証の事実を証明できるとした場合起訴、この段階でも事実の証明の可能性の存在であって、事実の決定ではなく、疑いにとどまっていて、最終判断は裁判に委ねられ、その判決を以って偽証が事実か疑いだけのことなのかの決定が下される。

 いわば政治倫理の問題にしても、疑惑の最終的な判断は裁判が決定する。それまでは推定無罪の状況が維持される。岡田外相が言うように、“次元の違い”を以って決定することはできない。〉――

 以前は、「推定無罪は法律の問題だ。政治倫理の問題でどうなのか、次元の違う話だ」と言っていた岡田氏が今回は証人喚問については「小沢氏の判断だが、今後、司法の場で争われる」と、司法の決着を待つ姿勢に転じたのはいくら“立場利害”からの変節だとしても滑稽で皮肉な話だが、要するに司法の決着までは“推定無罪”だとの間接的な言説となっている。

 私自身はあくまでも“推定無罪”の立場を取り、“推定無罪”が“立場利害”を超えた事実である以上、議員辞職要求や離党勧告、証人喚問要求はすべきではないと思っている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする