普天間移設年内決着先送り、5月決着は社民党外しの策略?

2009-12-30 09:55:21 | Weblog

 社民党の福島瑞穂党首は沖縄の米軍普天間基地の移設先にグアムか硫黄島を挙げて譲らない。民主党の鳩山首相も当初は「沖縄県民の気持を考えると」の理由で県外か国外移設を主張していたが、具体的地名を挙げることなく、一度は決めていた年内決着を先送り、越年決着へと持ち越した。

 そしてここへきて鳩山首相は、「グアムにはもう8000人の海兵隊が移ることが決まっている。家族を含めるともっと多くなる。それ以上は難しいのではないか。特に抑止力の観点からグアムに普天間をすべて移設させるということは無理があるんじゃないか」と言い出して、社民党が国外移転の最有力候補地として掲げているグアム移転に否定的な考えを示した。

 勿論、このグアム否定発言に社民党は反撥した。例え衆院7人、参院5人の弱小政党とはいえ、民主党にとって参議院で法案成立に必要な過半数の議席を擁するためには虎の子の参院5議席であることを承知していることを十分に弁えた反撥なのは言うまでもない。民主党が虎の子の5議席としているということは裏を返すと民主党にとっての弱点であり、社民党にとっては強みの5議席となる。

 先ず社民党の重野安正幹事長が「首相は本当に沖縄県民の思いを受け止めているのか。こういう発言をするとは、感覚を疑う」(毎日jp)と、衆参併せて417議席の大政党の首相を向こうに回して「感覚を疑う」とまで言って、マスコミ風に言うと、不快感を示した。

 あからさまに不快感を示すことができるのは民主党の衆参両院合わせた417議席に対して同じく社民党12議席が堂々と渡り合うことができる状況にあることを自覚しているからに他ならない。民主党にとっては虎の子の参院社民5議席だと。

 弱い者が桁違いに強い者に対等に渡り合うには強い者の弱点――ウイークポイントを握れが絶対条件となる。今の社民党はしっかりと握っている。亭主の稼ぎをしっかりと握っている女房のように。

 社民党幹事長が強気なら、社民党党首の福島瑞穂はなおさらに強気である。12月初めに鳩山内閣が2006年の日米合意通りに名護市辺野古に移設することを決めれば、社民党として連立政権からの離脱も辞さないという意向を突きつけ、鳩山首相も唱えていた県外、もしくは国外移設へと、その流れを制約づける強気を既に示している。

 勿論社民党に連立離脱されたら困るのは民主党だと足許も見透かした威しなのは断るまでもない。

 鳩山由首相が米領グアムは困難との認識を示したことについて――

 「社民党はグアムが極めて有力だと考えているので、可能性を最大限追求する」(asahi.com

 一歩も引かないぞと、鳩山発言を真っ向から否定する強気を示したのである。そして首相が5月までに移設先を決めるとしている姿勢に対して――

 「大事なのは期限でなく解決策だ」(同asahi.com

 例え期限が来ても、グアムという解決策以外は妥協しないという強気。

 また鳩山首相が、「ベストな国のあり方のための憲法をつくりたい。必ずしも9条ということではなく、地方と国との関係を大逆転させたいなという気持ちがある。・・・・憲法順守規定がある首相が声高に主張すると、なかなかうまくいかない。安倍(晋三・元)首相が大上段から憲法改正を唱えた瞬間に、議論がストップした。党のなかでしっかり議論を頂きたい。しっかりとした指導力を発揮して、そこでまとめる」(asahi.com)と、「必ずしも9条ということではなく」という言葉遣いで改正の対象は「9条」だけではない、その他「地方と国との関係」も含めて改正したいと「9条」を含めた改正意思を示したことに対して、福島瑞穂は「連立3党合意は改正ではなく、憲法の理念の実現を目指すということだ」(asahi.com)と「9条」改正に反対、逆に憲法が〈第9条 戦争放棄、軍備及び交戦権否認

 (1)日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇叉は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

 (2)前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。〉としている理念のどこまで含めているのか、その実現の達成を堂々と求める強気の姿勢を示している。

 そして小沢民主党幹事長が「あの青い、美しい海を埋め立ててよいのか」(asahi.com)と辺野古移設現行案に否定的態度を示すと、福島瑞穂は我が意を得たとばかりに、「小沢氏が『あの青い海を埋め立てるのはいかがか』と言ったことに私は非常に勇気づけられたし、意を強くした。地元の人が納得しない結論は、実現が不可能であり、アメリカ側を説得していくことが必要だ。・・・・小沢氏のほかにも、民主党の議員の中には、名護に海上基地をつくるべきではないという声は多い」(NHK)とここでもグアム移転以外に一歩も譲らない強気の姿勢を見せている。

 衆参社民党12議席の前に衆参民主党417議席が形無しといった勢力図となっている。

 そして鳩山首相は28日訪問先のインドで、「5月というタイミングをあえて設けた。設けなければ当然、米国などにも理解して頂ける話ではない。・・・・与党合意をするときには、当然、日米で議論していかなければならない。私は米国の意向を無視した与党の合意などはあり得ないと理解している」(asahi.com)と、いわば「米国の意向」は無視できないという文脈で米国の意向を優先順位とした与党合意だと、その範囲内に制約を設ける発言を行っている。

 この制約は同時に社民党のグアム、もしくは硫黄島への移転という主張に対する制約でもあろう。米国は現行案を最良だという姿勢を取っているのだから。

 この鳩山発言に対して調べた範囲では社民党は何ら反論していない。「与党合意」という言葉に目を奪われて、「米国の意向」以上に無視できない12議席の上に成り立つ「与党合意」と見てかかっているのかもしれない。

 ここへきて昨29日夜、東京都内で開催した与党3党の幹事長・国対委員長の忘年会で小沢民主党幹事長が移設先に「下地島に使っていない空港がある」と、沖縄県宮古島市下地島を候補地に挙げたと「毎日jp」記事――《普天間移設:小沢幹事長「下地島」提起》(2009年12月30日 2時30分)が伝えている。

 出席者は民主党から小沢幹事長、山岡賢次国対委員長、社民党から重野氏と辻元清美副国土交通相、国民新党から自見庄三郎幹事長と下地幹郎政調会長。

 小沢幹事長が〈「あなたのところ(社民党)は、沖縄県だったら全部駄目なのか」と質問。重野氏が米グアム移設案を重ねて主張したところ、小沢氏が下地島案に言及したという。〉――

 〈下地島は沖縄本島と台湾のほぼ中間にある。3000メートルの滑走路を持つ下地島空港(79年7月開港)があるが、現在定期便はなく、航空会社がパイロットの離着陸訓練などに利用してきた。普天間飛行場の移設先として浮上したこともあり、北沢俊美防衛相は10月、井上源三地方協力局長を派遣し、沖縄県の伊江島などとともに視察させていた。〉――

 小沢幹事長は〈席上、来夏の参院選後も3党連立体制を続ける意向を示したという。〉が、民主党が過半数を取れば、社民党や国民新党の連立からの離脱カードは現在のように有効ではなくなる。

 鳩山首相の社民党のグアム、もしくは硫黄島への移転という主張に制約を課す「米国の意向」を優先順位としたその範囲内の「与党合意」にしても参院選での過半数獲得が絶対条件となる。

 いわば、民主党にとって誰の目にも明らかであるようにすべてが参院選挙の結果にかかっている。普天埋設問題だけではなく、「必ずしも9条ということ」に限定しない憲法改正問題でも、民主党の政策を推し進めるに社民党は障害物であり、それを取り除く唯一の絶対条件が参院選での単独過半数獲得ということになる。

 参院選挙は来年の7月に行われる。7月が社民党という障害物を取り除くことができるかどうかの最終決着期限だということであろう。

 この障害物除去の最終決着期限の7月から遡って、普天間年内決着先送り、年を越して7月の参院選まで2カ月を残した5月に移設先決着期限を持ってきたことは、社民党の国外移転に反して「米国の意向」を優先順位としたその範囲内の「与党合意」によって、例え社民党が連立を離脱しても、参議院で鳩山内閣提出の法案が否決されても許容できる2カ月ということではないだろうか。

 参院選で過半数を獲得できさえすれば、否決された法案は再提出することで参議院可決へと持っていける。

 こういった見方をすると普天間移設年内決着先送り、5月決着は社民党外しの策略から始まったスケジュールに思えてくる。どうだろうか。

 勿論、参議院選挙が近づいた時点での政治情勢や世論の動向次第で、「米国の意向」優先も変更を余儀なくされない保証はない。


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