普天間移設問題越年/同盟という名の人質関係から日本を見る

2009-12-05 09:53:31 | Weblog

 普天間移設問題を話し合う日米閣僚級作業グループの第2回会合が昨日4日外務省で開催、日本側が年内決着を断念、年が明ければいいチエが浮かぶのかどうか、年明け以降に決着を先送りしたと言う。

 理由は鳩山首相が元々沖縄の気持は県外だとの思いを持っていたことと、社民党が県外・国外への移設を求めて、硫黄島やグアムを候補と挙げていたこと、福島党首が現行計画通りの移設なら連立政権からの離脱も辞さない考えを示したことだと言われているが、昨日TBSの夕方のニュースで、福島党首の連立離脱の意向は鳩山首相にとっては渡りに船だったのではないかと言っていた。

 福島党首の一種の連立離脱威嚇は少なくとも米側に対する有効な説明理由の一つとなり得る。年内決着の岡田外相、北澤防衛相に対する鳩山首相のオバマ米大統領との会談で「年末までにあげないといけないとか、約束したわけではない」(日経ネット)、「年内でなければだめだと申し上げたことはないが、できるだけ急ぎたいという思いは変わっていない」(Bloomberg)といった発言は結果的に半ば気持ちが傾いていた年明け先送りの前置きだったとも言える。

 平野博文官房長官が12月3日の記者会見で翌日4日の日米閣僚級作業グループの第2回会合に備えて鳩山首相の年明け先送りの意思を代弁している。

 「私自身は年内とは言ったことは一切ない。『できるだけ早く』という話はしたかと思うが、(鳩山)総理自身もそういう考えだと、理解、認識している」

 日本側決定への日米閣僚級作業グループ会合での米側の反応に対するマスコミの反応。

 「日米関係に悪影響」、「米側は再編計画全体への悪影響を懸念」、ほかに「ルース米大使が日本側に激怒」(msn産経)というものもあった。

 いつも温厚なルース米大使が普天間移設の年内決着断念で「岡田外相らの面前で大声張り上げ」たと報道している。

 年内だろうが年明けだろうが決定するについては先ず内閣の長として責任ある鳩山首相自身が関係閣僚と話し合って意志統一を図り、それを以って自身の意志統一を行って、内閣の統一した意志とする。

 あるいは首相としての自己の意志を絶対とするなら、話し合いの中で他の異なる意志を自己の意志に従えさせて、それを以て内閣の統一した意志とする。そういった断固たる意志決定の経緯を踏まなかった。

 マスコミが伝える程には日米関係の悪化は気にする程のことはないように思える。相互に日米軍事同盟という名の人質関係にあるのだから、軍事同盟の解消といった決定的な関係悪化にまで至るデメリットまで犯すはずはない。アメリカにしても日本の基地を必要としている。

 経済の面から見ても、グローバル化した今日戦前アメリカが日本への石油を禁輸したように日本製品の輸入禁止や米製品の対日輸出禁止といった強硬措置を取れるわけではない。日本の経済に打撃を与えることになったとしても、アメリカの経済にも打撃を与えることは誰の目にも明らかなことだからだ。

 但し、この日米軍事同盟という名の人質は中国が民主化するまでの有効期限しかない。中国が現状のまま共産党一党独裁であっても、アメリカは政治・経済に亘る共存関係をさらに深めていくだろう。中国の存在を無視して――いわば中国抜きに世界の政治・経済を語ることはもはや不可能なのは誰が見ても明々白々だからだ。

 だが、中国が民主化し、基本的人権を中国国民に保証したなら、アメリカは日本との関係を経済の分野に限って産業界に任せた関係維持で済ませることができる。中国の民主化が中国自身の対外的な軍事的脅威を剥ぐからだが、このことは同時に日米軍事同盟の意義を薄め、アメリカは日本に変わって中国と軍事同盟を結ぶことも可能となる。

 こういった関係への移行は元々日本に対しては政治面で期待する局面が少なかったことによって生じる反動とも言える。単にアメリカの意向に添って、賛成・反対の手を挙げてくれさえすればよかった。

 こういった局面に至る場合に備えて日本が現憲法下で世界に生き残る道は政治的にも経済的にも自律(自立)することではないだろうか。内需主導の経済構造と世界の問題を軍事力に頼らずに迅速に解決する政治的チエの獲得にかかっているように思える。

 内需主導型経済の転換も国際紛争を軍事力に依存しない方法で問題処理する政治的チエも生み出すことができなければ、憲法を改正するか、それが不可能なら、厳密に言うと憲法違反のゴマカシを働かせた自衛隊特措法の臨機応変の活用で自衛隊を例え戦闘地域であっても海外へと派遣して、国際社会の一員であることをアピールするしかない。

 そうしなければ、アメリカは本当に堪忍袋の緒を切らすに違いない。

 

コメント (1)
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