「経済」なるものにド素人が言うのだから、効果は当てにはならない上に、細々として暮らしている者がこれ以上生活が苦しくならないよう願う自己利害で言うのだから、似た境遇以外の者に役立つかどうかも分からないが、役に立たない提言なら、聞き流して貰いたい。
公明党の選挙対策の提案で「定額減税」が政府の追加経済政策に盛り込まれた。財源規模は2兆円。対象は最初は全世帯。期間は単年度限り。財源の支出先は「財政投融資特別会計」からその余剰金、世間で言われてところの「埋蔵金」を充てるとのこと。
与謝野馨経済財政担当相が「経済対策ではなく社会政策として議論が始まった。・・・・高い所得層への定額減税に社会政策的な意味があるのかという根本的な問題に答えないといけない」(「時事通信社」記事)と10月21日の閣議後記者会見で全世帯支給に疑問を示していたにだが、年度内支給を目指す事務手続き簡略化の必要性から全世帯支給が麻生首相と公明党、その他の考えで、10月30日の記者会見でも麻生首相は「全世帯について実施します。規模は2兆円。単純に計算すると4人家族で約6万円になるはず」(「毎日jp」記事)とその効果に自信を持って打ち上げたが、与謝野財政担当相が11月2日放送の「NHK日曜討論」で麻生首相や中川昭一財務相、公明党の権力亡者たちが腹の中で余計なことを言うと舌打ちしたに違いないと思うが、改めて「2000万円も3000万円も貰っている人に生活支援というのはおかしい」(「47NEWS」記事)と全世帯支給に反対、所得制限を再度持ち出した。
同じ「47NEWS」によると、公明党・山口那津男政調会長は同じNHKの番組で「年度内実施が遅れないよう検討しないといけない」と全世帯支給に固執。
中川昭一財務相の方は「そうあるべきだと思うが手続きが複雑になる。迅速性が大事だ」と公明党に右へ倣えの全世帯支給。
肝心の麻生首相は「全然いい。生活に困っているところに出すのであって、豊かなところに出す必要はない。・・・・おれのところに来るか? 私のところに来るわけがない。・・・どういうふうに割り振るか政府が検討するが、技術的には難しい」
どう「技術的には難しい」のかと言うと、所得の把握が難しいから役所の手続きが煩雑となるため、年内の支給――クリスマスのプレゼントや正月のお年玉としてではなく、何よりも選挙用のお年玉――にならないからということらしい。
麻生首相は最初は全世帯支給の考えを示していたのだから、そのときは「おれのところにも来るな」と分かっていたに違いない。尤も帝国ホテルでの一度の飲食に使う程度だ、たいしたカネではないとほんの束の間思っただけで、後は選挙効果しか頭に残らなかったのではないのか。
だが、一方で選挙に悪影響を与えかねないセレブ批判が尾を引いている。与謝野経済財政担当相の「2000万円も3000万円も貰っている人に生活支援というのはおかしい」の発言が一旦世間に放たれてしまった以上もはや消去不能のまま有権者の頭に後々まで残って、「庶民感覚からズレている、麻生首相が6万円貰ってどうするんだ」と麻生首相に対するなお一層のセレブ批判へと発展しかねない心配が心ならずも「全然いい。生活に困っているところに出すのであって、豊かなところに出す必要はない」へと変心せしめたのではないのか。
セレブ批判を避ける目的の変心だから、「おれのところに来るか? 私のところに来るわけがない」と言わずもがなの余計なことまで口にすることになった。
だが、相変わらずの決断のなさ・優柔不断から「技術的には難しい」と迷っている。
自公政府は定額減税が景気対策及び選挙対策に一定の効果があると見て打ち出したのだろうが、専門家の間では、「単年度限りだから、物価高への実感や景気の先行き懸念、さらに将来の消費税増税に備えて殆ど貯蓄に回り、消費には向かわないのではないのか、タンス預金に回るのではないか」とその効果に疑問を示している。
村上龍の「JMM」記事にあったことだが、「テレビ東京のアンケート調査によると、定額減税について約3分の2は貯蓄に回すと答えた」という。
それを避ける目的でクーポン券とする案もあるようだが、釣りを貰えない関係から余分な物まで買うことになる不便と希望は貯蓄だが、それをできない不便が不人気を呼ぶことになるのではないのか。
同記事は、2兆円はGDPの0.4%に相当するが、3分の2が貯蓄に回れば、GDP押上げ効果は0.12%のみで、その効果は高が知れていると解説している。
となると、景気対策はタテマエで、やはり選挙対策のみがホンネということになる。
しかしこの不況と物価高で低所得者程、生活の遣り繰りにうろうろさせられ、将来的な生活不安を抱えているはずなのだが、支給されるわずかなカネを3分の2が使わずに貯蓄に回して将来の生活に備えたいとしている。
カネで支給してその多くが貯蓄に回った場合、貯蓄は金融機関や自宅タンスに眠らせるだけのことだから、ほんのささやかな精神的安心感を与えはするが、例え一時的な効果しかなくても、生活の軽減に活用されないことになる。当然、消費に回らないとなれば、景気を刺激することもない。
それとも全額クーポン券にするつもりなのだろうか。
現金であってもクーポン券であっても、一般生活者が生活負担を直接的に軽減できるよう純粋に計ろうとするなら、政府財政から同じ2兆円を支出するにしても、政府の消費税収入の2兆円分に特別会計から定額減税分の2兆円を回して差引きゼロとして、その2兆円分に達するまで消費税の徴収を一時停止して、日々の生活出費の負担を直接的に軽くしたなら、それが小額であっても、心理的な安心感を与えるのではないだろうか。
2兆円の消費税収入は現在消費税率が5%だから、40兆円の消費に当たり、その金額まで消費税をかけずに済む。定額減税で一世帯あたり6万円支給ということなら、各家庭とも120万円の生活出費まで消費税免除となる。
この方法だと所得制限の場合の手続きの煩雑化といった問題は起きないし、貯蓄に回って眠らせてしまう心配もない。クーポン券での不自由な買い物を強制されることもない。
但し金持層の高額の贅沢品購入や麻生太郎の帝国ホテルといった高級ホテルでの毎晩のような贅沢な飲み食いにまで消費税を一時停止したなら、一般生活者の消費が満足に進まないうちに40兆円限度の消費額はたちまち満額に達してしまう。
麻生首相は10月30日の「新経済対策」発表後のマスコミとの応答で、「生活対策より選挙対策という声も出ています。この批判について、総理はどうお考えですか」と問われて、「給付方式はバラマキという御批判なんだと思いますが、私は減税方式に比べまして、少なくとも今年度内に行き渡るということが第一。税金を払っていない、あるいは納付額が少ないという家計にも給付される点に於いて、より効果が多い方式だと私自身は思っております」と答えているが、低所得者にも同額支給できる点に「より効果が多い」と生活対策を持たせている以上、生活救済の観点から40兆円の限度額分は低所得者の消費に重点を置くべきではないだろうか。
そうであるなら、元々消費税は低所得者程所得に占める消費税の負担割合が相対的に大きくなる逆進性を抱えていて、高所得層と比較して不公平な税制だと言われているのだから、その不公平な負担を軽減する意味からも高額な贅沢品を排して、低所得者に恩恵がより行き渡るように食品のみの消費に限った消費税の一時停止とすべきであろう。
こういった方式なら、役所窓口での手続きが不要ということだけではなく、スーパー等のレジスターの扱い一つで済ませることができる。食品以外の日用雑貨を置いてあるスーパーもあるが、日替わり値引き商品など、レジスターのボタン操作一つで金額を変更できるようだから、食品のみに限った消費税の非徴収は簡単にできるのではないだろうか。
役所・省庁の非能率な仕事、余剰人員、予算の非効率な執行、あるいは不正な支出等のムダをなくして政府財政に少しでも余裕を持たすことは最重要に必要なことだが、日本の政治家・官僚にとっては仲間意識・身内庇いの意識や私利私欲からムダを限りなくゼロに持っていくことは不可能だろうから(少しのゴマカシ・ムダでも禁固刑等を科して罪を重くすれば損得勘定が働いて抑止力となるのだが)、政府財政の苦境は変わらないことを考えると、麻生首相の言う3年後を待たずとも消費税増税という局面に立ち至らないとも限らない。
そのとき余程景気が回復していてなお且つ一般生活者の所得が増えていればいいが、2002年2月から始まり、今年の中頃まで続いたいざなぎ景気を超える戦後最長の平成景気でも大企業は次々と戦後最高益を記録して潤ったが、中小企業の利益や一般生活者の所得に十分に反映されなかったことを考えると、自民党も民主党の野党以下も、「国民目線」とか「生活者が第一」と言うなら、少しぐらいの景気回復では生活実感に変化は望めない恐れもあることから、止むを得ないとする消費税増税は食品は非課税とすべきではないだろうか。
非課税としてこそ、「国民目線」や「生活者が第一」がウソのないスローガンとなり得る。