日本が、ウクライナ情勢の緊迫化で天然ガスの調達に不安を抱える欧州に液化天然ガス(LNG)を融通することを決めたが、考えさせられることが多い。
萩生田経産相によると、融通は3月分として数十万トン規模であり、LNGの国内備蓄は無いために日本企業の国内向けLNG運搬船数隻を欧州に回航させる方式とされる。経産相は、融通は米国の欧州支援要請に応えるものであるが、国内の必要量を確保した上での措置であり国内の電力・ガス供給に対する影響は限定的ともしている。日本の輸入量(令和2年度:763万㌧)から見れば融通規模はほぼ一月分で限定的ともいえるが、融通によるLNG取引市場価格の上昇等、将来的には電気・ガス料金に影響する可能性も取り沙汰されているが、自分的には対ロ対策として止むを得ないと考えている。
欧州の天然ガス危機は、ウクライナに対するEUの姿勢に不満のロシアが恫喝手段としてLNGパイプラインを通しての供給量を6割程度に絞ったことによって顕在化したものであるが、特にドイツが最も大きな影響を受けているとされる。
ドイツは全電力の半分近くを再生可能エネルギーに置き換えた環境先進国で、再生エネの補完電力もLNG火力発電としており、国内6基の原発は既に3基が稼働を停止し残る3基も年内に稼働停止させる予定となっていた。さらに、EUが再生エネの補完をガス火力+原発としたことにも反発していたが、肝心のガス火力の死命をロシアが握っているという現実に直面して西側諸国の支援を仰がなければならない事態となった。
今回の列国の支援に対してもドイツが即座に受け入れ可能かどうかも疑問で、一旦パイプライン需給を原則として整備された精製・輸送のインフラが、海上輸送に即応できるとは思えないので、列国の支援が効果を発揮するまでには幾許かの時間が必要であるのではないだろうか。そうであれば、市民は厳しい冬をいかにして過ごすことになるのだろうか。
日本を見ても、ドイツを手本として脱原発を金科玉条とする政党・環境団体が存在するが、現在のドイツと同様な事態、すなわち補完電量の動力や燃料の調達を考慮しての主張ではないだろうと思っている。
メディアやメディアに登場する識者の主張を見ても、ガス融通の事実を他人事と伝えるのみで、他山の石として警鐘を鳴らすものは見当たらないが、サプライチェーンの一角が恣意的に需給統制することの危険性を考える格好の事象に思える。
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