もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

ロシア・トルコの停戦合意は?

2020年03月07日 | ロシア

 シリア北西部のイドリブ県の争奪について。ロシアとトルコが停戦に合意したことが報じられた。

 合意の内容は、既にトルコが実効支配しているシリア領イドリブ県中央部を東西に横断する形の高速道路の南北両側それぞれ6㎞を緩衝地帯とする内容とされている。この停戦合意が将来に亘って守られるならば国道が事実上の国境となり、シリアは領土を失いトルコは実効支配地の半分を失うこととなる。この合意に片方の当事国であるシリアが参加していないことからシリア情勢が恒久的に安定することは考えられないと思う。アフガニスタンでもアフガニスタン政府が関与しない停戦がアメリカとタリバンの間で合意され、タリバンのアメリカ軍攻撃は無くなったようであるが政府軍に対する攻撃やテロ活動は激化したとも報じられている。同様のことはシリアでも行われる可能性が有り、シリア軍はトルコ軍に対する攻撃に縛りは無く、トルコ軍はロシア軍が存在しない地域への攻撃は可能であるために事態は一層複雑になったものと感じられる。シリア及びアフガニスタンの停戦合意は、紛争地域の安定を図ることは二の次にして、単にアメリカとロシアが自国軍兵士の安全を図るためだけに行われたものにすぎないと思う。さらには、ロシアは対イスラム国(IS)掃討戦終結後もシリアに駐留しているものの公式には対トルコ戦闘には直接介入・支援していないとしているが、今回の停戦合意はトルコによるロシア軍誤攻撃が起きて直接軍事介入できる状態を期待してのものとも邪推できる。自国内のシリア難民をEUに送り出すとしてEUの支援を強要したトルコの戦術も、ギリシャが国境で催涙ガスまで使用して難民の流入を阻止(EUも承認?)したことで挫折し、頼みとするNATO軍も加盟国でありながらロシアの防空システムを導入したトルコの過去の悪行に起因して冷淡であるように感じられる。

 シリアのアサド政権やアフガニスタンの状況を観ると、大国の支援無くしては体制を維持できない国は国民に悲劇しかもたらさないようである。加えて中東唯一の安定国と云われたトルコが採ったロシアとアメリカという大国を天秤にかける外交は、それが失敗した時は悲劇を増大させるという好例であるように思える。現在、韓国ではあからさまに日本では密やかに、アメリカと中国を天秤にかけようとする思惑があるが、かえって両大国の信頼を失い悲劇を国民が担う可能性が大きいことを、シリア情勢が示唆しているように感じられる。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿