もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

防衛費増額と外交

2022年12月11日 | 防衛

 防衛費増額に関して、種々の主張がなされている。

 中でも突出しているのが、紛争の解決は外交に依るべきで武力の強化は必要ないのではという意見であるように思える。
 武力は外交を補完するカードの1枚に過ぎないという自説はさて置いて、果たして軍事的な背景を持たない外交が万能であろうかと疑問に感じる。
 外交交渉においては「双方が交渉による解決を望む」ことが不可欠であるが、双方ともに交渉による解決の意思を持たない、若しくは交渉呼びかけに相手国が応じないこともしばしばで、特に核心的な利益衝突のケースにおいては、外交交渉は絶望的であると思う。ウクライナ事変の停戦協議が仲介国の努力にも拘わらずに開催の目途・気運さえ見えないのは、双方に交渉による解決を求める意思がないことを如実に示す好例であるように思う。また、日本からの日朝首脳会談開催の秋波にも北朝鮮は無言を通している。
 外交交渉は、値引き交渉みたいなものであると思っている。売り方には売りたい意思若しくは売らなければならない事情があり、買い方には安くなれば買いたいという意思があって始まるもので、双方は所謂「落としどころ」をぶつけ合っての攻防となる。
 武田信玄の言を俟つまでもなく、外交に100対0の一方的な解決・勝利は無い。五分五分で成功、若し我7:彼3で妥結できれば大成功と言われる。このことは7:3の大勝利であっても、相手に対して3割の譲歩をしたことになる。キューバ危機においては、アメリカの海上封鎖の硬と交渉呼び掛けの軟にフルシチョフがミサイル撤去に応じたが、アメリカもトルコに配備していたミサイルの撤去と云う代償を払っている。また、トランプ大統領が仕掛けた対中関税戦争においても、アメリカは関税品目の縮小や高関税発動時期の見直しに譲歩している。
 ウクライナ事変にあっては、ウクライナ東部3州をロシアに割譲すれば、当面の和平は実現するだろうが、それはウクライナ全土を併呑したいロシアの脅威を後世に残し、当該地域住民の将来を売り渡すもので、許容できる譲歩の選択肢でないことを国民が知っていることによると思っている。
 大東亜戦争前の対米交渉では、アメリカが欧州戦線参戦と対日制裁の目論見の下に一切の譲歩を拒否したハル・ノートを突きつけて、交渉決裂に追い込まれた苦い経験も思い出される。

 武力不可・外交万全とする方々には、「中国が、尖閣諸島への解放軍配備と日本の完全撤退」を正式に通告・要求したケース・スタディをお願いしたいものである。
 検討は、ディベート的に「そんなことは起きない」という選択肢を排除して頂きたいが、中国は交渉に応じるだろうか?、交渉に応じた際の落としどころは何処だろうか?、交渉決裂の場合の対応は?・・・、そして結論は?
 ディベートのテーマに「北朝鮮が戦時賠償100億㌦を要求し、応じない場合は核攻撃も辞さない」を選ぶことも有りと思うが。


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