もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

米艦に140m

2023年06月05日 | 防衛

 中国海軍艦艇が、台湾海峡で「自由の航行作戦」従事中のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「チャン・フー」の前方140mを横切ったことが報じられた。

 艦船の運動性能を示す一つに「傘型危険界」がある。ある速力で航行中に「面(取)舵一杯・後進一杯」を下令して艦船が停止できる範囲が傘型を示すことから名付けられたものであり、艦船の大きさ・船型・航行速力・舵効性能・機関性能・操艦者の判断にもよるが、20ノット以下の巡航速力で航行中のガスタービン機関駆動駆逐艦では、進行方向に200m程度は必要であるように思う。
 今回のニアミスについては、米艦が針路を維持したまま減速することで衝突は回避されたと報じられているので、操艦者は余裕をもって冷静に対処したものと思われるが、海の上での140mは手を伸ばせば届きそうにも感じられる距離である。
 また、米艦にはカナダ海軍のフリゲート艦が続行していたとされるので、米加間で減速の伝達が円滑でない場合にはカナダ艦が米艦に衝突する危険性も有り、更には中国艦の操舵員が操艦号令に従わず故意に米艦に艦首を向ける危険性も無しとしない。
 5月26日には南シナ海で米空軍の電子偵察機が中国空軍の戦闘機に針路を妨害された事案も発生しており、中国海軍の空母運用が本格化した今では、日本近海でも中国戦闘機による妨害飛行が可能となっている。

 偶発的は武力衝突は、このような挑発の応酬が指揮官や末端の疑心暗鬼を誘って引き起こされることが多いのではないだろうか。
 現在、日韓の防衛大臣レベルで北ミサイル情報のリアルタイム共有が調整されているが、韓国駆逐艦の火器レーダ照射問題の事実確認を棚上げしたままに行われている。
 韓国のレーダ照射が、国或いは上級司令部の意思であるならば、尹錫悦大統領の対日姿勢や指示で再発は防げると思うが、レーダ管制員の独断で行われたものであるならば、根が深く再発の危険性も考えられるので、韓国のメンツが掛る公式見解は無理としても高位レベルでの真相確認は行われるべきではないだろうか。


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