もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

傭兵考

2023年06月26日 | 防衛

 ロシアの民間軍事会社ワグネルの反乱が終息した。

 反乱の動機や経過は現在のところ憶測の域を出ないが、ベラルーシのルカシェンコ大統領の仲介で「ワグネルはモスクワ進軍を停止・プリコジン氏はベラルーシに亡命」、プーチン大統領は「プリコジン氏に対する訴追を撤回、ワグネル構成員の免責」で手打ちされたとされている。1週間前まではワグネルを率いたプリコジン氏は「プーチンの料理番」、ワグネルも「プーチンの私兵」とされてプーチン大統領に全面的忠誠を誓っていたことを思えば将に隔世の感がある。
 ワグネルの構成員の大半がロシア人とはされるものの、多くはワグネル入隊を条件に一時的に解放された囚人であるともされているので、ワグネルはロシアに忠誠心を持つ義勇軍ではなく金銭を仲立ちとする傭兵であると思っている。
 以下は、記憶を頼りの記述であるので誤りがあるかもしれないが、傭兵についてのあれこれである。
 傭兵と聞いて先ず思い出すのはカルタゴ軍である。金満の都市国家であるカルタゴは、自領の防衛を含む軍事の全てを傭兵に依存しハンニバルが率いた外征軍も傭兵集団であったとされている。
 ローマ帝国も、版図に組み入れた準州などから兵役後のローマ市民権付与や土地の無償供与を恩賞として志願兵を募って強大なローマ軍を維持している。
 中国戦国時代に活躍した墨家は、豪族から請われた場合は武装して守城戦・籠城戦に協力・或いは指導したとされている。
 バチカン市国は、16世紀初頭以来現在まで警備をスイス傭兵に依存しており、スイスも永世中立の理念に反するバチカン警護を、歴史的・儀礼的理由から容認している。
 植民地経営のためのフランスの外人部隊は、インドシナ戦争の中核兵力であったとされ、モロッコなどの北アフリカでも前線の戦闘部隊は外人部隊であったとされる。

 本来、戦闘に従事する兵士は、国益や祖国の防衛のために従軍する者であろうが、国益という実態で把握できない名目で動員されることも珍しくない。朝鮮戦争やベトナム戦争では参戦した米兵や後方の多くは「なんで縁も所縁も無い極東で米国の青年がが血を流さなければならないのか」という懐疑が蔓延したとされる。
 些かに牽強付会かもしれないが、国連が組織する国連軍や多国籍軍にも、兵士の国籍とは相関しない戦闘であるために、うっすらとではあるが傭兵の趣が感じられるようにも思える。

 少子高齢化で自衛官の確保に腐心している日本を考えると、日本でも傭兵・外人部隊の導入・創設を考えなければならないのではないだろうか。こう書けば、極めて尖鋭な反論が目に見えるが、「ではの守」で申せば、アメリカでも数年の兵役で市民権を与える一種の移民制度が機能しているので、同種制度の議論も非現実的と排除すべきではないように思える。


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5 コメント

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多様なご意見 (onecat01)
2023-06-26 22:22:44
 管理人殿

 多様なご意見の一つとして伺いました。元軍人の貴方が、このようなご意見を持たれることについて、驚いております。
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おはようございます (管理人)
2023-06-27 09:59:16
onecat01様
貴重なご意見を頂き感謝申し上げます。
防衛(軍事)力を維持するには兵員の確保は大きな問題でありますが、「移民法」で民間労働力確保は図るものの、隊員確保の方策は任期の延長などの小手先に留まっています。
現状で隊員と戦力の維持を図るには、徴兵、無人兵器(艦艇・航空機・LaWS)、核武装等が考えられますが、憲法・学会・国民の障壁は強固であるように思えます。
傭兵にしても、国際法に照らした憲法改正と、自衛隊を傭兵の利敵行為やサボタージュを阻止できる純軍事組織に変える必要があって、実現は困難とは思いますがが、選択肢から排除すべきではないのではと思っています。
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スイスに倣え (Badman)
2023-06-27 11:28:42
久しぶりに投稿します。

傭兵について論じられておりますが、私は傭兵の前に国民皆兵を実施すべきであると思います。私が小学生の時、理想の国はスイスであると教わりました。何故なら永世中立国だからです。日本もスイスみたいな中立を守る国を目指すべきだという訳です。高校生の時にスイスは武器輸出国で国民皆兵を実施していることを知りました。大人達はこのことを口にしませんでした。
今日、国産武器輸出を促進する政策が採られようとしています。やっと理想の国スイスに近づく緒につきました。次は国民皆兵の法律を待つのみです。
約60年前はキューバ危機があり、国民に戦争の悲惨さを訴えて非武装中立を唱える政治勢力がありました。今ではその政治勢力も少数になってきました。でも「スイスに倣え」は支持しますが中立については疑問符です。

最近の子供達の理想の国はどこでしょうか?

追伸
戦前、ヒットラーの「我が闘争」は日本でも人気があったそうです。彼は人種偏見でユダヤ人を大量殺戮しました。その本の原本には有色人種撲滅のことも書いていますが、当時の日本の出版社はその箇所を削除して出版していました。イデオロギーや政策的に不具合な箇所は教えないというのは、思想的に右とか左とかには関係ないようですね。
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安心いたしました。 (onecat01)
2023-06-27 13:26:37
 管理人殿

 「傭兵にしても、国際法に照らした憲法改正と、自衛隊を傭兵の利敵行為やサボタージュを阻止できる純軍事組織に変える必要があって、」

 今回の説明を読み、安堵いたしました。傭兵の前提条件として、「憲法改正」と「軍の再建」があったのですね。

 安心いたしました。
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遅くなりました (管理人)
2023-06-28 11:36:11
Badman様
貴重なご意見を感謝いたします。
北欧やフランスでは短期徴兵が復活しておりますが、それは、移民の増加による固有文化の棄損を予防する以上に、対テロ等においてパニックを鎮めたり救急処置ができる底辺拡大を目的としているように見ています。山手線で刃物を観た乗客がパニックを起こした原因も、集団行動を知らないこと・パニックを鎮める核がいなかったことが大きい様に感じられます。
国民皆兵(徴兵)もさることながら、兵役=苦役とする風潮は早急に改められるべきと思っています。
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