福島原発事故メディア・ウォッチ

福島原発事故のメディアによる報道を検証します。

目は口ほどにものを言う:日経新聞の記事差し替え

2011-04-01 18:00:32 | 新聞
前の記事でお約束したメディアによる矮小化・曖昧化の実例を、いっさいの隠蔽工作なしにご覧に入れます。下の図(福島第1原発2号機の状態)は、3月28日夜、「2号機、建屋外にも汚染水 燃料棒に深刻な損傷の恐れ 福島原発事故2011/3/28 21:45」というクレジットのある日経の記事(記事-Aとする)に見られた図(図-Aとする)、さらににその下の図(福島第1原発配置図以下)は「冷却と排水ジレンマ放射性物質封じ込め 圧力容器の損傷焦点2011/3/29付」として29日早朝に見つかった日経の記事(記事-Bとする)にあった図(図-Bとする)である。29日朝の時点では図-Aの載った記事-Aはリンクもなく、参照不可能となっていた。Aを削除して、Bに差し替えたのである。この二つの記事の内容の重なりと変更をしらべるのも興味深いが、単純に図-Aと図-Bだけを見ても多くの工作の後がわかる。以下対照表を示す。

(1) 圧力抑制室(原子炉建屋右下)、図-A:「←穴?」/図-B:「X水もれ」
(2) タービン建屋右上、図-A:「←破損?」/図-B:「X水もれ」
(3) 燃料もれを示すピンクの点、図-A:3列=14点/図-B:1列=3点。
(4)上記の点につけられた解説、図-A:「破損して一部が格納容器にもれた可能性」/図-B:「一部がもれた可能性」(漏れ箇所を示唆する「X」一つ付加)。
(5) 図-A:「燃料棒」/図-B:「燃料棒(3号機はMOX燃料)」
(6)図-B:原子炉建屋外(左隅)に「敷地内でプルトニウム検出」

燃料漏れを示すピンクの点が一気に減少していて、まずびっくり。3列14点もあってはあんまりダダ漏れ状態のようで「風評被害」を生むとご賢察なさったのでしょうか。また、図-Bには漏れ個所が1点であるかのようなX印も付加されている。「破損」や「穴」は厳禁です。時間が経った分、図-Bにはプルトニウム関係の情報が付加されている。それと、圧力容器内の水の水位に注意してください。図-Bのほうが若干低いようですが、AでもBでも燃料棒はたっぷりと水に浸っています。燃料棒の水面上への露出はまったく反映されていません。


ところで、圧力容器の底部とはどんなものか。上の図をはじめとして、マスコミが提示する図では堅牢な鍋の底のようにとらえられる。金属の厚さも十数センチあると説明される。制御棒を出し入れする穴があるとも説明されるが、上の図のように、穴の数はたいしたことはないような印象を与えられる。ところが田中三彦『原発はなぜ危険か』(岩波新書)の159ページに、以下のような圧力容器の底の写真がありました。なっ、なんと、これでは鍋の底どころか、中華のザーレンのようなザル状ではないですか。上の日経記事内の図でも制御棒の通っているところはわずかに2本、模式図とはいえ、こんなところにも、メディアによる不誠実な情報提示が感じられます。



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