福島原発事故メディア・ウォッチ

福島原発事故のメディアによる報道を検証します。

このままづっと「1,000以上」?:読売・朝日・毎日・日経・産経・NHKみな同じ

2011-04-02 23:24:04 | クロスオヴァー
- ねえ、母さん、これで終わりなんてほんとにあり?
“Oh, Mama, can this really be the end ?” (Bob Dylan)

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20110402追記(末尾)しました。
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4月2日午後から夕刻にかけて、新聞各紙は福島原発2号機の岸壁に近い「ピット」という穴で極めて高濃度の放射線線汚染水がみつかり、それがピットの割れ目を通して海に流出していることを発見したという、東電の発表を報道した。これが海水の深刻な汚染の原因(他にもあるか?)らしいのだが、海水の汚染が極めて高いレベルだと報道されてからすでに数日、どうして今までこの可能性に気づかなかったのか、ほんとうに探そうとしたのか、という疑問は後日に取っておくとして、とりあえず、各紙報道がつたえる汚染水の放射線レベルをチェックしてみよう。

『ピットと呼ばれる立て坑に放射線量が毎時1千ミリシーベルトを超える高濃度の放射性物質を含む汚染水がたまり・・・(日経)

ピットの中の線量は毎時1000ミリシーベルト以上、地表と同じ高さでは同400ミリシーベルトだった。(毎日)

ピット内の水位は10~20センチ。内部では1時間あたり1千ミリシーベルト以上、上部では400ミリシーベルトの放射線量を計測した。(朝日)

2号機の取水口付近にあるコンクリート製の立て坑(ピット)の亀裂から、毎時1000ミリ・シーベルトを超える高濃度の放射性物質を含む汚染水が海に流出していた。(読売)』


ご覧のように、1,000ミリ「以上」「を超える」に終始している。過去記事「1,000以上あるというのは、1,000よりも多くあるということ」で指摘したように、これではいったいどの程度「1,000を超える」のかまったく明らかでない。前の記事で引用したように、彼らが3月26日にタービン建屋のたまり水の放射線量を「1,000を超える、以上」という根拠は、1,000ミリが計測限界の計測器を用いて、

『測定作業ですぐに針が振り切れたため、測定員は測定を中止して退避した。』

という事態をうけて、それなら「すくなくとも1,000ミリはあるだろう」と推測したにすぎない。同じことが4月2日になっても繰り返されている。何日たっても「極めて高い放射線量」が1,000ミリシーベルト以上の、いくつであるか、東電もメディアも関心がないらしい。「極めて高い」数値が、1,000ミリを大幅に超えている可能性はほんとうにないのか。計測もしないでどうしてそう言えるのか。後になって、「計測器の限界が1,000ミリ以上の計測器が不足・欠如していて計れなかった」などと言い訳するのか。作業員にいきわたらなかった線量計のときと同じように。それとも、計測器の限界が1,000ミリであるのをいいことに、現実の放射線量は計測不能とし、表現としては「1,000をこえる、1,000以上」、現実的運用上は1,000+αのようにして、「風評被害」を防ぐとともに、対策作業の「効率化」をはかったりするのだろうか。そんなことがあるとしたら、犯罪的なことではないか。

2日19時のNHK総合のニュースでも、ピットの汚染水はトップニュースだった。むろん放射線レベルは「1,000ミリシーベルト以上」。水野倫之解説委員は、「非常に強い」放射線だったので、作業員は「すぐに退散」(「退避」ではなかった)したと描写した。第1回目が9時20分、ついで0時20分にも接近したが同様に退散した、ということだ。1回目と2回目の間で計測器を、1,000ミリ以上計れるものに変えていないのは明らかだ(そんなものは存在しないのか)。

水野委員はこのように「非常に高い」放射線環境で作業をする人たちの安全について、東電に注文をつける。ポイント1.すでに3号機で作業員の深刻な被曝事故を起こしているではないか。ポイント2.現場の線量は極めて高いではないか。ポイント3.それに東電は作業員全員に線量計を配備するという、基本中の基本を怠っていたではないか。・・・・だから、今後は気をつけなさい、というお叱りです。

しかし、ポイント2.で「現場の線量は極めて高い」と言うとき、水野氏はいったいどのくらいの線量数値を想定していたのだろうか。だいたい1,000ミリくらい・・・といった程度ではなかったろうか。作業員の安全に配慮する姿勢を見せる水野氏は、奇妙なことに彼らの作業環境を正確に知ろうとはなさらないのである。

追記20110402:
2011年4月2日23時48分の読売新聞記事では、汚染水の放射線量は「1000 ミリシーベルト」ポッキリとなり、「以上」も消えていた。

『立て坑の中には、毎時1000ミリ・シーベルトの強い放射線を放つ汚染水が深さ10~20センチ程度たまっていた。』


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