ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「万引き家族」

2018年07月11日 | 映画関連

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高層マンションの谷間にポツンと取り残された今にも壊れそうな平屋に、柴田治(リリー・フランキー氏)と信代(安藤サクラさん)の夫婦、息子の祥太(城桧吏君)、信代の妹の・亜紀(松岡茉優さん)の4人が転がり込んで暮らしている。彼等の目当ては、此の家の持ち主で在る初枝(樹木希林さん)の年金だ。足りない生活費は、万引きで稼いでいた。社会という海の底を這う様な家族だが、何故か何時も笑いが絶えず、互いに口は悪いが、仲良く暮らしていた。

 

冬の或る日、近隣の団地の廊下で震えていた幼い女の子・ゆり(佐々木みゆちゃん)を、見兼ねた治が家に連れ帰る。身体中傷だらけの彼女の境遇思い遣り、信代は娘として育てる事にする。

 

だが、或る事件を切っ掛けに家族はバラバラに引き裂かれ、其れ其れが抱える秘密となる願いが、次々と明らかになって行く。

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是枝裕和監督の「万引き家族」は、今年の5月に開催された「第71回カンヌ国際映画祭」で、最高賞のパルム・ドールを獲得した作品。日本人監督の作品としては、1997年の今村昌平監督「うなぎ」以来21年振り快挙

 

格差社会」、「児童虐待」、「年金不正受給」、「社会的孤立」、「万引き」等、「万引き家族」には現代社会が抱える様々な暗部が描かれている。正直、直視するのが辛くなるシーンも在ったりするのだけれど、ユーモラス遣り取りの多さが“救い”となっている。

 

今から44年前の1974年、TVドラマ寺内貫太郎一家」で70歳の寺内きん役を演じていたのが樹木希林(当時の芸名は悠木千帆。)さん。当時の彼女は31歳で、実年齢より39歳も年上の老け役を担当していた訳だが、見るからに“婆ちゃん”という感じで、子供心に「上手いなあ。」と思ったもの。(孫・周平役の西城秀樹氏から、「婆ちゃん、汚ねぇなあ!!」と言われるのが御決まりだったっけ。)今や75歳と寺内きんの設定年齢を超えた彼女は、迫力を増した婆ちゃん姿で初枝役を演じていた。本当に上手い女優だ。

 

同じ是枝監督の作品「そして父になる」にも出演していたリリー・フランキー氏。“冴えない駄目親父”役が、実に似合う。又、安藤サクラさんの演技の上手さも光っていたが、子役の城桧吏君の演技力が凄い!初めは女の子と思ってしまった程、本当に可愛い顔立ちで、大人の俳優達をも食ってしまう高い演技力。「彼の存在が在ったればこそ、パルム・ドールを獲得出来た。」と言っても過言では無い。

 

ネタバレになってしまうのだが、“家族”として一緒に暮らす彼等6人は、皆血が繋がらない赤の他人だ。彼等の共通点は“社会の底辺で生き抜いている人達”(彼等が住む老朽化した平屋の横には、小奇麗な高層マンションが建っている。平屋から高層マンションを見上げるカットは、社会の上層部と底辺を暗示している様で、非常に印象深かった。)という事で、1つの家に転がり込んだり、引き取られたりしている。赤の他人では在るのだが、血の繋がった家族以上の“心の通い合い”が存在し、「家族って何なのだろう?」と考えてしまう。

 

最後は、バラバラになってしまう彼等。「今後の彼等が、どうなって行くのか?」に付いて是枝監督は、観ている人達其れ其れの想像力に下駄を預けた感が在る。児童虐待をしていた実の両親の元に返され、再び団地の廊下で1人遊んでいるゆりの表情に、治達と暮らしていた時の様な明るさを感じられなかったのは、自分だけでは無いだろう。

 

総合評価は、星4.5個とする。


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