ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「男たちの大和/YAMATO」

2005年12月25日 | 映画関連
群雄割拠の戦国時代にも魅力を感じてはいるが、何と言っても歴史上の時代で好きなのは現代時空を遥かに隔てた世界よりも、其処に登場する人々の息遣いが聞こえて来る様な”距離感”が良いし、彼等(彼女等)が思い描いていたで在ろう事がよりビビッドに伝わって来る感じがするからだ。だから、この時代を扱った文献や番組に出遭うと、のめり込んで見入ってしまう。映画に関しても例外では無い。

嘗て「犬神家の一族」や「人間の証明」、「セーラー服と機関銃」等、多くの話題作を手掛けた角川春樹氏。その彼が8年ぶりに手掛けた作品が「男たちの大和/YAMATO」。長渕剛氏の歌う主題歌と共に、激烈な戦闘シーンがCMで流されている例の作品だ。

アニメを始めとして、多くの作品の題材に供されて来た戦艦「大和」。余りにも有名な戦艦と言える。1941年12月16日に完成したこの戦艦は、全長263m、満載重量72,800トン、最高時速51kmとされ、「世界最大にして最強の戦艦」、「不沈戦艦」等と称され、日本連合艦隊旗艦で在った。しかしながら、時代は海戦から空中戦に移り変わっており、敵国アメリカの激烈な空からの攻撃によって、日本海軍は次々とを失って行く。そして、敗色が濃厚となって行った1945年4月6日、大和は水上特攻を受け、沖縄に向かう事になる。一機の護衛機も無く、片道の燃料しか積まれなかった(この辺に関しては諸説在る様だが。)この戦艦は、多くの敵機(千機を越えていたとか。)が待ち構える中を、死に場所と求める様に突き進んで行った。3,000余名の乗組員の大半は、10代半ばから20代の若者だったという。そして翌7日、敵機からの雨霰といった激しい爆撃と、敵艦隊からの魚雷攻撃を受け、不沈艦「大和」は轟沈する。生存者は僅か270余名だった。

”最後の戦い”に赴く際、海軍上層部が”陸”に”逃げた”という話は、何時の時代も同じ様な事が起きているのだなあと感じる。そして、「今回の命(沖縄に向かう事)は、単なる犬死にではないか!」と上層部に食って掛かる士官や兵士達の気持が、痛い程理解出来てしまう。そんな士官達に対して、長嶋一茂氏演じる所の臼淵大尉が達観したかの表情で、静かに語りかける言葉が自分の心には突き刺さった。

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幕末薩摩薩英戦争に、そして長州馬関戦争に敗れ去った事で、相手の力を知り、目覚めた。進歩の無い者は決して勝たない。負けて目覚める事が最上の道だ。日本は精神主義を重んじ、進歩という事を軽んじ過ぎた。私的な潔癖や徳義に拘って、真の進歩を忘れていた。敗れて目覚める。それ以外に、どうして日本は救われるのか。今日目覚ずして、何時救われるのか。俺達はその先導になるのだ。日本の新生に先駆けて散る。正に本望じゃないか。
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長嶋氏の決して上手くは無い演技はさて置き(笑)、この台詞には涙が止まらなかった。苦しい言い訳で在る事は確かだろう。でも、そうでも言わないと、救われない男達が其処には居たのも事実だ。その多くが、次代を担う若人で在った事が堪らなく哀しかった。と同時に、最近は「死んでも遂行します。」といった様に安直に「死ぬ」という言葉が使われるが(耐震強度偽装問題でも、某社長がこの言葉を使いまくっていたが。)、「死ぬ」という言葉はそんな軽い使われ様をするものではないと改めて感じた。

今夏、「初参拝」という記事を書いた。その際にも触れたが、数多の戦没者の殆どは純粋に愛する祖国を護る為に死んでいったと思う。「勝てば官軍、負ければ賊軍」というのは戦の常なので、敗戦国の日本が断罪されるのは致し方無いとは思うが、然りとて責められるべきは、国を敗戦に向かわせた軍上層部と国家の要人達だろう。祖国、ひいては愛する家族を護る為に死んでいった者達迄が、侮蔑の対象になってしまう事だけは如何とも受け容れ難い。

終盤の激しい戦闘シーン。映画「プライベート・ライアン」を思わせる、残酷なシーンのオンパレードだ。この残酷さには賛否両論在るだろう。しかし個人的には、絶対にこのシーンは盛り込むべきだったと思う。多くの兵士の肉体が弾丸で射抜かれ、爆発で肉体が弾き飛ばされていったのは、架空ではない事実。戦争の話になると、どうしても死者数は一括りにされてしまい、其処には兵士個々の存在が忘れられがちになってしまう。でも間違いなく、己が肉体を射抜かれ&弾き飛ばされていった個々の兵士の痛みが在り、亡くなっていった個々の愛する家族への無念の気持が在った筈なのだ。その事に気付かせてくれるという意味で、このシーンは必要不可欠ではないだろうか。

正直、鑑賞する前には、この作品にそれ程の期待を持っていなかった。演技面で不安を覚える役者が数人居た事も在るが、この手の作品に在りがちな”泣かせようという意思”があざとい迄に打ち出されているのだろうと思っていたからだった。不安を覚えていた役者の演技は、案の定上手くは無かった。泣かせようという意思も、確かに見受けられた。CGに粗さを感じた部分も在った。しかし、それを上回る予想外の出来で在った事も付け加えるべきだろう。

評価は88点とした。些か甘過ぎる評価かもしれないが、勝者よりも敗者に美学を感じてしまう身故、その辺は御容赦戴きたい。

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12 コメント

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Unknown (アラメイン伯)
2006-08-25 12:52:53
僕の祖父の弟がこの海戦で巡洋艦・矢矧で戦死してるのですよ。



なんだか大和が1隻で沖縄にいった印象を受けかねない感じの仕上がりです。



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>あっしゅ様 (giants-55)
2006-08-15 13:48:56
書き込み有難うございました。



「二百三高地」や「連合艦隊」等、過去に多くの戦争映画を見て来ましたが、自分の中でもこの「男たちの大和/YAMATO」は非常に印象深い作品になりました。妙な思惑も無く、唯々愛する者を守る為に自らの命を投げ出していった者達。こういうのはグッと来ますね・・・。



これからも宜しく御願い致します。
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Unknown (あっしゅ)
2006-08-15 10:05:17
こんにちわ。あっしゅです。

close your eyes♪瞳を閉じれぇばぁ~

いやぁこの映画は今まで見た映画の中で一番泣いたかもしれません。

なんっていうんですかね、、、心の奥から込み上げてくる、昭和20年代の若い将校の思い、、、心に突き刺さりました。

男たちの大和の中で”男たちの男魂”ってやつを見せつけられました。

蒼井優ってかわいいですね。笑顔が最高です。

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日本版 (kimion20002000)
2006-04-26 02:07:59
TBありがとう。

ひたすらの爆撃を受ける終盤をみていて、僕も、ああこれは、日本版のプライベート・ライアンなのだなぁ、と映画館で感想しておりました。
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Unknown (hiro)
2006-02-09 07:37:42
おはようございます。



日頃軽視されがちな邦画ですが、久々の話題作になりましたね。

また足を運びたくなる様な作品に出会いたいものです。
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あっしの所見・・・ (hiro)
2006-02-08 22:41:05
男たちの大和では、笑えるシーンは1つもありません。

壮絶な悲惨な場面や泣ける場面が印象に残りました。

でも、この様な悲惨な戦いを経て今の平和があるのだと改めて実感しました。

戦争映画は数多く観ましたが、上記の様に思えたのは正直今回が初めてです。



長嶋一茂氏は演技力は・・・

でも、彼の役所はこの映画の一番言いたいところを台詞にしているだけに大役お疲れ様でしたと言っておきます!
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意外なことに・・・ (hiro)
2006-02-07 12:22:34
giants-55さんもブログで取り上げていましたね。

感想は一言、『良かった!!』です。

お客さんはこの時期でも8割は埋っていました。

年輩男性のお客が多い中で、若い女性やカップルも結構居たのは意外でした。

それだけ話題性のある映画なのでしょう。



しかし、長島一茂さんの演技はさておき配役としてはイチバン美味しいトコではなかったでしょうか?

giants-55さんはどう思います?
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日本インターネット映画大賞開催中です (日本インターネット映画大賞)
2005-12-30 21:05:09
突然で申しわけありません。現在2005年の映画ベストテンを選ぶ企画「日本インターネット映画大賞」を開催中です。もしよろしければ投票に御参加いただくようよろしくお願いいたします。なお、日本インターネット映画大賞のURLはhttp://forum.nifty.com/fjmovie/nma/です。

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こんにちは (オリ)
2005-12-28 12:47:35
トラバありがとうございました。

私も長嶋の台詞でぐっときました・・・

泣き所が本当に多くあって。



ああ云う血塗れでボロボロになって戦ってる

戦闘シーンは本当なら観たくなかったけど

あれを観ないとYAMATOの意味が無い気がします。

これが本当の戦争の姿、決して風化させては

いけない紛れも無い現実の戦争。

もっと多くの人に観て欲しいと思います。
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さまざまな (syuu)
2005-12-26 09:31:26
 大和にしても戦争にしても、どんどん人の記憶から風化していってしまうものですよね。でも、覚えておかなくてはいけないものだと思います。

 女性が書いたものと知り、多分戦争に送り出す女性の気持ちもたくさん盛り込まれているのだろう・・と推察しています。でも、観てみたいです。この大和の映画を作っている際、某外国からクレームがあったとか・・・。そのように、変な意味で狸のように戦争のことを記憶にとどめて置くのではなく、確かな真実と、その意味をしっかりととどめておきたいですね。
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トラックバックありがとうございます。 (タイラヨオ)
2005-12-26 02:24:39
自分のブログでは、内容についてあまり詳しく

書きませんでしたが、私も長嶋一茂の台詞に涙した1人です。

いつからそんな役やる大物俳優になったんっっ!?w

と思ったけれど、あれはあれで適役だったとすら、、

思ってしまう感動がありました。あの、くだりには。



田んぼであのお母さんが謝る場面も、

涙で画面が良く見えないぐらい泣きました。



一緒に観に行った友人が、観に行く前日キャバクラで

「男たちの大和」を明日観に行くよ、と話すと若い女の子達は

ナニソレー、宇宙戦艦ヤマトのパクリー!?と言ったそうで

その言葉に友人はひどく怒ってましたw

日本を知らない日本人が多すぎる、と嘆いていました。

その話を聞いた時私は、仕方ないよ若いんだから、、

なんて思いましたが、映画を観てやっぱり知って欲しい

観て欲しいと強く思いました。グロテスクな場面も確かに

長いけど、小学生などにもできれば観て欲しいな、、

と思いましたけど、、最近そんなんも難しいですよね↓
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敗者の美学 (帆印)
2005-12-25 07:23:19
うむ、こうやって、giants-55さんの記事を読むと、見に行きたくなる。敗者の美学は、日本人の心の中にキットあると思う。大陸や他国の評価の中に「軍国主義の復活」などという評価もあるが、日本という国にのほほんと生きていた若者でさえ、涙したと聞く。

靖国問題も然り。

見事に描かれているのであろう。



かって、戦艦大和を題材に描いた映画は日本映画にもあった。「戦艦大和」って日本映画だが、これを見た俺は不覚にも涙した。コメディアンである「財津一郎氏」が見事な演技をしていて、そのシーンが未だに脳裏を離れない。

「手が焦げても、任務を全うしていた」。



CMで、この映画の予告を見た感想は、このgiants-55さんのように、「プライベートライアンや、パールハーバーのパクりじゃねえか?」

と、思ったりした。原作者も女性、角川映画、監督名を見て期待をしていなかった。



しかし、麻薬問題で復活した角川春樹氏ならこの題材を選ぶのは、納得がするような気がする。音楽も、長渕剛氏だし清水健太郎も出るんじゃないかと、思ったりもした。



未見だから、感想を述べるのはこの辺で、、。



しかし、見に行きたくなったなぁ

涙流すのだろうな。

しかし別問題として、だれと行くかが、当面の問題です(笑)









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