goo blog サービス終了のお知らせ 

防災ブログ Let's Design with Nature

北風より太陽 ソフトなブログを目指します。

災害ツーリスト

2008年07月19日 | 防災・環境のコンセプト

○竹内の地下水調査日記 - 四川大地震の報告を聞いて -
  
http://takeuchi-atsuo.cocolog-nifty.com/blog/2008/07/post_3f32.html

  耳の痛い記事がありました
---------------------------------------------------------------------------
今日防災研の汪さんのところに土産話を伺いに行ってきました。彼はこれまでに2回四川大地震の現地踏査に行ってきたそうで(略)

しかし、何は物足りない感じを抱いた。何だろう?と考えた。踏査結果としてはいいのだが、何か足りない。

・現地踏査をしてそれをまとめるだけで、我々自然災害研究者はいいのだろうか?
・考察を加えると言っても後は地形的・地質的考察を行う程度であろう。それで
研究者
 としてはいいのかもしれない。
・でも その後どうしたらいいかという一歩突っ込んだ考察も必要ではないのであろうか?
・このような巨大災害に対してどう対処したらいいのか?災害社会学的にはいろいろな対処法
 (耐震設計や避難の方法など)が考え出され、為政者に提案されることだろう。
・多くの自然災害研究者がこれまでやってきたことは現象発生直後できるだけ早く現地に行き、
 その現象を注意深く観察し、それぞれの得意分野に主点を置いた報告をすることで終わ
 ってしまっている
ような気がする。
・いろいろな方が評論家然として色々発言されているが、実際どれだけ価値があるのかと疑問を抱く。
---------------------------------------------------------------------------

 このようなことを、千木良先生の本では「災害ツーリスト」として批判的な文章を書いておられました。
 これは防災に関わる技術者が、実は防災に関わる行政文書代書屋としての自分に気がつかず、一般の方にわかりやすく説明する努力をしてこっなかったことににもつながると思います。
 大きな災害を受けてしまうと、復旧、二重ローン、ボディブローのように効いてくる財産、地盤・岩盤おダメージ、、、
 確かに災害の要因を知ることを重要、でも、どこの部分は軽症なのか、どこの部分が重症で、今後どのような生活改善をしていかなければならないのか、、そっちのほうが『皆さん』が気になることなのです。
 


野茂投手引退

2008年07月16日 | 防災・環境のコンセプト
メジャーリーグで活躍した野茂英雄投手が引退を表明しました。
個人の力で閉鎖された世界を突破した生き様に憧れを感じる人も多いと思います。

さて、気になることがあります。

今年はオリンピックイヤーですが、最近のスポーツ選手は「楽しむ」「楽しみたい」という言葉をよく使います。個人的には、「楽しむ」の意味が深く考察されずイメージが一人歩きしていると感じます。多分、メジャーリーグの野茂英雄投手が「アメリカで通用するかとういうよりも、アメリカで野球を楽しみたい」と言ったのが最初だったと思いますが、その言葉尻だけをとらえ「さしあたって”楽しみたい”と答えとけば無難だろう」のような感覚で使われますよね(野茂投手はもっとかたい決意を秘めていたんだろうと思うのは私だけでしょうか?)。
 話を環境にもどしますと、この20年、地球温暖化に関連するCO2削減や廃棄物の3R政策など、化学的・生態学的な側面からの議論、刻々と変化する地表より上部の眼に見える範囲での諸現象に関する「言葉」はよくつかわれてきました。「水と緑の○○づくり事業」があったり、「公害」「災害」との言葉の意味の違いや対策にかかわる技術論などはあまり表に出てきませんでした。むしろ、健康・生命被害にかかわる”かわいそう”な部分に”かんきょうろん”ならぬ”かんじょうろん”にさえ聞こえることもありました。まるで、「楽しむ」かのように

みなさんどう思います?

エンジニアは謙虚であれ - 神戸地震から13年 - 『地盤工学会誌』

2008年07月06日 | 防災・環境のコンセプト

------------------------------------------------------------------------------
国も自治体も、いろりろな地震対策を進めており、研究面でも世界をリードする成果を生み出していた。(略)
相対的に見ればという意味である
 それにもかかわらず、なぜあんなに惨めな震災を受けてしまったのだろう。地震の揺れが想定していたものより強かった言って片付けてしまうわけにはいかない。
 (略)要するに、
 「専門家の勉強不足」「専門家の自己満足」「専門家の説明不足」 にあった(略)。被害を受けた人たちの責任は小さかった。
--------------------------------------------------------------------
 今日届いた地盤工学会誌56巻7号(通号606号)の総説(片山恒雄:東京電気大学)

 私も一応専門家の端くれ、専門的知識を使ってどうにかこうにか飯を食い、いまは家族も持ったわけです。勉強不足は、個人的には真摯に受け止めるとしても、向学心に燃える専門家の方も何人か知っているので(このブログにブックマークしている皆様のような)ちょっときついなあと思います。

 が、自己満足、説明不足は納得です。

------------------------------------------------------------------------------
・地震学者は自分たちがやっている地震学の基礎研究を、世間が「地震予知」と勘違いしていることに気がつかなかった。
・破壊的な地震に見舞われたとき、いったい誰が、「断層面の向きや傾き、破壊の特徴、地震モーメント」に興味を持つだろうか 
------------------------------------------------------------------------------
 私がこのブログをはじめたり、あるいはホームページのデザインにこだわったりしているのは、エンドユーザーに背を向けた議論はすべて空虚である と思っているからです。最近いろんな偽装問題が発覚していますが、これらは結局「自己」の欲求に走った結果、「事故」よって「自己」の真実を知るというブラックジョークです。
 
 例えば、私がよく関わる斜面問題では、よく「断面図」と「平面図」を見ます。そして、「地質調査者」が熱をこめて語るのは、縦断面図を用いていることが多いのです。考えてみれば「斜」面なのに、「断面図」と「平面図」の『垂直的二次元思考』が、現実にあっていないことに気がついていません。まして、エンドユーザーと一緒に問題に取り組むとなると、その感覚は伝わりません。「平面図」と「断面図」をジアゾ焼き(古っ!!)を納品する感覚に慣れすぎたとか、100万円なら100万円なりの成果でいいだろうという感覚は、実は公共事業になれきり最終決断を下してこなかったことなどを、理解してもらえるのは難しいこといなのです。道路や宅地といった生活に密着した問題であるにも関わらず、技術者という職業が社会に認知されていない状況は改善されなければなりません。

 地震が起こるたびに、いわゆる地質屋さんは、震源の位置とかプレートテクトニクスや地震が発生した背景や道路や橋脚の耐震性がどうのこうのという話、ようはメカ二ズム論にはいきいきと興味を示すのですが、家屋が被災しないために保険料をどう捻出するか、地盤のメンテナンスに関してどこまでリスクを許容し、個人負担がナンボで、公共補償費用がナンボで、といった社会科学的観点になると、やれ建築屋は地盤・地質を知らない、文系人間は自然がわからないなど愚痴るひとも見かけるくらいです。

 片山先生も「お役所の縦割りが問題だ」という研究者は多いが、まずは「隗よりはじめよ」とおっしゃっています。トレースなど図面表現は女性アシスタントの仕事、俺の仕事じゃないといっていないで、どういう表現が、専門知識をどうように説明したらよいか、真剣に考えないと、公共事業を民需が上回ったとき、つぶしが利きません。


”自分の庭”を持つ強み

2008年06月29日 | 防災・環境のコンセプト
昨日参加していた勉強会で、宮崎県の現場の話をしていたら、急に『そこは私が青春をかけた現場ですよ』と声を弾ませた方がおられました。その方の論文を以前読んだことがあったのですが、よくある名前のかただったので、ご本人とは気がつかずにいました。

現場に出かける前など、その地域を少しでも理解するために"予習”をするのですが、その方の論文は地質図がとても丁寧に記載してあったので、鮮明に覚えています。実は、そこの岩石の解説をしたり土質の分析をしたりする人は多いのですが、地質図をはじめ”調査精度を落とさずにわかりやすく表現すること”に対してきめ細やかな気配りをするひとが少ないと思います。

防災というのは地形だの地質だの土質だの、縦割り的な理解ではだめで”その地域のプロ”になるという意気込みをもつこと、その地域に関してならどこに○○岩が出ているか、どこのうどんやがおいしいかも含めて”自分の庭”とすることが、実はいちばん地域に貢献できることなのです。

伝説のwebサイト『かだいおうち』

2008年06月28日 | 防災・環境のコンセプト

今日は同業社で行う地質技術勉強会に出席して、地質情報活用機構理事長の岩松 暉先生のお話を伺う機会がありました。岩松先生は地質情報活用機構を立ち上げておられることからもわかりますが、地質学の一般社会への普及に大変熱心な方です。

もともとは鹿児島大学の教授でおられたので、そのときに『かだいおうち』http://www.sci.kagoshima-u.ac.jp/~oyo/contents.htmlという日本唯一の応用地質学に関するwebサイトを開設しておられました。その内容の濃密なことといったら。。。

鹿児島大学のご退官とともに更新終了あしからずということでしたが、新卒の技術者もよく知っているサイトで、岩松先生もこんなに若い人も知っているとはありがたいと喜んでおられました。

いま、よみかえしても、すごい迫力です。


有明海の脈動復活なるか - 諫早湾干拓の水門開放へ -

2008年06月27日 | 防災・環境のコンセプト

潮受け堤防開門命じる 諫早湾干拓訴訟判決
http://www.saga-s.co.jp/view.php?pageId=1036&blockId=954754&newsMode=article
湾内および湾周辺の環境悪化と、堤防閉め切りには相当の因果関係があると認定。開門に備える工期として判決確定から3年間の猶予を付けた。開門調査を拒んできた国に対しては「因果関係の立証に協力しない姿勢は、もはや立証妨害」と痛烈に非難。完成した国の巨大プロジェクトに見直しを迫る歴史的司法判断となった。

 久しぶりに目が覚めるようなニュースでした。
 私は諫早湾の対面にあたる福岡県の水郷柳川で育ち、有明海のダイナミックな潮の満ち引きと焦げ茶色の干潟を見て育ちました。
 
 大学に行って私は自然地理学を学び、関連する職業につくことになりました。もしそうでなかったら、このニュースを冷静に聞けなかったでしょう。良し悪し賛否は別として『環境論』ならぬ『感情論』的になっていたことでしょう。

 そして、このような問題は、司法判断に自然科学による客観的なデータを加えなければならないという複雑さ、むつかしさをはらんでいます。

 有明海は宝の海とよばれ、干潟とそれに続く浅海域の生物生産力は極めて高く、日本の沿岸漁業の重要拠点になっています。有明海(特に泥質干潟や河川感潮域)には、ムツゴロウやワラスボなど、中国や朝鮮半島によく生存する種が存在しています。

 これは有明海の地学的背景を十分に知っておかなければなりません。今から2万年前は最終氷期とよばれ、氷河が発達し瀬戸内海も干上がるほどでした。当然、有明海を陸地となっていました。このころに中国の揚子江・黄河などから運ばれてきた大量のレス(黄土)が堆積、そして1万年前くらいに温暖化し海水が戻ってきたときに、一気に有明海にスープ状に、そしてたこつぼ状の海にトラップされたのです。
 佐藤正憲編(2000)『有明海の生きものたち』http://item.rakuten.co.jp/book/1208233/によれば、筑後川などの河川からもたらされる土砂が湾内にそのまま堆積し、大きな潮位差は海水を濁らせ、揚子江に匹敵する土砂濃度(1-2kg/m3)の浮泥の海となっているそうです。
 
 特に、干潟に適応した塩生植物の1 種であるシチメンソウは、瀬戸内海にも分布記録があるが、そこではすでに絶滅し、現在日本に残されている産地は有明海の奥部だけ
で、シチメンソウの葉は夏は緑色であるが、晩秋には真っ赤に紅葉する。泥干潟を美しく彩る国内最大の群生は有明海の諫早湾にあったそうです。

鹿児島大学理学部助教授
http://www.isahaya-higata.net/isa/libr/lb020424ref0204/0204ref26-27.pdf

 また、有明海周辺の地盤は、知る人ぞ知る軟弱地盤です。表層部には有機質が多く含水率の高い極めて軟弱な層(=有明粘土層)が10~30mの厚さで分布しているhttp://home.hiroshima-u.ac.jp/sonodera/5aihara.pdfため、ほっといてもボーリングのロッドが沈むのです(このすごさはKon25さんhttp://ten-shock.jugem.jp/ がご存知でしょうか)。これが、平野であるにもかかわらず大都市ができずに水質汚染と水の需要量が少なくてすんだとは考えすぎでしょうか。

 先の『環境論ならぬ感情論』ではないですが、生態系を考えるとき『かわいい』生き物に感情移入し勝ちです。しかし、ここで冷静になって、地学的環境も踏まえ総合的・循環的な考えかたをしなければなりません。

裁判では、5年間水門を開け続けるよう判決されたようですが、九州のバイオスフィアhttp://www.monotsukuri.net/mirai98/bios/bios.htm を目指してほしいものです。

 このブログでお世話になっている、同じく”水郷”におられる島根県の今岡さんは、このニュースをどう感じていらっしゃるのでしょうか。


災害を語るストーリー

2008年06月24日 | 防災・環境のコンセプト

NPO法人地質情報整備活用機構(GUPI)のサイトには、岩手・宮城内陸地震に関する情報が網羅されています。それにしても今回の、各社各機関地震動の観測結果と荒砥沢地すべり一色です。

しかし、この前も書きましたが、崩れてしまった箇所はもう安定に向かうのです。これから崩れるところに全力を挙げるほうがよいのです。

過去、九州で土石流災害が発生した箇所でも、山崩れが発生した箇所がまさしくピンポイントで対策工が施工され、まるで要塞のようでした。

被災された方々の暮らしもこれからが大変です。住宅ローンなど残っている人や、傷んだ家にそのまま住むことになる人、大変な重荷を背負うことになります。

斜面も一緒です。すべり台の上にぶら下がってぎりぎりで持ちこたえていた土塊に亀裂が入った箇所などがあったら、まさしく忘れたころに崩れるのです。

山の気持ち、斜面の気持ちになって、人生設計を考えるような気持ちで防災にあたらないと、自然との共生など絵空事になりそうです。


ハザードマップ

2008年06月11日 | 防災・環境のコンセプト
私にとってはちょっと考えさせられる記事を見つけてしまいました。

http://dsel.ce.gunma-u.ac.jp/modules/research0/index.php?id=7

■災害イメージの固定化

 洪水ハザードマップに示される予想浸水深は、ある条件に基づく一つの氾濫シミュレーションの結果にすぎず、将来にわたって洪水氾濫がそのシミュレーション結果の範囲にとどまるという保証はない。しかし、住民が洪水ハザードマップから自宅の予想浸水深を読み取ると、それがその人の予想する浸水深の最大値を規定してしまうのである。特に、浅い浸水深、もしくは浸水しないことを読み取った住民は、その情報に安心感をもち、洪水災害時において避難の意向を示さなくなってしまうおそれがある。

■前提条件の欠落

 洪水ハザードマップで、色が塗られていない地域(予想浸水深がゼロの地域)には、与えられたシナリオに基づく洪水氾濫シミュレーションにおいて、その解析の対象外となり結果として浸水が生じないと判定された領域がある。このような氾濫解析の対象外となった流域では、洪水ハザードマップで予想浸水深は示されず、それをみた流域住民が「ここは洪水に対して安全な地域」として受け止めてしまうことがある。

テクニカルコンポーネンツとプレゼンテーションのバランスを、技術者がうまく取るべきなのでしょう資格


いろんな”ダム”-天然ダムという言い方は失礼なのか?-

2008年05月23日 | 防災・環境のコンセプト

中国四川省の地震で川が塞き止められてできた湖について、震災ダム、土砂崩れダム、地滑りダム、実にさまざまな言い方で報道されています。

なんでも、新潟県中越地震
で発生した現象として、この表現が「美しい印象を与えてしまう恐れがあり、被災者の心情にそぐわないとして、国土交通省はこの現象の表記を河道閉塞(かどうへいそく)に改めることにした。

のだそうで。インターネット上の記事でも、

「天然」というのは、「自然にできた」つまり「震災や台風や火山の噴火によってできた」と言う意味だと思いますが、「ダム」というのはあくまで人工的なもので、自由に放水ができて、貯水量を調整できるような機能を持たせた、鉄筋コンクリート製の「せき」を表しています。この言葉をくっつけるのは、どうしても無理があるように思います。
 もし「ダム」であるならば、水位の調節が簡単に出来るはずですよね。水を出すのに、あんなに苦労してるのに「ダム」なんですかね。

なんて意見も。

いままで「天然ダム」という言葉を使っていた研究者は、「人工」の対義語として「天然」があったためそう言っていただけです。実にシンプルな理由でしかないのです。

しかし、2004年以前に「天然ダム」による災害が、日本では久しく認知されてきませんでした。実際には日本海側の地域で雪が解ける時期を中心に地すべりが発生し、川や渓流が塞き止められた事例は多数あるのです。そして、災害伝承として伝える努力もなされてきました。

消防丁:災害伝承情報データベース :沢の水が止まるとそれは上流に天然ダムが
http://www.saigaidensho.soumu.go.jp/saigai/import.2007-03-13.185833-2/
天然ダムと災害 http://www.kokon.co.jp/h5065.htm

実際に被災された方の声として、天然ダムという言葉に不快感を覚えるとか、そのような意見があったのでしょうか。

ではなくて、マスコミ報道の単なる自主規制だったら、自然科学・災害科学に対して、もっと学んでから、理にかなった議論があるべきでしょう。


災害はいつも古くて新しい-テレ朝の特番に思う-

2008年05月12日 | 防災・環境のコンセプト

○近未来×予測テレビ-都市に急増!!新型災害徹底解明スペシャル

昨日この番組をみた感想は、オーバーナレーションというか、そこまで大げさなムードを作ってよいものかということでした。

例えば、なんと東京23区内にがけ崩れの危険箇所が約600箇所!!え~こわーい、、、
まあ急傾斜地崩壊危険箇所の点検を主な生業としている私にとっては、笑うしかなかったのですが、、、もうちょっと大人の番組が作れないものか、、、ってこの番組に限ったことではないですけど。

しかし、キャッチコピーの新型21世紀型災害というのは頂けません。

なぜなら、私たちの防災技術者の間では、イロハのイの段階で出てくる昭和33年狩野川台風から今年で50年。都市災害のさきがけであり、小説『細雪』(今はドラマにもなってますね)に書かれた昭和13年阪神大水害から、ちょうど70年なのです。宅地開発が崖に向かって進む一方で、ライフスタイルも変わるから被害を受けるものやパターンが新しくなるだけ、崖のやることは急激な地中水の増加によって自重を支えきれなくなって落ちるという永遠のワンパターンです。

ここで、私の会社の宣伝を一席。http://www.kankyo-c.com/soil_hazard.html

斜面は崩れるものです。水は低いほうに流れることと同じくらい、自然にとっては当たり前なんです。
もう一度いうが、いくら専門外とはいっても、もう少し大人びた番組作りができないものか。

でも、よく考えたらこれは私たち専門技術者が、あまりにも公共事業の方を向いてきて、その恩恵を享受すべき住民の皆さんの方向を見てこなかったという反省点があります。

でも、知識のひけらかしや講習会ばかりでは、やっぱりいかんのであって、京都大学防災研究所の河田先生が防災産業を作るべしとおっしゃっているように、そいいったビジネスへの志をもって取り組むべきなのでしょう。http://www.drs.dpri.kyoto-u.ac.jp/staff/kawata.html


ミャンマーと日本 - 報道への疑問 -

2008年05月11日 | 防災・環境のコンセプト
ミャンマーで大変なサイクロン災害が発生しています。しかし、昨今の報道に、私は非常に違和感を覚えます。

それは、ミャンマーが軍事政権であるから被害が拡大し、人災であるかのように報道されているということです。

確かに政情は日本が安定しているし、経済力のあると思いますが、日本もデルタ地帯に人口が集中する台風(ミャンマーで言うところのサイクロン)大国であることが見過ごされています。

最近中央防災会議では、「大規模水害対策に関する専門調査会」を設置し、大規模水害発生時の応急対策等の検討を行うため、利根川を題材に、利根川が氾濫して大規模な水害が発生した場合に想定される死者や孤立者の数、浸水想定時間に関する被害想定をとりまとめしました。

なんと
a)排水施設が稼動しないケースでは、死者数は約3,800人
b)排水施設が全て稼動するケースでは、死者数は約3,500人

そして、1/200年確率という数値に惑わされてはいけません。昭和22年のカスリン台風なみの台風は、毎年来る可能性があるのです。

この記事で示した画像はNASAが公表したものですが、カスリン台風時や伊勢湾台風時の被災時は似たいような状況だったかも知れません。

洪水の繰り返しによって平野ができている限り、メカニズムは同じなのですから。

地震だけが防災ではありません。

防災対策は現地で単品オーダーメイド

2008年05月02日 | 防災・環境のコンセプト
○深層崩壊の予測手法開発 土木研、被害回避に有効
http://www.47news.jp/CN/200804/CN2008042901000261.html
「深層崩壊」の発生を、地形図などから予測する新手法を開発した。
 
(1)急斜面で、雨水が広い地域から集まる場所
(2)斜面の起伏など等高線にゆがみがある場所-の2つに着目した。
 
この2つと過去の発生の有無の3条件を、05年9月の台風14号で、宮崎市の鰐塚
周辺の渓流で発生した8カ所の深層崩壊に当てはめた。その結果、8カ所とも最低1つ
の条件に該当。3条件を各地の地形に当てはめれば、深層崩壊が発生する地域を事
に把握できることが分かった。
 
??そんなもん空中写真で判読した方が正確で早い。
空中写真判読や地表地質踏査などの主観と個人差が出る方法よりは、客観的な答えを求める方法が高度な技術だと勘違い(あえて勘違いと言わせてもらう)している、基準書技術者は確実に存在します。

現場こそ最高の教科書であり、基準なのです。
ワンクリックで買い物ばかりしていると、なぜその商品がそこにあるのか、周りにはどんなものがあるのかが分からなくて、1+1+の知識しかつかず広がりが持てない。でも、分かった気になっているのと同じです。

そんな、たったふたつの指標で大規模崩壊の場所がわかるんだったら、Google のスゴイ技術者が解決していそうなものです。

天上なき高い理想より、最低基準に合わせてしまったISOの凋落と同じ匂いがします。

5月10日は地質の日

2008年04月28日 | 防災・環境のコンセプト

京都新聞に、次のような記事が掲載されていました。

地質学の面白さ知って 京大で10日にイベント 180年前の図も公開
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008042600066&genre=G1&area=K00

5月10日の「地質の日」にあわせ、京都市左京区の京都大総合博物館で同日午前10時から、化石や気候変動の研究など、地質学の面白さを紹介するイベントが開かれる。  
京大博物館では午前10時から、理学研究科の渡邊裕美子助教が「石から探る、むかしの天気」と題して、インドネシア・ジャワ島洞窟(どうくつ)の鍾乳石が1年ごとに刻む「年輪」から分かる降雨などの歴史を紹介。大学院生の北川博道さんが「網にかかったナウマンゾウ」と題し、瀬戸内海で漁の網にかかったナウマンゾウの化石を見せ、かつて日本にいた動物について解説する。

これは興味ぶかい。個人的には都合が悪いのでいけませんが、多くの人に足を運んでほしいと思っています。

なにがって、今の高度な測量技術によって作成された地図にはない、文字通り手に汗握った地質図の論理構成と色彩美、、、そのための努力を感じます。そして、ノーベル賞で有名な湯川秀樹博士のお父様が地理学・地質学の大家であったことも、興味深い。

以前、湯川秀樹先生の自伝で「自然は曲線をつくり、人間は直線をつくる」というシンプルかつ完璧な形容に感動したことがあります。

そうだ、、京都行こうって気になった方、、

感想を聞かせてください。


21世紀ハザードマップへの取り組み

2008年04月21日 | 防災・環境のコンセプト

私たちの暮らす土地について、地盤工学会という学会があります。その学会誌の名称が(3月までではありますが)「土と基礎」といって、ダムや道路、トンネル、崖崩れ、地すべり、地盤に関する様々な現象を扱っています。

さて、その「土と基礎」2008年3月号に、興味深い記事が3つありましたので、今日はまずそのひとつを紹介します。

土砂災害ハザードマップ-21世紀型ハザードマップへの取り組み

まず、いままでのハザードマップの課題として、
1)みやすさとわかりやすさをさらに工夫していく
2)自分に被害にあうはずがないという思い込みをなくす工夫
3)目から入る情報だけでなく、動き・音・振動など五感に訴える情報を伝達する工夫

があげられています。

この解決策として、3次元動画を用いた火山ハザードマップが紹介されています。しかし、私たちの日常生活にとって親近感があるとは言えません。情報機器の高度化に迎合するのではなく、むしろ手書きでも生活に関わりのある、現在位置の分かりやすい、自然現象に対して感情移入のしやすいマップを作成することが重要です。自分の命を自分で守るためには、自分の目線での安全情報を足で稼ぐのが王道です。私たち技術者は、そのアドバイザーにすぎません。

たとえば
http://www.ohta-geo.com/x/gan/04_23rd/toyooka041106.pdf


防災と防犯の共通点と相違点

2008年04月11日 | 防災・環境のコンセプト

GooGleのサービスのひとつに、Googleアラートといって、個人のメールアドレスに指定したキーワードを含むニュースを送信するサービスがあります。私は、「地形」「地質」「災害」「宅地」「防災」と、5種類のキーワードを指定しています。そのなかで、よく気になるのは「防災」のカテゴリーとして送信されてくるニュースのなかに、よく「防犯」といった方がよいような内容が含まれています

学校の安全確保、法律に明記へ……災害・犯罪対策も
http://benesse.jp/blog/20080410/p1.html

防災と防犯、まず共通点をあげてみましょう。

○共通点

・当然、災難であること
・未然に防いだ方がよいため、事前対策が本質であること

ここまでは、当然ですよね。が、以外に意識されていないのが

・発生しやすい場所があること

 犯罪はこの場所で起こる(光文社新書)
 
http://d.hatena.ne.jp/dacs/20070105/1167924895
 犯罪の発生を後押しする要素論は大きく分けて二つある。犯罪原因論と犯罪環境論である。(略)犯罪環境論とは、犯罪が起きそうな場所、犯罪を誘発する外的要因、即ち環境に着目するアプローチを取る。例えば、悪いことをしても見つからない、捕まらない、入り込み易く逃げ易い環境が提供されれば、そのリスクの低さが犯罪への後押しになるという捉え方だ。

大事なことは、その場所を見極める”眼力”を養うために、現場を足繁く通うことが必須だということです。一見カッコいい、数値シミュレーションなど、不確実な仮定を何重にも掛け合わせただけなので、ほとんど役に立ちません。

○相違点 ‥過去を振り返る意義
 犯罪が起こるたびに、犯人の生い立ち、ゲームの影響、家庭環境など振り返られ「普通の子がねえ」ととてもテキトーに振り返えられるだけで、いつのまにか忘れてしまいます。先日の北風より太陽の話に通じるところがあります。そして、そんなことをいくら調べたって、その犯罪につながった理由が明らかになっていくとはかぎりません。
 これに対し、災害のおこりやすい場所には、地質学(土木地質、応用地質、環境地質)的背景という明確な理由があり、調べるほど原因が明らかになっていく性格を持っています。そして、その論理構成をそのまま地図化することによって、ビジュアルに説明することができるようになります。
 今日、御伽噺の舞台であった、月でさえ、その基本となる地形図が作成されようとしています。

探査衛星「かぐや」、月全体の地形図を詳しく
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080410AT1G0902709042008.html

 月はなかなか歩くというわけにはいきませんけどね。