日々是好日日記

心にうつりゆくよしなしごとを<思う存分>書きつくればあやしうこそものぐるほしけれ

尖閣問題、将来の「利口な人々」に期待する知恵こそが「利口」なのだ

2021年01月06日 07時57分01秒 | 政治
 菅義偉首相は12月19日、都内での講演で、米国のバイデン次期大統領と電話会談した際、バイデン氏が沖縄県・尖閣諸島は対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象になると明言したことに触れて「初めての電話会談で先方から言及があるとは正直、想定もしていなかった」と述べ、初会談の成果を大いに強調した、と報道されている。
 この人(菅氏)は、この11月12日に、自己紹介と自らの日本国総理大臣就任のあいさつ、加えてバイデン氏の大統領選挙戦での祝勝挨拶とを合わせて一本として電話会談。それも4年前安倍前首相がトランプ大統領当選時、世界に先駆けてトランプタワーに一番乗りした「故事」に学んで、早々にこれを行ったのであろう。
 その中で「尖閣諸島も日米安保の適用対象地域である」とバイデン氏が「問わず語りに」語って「くれた」こと、そのことが自らの大層な外交成果だと誇りたかったのでもあろう。 しかし、以前にも本欄で触れたように(「これって本当に喜ぶ話なのですか?」 https://blog.goo.ne.jp/genyoanki/e/955a5ecf52a013a6c49b71704ce94876)、この条項は日米安保条約本文を冷静に読めば、日本国の施政の下にある領域(ここでは「尖閣諸島」)に対してする武力攻撃がアメリカ合衆国の平和と安全を脅かすものであると認められる場合に合衆国憲法に従って日米共通の危機として対処する、と言っているだけのことである。どうみても菅氏が外交的勝利だと言わんばかりに、公の場で取り立てて誇る話だとは筆者には思えない。
 米国民にしてみれば、人も棲まない絶海の孤島、大海原に突出する島嶼部ということはその周辺の地形が変化に富むので小魚にとって隠れ家になるところからここが魚場となり、近海の漁師にとって魅力的な漁場ポイントになる。それゆえ古来沖縄、台湾、そして中国雲南地方の漁民にとって競争場となってきた、そんな国民にとってなんの益もない島を護る必要を感じまい。しかも歴史的にはこの島に最初に日本国の国標を打った時点がかの日清戦争開戦直前であったこと、その後の第二次大戦敗北による講和条件がそれ以前の日清・日ロ・第一次大戦全ての戦争によって日本国が得た領土はすべて返還すべしとなっていて、尖閣諸島はこの範疇にあるとの見解が中国政府の「認識」である。この「日清戦争の前か後か?」の見解の相違は容易には解けないとして日中国交回復時点でも、また鄧小平氏との訪日時の両国了解でも「将来の利口な日中両国民に任せる」こととしたのであった。
 今、毎日のように無益に中国漁船・公船が当該島嶼部を徘徊し、海上保安庁の巡視船が旋回していることの無意味さは言うまでもない。ここはいまだに日中双方に利口者一人としていない現状に鑑みて、鄧小平・周恩来氏らが言うように将来の「利口な人々」に期待する知恵をこそ出すべき時と愚考するがどうであろう???
 何れにもせよ尖閣諸島を「日米安保適用対象地域」という言説は原則論であって、この人も棲まない石くれの島を米軍兵士の命をかけて守るに相応しいと米議会が承認するとは思えない。菅氏には冷静な判断を望む。