「ヘビの檻に生きたウサギ 動画投稿者『餌あげ何が悪い』」という見出しで、次のような吐き気のする記事が新聞に載っていた。
「生きたウサギやハムスターをヘビに食べさせる様子を配信していた自称ユーチューバーの男性を、動物愛護団体が「虐待にあたる」と刑事告発した。動物愛護法は正当な理由なく危害を加えることを禁じるが、「生き餌」に関する規定はない。動画の内容をどう評価するか、捜査機関は難しい判断を迫られそうだ」(2021/01/17朝日新聞)。
これもまた昨日本欄に書いた「アニマルウェルフェア(Animal Welfare)」に関わり、また公序良俗に係る軽?犯罪ということにならないのだろうか?
記事によれば、この投稿者は、「生き物が死ぬ瞬間が含まれます。見たくない方は終了して下さい」と警告を載せているとはいうのだが、その中身は「ハムスターやウサギ、ウズラやモルモットが、それぞれヘビやトカゲがいるケージ内に放り込まれ、捕らえられて数分間かけて食べられる様子が生々しく映し出され」ているのだそうだ。
もとより食物連鎖というこの生物世界を形成している食うか食われるかの循環は、本質的に自然界の成り立ちを整序なものとして作り上げていて、それが人間の目からしていかに凄惨に見えようとも全体として自然界が成立していく要件であるという厳然たる事実である以上、そこにいささかの加えるものも差し引くものも有りはしない。それでいて人間社会におけるモラルの中にはそれをナマのまゝに肯定しないもの、敢えてこれを「ヒューマニズム」という。現に、こういう残虐な映像を見慣れていくことで崩れていく心が人に備わっている。おそらくそれは人間だけにのみ備わっているものであるらしい。それだけに、この残酷さに慣れてしまうことが暴力や残虐さを誘引し、ヒトは一撃で他人を殺傷する能力を持たないがゆえに生じた殺意を抑制する能力も無く、ために殺人から戦争までの残酷さに進んでしまう。
この種の投稿者たちは、あらかじめ忠告し注意したのだから、それでも見ようというのは自己責任だと言いたいのだろうが、恐いもの見たさにそのおぞましい光景を見たくなる心理を逆なでして、かつそこで責任を一気に手放しかつ放棄してしまうインモラルな行為はやはり大きな問題が有ると言わなければならない。
わけても投稿サイトではこれによって多くの視聴者を獲得し、それによって広告掲載数が上がれば投稿者の所得になるという点で、「親の因果が子に報い」と客寄せしている村祭りの出し物よろしく、彼にとってそれなりの収入になるというあの禍々(まがまが)しさに通ずる。それゆえに投稿者はますますもって残虐性を強調していこうとするのではないだろうか?
上記記事は「捜査機関は難しい判断を迫られている」というが、捜査機関を引っ張り出すまでも無くサイト側で分かり易い論理をもってルール化し、それによって毅然とした処置を講じるべきであろうに。