「GoTo なんとやら」という企画に莫大な国費を充てて、しかも計画を早めてまで実施していた「あの頃」がまるでウソのように、政府は一転して「東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏1都3県を対象」に2月7日までの1カ月間、 「緊急事態宣言」なるものを今朝から発令した、という。
国民生活を大幅に制限した昨春の「宣言」時とは異なり、感染リスクが高いとされる飲食店を中心に午後8時までの営業時間短縮を要請するなど対象を抑制的に特定しての実施だという。菅首相が強くこだわっていたあの「GoTo イート」や「GoToトラベル」などは一体全体何処へ行ったのだろうか?
対象4都県の食いもの屋さんの関係者は文字どおり「トンビにアブラゲをさらわれた」気分にちがいない。この際、美味いものをたらふく食べようとベルトを緩めていた御仁たちにも同様にお気の毒さまである。
それにしても、この政策転換、これが菅政権中枢から出てきたものではないことである。そもそもの言い出しっぺは東京都知事小池百合子氏であり、彼女が周辺3県知事と語らって(というより扇動して)言い出した話であり、そこでは足下のCOVID-19ウィルスの跋扈ぶりに恐れをなしたことばかりでなく、彼女の極めて個人的な菅政権に対抗する「政敵感情」の表象としてのデモンストレーションでもあったのであるから、これを純粋に政治的または行政的政策とは言い難い。(ここ一両日感染爆発が謀ったように起こっているのは全くの偶然であることに注意をしておきたい)
つまり、今日から始まった「緊急事態宣言」なるものは、結果として感染突発急拡大という実によいタイミングで発せられたのだが、それでいて菅政権による政策判断ではなく、また小池知事らの政治的・行政的先見性でもなく、ただただ行き当たりばったりに始まった全くの盲目的政策立案に過ぎないということである。
この一年、感染症学、細菌学は言うに及ばず薬学や公衆衛生学などの成果は飛躍的に進化してきたはずだが、それらの成果がこの政策判断に採り入れられたフシは昨夕の総理会見を訊く限りでは全く感じられなかった。安倍内閣の過去8年来、学術的知見が政府の重要政策に採り入れられることは全く無かったし、政権交代の今もまったくない。
こういう論理不在の非知的行動が、ウィルスという極微分子の塊にきりきり舞いさせられる主因である。これこそがこの国でアカデミーが無視された結果であり、かつ国力停滞の主因でもある。
こうして今日から始まる「緊急事態」、あの真珠湾攻撃の歴史同様、始める計画がずさんゆゑに止める判断基準も無い。ゆえに打ち止め計画が作れない。果たしてジャと出るか?、ヘビと出るか? 菅政権と自公連立政権の余命もここにかかってくるが、その前にこの国の存亡もまたこの「一戦」にかかっている。