日々是好日日記

心にうつりゆくよしなしごとを<思う存分>書きつくればあやしうこそものぐるほしけれ

「議会乱入 教唆扇動 大統領」は他山の石

2021年01月14日 07時45分20秒 | 政治
 「世界で一番金持ちの豊かな国」あるいは「世界で一番軍事力の強い国」ということより何にもまして「自由と民主主義の国」という評価、それがどの程度正鵠を射ていたのかはしばらく措くとしても、それゆえに世界中から「アメリカンドリーム」という「夢」を抱いて人々がそこに集まり、それが巨大な民主主義と機会均等の「Melting Pot」によって練り込まれて発展したアメリカ合衆国。人々の夢とその実現の過程こそがアメリカに新しい文明を創造し、それが豊かさの源泉ともなってきた。世界で一番言論の自由が認められてきた国、そう自負してきた超大国の無残な凋落ぶりを世界はいま見せつけられている。
 米国の次期大統領を確定させるために参集された上下両院の連邦議会があろうことか暴力と流血の場と化した。多数の暴徒が議事堂内に乱入し、一時これを占拠した。議場内で銃声がとどろき、警備の警官に守られて上下両院の議員たちは、ガスマスクを付けて避難したという。栄光の歴史に泥を塗る暴挙!
ここに至った直接の原因は、法律が定めるバイデン氏への政権移行の手続きが自らの敗北を確定することになると焦ったトランプ氏が、これを阻止しようと目論んだことにあった。前日までにSNSなどを通じて、彼の支持者に「戦闘」が呼びかけていたと報道されている。ついに4人もの死者を出すまでに至ったこの「騒乱」、アメリカ合衆国は建国以来2世紀半の自他ともに誇った歴史的信頼と評価とを失うこととなったのだが。源をただせば、憎悪をあおり、法の支配を侮蔑さえしてきたトランプ政治にある。これを評して、ジョンソン英首相は「ワシントンの恥ずべき光景」と言い、ドイツのメルケル首相は「腹立たしく、かつ悲しい」と言ったそうだが、日本の指導層からは何の指摘も評価も聞かれない。
 あらためてよくよく考えてみれば、米国内の分断をトランプ氏一人のせいにすることもできない。ここに至る格差の広がりや国民統合の失敗は、歴代政権と与野党双方の政治機能の低下によるものであろう。すでにアメリカではブッシュJr.の時代に病魔は始まっていたのではなかったか。それを払しょくしようとして登場したオバマ大統領も期待に沿えずに流動していき、その幻滅の先に鬼っ子ドナルド・トランプを招いてしまったのであろう。
 いま思えば「民主主義」というシステムは、本当は高い倫理と知性と自律性に立脚しているために、それをネグレクトされた時には実に脆弱な事態に陥ってしまうものであること、それゆえ何もトランプのアメリカに特徴的に表出したというわけではなく、見渡せばいちいちあげつらわなくとも、今や世界中に反民主主義的政治が瀰漫していることからも容易に分かる。
 表題に掲げた「議会乱入 教唆扇動 大統領」は山形県渡辺米助さんの「朝日川柳」(2021/01/08収載)投稿作品である。実に簡潔にして明快、川柳というより三題噺という趣でもあるが、筆者にはこれが日本の民主主義への警告のように聞こえたのでここに借用させて頂いた。