「小説家としてずっと気になっていることがあります。安倍政権と菅政権が日本語を徹底的に破壊してきたことです。あらゆる疑惑をうやむやにし、質問にも答えない。およそ会話が成立しないような、日本語の使い方をしてきました。その政権がいざ「緊急事態宣言をしました」「家で過ごしましょう」と訴えたところで国民に通じるはずがないんです」(平野啓一郎 2020/01/17新聞赤旗日曜版)
緊急事態宣言を全国11都府県に発出したとは言い状、その効果は前回の同一宣言時に比べて見るべきほどの効果が全くと言っていい程に無いという。「宣言」によって行動に制限を受ける国民の側にも個々の都合が有ってのことではあろうが、道行く人の数が宣言前と比べて減るどころか人気スポットなどにあっては逆に増えてさえしていると聞く。
これは、何にもまして指導者たちが発する言葉が「ウソ」に紛れてその「実」が無いことを人々が知ってしまっているところに原因があるのだろう。つまり、指導者たちはもう国民からその正統性(レジティマシー)が疑われ、見くびられてしまったのである。
そう言えば今日「1月20日」は近来まれに見る「大ウソ」が語られた日として「ウソ記念日」と言うに相応しい一日である。2017年1月20日午前11時02分より11時21分(たった20分だ⁉;筆者註)、国家戦略特区諮問会議が首相官邸4階の会議室で開かれ、その場で加計学園獣医学部を愛媛県今治市に設置する計画が全会一致で承認された。
あろうことかこの重要会議の議長をつとめた安倍首相は、この時に机上に出されていた会議資料によって「初めて」盟友の加計幸太郎氏がこの重要な提案を国に対して行っていたという事実を知ったと、後々野党の追及に対して答え続けたのである。これが記念すべき「大ウソ」であるという事実は今さら並べ立てるのも時間の浪費であるから敢えて省略する。ただただ紛れもない「大ウソ」であること、それが天下の内閣総理大臣の口から出たという事実のみを指摘しておく。ただし、まだ当人がその「屈辱」を雪げずにいるのはもちろんのことだが、彼の政敵たる野党もまた確定を放置したままでいること。ここに、世の道徳が破綻していく成り行きが見て取れる。
世界の政治家の中でウソを多発した人物としてはアメリカのトランプ大統領をもって嚆矢とするであろうが、我が安倍晋三前首相も負けてはいない。桜を見る会や森友事件に関わって発した虚言は数を知らないと思しきが、その中でもおそらく第一等のウソがこの「1月20日初見」発言というウソではないだろうか?
こういうウソから始まる不信用が緊急事態と政府が太鼓をたたいても国民が知らんぷりする原因であろう。ウソはすべての不道徳の始まりである。道徳教育の必要性は政治家にこそ当てはまる。