日々是好日日記

心にうつりゆくよしなしごとを<思う存分>書きつくればあやしうこそものぐるほしけれ

トンネルを抜けたとき見えてくる風景は?

2020年05月08日 07時22分26秒 | 政治
 ヨーロッパ各国の政府はおしなべて、本格的な「パンデミックトンネル」からの「出口戦略」を模索し始めているようである。それぞれの国々の指導者たちは、このトンネルの向こうにどういう風景を想像しているのであろうか?
 今次の新型コロナウィルスCOVID-19によるパンデミックから主に想起されたのはスペイン風邪であった。これが参照された主たる理由はそれがちょうど1世紀前であったという暦の偶然が主な理由であったのだろうが、これによって世界史が大きく変化したという歴史の大変化への不安もまた陰に陽にあるのではなかったか?
 スペイン風邪とは、あたかもスペインが病気の発生地と勘違いさせるような名称ではあるが、その本当の発生源はアメリカ合衆国のカンザス州の兵舎であったとされている。折りしも第一次世界大戦の最中であり、1917年、米国が重い腰を上げてこの大戦に参戦。大勢の兵員がその感染の中心地アメリカからヨーロッパ戦線に運ばれ、世界大戦という広大な戦場を舞台にしてウィルスもまた戦線拡張をほしいままにしたのであった。この時に中立を決め込んでいたスペインがこのパンデミックの名称に利用されたのであった。
 このパンデミックと戦争はそれまで世界をリードしてきた大英帝国=パックスブリタニカの終焉を用意し、かわって引き続いて起こった第二次世界大戦を経てアメリカ合衆国によるパックスアメリカーナ100年の始まりを築いていったのであった。
 こうしてパンデミックの前後によって世界の政治的・文化的中心が一大変化していくという歴史の変曲点、この度のCOVID-19パンデミックもまたそういう歴史的変曲点を用意しているように見える。アメリカ合衆国の衰退と中国の台頭、すなわち、パックス・アメリカーナから「パックス・シニカ」へのパワーシフトである。
 こういう変化は考えたくないというのであろう、国際政治を専門とする学者や評論家からは「パックス・シニカ」の到来は多く語られないようだが、トランプ大統領治下の米国政治の暗愚さと、それを尻目に世界の工場としての中国の一頭地を抜く存在感を見る限りもはや米国の覇権国家としての資格はその地に堕ちている。
 こういう大きな歴史の大変動の時代を迎えるであろう今次パンデミックの終焉後にヨーロッパの政治指導者たちはどういう世界をいま想像しているのであろう? ぜひそのことを教えてもらいたい。
 他方、わが安倍首相はただただ今年できなかったオリンピックの来夏開催だけが着地点であるようで、この大変動に対して「地を抜く」見識など持ち合わせているようにはさらさら見えない。
 リーダーのその未熟さを見るにつけても、ただただめまいと幻覚に襲われるばかりの今日この頃である。