「新聞労連や民放労連などでつくる『日本マスコミ文化情報労組会議』」(MIC)が報道関係者に『報道の危機』に関するアンケートを実施したところ、新型コロナ報道について①『感染防止のため現場取材ができず、当局発表に流されていく』、②『政府から〈医療崩壊〉と書くなと要請された』、③『政府や自治体首長の表現を検証もせず垂れ流している』、④『記者会見が入場制限されている』、などと現状を懸念する回答が23日までに多数寄せられた」(2020/04/23共同通信 ここに番号は筆者が付けた)
解答①の「現場取材ができず、当局発表に流されていく」という「回答」はそれ自体がすでにしてマスコミ業界の敗北を表しているのではないか?「当局発表」の裏を丹念に取材して歩くというのが記者の仕事であるはずで、それによって「当局発表」の裏が取れたのであれば徒労とはいえ、読者にとってはそれでよし、虚偽である事実が暴ければ、それこそが「マスコミ」の存在意義であろう。果敢にその欠落を筆法鋭く突けばよい。
解答の②、「『医療崩壊』という記事を書くな」とはとんでもないことだ。アルベール・カミユの小説「ペスト」のテーマはまさに医療崩壊後の人々の生きざまを描いて成功した。パンデミックにとって「医療」の存続こそが主題であり最大の関心事である。マスメディアが伝えるべき一丁目一番地がまさに「医療」の現在の確認である。「書くな」と言われて「はい」と答えたとはここには無いが、もしそういう行政機関があればそれをメディアとして批判するのが彼ジャーナリストの存在理由であったはずだ。
③『政府や自治体首長の表現を検証もせず垂れ流している』とは、自己批判か謙遜ではあろうが、NHKを筆頭にTV業界がおしなべて「垂れ流し」の「広報機関」に堕していると言われるようになって久しい。これでは、立法・司法・行政につづく「第四の権力」と言われるマスコミの存在意義は壊滅する。もっとも、立法も司法もいまやこの国ではすべて行政の配下に押し込められている。安倍首相が、自分は森羅万象を担当していると口ばしったのはある意味正鵠を射ているのである。
④「記者会見が制限される」ことに不満が有るのは、そもそも役所の一室を借りて「記者クラブ」という同業組合に甘んじている現実がその根源であろう。権力に近い記者クラブメンバー社が他を排除するシステムこそが「制限」の出発点だったのではないだろうか?
批判力を失ったメディアの存在、市民にとっては、まるで死んだカナリアを籠に入れて地底にもぐる炭鉱夫である。毒ガスを検知する社会的仕組みはもはや無い。
関係者は、自分たちのこんなアンケート結果から厳しく自己批判すべきである。MICは「大本営発表に染まった戦前の報道の過ちを繰り返してはならない」とまとめている(同上)という。むべなるかなである。
(明日より6日まで「日々是好日日記」を休載します。安寧の「Home Stay」となりますように)