閣議で決めれば検察幹部の定年を自由に判断できるという規定が「人事や検察捜査への政治介入を招く」として、Twitter上に「#検察庁法改正案に抗議します」という投稿がなされるや、これに呼応する投稿がネット上で後を絶たないという。コロナ騒ぎで示威行動がとれないうっぷんをネット空間ではらそうというのでもあろう。
安倍内閣は1月、政権にごく近いとされる黒川弘務・東京高検検事長の定年が迫るや突如としてこの人のみの定年延長を脱法的に「閣議決定」し、同氏が検事総長になれる「けもの道」を開いてしまった。その根拠に、検事も国家公務員だからという筋の違う川の水を汲んできて、国家公務員法の延長規定を借用したとしたのだが、こういう「適用」はしない旨の国会審議記録が国立公文書館で見つかり、過去の政府答弁との矛盾が指摘されるや、今度は「閣議で法解釈そのものを変えた」と説明するという、およそ「法治国家」にあるまじき脱法的独断ぶりを、「例によって」安倍内閣は発揮した。
「桜を見る会」・「森友事件」・「河合夫妻選挙違反事件」、数え上げれば安倍内閣の周辺では、その在任期間の長さを考慮してもなお政治的悪事の多さが群を抜いている。そういう中にあって「おごれる人も久しからず」(平家物語)、さしもの隆盛を極めた権力にもようやく陰りが見えてきた。安倍氏がその権力の座から墜ちたときのために障害保険として彼が意のままに操れる人物=黒川氏を選んで「脱法」行為を企んだと世間は見ているのである。しかしながら、この企みはどう見ても危険極まりない。
いま、野党は一斉にこの法案に猛反発している。しかし、その野党がもしも政権を取った時、彼らはこの「法律」を破棄するであろうか?。おそらくそんな愚かなことはしまい。まして政権政党が同じであればこれを変えるわけはない。安倍氏にとってこの法律が都合がよかったように、彼らもまた法務検察を自家薬籠中のものとしておくことは好都合だからである。
しかるに、仮定として黒川氏を検事総長に就任させ得たとして、彼が安倍氏に有利に動けるであろうか?。答えは「否」である。動けば世論の騒ぎは今次Twitter♯ハッシュタグのレベルではあるまい。すくなくとも、そのくらいの想像力を持っているから、黒川氏は東京高検検事長に迄のし上がってきた人物だ。
かくて、安倍晋三氏が権力の座から下りた後、上記の悪事が詮索される事態に陥った時には、時の政権の「三権分立」無視の構造によって完膚なきまでに、安倍氏は検索されることとなるであろう。
Twitterの♯ハッシュタグの投稿の多さが話題になっているが、通常出てくる反論の「安倍軍団」♯ハッシュタグが出てこないことが、上の推論を支持する。これは、安倍政権をネット空間で熱烈に支持している一団の人々が上記の不安感を抱いているために違いない。
「おごれる人もひさしからず」、太平の後には戦乱がやってくる。まして、今世界に猛威を奮うコロナウィルスは時代の流れを鋭角に変えていくことであろう。政権は、飛んで火に入る夏の虫となるよりも、この暴挙をやめた方が利口だと思うがどうだろう?