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現代ビジネスOPEN!! どりこの探偵局


7月12日 群馬大会・上毛新聞敷島球場

二回戦

樹徳 13-1 桐生工 (7回コールド)

レポート 小関順二

 少し遅れて高崎城南球場に着くと、入場券売り場まで延々数十メートルの列ができていた。距離感に自信はないが恐らく20メートルは下らないだろう。球場内は既に立錐の余地もない超満員。外で並んでいる人たちは果たして座って観戦することができるだろうかと心配してしまった。

 第1試合の前橋工対高崎商戦は全国を見回しても初戦(2回戦)のものとしては屈指の好カード。長蛇の列ができるのも納得がいく。試合は大観衆の期待にたがわず延長戦にもつれ込む大熱戦で、延長10回裏、センバツ出場校の高崎商が甲子園の常連校、前橋工をサヨナラ犠飛で突き放した。高崎商の渡辺貴仁(投手)、松本尚之(左翼手)、前橋工の篠崎祐典(捕手)など好選手が多く、前橋工は打者走者の全力疾走が4人・6回を数えた。

 これほど見ごたえはあっても、ここで取り上げるのは上毛新聞敷島球場に場所を移して観戦した樹徳対桐生工戦である。大いに注目したのは投手・岡貴之、捕手・米田達哉、遊撃手・倉林寛、中堅手・風間優と続く樹徳のセンターライン。この充実感は高崎城南球場で見た2校より上と断言できる。とくに岡―米田のバッテリーは素晴らしかった。

 米田のイニング間に行われる二塁送球は1~3回まで「1・96、1・94、1・97秒」と2秒切りを続けた。足も速く、1回表のバントでは一塁到達3・97秒を記録。これらのストップウオッチで得られる数字は、運動能力の高さとともに試合への参加意識の高さを物語っている。思い切りのいいバッティングも目を引き、3回戦以降はさらに注目を集める存在になっているだろう。

 左腕の岡は176センチ、74キロの体格も自己最速139キロのスピードも目を引く存在ではないが、ピッチングの完成度、バント処理や一塁カバーリングで見せるディフェンスのうまさは全国レベルと言っても過言ではない。

 ピッチングの特徴はトップ(投げる直前の形)の浅さ。もうひと動作入れて胸を万全に張ってから投げに行けばいいような気もするが、ひと動作入れないからこそ余計なねじれや横ブレを生じないとも言える。適切な比喩ではないが、前にいる人の頭を平手で叩くような投げ方である。真下にボールを叩きつけるような投げ方、と言ったほうがわかりやすいだろうか。とにかくリストワークのよさに見ごたえがある。

 低めストレートが伸び、変化球は右打者の軸足に絡みつくような縦割れのカーブと、小さく鋭く横に変化するスライダーがあり万全。コントロールも安定し、追い込むと高めのボール球で誘う度胸のよさがある。捕手の返球を受け取ってからほぼ4~5秒で投げるテンポの速さに特徴があるが、5回には打者が構えていないのに投げて主審から注意される場面もあった。こういう部分も好ましく思えるほど、この日の岡は素晴らしかった。



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7月12日 奈良県大会 2回戦

奈良大付3-1奈良情報商業

レポート 氏原英明

きょう、12日は奈良大会の4試合を観戦した。

 そんな一日の中で、第4試合に行われた「奈良大付VS奈良情報商業」の試合を取り上げたい。この試合は、昨日のブログで僕が書いた、高校野球の楽しみ方でいうと「チャンピオンチームを追いかける」に属する。だが、この試合は、それに加えて、奈良大付の2年生エース松田浩幸という逸材に出会えたので紹介したい。

 まず、奈良大付について説明すると、このチームは今、奈良県で最も注目を浴びているチームだ。というのも、奈良県は夏の大会に限ると、この38年間で3校しか夏の代表校を出していない全国でも稀有な地域の一つである。私学の強豪・天理、智弁学園の2強が大きな壁として立ちはだかり、公立の雄・郡山も、県上位の存在として、君臨しているのである。

 いわば、奈良県で高校野球をする者にとって、この3校は越えなければいけない壁、なのだ。

 その一番近くにいるのが奈良大付である。昨年と一昨年の奈良県大会では決勝に進み、惜しくも涙をのんだ。一昨年は郡山に圧勝しながら、決勝で智弁学園に大敗。昨年は天理・郡山を倒しながら、決勝で再び、智弁学園に辛酸をなめた。

 だから、今年こその期待は高まるのだ。

 さらには、新チームになってからの成績でも、3校に肉薄する成績を収めている。昨秋の県大会では智弁学園1-0で勝利。今春の県大会は天理に6-0で勝った。2試合ともにエースの松田が先発し、完封勝利を収めている。この2年の実績と私学2強に対して堂々たるピッチングを見せる松田の存在、今の奈良大付には期待 が高い。
今日の対戦相手の奈良情報商業は左腕エース横山治明が好投手と評判。昨年からのチームを引っ張り、今大会も1回戦の榛生昇陽戦で完封勝利を収めている。つまり、左腕の好投手同士の投げ合いが見られたというわけだ。
 
 試合は予想どおりの投手戦。3回までは0行進が続き、奈良大付が4回表に、相手守備陣のミスから1点をもぎとり、試合が動いた。さらに、6回表に、四球とミスに乗じて、1点を追加。7回裏に1点を失うも、9回表に貴重な追加点を挙げて3-1で制した。
 
 辛勝といえば辛勝だが、松田のピッチングは見事だった、130キロ前半のストレートとカウント取るカーブ、縦横のスライダーを、調子に合わせて使い分けてくる。きょうは、横のスライダーがよく、決め球に効果的だった。
 
 監督を務める、田中一訓に松田の良さを聞いたところ、こう返ってきた。
 「コントロールがいいんです。きょうは、あまり調子がいい方ではなかったんですけど、自分で崩れることなく、ピンチであっても淡々と投げる」
 
 安定感のあるコントロールとピンチでも動じない強心臓に指揮官も心酔しているようだ。さらに、松田の特性として、以前に田中監督はこんなことを言っていた。
 
 「どんなピッチャーも失投はすると思うんです。でも、松田の場合は、失投が中に行かない。インコースなら当ててしまうような球か、外なら外れていく」
 
 これはなかなか、簡単には持ち得れない能力だ。天性のコントロール能力を示す言葉である。
 
 そんな松田の好投があり、奈良大付は幸先よくスタートを切った。とはいえ、チームとしての戦いに課題が残ったのも事実。田中監督は「もっと打ってくれると思ったんですけどね」と語っているように、攻撃力が課題になる。「昨年ほどの力は、今年のチームにはないと思っています。強いところからさらに強くしたのが 去年のチームでした。ことしは緊迫したゲームを経験する中で、勝てるチームになっていければ、いい戦いができるんじゃないかと思っています」
 
 38年の壁は破られるか。奈良大付の今後の活躍に注目である。


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7月11日
埼玉県大会1回戦・熊谷公園球場

鷲宮6-0熊谷商

レポート 小関順二

 第1試合に登場する昨年夏の甲子園出場校・本庄一を見ようと、熊谷公園球場には立ち見客も出るほどの観衆が押し寄せた。多くの観客が注目するのはマスコミに取り上げられることが多いブラジルから来た留学生コンビ、伊藤ディエゴ(投手)と奥田ペドロ(遊撃手)。しかし、ここで取り上げるのは第2試合に登場した鷲宮の2年生スラッガー、谷澤由浩(三塁手・右投左打)だ。

 4月27日に行われた春季埼玉県大会の花咲徳栄戦でも見ている選手だが、観戦ノートには記述が一切ない。たとえば、鷲宮のエース・野本幸保なら「スライダーのときヒジが下がり、左肩の開きが早くなる。このスライダーを多投。3回はほとんどスライダー。投球フォームがいいので、体作りが進めば化ける可能性がある」という記述がある。しかし、4番でスタメン出場している谷澤のことは一切触れていない。よさが見えなかったのである。

 それがわずか44日で印象が大きく変わった。一言で言えば、上半身から力が抜けている。左手の人差し指を立てることで腕力を封じ、引き手を使えるようにしているのが心憎い。好打者の必須条件「ステップをゆっくり出す」も心得ていて、3回に放った満塁ホームランは緩急で攻められたあとの低めストレートを十分すぎるほど呼び込んで捉えた百点満点の一発。

 ステップする前足を外に出すことによって体を開くアウトステップ(懐を空けて内角球に対応しようとする打ち方)、あるいはグリップの位置を下げるヒッチ(リストを利かせようとする打ち方)さらにバットを大きく引いたり、忙しく動かしたり――という「やってはいけない」打ち方をまったくと言っていいほどしない。それでいて180センチ、76キロの体が打席の中で窮屈に見えない。ゆったりと立ち、ゆったりとボールを捉えているのである。こういう選手が背番号「13」をつけて4番に座っている。鷲宮の充実を感じないわけにはいかない。

 試合への参加意識が最もよく表れる打者走者の走塁にも目を向けると、鷲宮の選手がこの試合で全力疾走(一塁到達4・29秒未満、二塁到達8・29秒未満、三塁到達12・29秒未満)したと認められるのは、1番野本拓也が3回、2番小森直矢が3回、3番園原裕太が1回、7番鳥海貞治が1回の計4人・8回。対戦相手の古豪・熊谷商が2人・3回だから、選手個々の試合への参加意識には大きな開きがあると言っていい。ちなみに、谷澤は2度の一塁ゴロで4・68秒、4・60秒という記録が残っている。もちろん、これはすぐにでも改善してもらいたい。




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原武史のノンフィクション100選:ベスト10その2
※コメントは選者ご本人によるものです

田中角栄研究―全記録 (上) (講談社文庫)
田中角栄研究―全記録 (下) (講談社文庫)立花隆
講談社文庫/1982年
私がまだ小学生のとき、立花隆がすでに「田中角栄研究」を月刊「文藝春秋」に掲載していたのは驚きである。ノンフィクションが現実の政治を動かした記念碑的著作に敬意を表さずにいられない

ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行(新装版)
都築響一
アスペクト/2001年
日本には、こんなにたくさんのいかがわしいスポットがあったのかと、ひたすら感心させられる

昭和史発掘〈1〉 (文春文庫)
昭和史発掘〈2〉 (文春文庫)
昭和史発掘〈3〉 (文春文庫)
昭和史発掘 (4) [新装版] (文春文庫)
昭和史発掘 (5) [新装版] (文春文庫)
昭和史発掘 <新装版> 6 (文春文庫)
昭和史発掘 (7) [新装版] (文春文庫)
昭和史発掘 <新装版> 8 (文春文庫)
昭和史発掘 <新装版> 9 (文春文庫)
松本清張
文春文庫/2005年
二・二六事件に収斂する昭和史の流れとは別に、島津ハル事件、神政龍神会事件、皇太后と昭和天皇の確執など、宮中に絡む不穏な動きを察知する清張の視点が鋭い(新装版)

時刻表2万キロ (角川文庫 (5904))
宮脇俊三
角川文庫/1984年
1977年に国鉄全線完乗を達成するまでの真面目にしてユーモラスな記録。私個人にとってのノンフィクションの原点

アンダーグラウンド (講談社文庫)
村上春樹
講談社文庫/1999年
これもまた『レイテ戦記』同様、すぐれた小説家がすぐれたノンフィクション作家であることを示す見本と言える


「和書その1」に続く


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