7月12日 奈良県大会 2回戦
奈良大付3-1奈良情報商業
レポート 氏原英明
きょう、12日は奈良大会の4試合を観戦した。
そんな一日の中で、第4試合に行われた「奈良大付VS奈良情報商業」の試合を取り上げたい。この試合は、昨日のブログで僕が書いた、高校野球の楽しみ方でいうと「チャンピオンチームを追いかける」に属する。だが、この試合は、それに加えて、奈良大付の2年生エース松田浩幸という逸材に出会えたので紹介したい。
まず、奈良大付について説明すると、このチームは今、奈良県で最も注目を浴びているチームだ。というのも、奈良県は夏の大会に限ると、この38年間で3校しか夏の代表校を出していない全国でも稀有な地域の一つである。私学の強豪・天理、智弁学園の2強が大きな壁として立ちはだかり、公立の雄・郡山も、県上位の存在として、君臨しているのである。
いわば、奈良県で高校野球をする者にとって、この3校は越えなければいけない壁、なのだ。
その一番近くにいるのが奈良大付である。昨年と一昨年の奈良県大会では決勝に進み、惜しくも涙をのんだ。一昨年は郡山に圧勝しながら、決勝で智弁学園に大敗。昨年は天理・郡山を倒しながら、決勝で再び、智弁学園に辛酸をなめた。
だから、今年こその期待は高まるのだ。
さらには、新チームになってからの成績でも、3校に肉薄する成績を収めている。昨秋の県大会では智弁学園1-0で勝利。今春の県大会は天理に6-0で勝った。2試合ともにエースの松田が先発し、完封勝利を収めている。この2年の実績と私学2強に対して堂々たるピッチングを見せる松田の存在、今の奈良大付には期待 が高い。
今日の対戦相手の奈良情報商業は左腕エース横山治明が好投手と評判。昨年からのチームを引っ張り、今大会も1回戦の榛生昇陽戦で完封勝利を収めている。つまり、左腕の好投手同士の投げ合いが見られたというわけだ。
試合は予想どおりの投手戦。3回までは0行進が続き、奈良大付が4回表に、相手守備陣のミスから1点をもぎとり、試合が動いた。さらに、6回表に、四球とミスに乗じて、1点を追加。7回裏に1点を失うも、9回表に貴重な追加点を挙げて3-1で制した。
辛勝といえば辛勝だが、松田のピッチングは見事だった、130キロ前半のストレートとカウント取るカーブ、縦横のスライダーを、調子に合わせて使い分けてくる。きょうは、横のスライダーがよく、決め球に効果的だった。
監督を務める、田中一訓に松田の良さを聞いたところ、こう返ってきた。
「コントロールがいいんです。きょうは、あまり調子がいい方ではなかったんですけど、自分で崩れることなく、ピンチであっても淡々と投げる」
安定感のあるコントロールとピンチでも動じない強心臓に指揮官も心酔しているようだ。さらに、松田の特性として、以前に田中監督はこんなことを言っていた。
「どんなピッチャーも失投はすると思うんです。でも、松田の場合は、失投が中に行かない。インコースなら当ててしまうような球か、外なら外れていく」
これはなかなか、簡単には持ち得れない能力だ。天性のコントロール能力を示す言葉である。
そんな松田の好投があり、奈良大付は幸先よくスタートを切った。とはいえ、チームとしての戦いに課題が残ったのも事実。田中監督は「もっと打ってくれると思ったんですけどね」と語っているように、攻撃力が課題になる。「昨年ほどの力は、今年のチームにはないと思っています。強いところからさらに強くしたのが 去年のチームでした。ことしは緊迫したゲームを経験する中で、勝てるチームになっていければ、いい戦いができるんじゃないかと思っています」
38年の壁は破られるか。奈良大付の今後の活躍に注目である。
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